平成17年度・支部大会・医療講演会
「リウマチ診療の現状と近未来」
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皆様方、本日はおいで頂きまして誠にありがとうございます。
今日は「リウマチ診療の現状と近未来」と言うお話をします。
端的に申し上げますと日本のリウマチ医療は北米、特に米国
そして西欧に比べてちょっと遅れています。
{リウマチ医療の遅れている原因)
遅れている原因の1つは医療サイドにあります。
・ これはシステム的に米国やヨーロッパの先進諸国はリウマチしか診ないと言う、
リウマチ専門の内科のドクターがおられます。
・日本には残念ながらこのシステムやそうした医者がまだ少ないということが1つです。
もう1つは薬の認可の問題です。
・新薬は概ね海外で開発されていますが、日本に導入に際して過剰に安全性に配慮する
ため、導入が遅れがちになることです。
・患者側からは非常に焦られて、例えば生物学的製剤では、
東京や、関西の患者さんの中には米国に行かれて自費で点滴を受けられた方や、
個人輸入された患者さんが何人かいると聞いております。
・ 例外的にアラバは日本でほとんど治験を行わずに入ってまいりました。
・ そして、米国ではメソトレキサート(リウマトレックス)で肺腺維症が起こった患者
さんにも使えるアラバは肺腺維症を起こす確率が低いという売り込みで入ってきました。
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・実際、米国の「Arthritis& Rheumatism」という関節炎とリウマチに
関する世界的な雑誌にメソトレキサート(リウマトレックス)とアラバ
を比べて、肺腺維症を起こす確率はアラバが圧倒的に低かったと報告されています。
・日本はそのまま受け入れて問題が起きました。従いまして厚生労働省を批判する訳
には行かない面もご理解頂きたいと思います。
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(関節リウマチの発生と症状)
関節リウマチの発生と症状の関係を説明します。
| ・皆様ご存知だと思いますが、リウマチは先ず免疫異常 が起こってまいります。 ・免疫異常と言うのは、免疫が亢進した場合と低下した 場合がございます。 ・低下すればあらゆるウイルスや、黴菌が体に入り病気 になるという事でお分かりになると思います。 ・亢進した場合、リウマチがその1つで、今流行の花粉 症もその1つでございます。 |
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免疫異常はなぜ起こるかは次第に明らかになっております。
・免疫異常には遺伝的因子と環境因子があります。一卵性双生児で一人が発症しますと、
もう一人も発症しやすいと言うのは世界的に認められておりますので、遺伝的因子が
あるのは確実でございます。
もう1つ大きな因子が環境因子でございます。
・環境因子の詳細は残念ながらまだ分かっておりません。
・今の所少しずつ解明されていますのは、ウイルス感染ではないかと言うことです。
・ウイルスが感染すると特殊のタンパク質が体の中に出来ます。
・そして、そのタンパク質に対して自分自身多少異質なものだと判断して、それに対
して防御反応が働いて炎症が起こると言われています。
炎症が起こって始めて関節のこわばりや痛みが出てまいります。
・それが長く続きますと、関節破壊に至って歩けなくなったり、物が取りにくかったり、
顔が洗いにくかったりと言うような機能症状が出てくるわけでございます。
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(リウマチが起こる経過について)
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リウマチの起こる経過の順番は、 |
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・ところが、炎症が起こってから大体5年以内に関節は破壊され、それ以後の破壊の
スピード は綬除であることが分かってきました。
・昔はリウマチの診断について、リウマチの薬はいずれも副作用が強い為に診断は確実でなく
てはならないと言う事で、関節の症状が揃い、血液検査で、CRP、血沈やリウマチ因子が
陽性になった場合と、レントゲンで多少骨が壊れてきたと言う時にようやく診断をつけて
いました。
・しかし、これでは遅いわけで、最近出来るだけ早い時期に診断して、
関節破壊を防ごうという考えになっています。
最近、CRPやリウマチ因子とは別に新たな検査がリウマチの早期の
診断に有用であることが分かってきました。
(治療方法の変化について)
| 過去にはピラミッド療法と言われるように効果 も副作用も弱い、消炎鎮痛剤などを最初に使って、 これで抑えきれない場合には、抗リウマチ剤を使い、 さらには骨粗鬆症を起こす可能性の高い副腎質ホルモン や抗癌剤などを試験的に使いましょう、 弱い方から強い薬へ変えて行く治療法が 5年〜10年前まで一般的でした。 |
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・ 現在では、炎症と関節破壊はほぼ同時期に発生することが分かってきましたので、炎症が
こった時点で出来るだけ早く診断をし、リウマトレックスやリマチル、アザルフィジンな
どの有効な抗リウマチ剤を使うと言う考えが一般的となっています。
こうした抗リウマチ剤でも効果が少ない場合には、生物学的製剤の使用を考慮します。
・生物学的製剤は、炎症がどうして起こるかが分かってきたから、作ることの出来た薬です。
免疫異常が起こると自分の中の物質を異常なものと判断して、反応が起こります。
反応した細胞が炎症を引き起こすタンパク質を作って出します。
・このタンパク質が別の細胞に作用して別のタンパク質を作り炎症が発生し慢性化します
・炎症の引き金となる最初に出たタンパク質がTNFα(ティエヌエフアルファ)です。
・日本ではこのTNFαを標的にしてその作用を抑制する薬剤としてレミケード
抗TNFα抗体)が昨年、そして今年の春にエンブレルが認可されました。
・この他、米国と西欧では同じく炎症の発生に深く関っているIL(インターロイキン)
1や IL6と言うタンパク質を標的とした製剤も使われています。
これは2年〜3年後には日本でも使えるようになると思います。
・この生物学的製剤は分子を標的にしておりますので、速やかに関節炎を抑えて
症状を軽くすると言う効果がございます。
しかし、人間は千差万別でこの薬にも問題と限界がございます。
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(生物学的製剤の問題点と限界)
・当然ですが、生物学的製剤も適応が限られています。
・リウマトレックスを週に6mg以上を3ヶ月使っても治り難い患者さんで、
リウマトレックスと併用して使ってくださいという指針が出ております。
・レミケードはヒト以外のタンパク質を若干含んでいるため、時にレミケード
に対する抗体ができてその効果を減らします。
・リウマトレックスはその抗体が出来るのを防止していますので、
併用を義務付けているわけです。
・もう一つの生物学的製剤のエンブレルは、
・リウマトレックスの併用を義務 付けられていません。
・これらの生物学的製剤は、これまでの抗リュウマチ剤と違って、
炎症の元であるTNFαを抗体の中からほぼ除いてしまいますので、
90〜95%の方に効果があると言われています。
・ TNFαは炎症の場以外に、正常でも存在するもので、結核菌や水虫
など の白癬菌体の中で増殖するのを防ぐ良い役目も果たしています。
・ 生物学的製剤を投与すると体全体でTNFαが無くなりますので、副作用
として 結核や白癬菌感染症を元々持っている方では悪化する可能性があります。
もう一つの問題点は、長期使用による副作用です。
・米国でも投与後5年の結果は分かっていますが、10年、20年投与した時の
副作用が分かっていません。とくに恐れますのは血液系のガンを恐れています。
・ ただ現時点ではその発生は無いと言われております。
・そして残念ながら既に破壊された関節を修復する効果はありません。
経済的な面で大きな問題があります。
・生物学的製剤は高価ですので、身体障害者の2級以上であれば公費によって補助
されますが、3級以下では自己負担がレミケードで1ヶ月5〜7万円となります。
・維持療法では2ヶ月に1回の投与となりますので、費用は半減しますが、経済的
負担は小さいものでは有りません。
リウマチの治療を纏めてみますと、
@早い時期に診断し、Aリウマトレックスやリマチル、アザルフィジンなどを使い、
Bこれらの薬で効果が無ければ生物学的製剤を使用するのが、現時点での最良の
治療法ではないかと考えています。
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( 新たな薬について)
新たな薬が出てまいります。
・日本ワイスがエンブレルをこの春に認可を受けて発売しております。
・生物学的製剤は日本でレミケードとエンブレルと2種類になりました。
・もう1つは免疫抑制剤リウマトレックス、アラバ以外にも近々タクロリムス、
商品名プログラフと言う薬が出る予定になっております。
・これらの薬が出てまいりまして、日本でリウマチに効く薬は、痛み止めを除いて、
抗リウマチ剤、生物学的製剤も含めて現在15.6種類になるかと思います。
金製剤1つであった1970年代に比べれば格段に進歩したと思います。
良い薬が増える事によって本当にリウマチ患者さんの治療の改善につな
がることを願っております。

ただ、沢山の種類の薬が出たため患者さんも良く分からないですし、
医師も勉強しないと分からないため、医療現場で混乱の起こる可能性を危惧しております。
リウマチ専門医は新しい情報を的確に把握する責務があります。
また、患者さん自身も正しい知識をお持ちになる必要があります。
患者さんには日々の症状に一喜一憂せず、自分自身の知識を深めて良い医師を選び、
治療を受けられますよう願っております。