スケッチブックを持って旅に出よう
本文へジャンプ

2009年12月29日(火)
シーギリヤロック
 赤褐色のその岩は、空に向かって垂直に、ジャングルの只中にどーんとそびえている。「あの岩に登るんですよ。てんっぺんに王宮があったのです。そこを見ましょう。」とガイドさん。まっ、まさか・・・ロッククライミング??岩山は城壁に囲まれ、その周りには蓮で埋め尽くされた堀がめぐらされ、かつてはワニもいたそうだ。もちろん王を守るため。
 入り口をはいる前から、私たちをサポートしようと、地元のポーター(ガイド)さんたちがよってくる。そのサポートの仕方が実に巧い。はじめのうちはこちらも「いらない!大丈夫!」と拒否をするのだが・・・・(なにしろ後でどのくらいガイド料を請求されるか恐ろしい。)這って上るような急な階段の続く行程に、絶妙なタイミングで手が差しのべられるのだ。けっして多弁ではなく、ここというところでそっと差し出されるその手に、いつしか頼ってしまう自分がいることに気がつく。
 また、この人は自分で登れる人と見極めると、今度は路線を変えてその人の関心のあることについて巧みにガイドをはじめる。私の場合は、道端の草花と、カメラでの撮影ポイント。この草花はシンハラ語ではこういうとか、文字で書くとこうなるとか、カメラで撮るならこの角度がお勧めだとか実にさりげないのだ。それが頼みもしないのに山頂につくまでずっとついてくる。もうここまでしてもらったら幾ばくかガイドを払おう!と思い始めてしまうから不思議だ。
 岩山の中腹の回廊ミラーウォールをこえると、5世紀に描かれたというフレスコ画シーギリヤレディーが鮮やかに微笑んでいる。岩のわずかなくぼみにここまで鮮やかな色合いで残っている彼女に出合ったとき、私は思った。
 「しまったぁ!!何の準備もできていないのに、こんなものを見てしまっていいのかぁ!」
 美しいものとの出会いは、いつもこんな風に突然やってくる。眩しすぎてこの微笑をすべて受け止めきれない自分が悔しい。ただただ手を合わせて呆然とするしかないのだ。

 これまでに何万人の人々がこの道を往来したのだろうか、すっかりすりへった狭い階段をのぼりつめると、そこが王宮跡。あたり一面にジャングルと遠くにシーギリヤの街が見える。父を殺し、強引に王座につき、弟の復讐におびえていた孤独な王はこの景色をどんな思いで眺めていたのだろう。そしてこの絶壁だ。王宮を支えるためにどれだけの人が命を落としたことか。毎夜繰り広げられたであろう宴の間の跡と沐浴のためのプール跡が、なんとも言えず悲しい。
 
 
 





 
日記