平成27年2月定例会代表質問(平成27年2月20日)No.1

≪はじめに≫
<知事のマニフェスト
 
 
平井知事も私たちと同じく、この4月には今任期の満了を迎えられます。この8年間、休みなく東奔西走される平井知事の姿には、県民誰しも体調を心配する傍ら、テレビやマスコミ等に積極的に登壇し、鳥取県の売り子として挑戦されてきた姿と行動に県民の多くが称賛するとともに、頑張ろうという勇気をもらった感があります。
 しかも、県政運営の指標としてマニフェストを示しながら、県政のあらゆる部分で種をまき、中には接ぎ木をしながら丈夫な苗に育ててこられたものもあるかと思います。平井知事はみずからを内心どう評価しておられるのかお伺いするとともに、達成感、充実感、満足感のあった施策は何であったのか、2〜3お聞かせください。逆に、思うように取り組めなかった、また進めることができなかった施策があるとするならば、その要因を含めてお聞かせください。
 また、次回知事選への挑戦について決意を表明されているわけですが、3期目の挑戦に当たり、県民に示されるマニフェストの中でも何に重点を置いて県政を担おうとされているのか、あわせてお伺いします。

●知事答弁

 議員のほうから御指摘があったように、いろいろと議会と私ども執行部と共同して県政運営の改革、前進に努め、地域住民の幸せづくり、あるいは地域の活力の増進などに汗をかいてきた4年間だったと思います。皆様の大変な御尽力と御貢献に深く感謝を申し上げたいと思います。
 そうしたさまざまな御支援、御協力をいただいてマニフェスト、政権公約の中に今期、私のほうで書いた課題に対する達成状況を県庁の中で事務的に集計してみると、89%の達成率という数字になっています。したがって、おおむねお約束したことを果たしつつある状況かなと思いますが、まだ厳しい課題も残されているというのが正直なところだと実感しております。
 特に何に達成感を感じたのかということですが、やはり前回も小谷県議のときに申し上げましたが、手話言語条例を伊藤議員にも委員長として御尽力いただきながらまとめ上げることができました。これは一つのシンボルだったと思います。
 鳥取県政として、あいサポート運動というのを全国に先駆けて提案し続けてきました。今ではこれは海外にまで広がっていくわけです。そういう中から、あいサポート運動の大きなテーマである健常者と障害者とがともに生きていこうという、そのかなめとしてコミュニケーションの問題に取り組んだのが手話言語条例であったかと思います。
 これは今では全国にも広がっていって、神奈川県を初めとして他の地域においても同様の条例ができ上がりましたし、鳥取県議会を皮切りに手話言語法あるいは総合コミュニケーション法という障害者とのコミュニケーションを取り上げる、そうした法律の制定を求める声は47都道府県全部に可決成立が広がっていったところで、まさに鳥取県から、この国を変えていくムーブメントになったと思います。
 正直申し上げて、鳥取県は人口が一番少ないですから情報発信力は一番小さな発信力しか本来はないだろうと思います。しかし、やはり現場主義で、これは大切だということを果敢にやっていくことの値打ちが今回の1件にも証明されたように思えてなりません。手話パフォーマンス甲子園、また来年度もやろうと考え、予算も計上させていただいておりますが、それに集った高校生のまさに笑顔と涙のパフォーマンスと舞台には多くの方々が共感を寄せ、こうしたことから国民運動が広がっていくのだという実感もしたところです。
 また、そのほかにも数々ありますが、県民参画基本条例の議論は今期の前半のクライマックスだったと思います。これも各党、各会派で色々な御意見をいただきながら詳細を詰めていきました。県民の皆様からの数々の御意見も寄せられました。折しも鳥取市において庁舎建設をめぐる住民投票が行われていたこともあり、非常にタイムリーな形で鳥取県民参画基本条例というのを制定することができました。最終的には多くの会派の御賛同をいただきながらまとめ上げる、可決していただくということに至ったわけですが、これは百年の大計であろうかと思います。全国の中でも際立ってデモクラシーの色彩というものを強めることができたと思います。それは人口が一番小さい県だからこそ県民が参画できる、そういう土俵づくりは簡単にできるのではないだろうか。それは多くの方々の理解を得られれば鳥取県なりのデモクラシー、鳥取デモクラシーというのをつくることができるのではないかと感じていたわけです。これにより、条例という大きなお土産を次の期以降に残すことができたのではないかなと思っております。
 そのほかにも雇用の1万人という計画を上げました。これはマニフェストに書かせていただくころはかなり大風呂敷的な風呂敷であるかなとも自覚しながら臨んだわけですが、企業誘致も進み、県内の企業の振興も進みまして、それで相まってこういう雇用の1万人という創造が達成できたわけです。今年度の前期、9月までにおいて1万900人を突破し、既にこれは達成済みということにもなったわけですが、一人一人の雇用の積み重ねの中からこれが生まれてくるわけですので、非常に多くのお力を企業さんや県民の皆様、議会から賜ったことを実感しております。
 このような数々のことを片方でやるわけですが、厄介なのは、それは事業を伴う、投資を伴うことですので、お金がかかるわけで、財政の悪化というものが当然ながら伴うと一般的には思われます。ただ、私どもは小さな県ですので、上手にコーディネートをしていくことができれば、効率化を片方で図り、選択と重点化ということをやりながらやっていく、そういう中で県民との協働の部分をふやしたりして、さまざまに工夫を重ねることは可能だろうと。それをやっていくことで財政の健全化と事業にさまざまな手を出していくことを両立させることはできるのではないか。非常に難しい厄介な課題でした。
 これについても453億円の基金を残したり、将来負担は3,030億円に減らすことができたり、プライマリーバランスも今回82億円ということで計上させていただいています。これは、よその自治体では実はできていないことで、県民幸福度が4位の一つの要因となった県財政全国第2位という実力を伴ったものでした。これは議会の御賛同と身を切る改革もありますので、そうしたことも含めて皆様と一緒に進めてきたその結果で、感謝を申し上げたいと思います。
 片方で、まだまだ課題が残ったかなというのは、先ほど申し上げたように、達成度を県庁の中で集計してみると、一番達成度が厳しいが教育の分野です。
 大学の進学率については、実はこれは44%の進学率のところよりも向上させていこうという目標を持ってこの期に臨んだのですが、現実には42%と、大学進学率は低下するということになりました。
 また、学力についても、今年度は悉皆により全国の学力調査が行われたわけですが、報道もされているように、数学あるいは算数、そうしたところを中心として全国平均を下回る科目が出ました。もちろん片方で国語の中には全国上位の7位ですか、そういういい指標も出てきてはいるのですが、課題も残っております。体力については、これも小学校5年生の男子において全国平均を下回る種目が半分ぐらい出てきたということになりました。
 片方で、我々のほうでは全国にないこととして少人数学級を導入するなど、いろんな学校改革にてこ入れとして予算もつぎ込んでやっているわけですが、まだ結果というところに上手に結びついているとも言いがたい面もあります。
 いじめの認知件数など全国よりもいい状況も出てきているなど効果があらわれている部分も確かにあるのかもしれませんが、議会と我々執行部の間で、教育をよくしようとしてさまざまな議論を展開しておりますが、学校現場の中でそうした学校改革、教育改革というものが十分に進んでいるわけでもないのかもしれません。この辺はいろいろと厄介な課題もあり、一挙にできないことだろうと思いますが、次期へ積み残していく課題となったのではないかと思います。
 議員のほうからも御指摘があったように、地域の元気を引き出していくことがこれからの目標になってこようかと思います。私としては、鳥取の元気をつくっていくことを次の期に挑戦する目標とさせていただきたいと思います。人を元気にする、これは健康づくりのことも含めてです。例えば中央病院と赤十字との総合調整をして、次の期は新しい病院の体制をつくっていく期になってくるわけです。そういうふうに健康づくりなども一つのことですが、人間の成長を促す、人材をつくっていく、そうしたこととあわせて障害者だとか高齢者だとか、そうしたところも元気にしていく、そういう人を元気にすることが一つの大きな目標ではないかと思っております。
 若者のことも取り上げていただきました。あわせて鳥取の場合はやはり高齢者の元気というポイントをこれからつくっていく意識でいかなければいけないと思います。当然ながら人口のウエートも高まっていくこともあります。それから、近年の指標からすると、例えば高齢者ボランティアの比率が全国第2位とか、生涯学習学級、高齢者学級、こうしたところも全国第2位とか、実は高齢者の元気というものを大事にしている地域性が形成されようとしている面があります。この点をもっともっと伸ばしていけば、揺りかごから墓場までと言われますが、福祉という考え方からしても、一貫性のある地域社会というものをつくっていけるのではないかと思います。
 また、産業を元気にしていくことも重要で、議員の御指摘の農業のことを含めて産業の元気を形づくっていく、さらには町を元気にしていく、こうした元気づくりをテーマとするべきではないかなと思います。その手法は県政改革だろうと思います。我々は日本一デモクラシーも進み得る条例をつくりました。また、議会と私ども執行部また県民、そうした3者の距離感が最も近いところで、改革を実現しやすいところだと思います。これはやらねばというところに果敢に切り込んでいく、そういうことで元気づくりを進めていくことは可能だと思います。
 また、温かい人のきずなを生かしていく、これも元気づくりの重要なツールになろうかと思います。
 こうしたことを進めていくことにより鳥取を変える。鳥取から日本を、世の中を変えていく。鳥取から変わっていく。そうした新しい地域モデル、地方行政のモデルというものを鳥取県から創造していきたいと考えております。

 
<知事のマニフェスト>bQ


 知事には、次の県政は元気をテーマに向かいたいということでお話をいただきました。確かにいろいろな分野でたくさん課題があるのですが、やはり元気を失っては事を進めるわけになりませんので、ぜひともそういうことを訴えていただきたいと思っております。

知事のマニフェストで思うようにできなかったという中に、私はDBSが出てくるのではないかと思っておりました。私どもも、議員の皆さん方も議会を挙げて大きな期待をしていたわけですが、経済情勢を含め、また日中や韓国との外交関係を含めながらいろいろな課題も生じたという中で思うように進んでいない。そういう部分で、多分知事の残念な思いとして出てくるかと思ったのですが、もし知事の思いがあればお聞かせいただきたいと思っております。

●知事答弁


 
冒頭おっしゃったとおり、これから地域の元気をどういうふうにつくっていくかということがテーマになるべきではないかと考えております。
 趣旨とするところは、今やはりポジティブに物を考えていくべきタイミングに来たのではないかということです。私どもとしては、地域づくりを一生懸命、議会、県民の皆様、我々執行部と一緒になり進めてきました。そういう中で、ピンチをチャンスに変えようというのをいわば合い言葉のように使っていたように思います。
 考えてみると、琴浦でいえば、国道9号線のバイパスとして現在の山陰道が整備されたわけです。この琴浦町区間の全線開通を前にして、どうやって町を守っていくのか。旧赤碕や旧東伯の皆さん方が一つのコンセプトとしてグルメストリートというものを立ち上げ、その中でさらには鳴り石の浜であるとか、また、八橋や赤碕や、そうした古い町並みを生かしていく努力であるとか、そうしたことを進められたわけです。そうしたら観光客が開通前よりもふえたということになりました。これは、完全に通過されるのではないかという危機感をばねにして地域が結束して、むしろポジティブに元気を出そうとやってきたわけです。
 サステナブル、持続可能で、とにかくじり貧でも守らなければならないということだけでなく、それをではプラスに変えていくために、グルメだとか、新しい観光資源だとか、また、旧来からあるものの見直しの視点、こうしたものが働いて、初めてそういう結果に結びついたのだと思います。
 この辺が私どもの次の地域づくりの基本的視点になるべきかなと思っておりました。つまりポジティブに、厳しい状況は確かにあるのですが、それを前向きに捉えて上を向いて地域を考えていこう、そういう意味で元気を出していこうというのがテーマではないかと申し上げたところです。
 DBSクルーズフェリーについては、非常に微妙な中で運航が継続されております。議員も御指摘されたように、外国とのおつき合いですので、それぞれの国の事情が反映されます。
 例えばロシアでいえば、APECの特需がありました。このAPECの特需に支えられて、ウラジオストクに持ち込まれる荷物がふえたことが航路を持続可能なものにする一つの誘因になったのは事実ですが、その後、これが急速に今、変わってきております。さらに言えば、ロシアの経済が国際情勢の中で非常に苦しみ始めている状況があり、これが貿易にも影響しているということがあります。また、中古自動車の輸出の問題もそうですが、やはり国情に流されて動いてきたと思います。
 韓国との関係もそうで、鳥取県は、私が就任した後は議員の皆様の御賛同も得ながら江原道との友好交流を復活させ、充実することを機軸にしており、地域同士のきずなは揺るぎないわけですが、なかなか国際情勢の中で旅をしてみようという気持ちになれるかどうかということがあり、苦しんだ時期がありました。さらに言えば、韓国のフェリーの大規模な海難事故が発生したことがあり、船に乗ることをためらう向きも出てきてしまった、そんな意味で、かなり厳しい中でした。
 その中で、今回まで航路が持続可能な形で何とか続けられてきたわけです。
 ただ、まだまだ状況は予断を許さないわけです。確かに旅客の面では戻ってきました。かつてのように乗客が乗ってくれるようになり、特に韓国から日本に向けてのインバウンドが鳥取県の海外からの誘客キャンペーンと相まってふえてきたように思います。ただ、会社側の方針として、京都の舞鶴、それからザルビノ、束草を結ぶ、そういう新航路の開設に動いており、こういう新しい動きと我々のところとの併存をどうするのかという新しい課題も生まれてきています。
 ただ、私どもとして地政学的な状況を考えれば、鳥取県が他の地域と差別化して産業の活力を維持し、さらには発展させていく、また、人々のいろいろなマインドを刺激していく、友好交流、観光交流というものをふやしていく、そういうことからすると、海や空のルートというのはぜひとも確保されなければならない基礎的なソフトインフラストラクチャーで、これを私どもとしても発展させていかなければならないわけです。
 ですから、これからこのDBSクルーズフェリーが曲がりなりにも今日まで続いてきたことに対してさまざまに捉える動きが出てきて、競争性が増してくる局面が生まれてくると思うのですが、そういう中で境港を活用してもらえるように今後とも十分な働きかけをする必要があり、県としても一定の御支援をしていくという考え方です。