G.フォーレ   連作歌曲 「優しい歌」より

                第1曲  後光の中の聖女さま

                            OP61−1
 1892-1894

          Une Sainte en son aureole

        後光の中の聖女様
        天主の窓の奥方様
        人の言葉の伝え得る
        優婉可憐のことごとく
 
        聞こえてくるのは森の遠くに鳴り渡る
        金の音色の狩の笛、
        そのかみの世の貴婦人たちの
        高貴で誇らしげな婚礼
 
        勝ち誇れる笑みを振りまいている
        可憐な少女の頬の赤らみ
        白鳥の純粋無垢
        言いしれぬその魅力、
 
        真珠母色の容姿、白やバラ色
        貴族ゆかりの優雅な調べ
        私は見る、私は聴く、これらの全てを
        あなたのカロリング朝風の名の中に
        
                         ポール・ヴェルレーヌ 



 MIDIヘ

                  相当に荒ぶれた生活を送っていたヴェルレーヌが6月のある日
               出会ったマチルドという少女はいかに後光がさして見えても、神
               経質な線の細い少女ではなく、ふくよかで平凡な生命力を感じさ
               せる少女ではなかったろうか。トルストイの戦争と平和の中で死の
               想念をさまようボルコンスキー公爵が出会ったナターシャみたいに。