Rousseau, View of the Ile Saint-Louis seen from port Saint-Nicolas


月夜を歩く幼い自分
あの頃は
いくら歩いても、どこまでもついてくる月が不思議だった
自分と同じ速さで音もせず、立ち止まれば月も止まる
そんな昔を思い出すとき
今ここで想像する幼い日の私は
本当に私なのか
別の人ではないのか
私は昔の自分を「君」と呼びたくなる
君は今の私を自分だと思うかい?





debussy score


私のことを「私」と呼んでいるのは何だろう
それは指差したこの身体のことではなく
呼んでいるそのもの自体

等身大の自分は急に縮んでゆき
ついには大きさがなくなってしまう
私に形はなくなり
単なる「作用」でしかなくなる

作用には重さがない
境がない
なにもない
目に写るのは作用の残した痕跡のみ

大きさのなくなった私は
同じように大きさのなくなった宇宙と結ばれ
永遠と消滅とを手に入れる

恐れるものはなにもないはず







大きさを失った私は時間を反対に進んで
幼い自分を取り戻す

月夜を歩けば
闇に光が降りそそぐ音が聞こえる
この音は
100年前のパリで
ドビュッシーが聞いた音

作用が等号で結ばれるとき
私は固有名詞を失う






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