「今年(1998年)の夏は、冷夏になりそうである。(条件付き)」

総括(98.9.13)

    今年の夏を、要素別に振り返ってみると、
    ・オホーツク海高気圧 8月の中頃までほぼ消えることがなかった。このため、北日本、東日本の太平洋側を中心に時折低温傾向となった。
    ・太平洋高気圧 主にフィリピン、南西諸島、華南方面への張り出しが中心で、日本付近全体を覆うことは少なかった。本州南部は覆われることが多く、猛暑となった。
    ・前線帯 7月上旬は華北〜日本海〜北日本、その他は華中〜朝鮮半島〜本州中部に停滞することが多く、この一帯で水害が多発した。8月終わりになると西の方から次第に南下してきた。
    ・台風 たいへん少なかった。
    ・ジェット気流(偏西風) 蛇行することが多く、特に日本の東海上で気圧の谷となりやすく、その結果オホーツク海高気圧が留まりやすかった。

    以上の点を踏まえてまとめてみる。
    太平洋高気圧は弱いことはなかったが、オホーツク海高気圧が例年より強く、その間の日本付近は低圧帯になりやすかった。
    北冷西暑パターンと言えなくもないが、本州の一部では高温傾向でも日照不足とやや変則的である。

    なお、9月に入ってから前線帯は東進・南下し、日本付近は高圧帯に入りやすくなっている。昨年の暮れから日本付近は冬の太平洋側の大雪・多雨といい、春の日照不足といい前線帯になり勝ちであったが、その反動と言えようか。

経過13(98.9.4) 「変わった夏」の終わり

    台風4号は、秋雨前線を刺激し、東日本・北日本に記録的な降雨をもたらした。
    東海上の太平洋高気圧から吹き出す東寄りの風と、偏西風との押し合いにより進路を阻まれゆっくりした動きだったが、偏西風の方が卓越するようになり東の方へ動き始めた。
    その後大陸からやや涼しい乾いた気団が入り、天気は安定してきている。
    夏が完全に終わったとは言えないが、1つの季節の変わり目を迎えたようである。

経過12(98.8.26) 台風4号

    昨日発生した台風4号は次第に発達し、ようやく今夏初の本格的な台風となった。
    夏の台風らしく、日本の南海上でゆっくりした動きである。
    さて、この台風が日本へ接近する可能性も報道されているが、もし来襲した場合の想定をしよう。
    概ね台風は上空の流れに流されていくのであるが、台風自身も周辺の環境を変えながら進行していく。
    大量の熱エネルギーを持っているため、通過後は暖かい気流が残りやすいが、北方の寒気を引きずりこむこともある。
    秋雨?前線が日本付近にあるが、これが台風の接近でどういう活動をするか、また通過後にどのような形になるかが今後しばらくのポイントとなろう。

経過11(98.8.21) 初秋?

    2,3日前から前線帯が弱まり、晴天が戻っている。
    ただし以前の蒸し暑さはない。
    朝晩は涼しく、秋の虫の声も聞こえ、初秋を感じさせる。
    大陸からのやや涼しい、乾いた高気圧が日本付近へ近づいているためである。
    この高気圧が暖まり、太平洋高気圧化すると猛暑も考えられるが・・・

経過10(98.8.14) 今までにない季節

    8月になってから、太平洋高気圧が西日本を覆い、オホーツク海高気圧が北日本を覆い、その間の北陸地方を中心に前線が活動するという型が続いている。
    気象庁は北陸・東北地方の梅雨明けの特定を行わないという異例の発表をした。
    依然として大雨は各地で相次ぎ、その水害地帯は朝鮮半島・華中方面へと繋がっている。
    南海上を見ると、まともな台風は発生せず、南シナ海や台湾付近で小さいものができているだけである。
    春の異常高温と併せ、このような大気の振る舞いは記録に残っている中ではなかったことではないか。

経過9(98.8.7) 盛夏?

    梅雨明け後、やや雲の多い天気だったが、3日からようやく真夏らしい天気となってきた。
    ちょうど1か月前と似たような気圧配置で、太平洋高気圧は西日本を中心に覆ってきている。
    ただ、前線の活動は活発で、朝鮮半島・北陸方面などで大雨が相次いでいる。
    前線に沿った西からの流れが顕著で、7月中旬以降では最も梅雨前線らしくなっている。
    相変わらずオホーツク海高気圧も存在している。
    太平洋高気圧が弱まってくると、再び前線が南下してきそうだが・・・

経過8(98.7.31) 梅雨明け

    日本付近の大気不安定な状態も、やや弱まってきて31日に中国地方の梅雨明け発表となった。
    梅雨前線が北上してでなく、気圧の谷が弱まっての梅雨明けである。
    オホーツク海高気圧は依然として存在している。
    華中方面は梅雨期のような前線帯となっている。
    ジェット気流が弱いため、前線が日本付近へ延びてこないが、梅雨の要素であるオホーツク海高気圧と華中の前線帯があるため、これからの天候に不安を残している。

経過7(98.7.25) みえないちから

    東方の太平洋高気圧が、オホーツク海方面に張り出す形は変わっていない。
    日本付近は低圧帯気味でくもりや雨の天気勝ちだが、南東からの気流が入ってきて気温は低くない。
    さて、7月中旬すぎから、天気予報が悪い方に外れる傾向がみられる。
    週間予報等で今週末に梅雨明けという解説もあったが、これも先送りになった。
    一方、経過2でもあったが、6月末と7月初めは良い方に外れる傾向だった。
    気象庁の数値予報モデルで想定されていないか、或いは海上のデータで把握しきれていない何らかの「ちから」があるのだろう。

経過6(98.7.21) 太平洋高気圧は・・・

    数日前から前線は南西諸島方面まで南下し、梅雨期前半のような気圧配置である。
    東海上の太平洋高気圧は弱いわけではないが、フィリピン方面とオホーツク海方面へと張り出し、その間の日本では低圧帯になりやすくなっている。
    この形が続けば、日本付近は日照不足の傾向が顕著になりそうである。
    もう7月の下旬を迎え、変動が少なくなってくる時期だが、これがこの夏の最終形となるのであろうか。

経過5(98.7.16) 北方の高気圧

    10日頃からオホーツク海高気圧が強まり、大陸方面で北上していた前線帯が14日頃から華中方面に南下、日本付近の前線と繋がり、ここにきて梅雨らしくなってきた。
    10日頃からは気温は平年並みかやや低めに推移しているようである。
    見かけ上、前線帯は華中方面へ繋がっているが、雲は華中から日本付近へとは流れていない。
    これが帯に沿って次々に日本に来るようだと、本格的な梅雨型になるが・・・

経過4(98.7.11) 梅雨前線の南下

    1週間続いた真夏の天気も、梅雨前線が南下することで中断し、11日は岡山県北にも大雨洪水警報がでるなど前線が活発化している。
    台湾付近の台風崩れの熱帯性低気圧はあまり活発でないためか、周辺の太平洋高気圧は弱体化する一方である。
    普通の梅雨ならば、華南方面から水蒸気が補給されてくるが、現在のところ水蒸気の流れは、華北方面からとやや変則的である。
    これからの前線の流れに注目したい。

経過3(98.7.7) 台風は・・・

    7月3日頃から、西日本では、南方の高気圧に覆われ真夏の天気となっている。
    日本の南海上から、東シナ海にかけて高気圧が強く、ほとんど動いていない。
    ここにきて、北緯20°付近に台風のたまごが幾つかできつつある。
    このあたりで対流活動が活発になると、その北で高気圧が強化されやすく、さらに日本付近は高気圧に覆われてくる。
    しかしオホーツク海高気圧も強まる気配があり、今後の経過を見守りたい。

経過2(98.7.1) 日本付近の高気圧

    6月末以降、梅雨前線の雲は華中方面から流れてくるが、日本付近にくるにつれて弱まっているようにみえる。
    天気予報も、雨の予報を出しながら降らないなど外し気味だ。
    日本付近、特に西日本上空には高気圧が潜んでいるのではないか。
    この位置で高気圧が強化されると、1994年のような猛暑に見舞われる。
    ただ、まだ季節が変わっている途中ならば、もっと北の方に高気圧が形成され、冷夏気味になることも考えられる。

経過1(98.6.27) ジェット気流

    6月になっての500hPa面の流れ(ジェット気流)をみると、例年のように順調に弱まってきているようである。
    そのためか、6月末には前線が日本海まで北上し、太平洋高気圧が本州南岸まで覆ってきている。
    ただ、太平洋高気圧は南の方(フィリピン方面)でも強く、相変わらず台風は発生していない。
    太平洋高気圧が日本付近に軸をおくのか、フィリピンの東海上に軸をおくのか、これによって猛暑か冷夏か分かれてくるのではないか。

 

理由1 ジェット気流(偏西風)の動き

    エル・ニーニョ時には、上空のジェット気流(偏西風)が強まる傾向があるようである。
    そして、蛇行が少なくなり、冬には寒気の南下が少なくて暖冬、夏には太平洋高気圧が居座りにくくなり冷夏になりやすくなる。
    この冬(1997年〜1998年)は、このパターンとなり特に亜熱帯ジェット気流が強く、寒気の南下が抑えられ暖冬となったようである。

理由2 日本付近の海面水温

    昨年末から、三陸沖からオホーツク海にかけては低温、日本の南海上は高温状態となっている。
    特に、親潮海域での低温とこの冬(1997年〜1998年)の流氷が多かったことから、オホーツク海高気圧が発達し、北日本・東日本を中心に冷気が流れるパターンになりやすいと考えられる。

理由3 この春の異常高温

    冬も暖冬であったが、その後の高温傾向の方がさらに顕著である。
    このことは、日本付近にほとんど寒気団が南下してこなかったためとみる。
    ジェット気流が強いことと関係してくるが、ジェット気流の蛇行がないことで北極圏内に寒気が蓄積されているのかもしれない。
    (蛇行することで寒気と暖気がまざりあい、お互いが弱まるのである。)
    この寒気が時折南下してくることが考えられる。

 

兆候1 4月の下旬から6月中旬まであまり気温が上昇していない

    全国的に4月には30℃を超える地点が目立ち、5月もその傾向が続いたが、6月になって気温は平年並になってきている。
    単純な比較は難しいが、4月末から気温の上昇傾向は弱まっているようである。
    この気温の上がり具合が続くと、7月8月になると平年をかなり下回ることになる。

兆候2 今年になって台風が1個も発生していない(6月中旬現在)

    台風は、周辺の高気圧を強める効果があるとされているが、その台風が存在しないため、太平洋高気圧が日本付近まで覆うほどは強くならない。
    また、太平洋高気圧が、普通台風が発生しているところに居座っているとみることもできる。
    このまま台風の発生が少なかったり、弱い台風しかできないようだと、太平洋高気圧は日本付近で強まることはなく、晴天が期待できない。

 

冷夏を打破する条件1 台風の発生

    先もあったように、台風が太平洋高気圧を強める効果に期待する。
    エル・ニーニョが5月時点で終息に向かっているとのことだが、この影響で西部太平洋(フィリピンの東海上)での対流活動が活発になり、台風が発生してくる可能性がある。
    しかし1個や2個ではあまり効果がないかもしれないし、冷夏でも台風は上陸することがある。

冷夏を打破する条件2 ジェット気流の弱化

    エル・ニーニョの終息に伴い、ジェット気流も普通になってくるかもしれない。
    普通のジェット気流の流れならば、太平洋高気圧も日本を覆ってくるようになる。
    しかし、すぐにジェット気流に連動してくるかどうかは不明である。

 

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