G.フォーレ   連作歌曲 「優しい歌」より

 第4曲   僕は不実な道を歩いていました

P61−4
 1892-1894

J'allais par des chemins perfides
         

僕は不実な道を歩いていました、   
痛々しいほど不安な気持ちで。
あなたのいとしい手が、道しるべになってくれました。
  
青ざめてほんのりと遠い地平線
夜明けの希望がわずかに見えていました
あなたのまなざしが朝でした。
 
自らの高鳴る足音以外  
旅人を鼓舞するものとてなかったのでした。
その時あなたの声がおっしゃった、「もっとお歩きなさい」と。
 
僕の怯えた心、僕の陰気な心は、
うらぶれた路地でひとり泣いていました、
嬉しい征服者、恋愛が来て
 
歓びの中に二人を結びつけてくれました。
                           ポール・ヴェルレーヌ

                                       



 MIDIヘ

                  この詩は金原礼子さんの解説によるとダンテの神曲と同じテルザ・リ
               ーマという詩の定型で書かれているといいます。ベアトリーチェの導
               きでダンテが天国の至高天に上っていくように、ヴェルレーヌもマチ
               ルドの導きを願って、テルザ・リーマで書いたのでしょう。3つの詩節
               の第3行目はいつもVousへの呼び掛けで、それが最後にNousにな
               って結ばれる、という形になっています。

                はじめの夜の旅人の歩行を思わせる下降型の3つの音はこの優し
               い歌の第1曲にあったマチルドのテーマ。ここでは不実の道らしく、瞋
               恚(しんい・怒り)の響きがあります。続いて暁の拡がりを表す上行型
               の音型が流れる。詩人は迷いの世界にいて「うらぶれた路地で泣いて
               いる」。
                そして「愛という征服者が来て・・」マチルドのテーマと暁のテーマが
               合致して天国への道が開かれます。絶え間なく上行音型の流れるの
               がとても美しい。

               しかしMIDIでこれを表現しようとすると・・とって〜も難しい^^;
               CDなどで聴くと、もっと軽やかに歌っています。
               問題はやっぱりテンポの設定だと思います。
               僕のは不実の道を歩く、足音ばかりが、最後まで強い!

               −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 

               有名なベルナルド・クリュイッセンのCDは聴きたいが、もう廃盤になっ
               ています。僕の持っているのは最近発売のフォン・オターの五重奏版
               とホルツマイアーのもの。オターので聴くと、冒頭から速い出だしでそれ
               に対して、弦がとても優しいフォローを入れます。ホルツマイアーはその
               点、詩にあるとおり、冒頭はぼんやりと「不安な」、ゆっくりした歌い出し。
               そしてピアノはやはりごつごつした感じ。
                その後もテンポの動きは両者随分違う。
               こうも違うものか?!天国への道はいろいろだなぁ!・・・・と二つの演
               奏を聴いて少し安心する。