平成24年12月定例会一般質問(平成24年12月7日)No.3

<人事委員会勧告について>


 
10月9日、平成24年職員等の給与等に関する報告・勧告、一般的にいう人事委員会勧告が行われました。ことしも人事委員会と共同で県内の企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の194事業所のうちから137事業所を抽出し、従業員の個人別給与を実地調査して県職員と比較されました。その結果、県職員の月例給が6,036円、1.78%高いことから、医療職(1)を除く全給料表、全号給とも現行給料表から1.8%引き下げられる勧告が行われました。その結果、月例給で7万641円、ボーナスで2万3,702円、合わせて9万4,343円が引き下げられることになりました。
 昨年の4月1日現在で、国を100として比較したラスパイレス指数は94でした。国では、2年間に限り震災財源捻出の観点から7.8%減額する措置が行われており、来年はこれまでどおりの比較はできないが、減額が行われていないことをベースとして比較すれば、ラスパイレス指数は92近くになるものと思われます。もちろん全国最低です。官民比較の実態は調査のとおりであり、一定の理解はいたします。
 ところで、地方公務員法第24条第3項で、職員の給与は生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従業者の給与、その他の事情を考慮して定めなければならないと規定されています。当然、勧告の中ではこれらの判断基準を調査し、総合判断したとされますが、官民比較以外の事項については何をどう総合判断されたのか、曽我人事委員会委員長にお伺いいたします。
 現状の勧告システムの中では、鳥取県職員についてはラスパイレス指数が90を切るのも時間の問題のようにさえ思います。委員長として現行システムのあり方について違和感がないのか、もし問題点があるとすれば何なのか、お伺いしたいと思います。
 また、このたびの人事委員会勧告について、知事の所見をお伺いいたします。
 

●知事答弁

  
 法律の仕組みとして、私たちは勧告を受ける立場です。これはなぜかというと、第三者的中立機関として人事委員会が設定され、それがいわば労働基本権、三権と言われるようなものがない公務員の世界、それに対する代償措置として客観的な勧告というものが設定されています。ですから我々としては、その勧告を基本的に尊重しながら給与制度を運用していくという立場です。したがって、人事委員会のほうでしっかりと調査され、それに基づく勧告が出るわけですから、私どもとしても、それを尊重しながら給与改正の案を今回つくらせていただきました。本議会に提案しておりますので、よろしく御審議をいただければありがたいと思います。

●曽我人事委員会委員長答弁


 きょうは、小学生の皆さんが来られていますので、いじめの問題と比べるとなじみのないお話ですので、若干前置きの説明をさせていただきます。
 これから私がお話ししますのが職員、皆さんの先生方や病院の職員さん、県庁で働いていらっしゃる職員の皆さんの給与の話です。職員の給与は、職員の皆さんの生活の糧であると同時に、その財源が税金で賄われているという点で、多ければ多いほどいい、または少なければ少ないほどいいというものでもありません。そういったものを公正中立な立場から見ていくのが、私を含めて3名の人事委員会の役回りです。つまり公正中立ということが重要なのです。
 きょう、議会で伊藤保議員を初め議員の皆さん、職員の給与制度、給与水準に関して関心を持っていただき、大変ありがたいと考えている次第です。当然、我々人事委員会は、先ほど知事からもお話があったように公正中立ということですので、他方で民主的な基盤を持っていない。こういう複雑な社会の中では、こういう議会の場での議論を踏まえて、そういった意見をいただくことが我々にとっても重要だと考えていますので、きょうの伊藤保議員の御質問、議会でお時間をいただいたことに関しては大変感謝と敬意を表する次第です。
 さて、まず現行システムのあり方についてという御質問をいただきました。
 職員の給与については、地方公務員法に規定している均衡の原則に基づいて、生計費、国、他の地方公共団体、民間その他の事情を総合判断して決定するものとされています。均衡の原則の具体的適用については納税者である県民の理解と納得の観点から、給与制度のほうについては公務としての類似性を重視し、国の制度を基本とする。給与水準については国や他県等の動向も見ながら県内民間を重視し、これを適切に反映させるように努めてきたところです。
 ことしの公民格差は、県内経済の厳しい情勢を反映して、月例給についてはマイナス1.78%、マイナス6,036円、特別給についてはマイナス0.06月でした。この格差を解消する、これが県内民間の適切な反映、これを基本としながらも月例給については全国的に見ても最低水準にある中ですが、昨年より公民格差が拡大していることから、非常に厳しい内容だとは認識はしながらも、これを解消することが適当であると判断しました。特別給については、現行3.9月は改定しなかった国を下回っており、全国や県内市町村と比べても低い水準にあることなどを総合的に判断して、据え置くことが適当であると判断した次第です。
 なお、総合勘案した事情としては以下の事情です。人事院勧告の内容、国や他県等との給与水準差の指標である国公ラスの状況、他県等の勧告等の状況、こちらは情報交換等をしながら、できる限り把握していた次第です。総務省統計局の家計調査を基礎に算出した世帯人員別の標準生計費、それから有能な人材の確保、職員の士気等です。
 今後も引き続き給与水準における均衡の原則の考え方としては、県内経済は引き続き厳しい情勢であると予想される中、納税者である県民の御理解と納得の観点から、県内民間給与を重視することが基本であると思慮している次第です。
 しかし、他方で伊藤保議員からもシステム上の違和感ということについて御指摘をいただきましたが、我々人事委員会としては、やはり悩みというものはあります。議員からも御指摘があったように、ラスパイレス言われたのは国公ラスの意味だと思いますが、今後90%を下回ることも目に見えていると言われましたが、職員の給与水準が国や他県等と比べて、さらに下回ることも予想される中、有能な人材確保、職員の士気等の観点から国や他県等との均衡について、これまでも勘案してきたところですが、今後ともどのように勘案していくのか、人事委員会の立場として苦慮している次第です。このため、本委員会が重視している県民理解の観点から、県民の代表である県議会での本日の議論も傾聴しながら、勧告の対象である労使の意見も伺いながら、来年以降の勧告に向けて引き続き地公法に基づく総合勘案の姿勢で臨んでいくことを考えている次第です。

<人事委員会勧告について>bQ

知事からも答弁がありました。やはり近年の人事委員会勧告を拝見していると、客観的ですが、官民比較だけが優先された勧告だと私は思っています。というのは、県内でも本当に最優良企業として県内の経済を引っ張ってきた鳥取三洋の工場が閉鎖されました。さらに、製造業の空洞化、国外拠点化が進む中、現在ある企業の中でもいわゆる閉鎖とか継続を危ぶむ企業が多いのです。結局、官民比較の中で、そうした民間の給与が、どちらかというと鳥取県の人事委員会勧告の給与の中である程度ベースとして引っ張ってきた部分があったのです。ですから、どんどん大きな企業が撤退する、優秀な企業が撤退していく。本当に今のままのシステムでいくと、小さい本当に厳しい民間企業だけの比較になってしまうのです。そうすると、鳥取三洋などがあるときには何千人という一つの大きな企業との比較でした。ですから、例えば主任、係長、課長補佐とか管理職の比較ができていたのです。規模が小さくなると、ほとんど比較ができない。鳥取県のように何千人もいる県職員の中でということで、今の勧告システムを継続していくのが本当によいのか私も疑問に思います。
 逆に言うと、こうしたときだからこそ、そういう部分もやっぱりしっかりと見直していくということも大切でしょうし、人事委員会に本当にお願いしたいのは、短絡的に月例給を下げるばかりでなく──確かに税金です、重要です、無駄にしてはいけません。しかし、地域主権を重点的にこれから鳥取県はやらなければいけないのです。そうしたときに、今しっかりとした有能な人材を集めないと、本当に10年後、20年後の鳥取県が築けるのかという部分で私は心配をしています。それが私は人事委員会の、まず有能な人材をしっかり確保する、地域主権に向けてしっかりした鳥取県をつくるという方向での役割は非常に大きなものがあると。そういう意味で委員長の見解をお尋ねしたいと思います。

●曽我人事委員会委員長答弁
 
 議員から御指摘のように、まさに三洋電機の事業所の縮小、閉鎖等、それから地域民間の給与が伸び悩む中、さらには公務員の労働基本権の代償措置としての重要な役回りに鑑みて、勧告の時期になると我々人事委員3名、それぞれバックボーンは違いますが、毎年悩ましく、これが上がっている場面であればもう少し悩みも少ないのですが、悩みながら勧告に向けた議論をさせていただいています。
 さて、有能な人材の確保に関する我々人事委員会の考え方ですが、職員の採用試験も我々の重要な職務です。当然、有能な人材の確保というのが当県にとっていかに重要であるか、これを認識して、勧告に際しても念頭に置いてさせていただいています。まさに職員の勤務条件である給与水準というのは、そういった観点からも非常に重要なテーマであると認識しています。同様に、職員の給与を県民の理解と納得を得られるものにしていく、そういう水準にしていくということも本委員会の重要な職務であるわけです。したがって、来年以降の勧告に向けても、引き続き地方公務員法に基づく総合勘案の姿勢で臨んでいくことと考えてはいますが、他方で有能な人材確保、職員の士気等の観点から、国や他県等の均衡について今後どのように勘案していくのかについて、県民の代表である県議会の御意見を傾聴しつつ、勧告の対象である労使の御意見もしっかりと踏まえて勧告をしていきたいと考えています。

<人事委員会勧告について>bR

 本当は県土整備部長にお尋ねをしたかったわけですが、私から部長に答弁指定できないことから、とりあえず形としては知事への質問とさせていただきますが、見解を求めたいというのは、県土整備部長は国交省から県に出向されているわけですが、県土整備部の職員の皆さんは、国の職員に比べて、人事委員会が国公ラスで示しているように、本当に90%程度しか仕事をしていないのか。それを県土整備部長に本当は生の声でお伺いしたかったわけで、答弁を部長に振られるかは知事の判断に任せますが、もし無理なら、知事も国の職員の経験があったのですから、本当に知事としても県の職員が国の職員に比べて90%しか仕事をしていないのか、まずその基本的な認識をお伺いしたいと思います。

●知事答弁


 1問目の県土整備部長の件については、私はいたこになってもいいのですが、直接県土整備部長から答えさせていただきたいと思います。
 県土整備部長のほうからもお話しさせていただくと思いますが、例えば給料の額と、働いているかどうかということとは直結しないと思っています。それは、人間はパンのみで生きるわけではなくて、やはりどういう志を持って働くかということもあります。ただ、もちろん生活できないようなことになってはいけないということで、その辺の兼ね合いかなと思います。私自身も前任者よりは1割ほど給料が安いわけで、そうすると9割しか仕事をしていないということになるのかもしれませんが、必ずしもそうではないと自分では思っております。

●古賀県土整備部長答弁


 御承知のように私ども県土整備部の仕事というのは、例えば大雨のときの対応、それから2年前の大雪のときの対応、これから雪の季節になってきますが、そういった緊急の対応も一生懸命やらせていただいていますし、また通常の道路整備とか川の改修事業もやっていますが、国と全く同じようにやらせていただいています。むしろ管理している道路の数とか、あるいは河川の数が我々のほうがひょっとしたら多いのかもしれないという感じです。
 したがって、国と比較してどうかということですが、その仕事の内容、それから量をとっても何ら違いはないと認識しています。

<人事委員会勧告について>bS


 知事が言われるところはわかるのですが、私が問いたかったのは、本当に県の職員は国の90%しか仕事をしていないのですかと。確かに意欲とかいろいろな部分はあるのですが、それは勤務評価でやるのですから、それはそれで別として、基本的に国の職員の90%しか仕事していないのですかと。だから人事委員会は、そこの評価をどうやっているのかということを私は言いたかったのです。

 県土整備部長、本当に素直に思いを言っていただき、ありがとうございました。逆に言うと、国の職員より県の職員のほうが大変なのです。災害があったらすぐに出ないといけないのですよ。すぐ現場なのですよ。そういう意味で、私は国の職員より県の職員などはもっとラスが高いぐらいでもいいと思っています。プラスアルファの仕事をやっているのです。私生活も犠牲にしながら仕事をしているのです。やっぱりそういう部分を私は人事委員会もしっかりと加味してほしいと思うのです。
 それともう1点、今いろいろ人事委員会の皆さんとも議論しました。知事は、人事委員会からの報告を受けてやるというのが一つのルールだということですが、やはり労働組合というのは、私も見ていて、労働基本権が保障されていない、特に自治体の労働者というのは本当に弱い立場にあると思うのです。県の職員労働組合もありますが、私から見ていると、よくこれで妥結したなと。結局、妥結させられたのかなと、丸のみさせられたのかなという思いを私はしています。本当に弱いなと。民間の労組だったらこんなもの通るわけがないな、交渉が。と思うぐらい、私からすると本当に、いじいじがつくぐらいの状況だと思っています。
 しかし、やっぱり私は、人事委員会はきちんと職員の皆さんが納得するような形の人事委員会勧告をすべきだと思うし、それは高いとか低いとか、そういう金額ではないのです。少し私は説明も足らないと。今の状況だったら県の職員の皆さんがなかなか納得しづらい勧告であると思っていますし、職員の意欲は本当に失われていくと思います。地域主権だと言われながら、職員の待遇はどんどん落ちて、意欲も落としていくのです、仕事だけやれやれと言って。本当にこれでいいのかと。正職員もどんどんどんどん定数を少なくしていく、一方で非常勤職員の数はふえていく。そうした状況は本当に職員の意欲の低下を招くと私は思う。そのことは、結果的には県民への行政サービスの質も心配されるところなのです。特に県職員の指揮をする立場にある知事として、今後の人事委員会の勧告のあり方についての所見があれば、お伺いします。

●知事答弁

 
 
私の申し上げ方が若干誤解を与えたかとは思いますが、県の職員が仕事をしていないということを言っているのではありません。私も鳥取県の職員の士気とそれから能力と行動力には若干のプライドを、これは手前みそですが感じます。国以上に私たちはいい仕事をしているという秘めたプライドを持って日々生活をしていると感じています。
 ただ、それについては、それとはまた別の観点で給与水準の設定というのがなされます。これは法律に基づいてなされるもので、先ほど来議論がある人事委員会の勧告で最終的には集約されて、それを組合交渉にかえる代償措置として私たちは尊重してルールどおり基本的には決めていくというスタイルをとっています。その中には、さまざまな考慮要素があり、職員の能力がどうかということ以外の要素が、やはり民間との均衡等が入っていますので、それはそれでまた別の次元で、話し合いも必要でしょうし、それから世間に対する、県民に対する説明責任も必要でしょうし、そういうことを果たしながら展開をしていくものだと考えています。
 この人事委員会の勧告については、制度としてなされているもので、我々としては勧告を受ける立場として尊重したいと考えています。その基本的なスタンスは、先ほど曽我委員長がおっしゃいました。さらに言えば、地方公務員法の24条の3項が基本なのだろうと思います。この中には民間との給与の均衡ということがまずあります。それから国や他の地方公共団体とのバランスということも書いてあります。また、先ほどもちょっとコメントさせていただきましたが、職員の生計費ですね、生計費ということも書いてある。そういうものを全てトータルで考えて、どういうような給与水準が適当なのか、それを人事委員会が調査の上、勧告を行うということにつながっていく条文になります。そうした基本を今後しっかりと大切にしていただきながら、適切な勧告を展開していただきたいと思います。それが鳥取県の給与水準の適正化にも当然なりますし、また県民に対する説明責任をおのずから果たすことにもなってくるだろうと考えています。