平成17年度・支部大会・医療講演会
「リウマチで骨折り損にならない工夫」
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私は、「リウマチで骨折り損にならない工夫」について最初にお話をさせて頂きます。後ほど豊島教授からリウマチについて新しいお薬の話を 中心に最先端の治療のお話をして頂きます。
骨折り損にならない工夫と言うのは、リウマチの方々はどうしても骨が脆くなります。色んな理由がありますが、その為に他の方よりも骨折が多くなるということが言われています。
骨粗鬆症になった方は、どんな風に折れやすいのか、どの位リウマチの方の骨が折れやすいのか、それを防ぐためにはどうしたら良いかと言うようなお話をしたいと思います。
話の順序について
第1、リウマチは骨折しやすいのか・・・(答えはイエスです)
リウマチはどの位骨が脆いのかは、人によって違いますが、どの程度病気になっているか、どのくらい病気の状態が悪いのかによって違います。また体の場所によって違います。
第2、リウマチの薬は骨を脆くしますか・・・(答えはイエスです)
全ての薬ではございませんが、中に骨を脆くしていく薬があると言う事を是非知っておいて頂きたい。
第3、骨を丈夫に出来るかどうか・・・(答えはイエスです)
骨粗鬆症につきまして、近年骨を丈夫にする薬が出てきています。
第4、最後は、それ以外にどんな風に普段気をつけたらよいかです。
これは、骨を強くする事と、転倒しない事と、リウマチをきちっとコントロールする事です。
【リウマチは骨折しやすいか】
・ 骨が脆くなる骨粗鬆症と言うのは、
皆さんご存知のように骨の中のカルシウムが少なくなって骨を起こしやすくなった状態です。
症状として腰が痛いとか、背中が痛いとか、そんな症状がまったく無くても骨粗鬆症と言
う沈黙の疾患と言われて、まったく症状が無いうちに進行して行くという面がございます。
・ リウマチと関係なく年を取るに従って脆くなり、
70歳後半になりますと、女性で病気の無い方でも半数の方は骨粗鬆症の骨になります。
50人の女性のうち75歳を超えますと25人は骨粗鬆症ということになります。
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【正常の骨】 【骨粗鬆症の骨】
・よく出てくる骨の写真ですが、
骨がしっかり詰まっている骨に対して骨粗鬆症の骨は脆くなり大根にスが入ったような
状態と説明すると分りやすいと思います。
・骨粗鬆症の診断基準では、
骨密度が若い女性の平均値70%を切りますと骨粗鬆症と診断されます。
・特にリウマチ患者の場合骨折しやすく、
1950年から74年 にミネソタの病院で、調べた結果ですが、リウマチの無い方に
比べてリウマチの方では股の付け根(大腿骨)の骨折2.5倍、肩の付け根の骨折1.4倍、 手首の骨折前腕の骨が1.4倍、骨盤が2.6倍くらいです。
・豊島教授が以前調べたデータですが、1965年〜92年、鳥取大学の1107人の
リウマチ患者 さんで調べてみました。
(大腿骨骨折1人)(前腕骨が7人)(上腕骨肩が7名)(肘が1人)(カカトが1人)
(足が1人)折れていました。
・リウマチ患者さんに特に問題になるのは、
動かれる頻度が少なくなりますので、リウマチ期間が長くなればなるほど悪くなりますし、
病気の状態が悪ければ悪いほど骨粗鬆症になりやすい事が知られています。
・骨折の危険が高いので、
それに対する対応をしなければいけません。
どうしても関節の痛みがありますので転倒する頻度が高くなり、それが骨折を起こしやす
くなる原因 でございます。
・骨が脆くなって折れやすい所は、
脊椎の骨折・手首の骨折・肩の骨折・足の付け根の骨折です。
【原因として】
「背骨の骨折は、漬物石を持ち上げた時など」
「手首の骨折は、手を付いた時など」
「肩の骨折は、肩から落ちた場合など」
「股の付け根の骨折、大腿骨頚部骨折は、骨折り損になる折りたくない骨です」
「この骨が折れますと、手術をしなければなりません」
「どんな手術をするか・人工股関節手術」
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【薬によって骨を脆くする】
・実は骨を脆くする薬がございます。
例えば副腎質ホルモン剤(プレドニンゾロン、リンデロン)などであります。
リウマチの悪化を 防ぐには必要な薬ですが、やはり飲み続けますと骨粗鬆症が
薬の為に起こって来ることがございます。
・5mgというのが1つの基準で、
短期間であれば余り影響は無いと言われていますが、5mgでも3ヶ月〜1年以上飲み
続けた場合には、骨が減って骨折が起きやすいことが知られています。
・最近、ステロイドを飲む場合の治療ガイドラインが示されて、
ステロイド5mg以上飲む場合、あるいは5mgに達してなくても3ヶ月以上飲む場合は、
それに対する副作用を抑えるための薬を飲む方がよいと言われています。
・メソトレキサート(リウマトレックス)も骨を脆くするのではと言われていますが、
これまでの報告では骨粗鬆症とか骨折の危険因子はないと言うことが分っています。
・ステロイドにしても、メソトレキサートにしても、
リウマチ患者の場合骨が脆くなりたくないから パスと言う訳にはいかなく、
必要に応じて治療を行います。この辺の事も是非ご理解頂きたいと思います。
【骨を丈夫に出来るのか】
・骨粗鬆症の治療薬は、
骨からカルシウムが出て行くのを抑える薬です。
ビスホスホネート(ホサマック・アクトネル・ベネット・ホナロン)といった薬で、
朝起きた時に水だけで飲んで30分間寝てはいけませんよ、と言う薬です。
・他にサームと言う薬は、
女性ホルモンの一種で最近出た薬です。
カルシトニンは、「カルシウム注射」と言われている事がある筋肉注射になります。
・ビタミンDは、腸からカルシウムを取り込むのを助ける働きがあります。
骨を活性化させる働きのあるのは、ビタミンKと言った薬が主に骨が脆くなって骨折が
起こりやすい方々にお出ししている薬です。
・このような薬は本当に効果があるかについて、
骨の密度から言いますと、腰の骨量を8、8%骨折しやすい股の付け根の骨量を5.9%
も増やすという事が判明しています。
・この程度と思われるかも知れませんが、
普通の方でも毎年1%〜2%閉経後に骨が減って行きます。
したがいまして画期的なお薬として既にお飲みになっている方も多いと思います。
・骨が増えると本当に骨折が予防できるか、これもイエスです。
例えば元々骨が折れた人を集めますと、約半分に骨折の発生を減らせます。
・よく聞かれるのが、
こういう薬を飲んだ場合、いつまで飲んだらよいかと言う患者さんや、
もう先生いい加減に止めてもらえませんか、と言う声もあります。
リウマチのお薬もそうですし、こういった骨粗鬆症の薬も、なかなか止めると言う時期
が難しく長い期間になります。
・良くなってからも自己判断で止めると言うのは危険でこざいます。
普段気を付けなければいけない事
・骨折を半分に減らすことは、
薬を出す医療サイドの決定になりますが、皆様方がどういうことに気をつければ骨が
折れないのか、今日の1番大事なところです。
・骨折を予防する為には、
第1はリウマチのコントロールです。
つまりリウマチが悪ければ悪いほど骨もどんどん悪くなって行きます。
・関節機能維持のリハビリテーションが大切で、
痛いから動かれないのではなく、家の中ばかりに居ないで適切な運動をする。
自分の出来る範囲で動いて頂くことが関節機能を維持し、骨を丈夫にするポイントです。
・それから転倒しない事です。
例えば股の付け根の骨折を調べてみますと92%は転倒です。
手首の骨折も96%が転倒する事によって起こります。
・足を引きずる麻痺のある方、
転びやすい病気の中にリウマチも含まれています。薬では、消炎鎮痛剤、
睡眠薬も転びやすい薬です。
・気をつけて頂きたいことは、
幾つかの病院で処方される薬が重なっていないか気をつけて頂きたい。
私たち医師側が症状をお聞きして、診断をして決まった量を出すのが原則です。
【転倒を防ぐには】
室内の床の電気コードなどを整理する。
和服やロングドレスを避けるようにする。
雨の日や雪の日に外出をしない、などが大切です。
絨毯・マットのヘリ・段差が多い・滑りやすい廊下や階段・浴室・
トイレに手すりが無い・足元が暗い・寝室の中と外の温度差が転倒の原因となります。
手すりを付ける、足元を明るくする、温度を上げる。
天気の良い日には、できるだけ外に出て日光浴をする。
履きやすい運動靴などを選び、歩きやすい工夫をすることにより運動量が増え骨粗鬆症の
予防につながります。
本日は、リウマチの骨粗鬆症とはどんな病気が、どんな風に骨が脆くなって行くのか、
骨が折れやすい状態を少しでも防ぐにはどんな事をしたら良いか
と言うことをお話させて頂きました。
是非皆様方の参考になれば幸いでございます。
ご清聴ありがとうございました。
平成17年5月22日 萩野 浩