平成20年11月定例会一般質問(平成20年12月12日)

<地域経済の疲弊への対応について>


 我が国は、バブル経済崩壊後の低迷から戦後最長と言われる好況期を得てきました。しかし、この期間を象徴する言葉として「格差」が上げられるように、都市部と地方、大企業と中小零細企業、正規と非正規といった対象において、利益配分での格差が増大してきました。
 本県では景気が回復することなく低迷を続け、県民人口は減少して60万人を割り込みました。県民の所得もこの10年間減少を続けています。まさに、マイナスの部分のみが格差の集積地として鳥取県の今にあるように感じています。私は、この現象に拍車をかけているのは、10年連続して減少を続けている県職員などの本県公務員給与がその要因の一つであると考えています。この結果が民間団体などで単純に連動する方を含め、最低でも2万人、家族を考慮すればその影響は相当数に達すると思います。
 私は今日の厳しい社会情勢の中で、公務員の皆さんを擁護するということではなく、知事と議会に対して行われた今年の人事委員会勧告について粛々と精査したところ、どうしても理論的に理解しがたい部分があったことと、これまで述べてきたような県内経済への負のスパイラルをこのまま増幅させてよいものかと考え、ご指導をいただきながらあえてお尋ねしたいと思います。
 ご承知のように、公務員は労働基本権の一部が剥奪されており、民間企業のように労使交渉によって賃金、労働条件を決定することができません。また、民間企業のように経営内容をもって決定することも困難であることから、その代償措置として人事委員会制度が法的に整備されているところです。しかし、直接の対象とされる1万400人の県職員、教職員、警察職員の生活設計を左右する生活給であるため、その内容の改定に当たっては、第三者のみならず、当事者の皆さんにも一定の理解が得られる理論的な勧告でなければならないと思います。
 戦後復興期、高度経済成長期を通じて近年までの我が国の勤労者の給与システムは、同一価値労働同一賃金をキーワードとし、経済発展とともに同業種間である程度のバランスが保たれ、都市部であれ地方であれ、国民総中流という言葉に集約されるような社会をつくり上げてきたと思います。地方での同一価値労働同一賃金の牽引役を、ある意味では国の人事院勧告、県の人事委員会勧告が果たしていたように思います。つまり、国の人事院が全国の民間調査結果をもとに勧告を行い、都道府県の人事委員会は国の勧告に準拠した勧告を行って、地方での標準給与とされていた県職員の給与の影響をもって民間給与を上昇させる。当時は民間のほうが県職員よりも高い給与でしたから、県職員が上がった分だけ民間はさらに上がるといったスパイラルが生じていました。これによって、全国に通じる同一価値労働同一賃金の考え方が普及定着し、地方経済活性化に一定の役割を果たしてきたものと考えています。
 近年、小泉内閣で急速に進められてきた構造改革、つまり規制緩和、市場原理、競争主義などの拡大に伴い、格差は是正されるものから格差は普通に存在するもの、さらに是正は個人の責任との肯定感が強く政策に反映されるようになりました。したがって、都市と地方間の賃金格差を肯定し、地方公務員にも反映させるよう地域給制度が導入されてきました。簡単な例として、他県の警察官が同じような危険を冒して凶悪犯を逮捕しても、住むところが鳥取県だということだけで、給与が低くても当然という給与制度とされているのです。
 地方自治体の運営、経営を担当する立場から、都市部と地方において企業活動やインフラ整備の状況にとどまらず、給与についても歴然とした格差が出ており、それが当たり前というような今日の風潮についてどう思われるのか、平井知事の素直な感想をお伺いしたいと思います。
 続いて、10月6日に行われた職員の給与に関する報告及び勧告、つまり今年の人事委員会勧告について曽我委員長に次の4点をお伺いします。
 ことしの勧告は、月例給3.2%の引き下げ、ボーナスの0.03月の引き下げ、医師に対する初任給調整手当の引き上げ、職員の勤務時間を7時間45分に15分短縮することなどがその主な内容でした。
 給与についてですが、地方公務員の給与の決定方法として、地方公務員法第14条で社会一般の情勢への適応を求め、その適応範囲として同法第24条第3項において、職員の給与は生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない、と法では要請しています。本県の人事委員会の勧告を見てみると、民間の指標は明記されていますが、国や他県の給与については指標がありません。どのようなものをどのように考慮されたのかお伺いします。
 勤務時間の短縮については、地方公務員法は国及び他の地方公共団体とのみの均衡を要請していますが、資料の中では県内民間のみが示されています。どのように考慮されたのかお伺いします。
 また、職員の給与等に関する報告で、これまで国と異なっていた時間外勤務等に係る勤務1時間当たりの給料の額の計算方法については、所要の変更が必要であるとあえて指摘されていますが、指摘された理由と、どのような変更が必要なのか、具体的な内容をお聞かせください。
 最後に、幾人かの議員の皆さんが危惧されているように、県内経済に与える影響について、並びに都市部と地方の賃金格差について人事委員会で議論されたのかお伺いします。

●知事答弁

 
 私は、基本的なスタンスからいえば、東京とか大阪、名古屋といったような大都市圏、それから、地方部においても同様に同じような生活水準が確保されなければならない。これは恐らく日本人の感性に合うことだろうと思います。これは国によっていろいろな考え方のところがあると思います。地域間の格差を是とする、そういう国民性の国もあれば、我が国の場合はどちらかというと平等意識が非常に強い。恐らく歴史をたどってみれば、律令国家の時代にしても江戸時代にしても、どこでもそれぞれの地域が頑張って地域経営をする。それぞれに同じように田んぼを耕し、同じような生活の水準を享受できた長い歴史の伝統があるものですから、都市中心に成長してきたような、そういうヨーロッパ社会とは違った価値観が日本の場合はあるだろうと思います。そういう意味において、私は地域間格差を是正するというのは一つの基本的なテーマにしなければならない政治命題だと思います。

 現状を言えば、小泉構造改革が本格化してからさまざまな規制緩和が起こり、確かに片方で経済成長がもたらされましたが、地域間における跛行的な成長となりました。ですから、伸びる地域もあれば伸びない地域もあった。鳥取県で言えば平成16年ごろから県民所得の伸びとかいろいろな面で停滞感が見られてきている。給与というよりも県民所得の格差が広がってきているということです。これがそのまま給与水準にも影響するわけで、公務労働とか民間の雇用者、これを問わず、そうした地域間の違いが生まれてきているわけです。それは、できればそうした地域間格差を是正していって、地域内の民間企業の活力も高まり、付加価値が産業界でも創造される、それが給与の格差の縮小につながり、公務労働においても平準化が保たれていくようになるというのが究極の姿だろうと思います。ですから、それを目指す意味で産業政策も県庁としてもやっている面があるだろうと思います。
 これに、公務労働がそれをすべて引っ張るべきだというようなご意見かもしれませんが、今のお話は、かつて経済成長の著しい時代に民間企業がどんどん給料が上がった、公務員のほうも給与がどんどんと上がってきたが、それは民間の水準を追いかけるような形で上がってきた、こういうようなスパイラルがあったではないか。公務労働の給与水準が上がることで、結果として民間の給与水準も全国と同じように保たれるという、そういう役割があったのではないかというご指摘です。
 私は、そういう見方もあるかもしれませんが、ある意味結果論かとも思います。現在の地方公務員の給与制度のあり方としては、私たちは地方公務員法の法律にのっとって、しかも予算、条例は議会で決定するという地方自治の原則にのっとって給与水準というのはセットしなければならないわけです。ですから、地方公務員法の中に書かれている考え方がこの中に投影されてきているのだと思います。地方公務員法の中には確かに職務と責任に応じて給料を支払うのだと、地方公務員法の24条だと思いますが、そういう規定も片方であるのですが、もう1つ、生計費の水準、また国とか他の地方公共団体の給与水準、それから民間の給与水準、それはその地域内という意味ですが、そういうものとの均衡に配慮して給与は決定されなければならない。これも同時に地方公務員法の中で定められているわけです。
 しかるに、議員がご指摘のとおり、私どもというか、県庁職員には、一般職員には団体交渉権は与えられていません。ですから、その担保の措置として人事委員会があり、そこで民間の給与実態も調査し、そのほかの諸般の事情も考慮した上で勧告を年々、知事、そして議会に対して行い、それにのっとった給与改定をしていくという仕組みになっているわけです。
 私は、これはこれで合理性があるのだろうと思います。この給与決定の中に生計費の状況とかあるいは地域における民間企業の状況というのを考慮しなければならないというのも、また法律で定められているのですから、自主性に従ってある程度公務員給料の差が生じるということは、これは制度内在的に予想される事態ではないかと考えています。一般論としては、こうした地域間の格差は解消されるように経済全体の問題も含めて取り組むべきだと考えています。
 

●曽我人事委員会委員長答弁


 我々人事委員会として、職員の方々にとっては非常に酷な勧告をさせていただいていますし、問題点の根源としては地域間の格差の点だったり、職員の方の生活の問題だったり、非常に重要な問題ですので、こういった形でご質問いただくことに関しては当然のことですし、ご協議いただいていること、ご議論いただけることは、ある意味我々としても非常にありがたい、やりがいのある点だと思っています。
 我々人事委員会ですが、当然、労働基本権の一部がない公務員の方々の労働基本権の代替機関としての側面があります。そういう面で公正中立な立場から意見を述べ、勧告をさせていただくというのが職務です。それは、ひいては職員の方々が県職員として県民の方々から理解と指示をいただきながら職務を遂行する、その一助にもなると認識しています。
 私ごとですが、私、ふだん弁護士という仕事をしております。その中で本年、20件以上の倒産案件に関与させていただいています。経済構造の変革だったり、過去の負の部分を清算するという意味、ひいては代表者の方々が日々資金繰りに追われる状況から脱するためにどうしても必要な仕事だろうと認識していますが、他方で当該企業の従業員の方々の職を奪うことになる、ひいては鳥取県の経済を疲弊させる一つの契機になるという側面があります。そういう民間の雇用の実態等も、私としてはふだん直面している点です。また企業の従業員の方々から相談を受け、企業との間での紛争する機会もあります。そういった民間の従業員の観点も我々の中では重視している点ですし、さらには県職員の方々も当然生活があるわけです。そういう両者の側面をどのように勘案して、職員の給与のあり方をどのようにすべきかという点については、我々も非常に頭を痛めている点ですし、伊藤議員を初め、議員の方々が持っておられる悩みと我々も根源的には同じ悩みを持って議論しているところです。
 
 前置きが長くなりましたが、伊藤議員から4点お尋ねがありました。

 まず1点目、本県の人事委員会の勧告を見ると民間の指標は明記されているものの国や他県の給与については指標がない、これについてはどのように考慮したのかという質問でした。
 ご指摘のとおり、今回の人事委員会の勧告においては、公民格差の3.24%という地域民間事業者の従業員と県職員の給与水準の格差はできる限り反映させるべきだということで勧告させていただきました。勧告に当たり、当然、我々は法律に従い勧告をするべき立場にありまして、地方公務員法第24条の生計費、国、他の地方公共団体職員、さらには民間事業所の従業員の給与、その他の事情を考慮すべきで、当人事委員会としてもそれらを考慮した結果です。
 今あげたそれぞれの基準の中で、民間給与水準の部分が非常に色濃く反映されているのではないかというご指摘はそのとおりだろうと思います。国においては、平成18年度より地域ごとの民間給与水準の反映という基本的な考え方に基づいて給与構造改革を実施しています。この趣旨を我々としても非常に考慮しましたし、それに、単に国に追従するという趣旨ではなく、民間水準を最大限考慮することが先ほど申しました人事委員会の機能、ひいては県民の方のご理解を得やすいということで、地域民間給与の実態を重視した勧告をさせていただきました。他の都道府県においても、地域民間給与の実態を重視した勧告をしているところが大多数です。今回の人事委員会の勧告において、民間水準を重視した勧告にした理由は今申し上げたとおりです。
 第2点目、勤務時間の短縮について、地方公務員法は国及び他の地方公共団体とのみの均衡を要請しているが、資料の中では県内民間のみが示されているがどのように考慮したのかと。
 今回の人事委員会の勧告において、勤務時間を15分短縮する勧告をさせていただきました。報告書で述べているように、国は勤務時間を短縮することを勧告しています。また、当県の勧告前に勧告を行った政令指定都市、北九州市や堺市やさいたま市、熊本市等ですが、政令市等の多くが同様に勤務時間の短縮を勧告しています。勤務時間などの勤務条件はご指摘のとおり、地方公務員法で国や他の地方公共団体との均衡を考慮することとされています。こうした事情から今回勧告することが妥当と判断したものです。
 ちなみに、他の都道府県においては、勧告には至らないまでも報告で同様の勤務時間短縮について触れている都道府県が大多数です。なお、県内の民間の状況については、ここ数年、報告において継続して記載しています。こちらは、参考のためには県内の民間の勤務の実態も当然必要だろうと掲載している点です。法律上は先ほど申したとおり、国や他の地方公共団体との均衡を考慮すべきとされていますので、そのとおりにさせていただいた次第です。
 第3点目、これまで国と異なっていた時間外勤務等に係る勤務1時間当たりの給与の額の計算方法について所要の変更が必要であると指摘しているが、その理由及び変更すべき内容について明らかにしてほしいという質問だと思います。
 まず我々の問題意識としては、現行の時間単価の計算における問題点というのがあります。つまり、給与条例上、祝祭日相当分についても給与が支給されているにもかかわらず、時間単価の計算においては年間勤務時間からその祝日等の相当分は除かれています。すなわち分子には祝日相当分の給料は含まれているにもかかわらず分母については含まれていないという理屈上の問題点を認識しています。そういった観点から、祝祭日等を勤務時間に加えることを念頭に置いて、そのような内容の勧告をさせていただいた次第です。
 加えて、今回の勤務時間短縮に伴い、時間外勤務手当の単価が自動的に上昇することになります。我々、給与について削減する勧告をしていることとの方向的な整合性の点、加えて勧告について実施の実現可能性の点等も踏まえ、先ほど申したように、時間単価の算定に際して祝日等を勤務時間に加え、それで時間外単価を上昇させない措置を求めたというのが勧告の趣旨です。
 第4点目、議員の方々の何名かが危惧されているような県内経済に与える影響について、それから都市部と地方の賃金格差について人事委員会で議論されたかどうかについてです。
 議員ご指摘のような意見があることは、我々としても重々承知しています。また、都市部と地方の賃金格差があることについても、先ほど知事もおっしゃったとおり認識していますし、望むべくは格差がないということが理想であると考えています。しかし、地方公務員法に定める給与決定の原則の中には、これらを考慮することは含まれていません。したがっ、勧告に際してこれらを考慮するかどうかについては、勧告の内容の場面の議論としてはしておりません。
 加えて、県職員の給与水準が民間経済または民間企業の従業員の方の給与に与える影響についてですが、どういう因果関係があるかという点について私も考えたのですが、一つは、県職員の給料が上がればその分消費がふえて県内経済が発展するのではないか。また、県の職員の給与が民間企業の従業員の給与の決定に対して考慮されるのではないかと、そういう点を指摘されているのだろうと理解しています。しかし、理論的にそこの因果関係というのが非常にわかりにくい点です。加えて、冒頭述べたとおり、給与水準とは別のところ、つまり県内企業の倒産等が相次ぐ中で、県職員の給与水準が高ければ県内の企業の従業員の給与水準が上がるかというと、そうでない側面もあると思います。そういった観点から、一応我々としては議論し尽くした上でなされた勧告について妥当であろうと認識しています。

<地域経済の疲弊への対応について>bQ


 私も今の答弁を聞きながらいろいろ思うところも新たに生じてきました。知事も理想と現実の間で大変であるという思いは私も理解します。
 主任・主査制度の見直しについては2000年から6年間にわたり、人事委員会が勧告の中で検討を求め、2004年の県議会でも見直し決定が行われ、大きな課題でもありました。その後、労使間の努力により全国に先駆け2005年度内に一定の整理を行い、2006年から改革に着手され、多くの職員で給与の段階的な引き下げが、2008年4月から実施されています。職員の給与等に関する報告では、この点について、全国の他の自治体に比較して大きく進みと、その評価がなされているものの、給与比較、勧告にその反映がされていないように私は思います。全国に先駆けて行われた主任・主査制度の見直しによる影響は、地公法第24条第3項で規定する「その他の事情を考慮して」に該当し、民間給与との比較計算にもおいてもその点を考慮して勧告すべきだったと思いますが、いかがでしょうか。比較方法においては主任・主査制度の廃止を加味し、その上で出てきた公民格差をベースに議論すべきでなかったのでしょうか。曽我委員長にお伺いしたいと思います。
 次に、勤務時間、これは政令市等を参考にということで給与決定は民間だけということでしたが、職員1人当たりの年間時間外が、この議会でも出ましたが170時間と、前年度に比べて20%増加している現状の中で、県の政策として例えばワークシェアリングというものがあれば話は別だろうと思いますが、果たして15分の勤務時間の短縮が今本当に必要なものかと大いに疑問を抱いています。改めて時間短縮の勧告の意図をお伺いしたいと思います。
 それと、時間外単価の計算ですが、今の話を聞いていて、曽我委員長は弁護士さんでありますからこの点には非常に詳しいでしょうから申し上げると、国家公務員というのは労働基準法に該当しないのですね。地方公務員は労働基準法に該当するわけです。ですから、国家公務員の皆さんと地方公務員の皆さんは該当条例が違ってくるのです。その中で、国家公務員の形をつけながら時間短縮したので、時間単価が上がるのでそれを抑え込みたいという答弁だったのですが、それが勧告の趣旨だったようですが、本来地方公務員の時間外手当の基礎となる時間給の考え方は労働基準法施行規則第19条第1項第4号に基づくことになると思います、多分。この点についてどうでしょうか。
 同法でいう所定労働時間の考え方、労働基準局に確認したところでは、時間数の計算に当たり、その事業所が通常勤務しないとしている時間を除くことということでした。よりわかりやすく言えば、祝日や年末年始、盆、創業日等、その会社が通常休みとしている日は所定労働時間から除くということです。なお、職員の給与等に関する条例第16条第2項では、勤務1時間当たりの給与額の算出方法としては、ここで詳しく申し上げませんが、所定労働時間数から祝日や年末年始の平均日数18日分を控除することとなっています。私が労働基準局から聞いた内容と本県の条例に何らそごはないと思います。それでも報告にあるような時間給料の計算方法について、本当に変更が必要なのか、委員長にお伺いします。

●曽我人事委員会委員長答弁
 
 主任・主査制度の廃止に伴う給与減についてですが、2つ要素があります。一つがわたり廃止に伴う給与減の今後減っていく分です。それから平成18年の構造改革に基づく給与減の分です。これらについては、今経過措置として現時点では給与減の効果が生じていないながらも、今後自然に期間がたてば給与が減る。その減った上での金額を職員の給与として民間と比較すべきではないかという議論かと思います。
 まずわたり廃止の影響ですが、効果が生じるまでに本年、平成20年から4年間の期間を要します。また、月当たりのわたり廃止の影響を緩和するための経過の金額としては、経過措置の間9,607円給与が維持されているという状況です。また、平成18年、構造改革の影響についても、金額としては月当たり5,099円上乗せというか維持している計算になります。これらの影響が我々としては決して大きくないという部分がありますし、加えて先ほどの構造改革の点、平成18年からなされていますが、経過措置の影響がなくなるまでどれぐらい期間を要するかというと、遅い方で20年以上経過する場合もある。これが、給与がどんどん上がっていくという時期だったり、そういう社会情勢であれば影響はそんなに大きくないのでしょうが、つまり現状の給与分に追いつくまでその影響が、経過措置が残っていくというものですから、それまでの間、実際に支給されている公民格差を放置するのは望ましくないだろうと考えた次第です。
 2点目、15分の勤務時間短縮が本当に今必要なのかどうかという趣旨の質問でした。
 先ほど申し上げたとおり、勤務時間などの勤務条件については、地方公務員法において国や他の地方公共団体との均衡を考慮することとされています。報告書で述べているように、国は勤務時間を短縮することを勧告し、当県の勧告前に勧告を行った自治体についてもそのような勧告がなされたことについては、先ほど申し上げたとおりです。そういった事情を勘案して、我々としては勧告することが妥当であると判断した次第ですが、追加的な事情として、国においても給与法、勤務時間法についての改正が進んでおり、また報告にとどまる他の都道府県も勤務時間を15分短縮する議論が進んでいて、そういう観点からもこの時期にこのような勧告をした判断について妥当であったと我々は認識し、結果としても妥当なのではないかと認識しています。
 まさに勤務時間短縮の実務上の難しさの点から、伊藤議員が先ほどおっしゃっていた労基法との関係での実務上の難しさ、時間単価の点との整合の観点から、他の都道府県が報告にとどまっているのでしょうが、第3点目はまさにその点に関しての質問だと認識しています。
 つまり、所要の変更として勤務時間1時間当たりの給与の額、抑え込むという表現をされたのですが、それがどうかは別にして、計算方法の変更が必要だという勧告が、労基法上問題が生じるのではないかという質問です。
 この質問については、当人事委員会としても当然議論しました。こちらについては、言われるとおり労働基準監督署が行ってきた指導、解釈においては現行のとおりの計算、つまり18日分については時間単価の計算では分母から差し引くという計算がされているのは、労働基準監督署の指導、解釈のとおりであるのはご指摘のとおりです。
 他方で、勤務時間1時間当たりの単価算出の方法について、例えば全国的には4分の1を超える県が国と同様、それらを分母から控除しないという計算方法をとっていますし、身近なところでは鳥取市が本年4月から国に準じた改正を行っています。つまり勤務時間の単価の計算で、分母の時間から18日という休日等の時間を控除する方法が、直ちに労働基準法違反には当たらないというのが我々人事委員会の認識です。
 ただ、伊藤議員がおっしゃるように、問題点があるのも承知しています。そういう観点から、改正条例に対して議会から意見照会をいただきました。つまり、時間単価の計算では従来どおりとするという意見照会ですが、こちらについては異議なしと回答したのも、その問題点については認識しており、議会でそのような議論がなされるなら、それを尊重すべきなのが人事委員会の立場だろうと認識しているからです。
 
<地域経済の疲弊への対応について>bR


 勤務時間の短縮については、私自身基本的には反対するわけではないのですが、ただ本当にこのたび説明が足らないと思うのです。他の政令都市、先に人勧したところを見て比較して決めたということですね。私はこの20%時間外が増えているという実態を、本当にどこまで人事委員会は認識していたのか。もし認識していたのなら、逆に言うと、時間外の勤務を減らす具体的な示唆をきちんと勧告の中ですべきだったと思うのです。それが1点です。
 次に、主査・主任制度のわたりの廃止の問題ですが、当時このことを主張しておられました今は議長の鉄永議員からも、職員の生活もあることなどで現給保障を行ってよいとの趣旨の発言もなされたように、法的にも不利益変更の代償措置として特別な措置が必要とされています。多分委員長はお分かりだと思います。
 具体的に申し上げると、これまで主任は3級の格付で、民間では係長と同等の範囲として例えば34万円で均衡していたと想定します。このたびの主任・主査制度の見直しによって主任は3級から2級に引き下げ格付となったため、28万円になるところですが、特別措置によって1年目は2万円減額の32万円の支給を受けています。ところが、勧告の資料となる民間との比較の中では、2級となったために民間の同等の職種の28万円と比較されるため、4万円の逆格差が生じています。つまり、このことで見直しの中の影響として逆格差が生じているわけですが、それこそ地公法の24条第3項のその他の事情を考慮すべきことだと私は思います。この逆格差は職員の給与の制度を見直した結果、生じたものです。比較となる給与は年齢等の統計的な処理を行われるわけですが、その過程においてこのことはやはり考慮されるべきものだったと思います。それを考慮しない、単に結果だけで給料が引き下げられたとしたら、それこそ議会も提案し、人事委員会もいわゆる指摘されて、苦渋の決断の中で労使合意をし、職員の給与の制度を全国的にもトップで見直しを進められた職員の皆さんの信頼を失いかねない大きな問題だと思いますが、委員長の所見をお伺いしたいと思います。
 次に、今、時間外計算の問題が出ましたが、私これは本当に問題があると思うのです。執行部はこれまでどおりという時間外計算、要するに勤務時間が減ったから時間単価が上がるのは当然なのです。だから労働基準監督署もそれが普通です、と言っているのです。もし、これを例えば人事委員会のとおりに1時間当たりの単価が計算されて労働基準局に相談されたら、多分是正勧告に入ると思います。それをあえて勧告されたというのが私には納得できない。やはりそこが少し問題かなと思っています。
 後で申し上げますが、人事委員会というのはやはり労働基準監督署の機能を一部擁している機関だと思うのです。そういう重たい機関という認識が本当にあったのかという思いが私にはあります。その点も含めて委員長の所見をお伺いします。 

●曽我人事委員会委員長答弁


 時間外労働が増えていること、また時間外労働というものが、職員の方々のプライベートの生活を圧迫したり、健康状態に影響を与えるようなものであってはならないのは当然のことです。給与の面で非常に厳しい内容、勧告もそうですし、実際もそういうのが続く中で時間外労働が増えていくというのは望ましくないと認識しています。したがって、報告の点で時間外の問題だったり、それからメンタル面に与える影響だったり、休職されたり、心身ともに非常に問題を抱える職員の方があるというのは余り望ましくない、言うなればよくない異常な状況だと思うので、今後時間外労働の是正や勤務条件については、我々人事委員会としても課題として持っていかなければいけないと認識しています。
 しかし、時間外の問題については、片一方で仕事の量、内容についての見直し、無駄の排除等も必要なので、残念ながら人事委員会のほうでできる点には限りがあると思います。それについて、そういう制約がありながら今後の課題としていくことについては申し上げたいと思います。
 時間単価の計算に関して今回人事委員会の勧告でなされた、時間単価を調整すべしという勧告が、人事委員会の公正中立な立場とそぐわないのではないかという点、それから今まで労使合意でなされた経緯等を踏まえて、やはりよくないのではないかというご指摘、ご質問をいただきました。
 その点について、我々としても地公法24条に基づいた勧告をしていく中で、果たして、では経過措置額についてはそのままという形がいいのかというと、我々はそういう判断はしていません。だとすると、経過措置額のみを引き下げるという勧告、こういう考え方もあり得ないわけではないと思うのですが、それこそ今までの労使合意がなされた経緯を裏切ると言うと表現は正しいかどうかわかりませんが、よくないのではないか。つまり給与全体を一律で引き下げつつ経過措置の趣旨を最大限残していくというのが望ましいと判断した次第です。したがって、その経過等についても重々踏まえた上で我々なりにない知恵を絞って出した勧告であるというのが実情ですので、ご理解いただけたらと思っています。 

<地域経済の疲弊への対応について>bS


 議長のお許しを得て、議員の皆さんの机の上にも職員と民間事業所従業員の対応関係という書類を配付させていただきました。この内容についてお尋ねしますが、県の場合、知事部局だけでも定数が3,047人です。その規模を念頭に置いて、職員と民間事業所従業員との対応関係を見られた曽我委員長の感想をお伺いしたいと思いますが、私は少し物足りない点があるのではないかと思っています。

 県の課長級6級の職員が500人以上の企業の課長代理と同等の職務、職責しかないというのは、私はどう見てもおかしいのではないかと思います。そのような視点で比較してみると、この対応関係について全体的にもう少し考えるべきだと思いますが、そういう部分について、これは要するに公民比較の基礎ベースになる大変重要な問題ですので、曽我委員長の所見をお聞かせください。

●曽我人事委員会委員長答弁

 
 この対応関係の表ですが、公民比較を行う場合に役職等と対応させていますが、これは国や他の県で行われているのと同様の基準表を用いています。地域間格差という言葉の逆の裏返しかもしれませんが、企業規模500人以上というと、500人の会社もあれば2万人、10万人の会社もあるわけです、数字の上でいうとですが。大きな上場しているような大企業の課長代理と500人規模の会社の課長代理が同等であるかと言われると、これは私も違うと思います。比較の対象となる対応職種の妥当性について、ご指摘のとおりの問題はないわけではないと思っています。現状、当県の人事委員会の役回りや機能、そして人為的な問題等を踏まえて、どうしても独自の給与表の点だったり、この対応関係の表だったり、一定の制約があるのは間違いありません。しかし、より職員の方々や県民の方々に理解していただける勧告をなすために必要な見直しやその他検討については人事委員会としてすべきでしょうから、これは検証した上で検討していきたいと考えています。

 もう1つ、他方で民間企業との比較において、例えば冒頭で申しました倒産する会社があった場合に、それで民間給与の実態調査において民間の額が下がるかというとそういうわけではないのです。あくまで会社が存続していて、初めてそこでデータが取れるわけですから。
 あと、非正規雇用の方の給与については、民間給与として把握されていない状況にあります。そういう点も踏まえた場合、これはむしろ逆のほうの方向ですね。民間の水準は実態よりもより低いのではないかと、こういう問題意識をお持ちの県民の方々もいらっしゃいます。両者の観点をどのように公正妥当な勧告につなげていくのかというのは、非常に頭の痛い問題です。しかし、理論上、純理的に公正妥当な給与を勧告すべき人事委員会としてできる限りのことはしていきたいと思っていますので、きょうの質問は、それらを踏まえて今後活動していきたいと思っています。
 

<地域経済の疲弊への対応について>bT

 
 
引き続き検討課題にしていただきたいと思います。
 先ほど冒頭で申し上げたように、今日の社会情勢の変化に伴い、人事委員会勧告で引き上げたり引き下げられたりということは、私は当然だろうと思います。しかし、その勧告の経過については、やはり理論的に職員の皆さんにも理解できる、そんな内容が必要だろうと思います。私の所感としては、先ほども言いましたように労働基準監督署の機能を一部有する人事委員会のことしの勧告については、全般的に慎重さに欠け、配慮が足りないという印象を受けました。何か無理やり県職員の給与水準を下げたい、時間外の人件費を、労働基準法を逸脱してでも削減したいという恣意的なものが感じられました。人事委員会は本当に勧告の内容をもう一度精査される必要があると思いますけが、曽我委員長の意見をお伺いします。
 それと、ある建設業者の方が、最近公務員の皆さんが家を建てたり改修したりされる方がめっきり減り、本当に地域の経済に与える影響は大変ですよと、私に話されました。確かに家を建てたりするということは、大工さん、左官屋さん、畳屋さん、電気屋さんとか工務店、それぞれ地域の経済に直結したものばかりです。その影響は本当に大きなものがあると思っています。テレビの宣伝ではありませんが、公務員の皆さんも普通に働き普通に家さえ建てることができない、まさにそんな社会に今入っていると思っています。
 雇用不安が広がる中、今議会でも雇用対策が議論されていますが、地域での消費拡大につながらないと、最終的にはやはり雇用問題も解決できないと思っています。10年連続のマイナス勧告の中で、職員の皆さんがどちらかというともう生活防衛、それに走っているのではないかと思っています。人事院勧告を尊重しなければならない法制度の中で、民間との公民格差がない1、2級の主事級の職員の賃金を引き下げしないという最終判断をされた知事、いまの議論を聞かれて、知事としてどう思われたのか。これから人事委員会の機能をもう少し高める必要があると私は思うのです。例えば俸給にしても、このたび単独の俸給表も出ていません。計算をいくらにするとかという形になってしまいますから。何%掛けるということですからね。私はもう少し、いろいろな部分で人事委員会の課題もあると思うのです。知事のその辺の所感を、今の議論も含めてお伺いしたいと思います。
 最後に、法令遵守の立場に立って、これらの事実を知った上での知事の感想と、それから今日まで労使交渉というのは多分苦渋の選択だったと思うのです。労使が本当にそれぞれの譲歩案を出しながら努力されたということで、私もそのことについては敬意を表しますが、最後に労働組合の皆さんと直接意見交換され、そして最終判断された知事に、またこの議会までに妥結したいと願われた思いを聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。

●知事答弁

 
 今までずっと曽我委員長の方と精細に今回の給与勧告の中身について、法律の状況、実態、総合的なお話の検証がなされたわけです。私もいろいろと伺っていて、今回、人事委員会でもかなりの慎重な配慮をしながら、大変難しい方程式だったと思いますが、それをあえて勧告という形でまとめなければならないわけですから、取りまとめられたのだと思います。
 伊藤議員から、今の人事委員会の仕組みの中でもなかなか俸給表の問題とかやりにくい点もあるのではないかという指摘がありました。それも確かにあると思います。今まで我が国の給料表というのは国家公務員との比較において成立してきました。しかし、少しずつこれが近年ばらけてきました。鳥取県もばらけてきたうちの一つだと思います。すなわち人事委員会がその見識をきちんと発揮して、実態的な調査を自らの頭と自らの論証によってやっていく。そうすると国の勧告とは微妙に違うものが出てくるわけで、それを給与制度の中に反映させるという努力が求められるようになってきました。
 今回、労使というか、職員団体と最終的な交渉をさせていただき、片山委員長ともお話をしましたが、そこで私も初めて見せられたといいますか、ちょっと前に事務局のほうから伺って、その勧告のときには知らなかったのですが、今、伊藤議員の示された職員の階層ごとの比較を初めて知った次第です。それを見たとき思ったのは、これはやはり国の給料表をそのまま持ってこようと思うとどうしても無理があるのだろうと。独自給料表はいけないというのが、今まで給与実務の憲法というか、大原則のようなものでした。しかし、ここまで地域給とのバランスということに世情の関心が高まってくるのなら、一部そうした独自給料表というか、国の給料表に準拠しながらもそれを改編していく、そういうこともこれからはあってもいいのかもしれない。これまでのドグマが解消されなければならないのか、と思いました。
 今回は、本議会へ提案するぎりぎりの前日での決着までもつれ込んでしまったわけです。最終段階でそうした状況について伺い、特に1級、2級においては、つまり若手の職員においては、本来民間の皆様よりは給料が低いという調査結果であるのにもかかわらず、それも給与引き下げの対象になっているということで、この部分はいささか私どもとしても自信を持って提案できない部分かと思いました。そういう意味で、現給で据え置くという対処をさせていただこうという妥結を目指したわけで、今回の条例提案につながったのです。
 今後に向けた課題も今回の交渉の過程で見えてきたと思います。人事委員会も先ほどの曽我委員長の答弁から、これからもますますバージョンアップして人事委員会の機能を高めていこうという決意が見てとれました。私どもも執行部として給与の運営に当たり、県民の皆様の理解が得られるような給与制度の構築を目指していきたいと思います。 

●曽我人事委員会委員長答弁

 
 伊藤議員からの質問、それから知事からの回答を踏まえ、最後にお話しさせていただきます。今回の人事委員会の勧告について、無理やり下げたいという部分があったように、もしとらえられてしまうのだとしたら、これはやはり我々の方の理解いただくための努力不足等もあったものだと真摯に受けとめたほうがよいと私は思っています。
 人事委員会の議事については公開で行われています。一部非公開の議論も当然人事に関する事柄ですのであります。また今回の勧告に際しても職員側の意見については事務局長が議論を何回かさせていただいているところです。しかし、人事委員会の勧告は公正中立であることが何より必要ですし、公正中立さについてもご理解いただくことが最も重要な点ですので、今回いただいたご批判については真摯に受けとめて対応したいと考えています。
 加えて、知事からもご指摘いただいた、主に若年者層の給与の格差、つまり民間水準の方が高いにもかかわらず全体として引き下げるという勧告がなされた背景には、やはり独自の給与表に踏み出す点と従来の点とのちょうど転換期にある中で我々も非常に悩んだ点ですし、議事に多くの時間を要した点ではあります。そういった点を踏まえ、一応報告の中で若年者層の給与については触れさせていただいています。それを踏まえた上で議会、知事が今回ご判断されたことについては、我々としても全く異議、異論は抱いておりません。
 今後、伊藤議員が冒頭おっしゃったように、鳥取県の経済の発展が非常に目覚ましいというほどではない中で、また格差が広がる中で、公務員の方、そして民間の方々からすると自分たちは大変なのにという思いもあるでしょうし、片方で県職員の方々にも生活があるのはそのとおりです。そういった中で、税金で県が運営している以上、限られたパイの中でどのようにやっていくかという点、これは議会でも議論しなければいけない問題でしょうが、人事委員会の機能、勧告においてもより精緻で慎重でなければならない、そして公正さについて理解いただけるものでなければならないという点を踏まえて、今後も業務をしていきたいと思います。