演題:「リウマチと脊髄の病気」
講師:鳥取県中部医師会立三朝温泉病院
院長 森尾 泰夫
医学博士・専門分野
整形外科全般・脊椎・脊骨随・関節リウマチ
本日は、「リウマチと脊椎の病気」についての話をさせていただきます。 |
(下の映像は三朝温泉病院の周辺の風景て゜す)
![]() 国宝・三徳山投堂 |
![]() 三朝川の辺に連立する三朝温泉 |
第1・リウマチで起こる頚椎の病気とは
リウマチは関節の病気ですが、時に神経を患うことがあります。
・症状として頚椎「頚・後頭部」が痛む場合や、頚椎が不安定でグラグラして神経が痛む場合があります
次に指の腱の滑膜が炎症で腫れてきて、
・手首の神経(正中神経)が圧迫され手がしびれる、手根管症候群でも神経が障害されます。
まれに血管炎を伴う人には、
・末梢神経の血管が血流障害がおこり、虚血性の神経障害で痛んでくる場合があります。
リウマチ患者さんは薬によるものを含めて、
・関節が不自由な為に余り動けないことから(一般の方より行動範囲が狭いために)
骨粗鬆症が起こりやすく、背骨・頚椎に骨折が起こる場合があります。
第2・リウマチで起きる脊椎炎とは
リウマチ患者さんは、多発性に色々な関節が痛むので治療が困難な場合が多く、病状が進行し
関節が壊れ病変が背骨や首に起こってきます。
リウマチ患者さんで、頚椎が痛む頻度は約3割です。
上位頚椎では
骨と骨とは靭帯でつながっていますが、靭帯がゆるんで亜脱臼が起きます。
環軸椎の前方亜脱臼・環軸椎垂直亜脱臼は、リウマチ患者さんの25%からひどくなると80%くに起こる
ことがあります。
研究発表では
少ない関節だけが痛む軽度の患者では、首の病変は余り見られませんが、多くの関節が傷む多関節型では
約半数の方に、非常に関節が傷んでいる「ムチランス型」の人は9割近くに頚椎の亜脱臼という病変が
見られます。
男性に多いリウマチ因子が陽性の方で、ステロイド剤を服用された方に、頚椎の病変が進展したと言う
ことが分かっています。
第3・リウマチ性頚椎炎の症状として
1.関節症状上位頚椎:後頭,頚部痛,脱臼感
下位頚椎:肩こり,肩甲,後頭頚部痛,運動制限
2.神経根症状上位頚椎:後頭部への解散痛
下位頚椎:肩,上肢への放散痛,知覚純麻,脱力
3.中核神経症状上位頚髄:呼吸困難,顔面の知覚異常
下位頚髄:四肢麻痺,体幹下肢の知覚純麻,手指運動障害,膀胱機能障害
延髄:構音障害,意識障害,嚥下障害
3.中核神経症状上位頚髄:呼吸困難,顔面の知覚異常
下位頚髄:四肢麻痺,体幹下肢の知覚純麻,手指運動障害,膀胱機能障害
4.椎骨動脈循環不全症状めまい,耳鳴り,意識障害,一過性の暗黒
第4・リウマチ性頚椎炎の治療
1.リウマチの薬物療法が基本
2..保存療法:頚椎カラーなどての安静
3.手術療法:除圧/固定
【 治療の目標 】
1.不可逆的神経障害を防ぐ
2.突然死を防ぐ
3.不要な外科的治療を回避する
【上記・治療の目標の解説 】
1.脊椎や神経が元に返らないような、神経障害にならないようにする。
2.延髄が傷んで呼吸がしにくかったりするので、突然死を防ぐこと。
3.必要のない手術をしないように、自分で首を安全な状態に保つことが治療の目標です。
第5・実際にどのような治療をするか
一番大事なことは「薬物治療法」を正しくする事、良い薬に巡り合って
「リウマチをコントロール」することが治療の基本です。
痛みが出て、首がグラグラする場合は、カラーを装着して安定させる。
カラー装着しても痛みが取れ難い場合がありますが、なるべく進行させないように注意して生活
することが大切です。
●脊髄の障害が進行してグラグして危険な状態になった場合、
●耐えがたい痛みがある場合、
●神経障害が進んだ場合、
手足がしびれる脊骨髄の圧迫を取るために治療として固定術あるいは除圧術を選択します。
第6・頚椎手術の症例
71歳の女性の場合・薬物治療として・メソトレキサート・ブシラミン・ブレドニンで治療、
平成13年に全身の倦怠感と結核を併発し、胸の前がシビレ・環軸推1番・2番の頚椎の亜脱臼があり、
非常に危険な状態でしたが、1番と2番の頚椎を固定する手術をされ痛みがほとんど取れました。
64歳の女性の場合・4番・5番の頚椎で脊髄が圧迫され、2番目の軸椎が頭蓋内へ移動している
ことで脊髄に2ヵ所の圧迫により神経の障害が起きました。
この方の場合は、後頭骨から頚椎に金属のロットとワイヤーで固定を行い、症状が改善されました。
第7・手術の成果と問題点
麻酔の問題と・感染症
リウマチ患者は顎関節がいたむために「アゴ」が小さく口が開け難い為、全身麻酔の時に
気管内挿管がしにくく麻酔が難しい。
ステロイド剤を飲んでいる為に感染症の確立が高くなる場合がある。
静脈血栓について
手術前後は足を余り動かせない為、「足に静脈血栓」ができ「血栓が肺に入ると」
「肺血栓症といって急に胸が苦しくなり呼吸が困難になる場合があります」
対処方法として
床ずれ・心筋梗塞などの合併症を伴うので、最近では強力な固定をして手術後は早く動いて、
合併症の危険を防ぐようにする。
金属を長く体の中に入れますので、違った問題点も起きることもありますが金属材料を使ってでも
早く普通の生活に戻れるような手術を行っています。
治療成果として
症状によって異なりますが、神経障害は3割〜100%改善します。
手術によって痛みは9割程度楽になると期待されます。
合併症の危険性もあるのですが、痛みが楽になることや、神経障害も改善することで、
手術を試み てよいと最近では考えられています。
問題点として
手術前の障害が重い患者や、元に戻らない病変か起こっている患者では、治療の成果が思わ
しくない方もおられます。
第8・合併症による骨粗鬆症について
リウマチの患者さんは、ステロイド剤を服用している場合が多く、全身的に骨密度か
少ないために、転倒により手首が折れたり、大腿骨の足の付け根が折れたり、
肩が折れたりします。
重い物を持っただけでも背骨・腰のあたりが骨折します。原因として、患者さんは痛みが
あるために、関節を動かせないので関節のまわりの骨が吸収(萎縮)するといわれています。
【骨粗鬆症の予防と・薬の活用】
リウマチ患者さんは、ステロイド剤を服用している場合が多く、
・以前は悪いことばかり言われていましたが、ステロイドを使わざるを得ない場合、
・サプリメントとして、カルシュウム剤(フォサマック錠・他類似薬)ビタミンD剤
等の予防的な薬を使った方が良いと最近では言われています。
(薬剤の処方については医師に相談して下さい)
短期間ステロイド剤の服用の患者には骨折の危険因子を避けるために、
「タバコ・アルコールの多量摂取止める事・適度な運動をする」
閉経後の女性の場合、骨粗鬆症予防にホルモン治療を行う場合がありますが、
色々な副作用がありますので婦人科の医師に相談して使う必要があります。
閉めの言葉
脊椎・頚椎・神経障害の病変は、リウマチリの進行から起きる場合があります。
首の痛みが生じたり、手足のシビレが生じた場合、速やかに医師の診察を受けて、
適切な治療を選択してください。
骨密度については、定期的に検査し骨密度が低い場合薬物治療を取り入れ、
適度な運動や、日光浴、日常生活上で転倒など避けるように注意して,
日々明るく前向きに、ご自身の病状等を把握して医師との信頼関係の中で
正しい治療により病状の改善に努めてください.
平成16年5月15日 森尾 泰夫
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