フォーレ チェロソナタ第1番 Op.109 第1楽章  1917年
                                 
              1917年といえば第一次大戦の真っ最中。そしてフォーレはなんと72歳。
              同年春から7月にかけて第1楽章と第2楽章が、そして7月28日から8月
              18日の三週間、南仏のサン=ラファエルで一気に第3楽章が作曲されて
              います。第1楽章アレグロは「厳しく晦渋」。第2楽章アンダンテは日本の子
              守歌を思わせるような叙情性、サンラファエルで作られた第3楽章はくつろぎ
              と活力ある優美。

               この頃のフォーレは再び多産な時期を迎え、主に室内楽の分野で密度
              の濃い作品を次々に発表していました。前年の1916年には有名なヴァイ
              オリンソナタ第2番を作曲しています。この時期のことを「フォーレの晩年」と
              か「後期のフォーレ」とか言います。
              

              ざっと見てこの時期どういう作品があるか

1915年

『舟歌第12番』 『夜想曲第12番』
 1916年 『ヴァイオリンソナタ第2番』
 1917年 『チェロソナタ第1番』
 1917年 『塔の奥方』
 1918年 『幻想曲』
 1919年 『マスクとベルガマスク』
 1919年 『幻影』
 1919年 『ピアノ五重奏曲第2番』
 1921年 『舟歌第13番』
 1921年 『チェロソナタ第2番』
 1921年 『幻想の水平線』
 1921年 『夜想曲第13番』
 1922年 『ピアノ三重奏曲』
 1923年 『弦楽四重奏曲』

             これらの作品に共通するイメージは『難解』と言われています。
             そしてこのチェロソナタも『難解』。しかもこれらの中でも特に難解と言われて
             いるのがこのチェロソナタの第1楽章です。
               しかし私は、人が言うほど難解だとは思えませんでした。
             これらの曲はよく聴くと、新しい20世紀の音がいろいろ聞けるような気が
             したからです。ちょうど絵画で言うと、野獣派(フォービズム)のブラマンク、
             キュービズムのレジェ。例えばレジェの絵は騒音に満ちています。工場の
             音、鉄と鉄がぶつかり合う音、人々の喚声。ちょうどこのチェロソナタ第1
             番の第1楽章のチェロも、優美で豊かな流れるようなチェロではなく、ゴリ
             ゴリした、地団駄踏むような、シンコペーションのある、時にジャズ風な音
             です。もしかしたら第一次大戦の影があるのかもしれません。2拍子と3
             拍子が重なることによって思わぬ効果が出ていると思います。これらの音
             が人を遠ざけるか、それとも親しみを憶えさせるかは紙一重ではないでし
             ょうか。コンピューターで作る音楽にはふさわしいと言えるのかもしれません。
              1世代(2世代?)後のジャン・コクトーや6人組はドビュッシーよりもフォー
             レを評価しているようです。

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             MIDIとしてはとてもがさつな作りであります。
             曲そのものに圧倒されています。
             『晦渋』な作品がもっと『晦渋』になってしまったのではないかと恐れます。
             もっとわかりやすく、ツボを押さえた「演奏」が・・・もちろんCDにはありま
             すよ!是非聴いてみてください。

              
                                                                     
                                 MIDIヘ