<地方創生について> |
地方創生については、次期県政の重点政治課題であると思います。代表質問ということもあり、実のある地方創生として取り組みを進めるため、今議会では改めてゼロベースから、単純な疑問も含め、地方創生の議論を平井知事としていきたいと思います。
まずは、昨年の秋、突然浮上してきた地方創生の原点となったのは、昨年5月に日本創成会議が発表した人口推計であり、一般的には増田レポートといわれるものです。改めて申し上げると、2040年までに全国の市区町村の約過半数に当たる896市区町村が消滅するというショッキングな形で報道されたため、突然、国を挙げてのメーンテーマになってしまった感があります。我が県においても、若桜町を初め13の町が消滅可能性都市としてその対象に上げられています。
この増田レポートは、国勢調査のデータに基づき、20歳から39歳までの若年女性人口が高い割合で流出し急激に減少する地域では、幾ら出生率が上がっても将来的に消滅するおそれが高いとしてセンセーショナルに発表されたもので、これまでも統計的には発表されていましたが、人口減少という古くて新しい問題がなぜ今さら、の感は否めませんが、これからの行政のあり方について警鐘を鳴らす意味では一定の意義があったと思います。
増田レポートは統計的なデータに基づいていますので、そのもの全てを否定するわけではありませんが、発表のタイミングといい、時を移さず政府の成長戦略の発表等、私自身としては一連の流れに少し違和感を覚えますので、地方創生の前段の議論として何点か知事の感想をお伺いしたいと思います。
増田レポートは、この国のあり方の観点から選択と集中を議論し、その物差しは外貨獲得能力であると明言されています。つまり、この国の本質を国際的な経済力だとする発想から生まれた議論のように思えてなりません。したがって、この国の経済力を今後も高いレベルで維持するために、集落や地方都市の選択を進め、国際競争を勝ち抜き、生き抜いていこうという提案になっています。
そもそも人を選択の対象にすべきでないのと同様に、地域は選択や淘汰される対象とすべきでなく、たとえ選択を行うにしても、その基準は必ずしも経済性や効率性のみでなく、文化や歴史観など別の重要な基準もあります。一方で、集中だけでなく、分散という選択肢もあり、東京一極集中からの転換は、分散や均等が本来のあり方ではないかと思います。
選択と集中で地方を救おうと考えている人たちの念頭にあるのは、あくまでも国の財源の振り分け、つまり配分だけしか考えていないように思われ、その結果、分散だけでなく一定の基準に沿った選択と集中、言いかえれば、それが淘汰にいきついてしまっているのではないかと思います。
逆に、そうした一律の基準による画一的な集中化が、これまでの東京一極集中を生み出してきた経過を振り返れば、首都圏中心の集権と集中を分割し、分散させる手法をとるべきではないかと思います。
つまり消滅自治体、地方消滅、さらにはこの国の消滅というセンセーショナルな物言いに惑わされ、選択と集中論が選択と集中のマインドを選択することを要請してきた結果であり、逆に私は、選択を強制する策略に乗ってしまうことが最も危うい選択ではないかと思います。
したがって、増田レポートが、東京一極社会はだめだが、地方中核都市への集中を行うべきだというのは少しおかしな発想で、むしろ小さな単位の集落を潰すことにより連鎖反応が生じ、かえって傷口を広げることにつながりはしないかと心配しています。
増田レポートの選択と集中論について、平井知事の素直な感想をお伺いしたいと思います。
さらに、増田レポートには人口減少と地方消滅に対する戦略とともに、その体制づくりに関する提言も掲載されています。
国家戦略の基本構想を描くために、中央司令塔に当たる組織を置き、さらに基本構想を踏まえて具体的なプランを作成し、実施に当たっては広域ブロック単位で地方司令塔を置くことが必要と記載されています。つまり、上意下達の段階的な組織構造で対応すべきと記述されているため、道州制がかいま見えると以前の一般質問でも申し上げたゆえんでもあります。
政府は、この増田レポートの提案を受け、現在のまち・ひと・しごと創生本部が設置されたようですが、この創生本部が、頑張るところは存続し、頑張らないところ、頑張れないところは消滅しても構わないということを上意下達で戦略化し、強制的に市町村に介入することがないよう十分注意すべきだと思います。
私としては、強い国家を実現する体制を地方からつくれと頭ごなしに命令されているような感覚を受けますが、地方創生のトップランナーを目指そうとする平井知事の所見をお伺いします。 また、冒頭申し上げましたが、多くの自治体がこれまでも人口減少の傾向にあったにもかかわらず、総合計画等で積極的かつ効果的な人口減少対策を打ててこなかったツケが、しかも突然消滅自治体と名指しで公表されたものですから、人口減少対策と銘打った動きがここに来て活発化しているように思えます。
そうした動きをあえて否定するつもりはありませんが、これまでも各自治体が似たような国の補助事業を受け、取り組み続けてきています。果たして、長い年月をかけて減少してきたものを短時間で解決し逆転できるとは到底私には思えませんが、平井知事の所見をお伺いします。
また、地方創生なのか地方再生なのかという議論もありましたが、県議会として認識を共有するためにも、なぜ今創生なのか、再生ではだめなのか、平井知事の認識とその違いについて所見をお伺いしたいと思います。
次に、まち・ひと・しごと創生法なるものが成立し、地方創生の取り組みが本格的に始まったわけですが、なぜ「まち・ひと・しごと」なのか、私は単純な疑問を持ちます。ささいな疑問かもしれませんが、地方創生の原点は「まち」なのか「ひと」なのか。私は、「まち」より「ひと」から始まるべきと思いますが、平井知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
この地方創生の議論が世論として湧き起こってきたきっかけは増田レポートだろうと思います。伊藤議員もおっしゃるように、一つのカンフル剤として機能した面があろうかと思います。最大のショック療法だったのは、消滅可能性自治体という言葉を使い、我々鳥取県でいえば実に13の市町村が消滅する可能性があると算定された指標まで出されて、具体的に警鐘を鳴らしたということではなかったかと思います。
私は、そのこと自体は地域のやる気を起こさせる、本気を出させるということで必要だったのかなと思いますが、多少膨らませている面があるだろうなと冷静に分析させていただきたいと思っています。
そういう中で地域モデルとして選択と集中ということを掲げられ、増田レポートの言葉で言えば若者に魅力のある地域拠点都市というものを重点投資していくと。その魅力づくりに集中させていくことで国の一極集中を是正していこうということです。
実は、この議論のところは賛否両論が多いところで、特に市長会、町村会を中心として、市町村から反発が強かったところです。私自身も市長会、町村会と一緒に衆議院選挙の前に国の各政党を回り、そのときに、どこか特定のところだけをやるということではなく、やはりナショナルミニマムをつくっていくことが地方創生の原点にもなるのではないか、このような観点の議論を各党にも申し上げたところでした。
これはダム論とも言われるのですが、国の中央のほうに、東京のほうに水がどんどん流れていってしまうと、それをどこかでとめるダムを地方につくると、それが地方拠点都市である、そういうような議論ですが、私はここは余り強調すべきポイントではないのではないかと素直に思います。
では中山間地がなくなっていいのかということですが、もう一度中山間地の活力を取り戻していくのが地方創生の原点のはずです。その中山間地が元気になっていることとあわせて地方都市が元気になってくる。その地方にいろんな目玉ができてくるのは、それは別に全国に数えるほどの拠点都市だけではないはずです。そう考えていくと、この選択と集中論というのは、やや、ちょっと行き過ぎた議論という感があるのではないかと思います。
これは恐らく増田レポートの一つの戦略モデルとして示されたことで、もっと大切なのは地方創生という本丸をやり遂げることです。そちらのほうに鳥取県としては重点を置いていく必要があるのではないかと思います。
これは上意下達ではないかという議論がありましたが、私はちょっと違った観点で見ており、そんなの前からわかっているよというのが私どもの実感ではないかと思うのです。この議場でもずっと議論しているのは、まさに地方創生をやるべしと、そのために鳥取県のそれぞれの市町村、地域から改善していくべきだということだったと思います。
これについて議会のほうでも、例えば中山間地の基本条例をつくるとか、私どもがやり遂げた県民参画基本条例もそうですが、いろんな参加型により地域というものを元気にしていこうというコンセプトを鳥取県議会は大事にしてきたわけです。ですから、地方創生は、むしろ我々のオリジナルで、国のオリジナルではないと思います。
ですから、上意下達と言われますが、私たちが今まで汗かいてやってきたこと、これがようやく国のほうの中枢の政策として認知されたのではないかと思います。
では、今これでエンジンをかけてやろうということを私も申し上げているのですが、その心は小谷県議のほうにも申し上げましたが、この地方創生にようやく国のほうで追い風が吹いてきたわけです。このときに、その国の施策を活用しながら一気にやり遂げてしまうと。我々は一日の長がある動きをしてきました。ですから、それを生かしてやっていくことで鳥取県を前に進めることができるのではないだろうか、そういう観点でこの地方創生という議論を積極的に全面展開していくべきタイミングではないかと思います。
私たちがずっと地方創生を動かそうということで風を待っていたわけです。港に寄り、ようやく地方創生を応援しようという風が吹いてきた。これは国の政治もそうですし、正直申し上げて世論、マスコミ、また大都市に住まう人たちも含めて地方創生を応援しようという空気になってきて、何だったら移住を考えようとか、そういうふうになってきているわけです。今こそ帆を立てて地方創生の行き先に向けて我々が船を乗り出していく好機が到来したということではないかと思っております。
これを短時間で解決することは到底できないというお話でした。特に、その人口減少という問題はそう簡単には解決ができないだろうと思います。なぜなら少子高齢化が進んでいますので、自然減は絶対に起きます。これはどうしようもないところです。あとは社会増減のところをどういうふうに反転させていくのか、それから自然増の中の出生というところ、これをどういうふうにやっていくのか、この辺が鍵になる、ポイントになろうかと思います。これは世の中のトレンドの問題で、1年で変えられるとか2年で変えられるとかということではないと思います。
実は国が示した地方創生の総合戦略は5年間のスパンで考えていますので、我々でいうところの中期的な視点ということになるかと思います。その先をにらんで目標も設定しようということですから、今から50年後、2060年には人口が1億人というところをキープしていくのだというわけで、かなり長い目標スパンの中で物事を考えていくということだと思います。ただ、その長いスパンの中で今やるべきことを果敢にやっていく、そのチャンスが来ているのだろうと思います。ですから、今は知恵と行動を惜しまずに進んでいけばいい時期ではないかと思います。
この人口減少の問題に最初に取り組んだのはエンゼルプランだったと思います。このエンゼルプランは、きっかけとしては1.57ショックといわれる合計特殊出生率が低下してきたことに対して国全体で論議が本格化したということでした。国はエンゼルプランをつくり、その少子化に歯止めをかけようということを始めたわけです。また鳥取県もそれと同じように計画をつくってやってきました。
しかし、正直申し上げて、今までのエンゼルプランとその後継計画、また県のほうで計画をつくってきたいろんな取り組みがありましたが、それは市町村のつくられる保育の総量だとかそういうものを総計して、どれだけの財源が必要ですよということを厚労省が財務省へ要求するベースのための議論であった感は否めないと思います。つまり、誘導的にそれをてこ入れしてやっていくというところまで、この国全体は動いてこなかったわけで、鳥取県もそうだったと思います。
私どもは平成20年に1.43までおっこちてきました。これを見て、いよいよネジを巻かなければならないと奮起したわけで、それ以後は県単独でさまざまな施策を展開してきました。議会との議論の末です。議会の提案の中から、例えば中学校までの医療費定額化とかそういうことを現実にも取り組んできたり、少人数学級をやろうということに取り組んできたり、そうしたことを我々自身で取り組んできたわけです。
こういうことを国もようやくやる気になってきたのではないかと思える節があります。ですから、こういう少子化対策について切り口を変えて今、国も動こうとし始めたようにも思われます。そうした国の施策も誘導しながらやっていくべきです。従来のエンゼルプランに始まるような単なる取りまとめ的な子育て政策は余り効果がない。むしろ現場主義で我々のところから声を上げてやるべきことを我々はやる、それを国が応援する、そうした形での人口減少対策をやっていかなければならないと思います。
それは新年度予算の中でも幾つか盛り込ませていただいておりますが、いろいろと果敢に進めていくべきテーマではないかと思います。これは1年で人口が反転するとかということにはなりませんが、長い目で見て均衡へ持っていく、バランスへと持っていく、そのための重要な一歩を今記さなければならないと思っています。
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<地方創生について>2 |
平井知事は、記者会見でも地方創生についてはロケットスタートをするとおっしゃいましたが、その言葉どおり、地方版総合戦略を作成するため、県と市町村をコーディネートする市町村コンシェルジュを県の課長級から市町村ごとに任命し、早々と取り組みが進められています。1月16日の東部会議を皮切りに、19日には中部会議、20日には西部会議が開催され、各市町村から総合戦略に盛り込みたい施策について発表があったところです。
県下各市町村から提案された種々の政策を聞き取りされましたが、現時点で提案されている施策の感想と、今後より充実した総合戦略としていくためには何が求められていくと思われるのか、平井知事の所見をお伺いします。
県としても総合戦略を最終的に作成されると思いますが、市町村が作成する地方版総合戦略との関係をどうされるのか、また一応政府の方針では27年度中に作成とされていますが、県としては市町村の地方版総合戦略を含め、いつごろをめどとして作成される考えなのか、平井知事にお伺いします。
創生法では、都道府県は国の総合戦略を勘案して総合戦略を定めるように努めなければならない、市町村は国、都道府県の総合戦略を勘案して総合戦略を定めるように努めなければならないと規定されているわけですが、鳥取県の場合、県の総合戦略の作成以前に市町村の総合戦略業務を急ぐ理由について、平井知事の所見をお伺いしたいと思います。
冒頭に申し上げなければならなかったのですが、全国知事会の副会長就任おめでとうございます。ナンバー2に就任されるとともに、国の地方分権改革に関する有識者会議の議員にも就任されました。
平井知事は、全国の知事会を代表する形で、どのような姿勢でこの地方分権改革に関する有識者会議に臨まれるのかお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
地方創生について、なぜ地方創生なのか、地方の再生ではいけないのかということ。それから、地方創生の原点は「まち・ひと・しごと」とありますが、「ひと」から始めるべきではないだろうかということについてお尋ねがありました。
これについては、私は言葉の問題かなとは思いますが、再生、創生それぞれに響きとして魅力的な要素はあろうかと思います。今の地方創生は、恐らく党派を超えて受け継がれてきた、温められてきて育てられてきたテーマなのかなとも思います。多分、民主党政権の時代で地域の再生ということを訴えられた。その地域の再生ということの延長線上に地方創生という現実の政策が今出てきているのだろうと思います。ですから、一つのストリームの中、大きな流れの中にある話ではないかと思います。
ただ、かつてふるさと創生という言葉がありましたが、私は創生という言葉の中に「創り上げる」という文字があり、この文字は重要でないかとも思います。今までの昔に復するような、再び戻っていくようなことだけでは多分だめなのです。もう既に歴史の歯車は回っています。むしろ田舎暮らしをポジティブに考えて、それをこういうふうに新しく楽しめる時代をつくろうではないかと、そのような提案をしていかなければならない。そういう意味でクリエーティブな創生ということには一定の効果があるのではないかと思います。かつてやってきたようなふるさと創生ということのイメージを求めているのかなとも思っています。
この重要な3要素のうちの何が重要かということについては、政府のほうの総合戦略の提言の中でも伊藤議員と同じように、まず「ひと」というものを掲げておられます。やはり人間が大事であって、人間をつくっていく、その人づくりというのがまずあって、それで「しごと」だとそれから「まち」だとかが生まれてくるものであり、人づくりというところが原点なのかと思われます。この辺は、ただその語呂というか語感の問題で「まち・ひと・しごと」と並べてあるというのが現実のところかと見ているところです。
実は昨日もKBフクスケさんという琴浦町の、ストッキングとかインナーもつくっておられますが、そういう会社さんが来られて、土井社長を初め幹部の方々がお見えになりました。実は鳥取県でも支援をさせていただいているのですが、中国からラインを回帰させているのです。
春節が始まって今、日本に観光客がどっと来ていますが、中国の観光客がいわゆる爆買いといわれるものをしている対象が、そのKBフクスケがつくっているストッキングなのです。メード・イン・ジャパンのストッキング、これは実はメード・イン・コトウラ・トットリでして、それが非常に評価されているわけですが、中国でつくるのではなくて、日本でつくろうというふうに今、回帰を進めているわけです。県では5%の上乗せ補助をして、その投資の支援をさせていただいているわけですが、そんなことでお見えになったわけです。
それで今生産を増強しているということですが、悩ましいのは少子高齢化ですと社長さんがおっしゃっていました。それは、よく聞いてみると、やはりこうして事業を回帰させて琴浦で雇用をふやそうとしているわけですが、なかなかその人手が集まらないということです。もっともっとこちらに引っ越してきてでもやるとか、今、農村の中でもまたもう一度働きに出ようという人がいてもいいわけです。かつて鳥取県はそういう縫製メーカーのメッカでもありました。それを支えてきたのは、農業の奥さん方とか、そうした層も結構いっぱいいたわけですが、その辺がもう高齢化しているわけで、なかなか工場のほうに帰ってこないということもあるのだろうと思います。
そんなことからもわかると思うのですが、仕事を元気にしていく意味でも、やはり人というのが重要な要素になるわけです。そんな意味で、議員がおっしゃるようにまず人から「まち・ひと・しごと」づくりというのを考えていくということではないかと思います。
次に、市町村から提案されたさまざまな政策を戦略としていくわけですが、その現状についての感想と、それから何が求められているか、必要なのかということ、さらにいつ頃をめどとして県の総合戦略を作成するのか、市町村の総合戦略業務を急ぐ理由は何なのかということについてお尋ねがありました。
この点については、市町村のほうの聞き取りをさせていただき、それ以降も市長会と議論をしたり、いろんな経済界の方々とか住民の皆さんとも議論を進めております。先般は議会のほうにも全協で示させていただいたりして議論をスタートさせました。
市町村のほうは、まだ正直、温度差と熟度の差があろうかと思います。琴浦町のようにデーリィタウンをつくろうと、これはクラスター事業というものを活用して酪農の基地をやっていこうということで非常に明確に出されているところもありますが、これから住民の皆さんとの会議を起こしてだんだん詰めていきますよというスタイルの市町村もあり、その辺はそれぞれの温度差といいますか熟度の差があります。
ただ、非常に安心できることは、みんなやろうと同じ方向を向いていってくれているわけで、やるなら、やはりできるだけ早く形にしていこうというところもあります。
そういう意味で何が求められるかということですが、これはやはり本気ということだと思っています。先ほど申したように、地方創生はむしろ鳥取県の専売特許のような地域運動であったわけですが、それがようやく風が吹いてきたわけで、それを本気でやると、地域としてやり遂げるということだと思います。
あともう一つ大切なのは空回りをしないことだと思うのです。そういう意味で住民だとか若い人たち、高齢者の方もそうでしょうし、いろんな団体もありますし企業さんもある、農林水産のさまざまな組織もあります。そうしたところと十分なコミュニケーションをとって参画してもらって、それで進めていくことではないかと思います。そういう本気といわば参画ということが大事なわけです。
ふるさと創生で、本県は境港が成功している一つではないかと私は思います。水木しげるロードに妖怪を置くということを始められたのは、実は地方創生がきっかけでした。また、それをいわば本気になってやってきたわけです。さらに商店街ごとにみんなで参画し、さらにはそのことに共鳴する人たちが市の外からも入ってきて一緒になってやる。これで初めて、ああいう200万人以上が毎年訪れる町ができたわけです。ですから、そういう意味で本気度とそれから住民の参画、これが試されるのではないかと思っております。
そうしたことを念頭に置きながら総合戦略を県としてもつくっていくわけですが、まずは今年度中にある程度の骨格的なものを示させていただいた上で、新年度の前半に最終的に取りまとめをしたいと思います。それは市町村の計画づくりの前提として県の考え方を示すことが法律上も求められています。ですから、我々として市町村とある程度先行させながら、我々の考え方も中間的にも示しながらやっていく必要があるだろうということです。
ただ、最終的には市町村のものを取りまとめなければなりません。市町村の計画と離れて県の計画をつくっても意味がありません。それは法律の中にも、市町村の状況を踏まえて県の計画をつくると書いてあります。だから、どうしたらいいかというと、コミュニケーションをとりながらやることです。我々も折に触れて県の考え方を出していく。そういう意味で今年度末を一つの節目にしたいと思います。それで市町村のほうでもつくっていく。その市町村の計画づくりにコミュニケーションをとりながら我々も協力をしていく。最終的には新年度前半に取りまとめる。市町村も恐らくそのころ取りまとまってくる。このような道筋を描いているところです。
ですから市町村の計画づくりを急がせているわけではなく、市町村とのコミュニケーションの中で一緒に市町村も計画をつくり、我々も計画をつくり、最終的には一緒にフィニッシュを飾ると、このようなことでの計画づくりが地方創生のスタートとして大事ではないかと思っています。
次に、地方分権改革に関する有識者会議にどういうふうに臨むのかということについてお尋ねがありました。
これは、やはり現場の声を生かしながら国のほうのシステムチェンジを図っていただく、これを強く求めることを基本スタンスでやっていきたいと思います。
最近の地方分権改革は大分変わってきたと、分権改革の有識者会議に出て私も思いました。以前の分権改革は、どうしても官僚主導の面があったのだと思います。その官僚の上に立つ、いわば省庁に引っ張られたような分権改革、結局、各省庁の三役といわれるような政務の皆さんもそれに乗っかって議論をしているという状況だったと思います。今次進められている分権改革が違うのは、現場のほうからの提案募集型ということで進めているわけですが、それをきちんと実現しようと政権の中枢が動いていることではないかと思います。
先般、農地改革の議論が出ました。これにより、国の権限だった400ヘクタールという節目の上のところが都道府県に移ることになりました。また指定市町村は、そうした農地の転用手続の権限を持つことができるようになりました。こういう考え方は今まで絶対出なかったものでして、農林水産省の根本にかかわるところですから、はね返され続けてきたのがこれまでの分権改革の歴史だったわけです。
今回ようやく動いたのはなぜかということですが、平副大臣のところに参りまして、その背景をお伺いしましたが、官房長官とか、それから農林水産大臣とか、それから地方創生担当大臣、この方々がかなり本気になって変えようということで精力的に話し合いをしたということがありました。今まではこれができなかったわけで、その辺が分権改革の動きの背景にあると思います。
そういうわけで、鳥取県から提出したことでも、例えば給食で大山乳業の使用を認めることだとか、それから関金のほうでギンザケの養殖ができるような中山間地の直接支払いの特例をつくるとか、そうした周辺のことも全部含めて、いろんなことについて地域限定通訳士等々、今回現実にも実現してきています。今までにはない状況が生まれつつあるのかと思いますが、これを本物にしていかなければなりません。今、地方分権改革については閣議のほうで認められて法案へと結びつくことにはなりましたが、その中身がどうなるか、さらに法律はできたけど、省庁が換骨奪胎する可能性がありますし、今引き続き検討の中におさめられていることが本当にいい方向で検討されるのかをフォローしなければいけない。ですから、今は1ラウンドが終わったところで、今後、第2ラウンド、通常国会明け以降は次の勝負になると考えています。
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<地方創生について>3 |
昨年の6月に制定された、いわゆる骨太方針で、希望どおりに働き、結婚、出産、子育てを実現することができる環境を整え、人々の意識が大きく変わり、2020年をめどにトレンドを変えていくことで、50年後にも1億人程度の安定的な人口構造を保持することができると見込まれる、とされています。政府が目指す我が国の人口は1億人程度であると思います。
鳥取県も総合戦略を策定されるに当たり、どの程度の人口を想定され、計画を策定されるおつもりなのか、平井知事にお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
鳥取県として総合戦略を策定するに当たり、どの程度の人口を想定して計画をつくっていくのか、また、人口減少を恐れるだけでなく、人口減少と向き合って持続可能な地域づくりということを考えていく、そういう視点が必要ではないかということのお話がありました。さらに、市町村の総合戦略の中でも人口について語っていただくべきではないだろうかということです。
人口については、先ほど議員のお話のとおり、2060年に1億人を維持しようと。これはなかなか簡単なものではないと思うのですが、そういう目標を建てられて、さらに2090年に人口の定常化、つまり減らない形で底を打つようにしていこうということです。
地域として考えると、大きなトレンドとして国全体でそれを目指すとしても、鳥取県は全国平均から見ると、過疎とか、あるいは高齢化が進んでいるところで、人口の流出圧力が強いことがあり、そして人口ピラミッドの構造が頭のほうが重たい形になっています。タマネギを逆にしたような形になっており、この辺にどうしても避けられない人口減があります。
前者のほうの社会減のほうは、何とか食いとめる戦略を立てるべきですが、自然減のうちの高齢化に伴うものは厳しさがあります。少子化のほうは対策を考える、そういう戦略だと思います。
高齢化のほうは、どうしても寿命がありますので、他界される方がいらっしゃる以上は人口の減少はどうしようもなく、しばらくは続かざるを得ないところかと思います。ですから、この部分は諦めるといいますか、前提とせざるを得ない。そのほかのところが可変要素、政策とか我々の行動で阻止し得る部分もあるだろうと思います。簡単ではありませんが、その社会増減からいくと、社会減をとめていく、できれば社会増へと導いていく。また、生まれ出る人口のほうについては、これをふやしていけるようにしていく。その辺の努力をすべきではないだろうかと思います。
私どもで先般、全協のときにもお示ししたように、従来の人口の試算からいくと、40万人を切ってくるという試算でした。亡くなられる方のほうは別として、どうしようもなく減っていく社会増減のほうの社会減はとめ、それから人口の新しい生まれ出るほうでいくと、それについて合計特殊出生率2.07というような置きかえ水準と言われる水準、こうしたところを想定できれば、42万人だとか40万人乗っかってくるという可能性がありますとお示ししたところです。
ですから、42万人になるかどうかはともかく、社会増減のところと、それから出生率のところ、ここに大きな焦点を当てながら対策をとっていくのが総合戦略の戦略であろうかと思います。人口の状況も、おのずからそういうことと連動して目標を考えていくということになろうかと思います。
市町村についても同様だと思います。市町村の総合戦略の中でもその辺を記載すべきでないかということでしたが、私どものほうでも市町村ごとのデータもこのたび出しました。さらに詳細なデータを今後も国のほうの材料も使いながらお示ししていき、市町村のほうの具体的で客観的な戦略が立てやすい環境づくりをしていきたいと思います。
ざっと試算してみると、先ほど申したように、増田レポートでは13の市町村、すなわち4つの市と、それから湯梨浜町、日吉津村以外の町は消滅可能性の町だということに規定されました。しかし、そうした人口対策というものがある程度効いてくれば、そういう前提で考えたり、また、試算のやり方を仮に実情に沿うような形でやれたとすれば、恐らくその13の消滅可能性都市というのは半分くらいまで減る可能性は十分あるとにらんでいます。
例えば琴浦町が消滅可能性のある町とされたのは、若い女性が52%減るという試算があったので、50%以上で消滅可能性ということになりました。北栄町は51%です。これらのところは、消滅可能性という定義からすれば、その人口対策が一定程度功を奏すれば、これは消滅可能性都市ではなくなるのは十分見通せるところだと思います。
ですから、そういうふうに客観的なデータも入れながら、こういう対策が効きそうだということを投入していくことで、増田レポートが示した世界とは違った世界を鳥取県でつくっていくことはできると思いますし、市町村にもそういう材料を提供していきたいと思います。
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<地方創生について>4 |
今、国を挙げて、人口移動を含め総合戦略の策定が最優先事項になっているわけですが、私は少し立ちどまって、鳥取県の農業、漁業を初めとする全ての産業を維持し、次の社会につなげていくためには、鳥取県としてどの程度の人口規模が適切なのか、改めて考えてみることも必要ではないかと思っています。
確かに鳥取県として人口推計は行っているのですが、それとは別に、次世代につなげるためにはどの程度の人口が必要なのか、そういうことを私は今、申し上げたところです。
今日の社会情勢の中で幾ら頑張ったところで、減少に歯止めをかけることはできても大都市のようになることは想像がつきませんので、逆に人口減少をただ単に恐れるということでなく、ある程度の歯止めをかけながら、人口減少とどううまくつき合っていくのか、そして鳥取県という地域を持続可能な地域としてどうつくり上げていくかということを考えることも、私は一つの選択肢であると思っています。
それについての意見を聞きたいと思いますし、もしその視点を欠いてしまうと、このたびの地方創生対策は従来の景気対策の域を出ないということになってしまうのではないかと心配しています。知事の御所見をお伺いしたいと思います。
もう1点、政府は1月22日に、昨年秋の臨時国会で成立した改正地域再生法の第一弾として、全国の4県16市4町から申請されていた地域再生計画のうち、地域の特色を生かした活性化策として24件中21件を認定されました。これらの計画には、それぞれの地域の特色、特性を生かした具体的な活性化策のほかに、人口をどれだけ伸ばすのか、人口減少をどの程度食いとめるのかといった目標がそれぞれ盛り込まれています。
したがって、鳥取県内の市町村の総合戦略の作成に当たっても、単なる活性化だけでなく、それは別に触れなくてもいいと思いますし、どの程度人口減少をとめるのかという一つの目標を盛り込みながら取り組むべきだと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
持続可能な地域をどうやってつくっていくかということですが、人口について、トータルでの話もありますが、大切なのはそれぞれのジャンルごとに考えることだと思います。すなわち中山間地でいえば、その中山間地の中でそこに移住してくるような人たち、智頭町の新田のような、そういう村にしていく、そういうムーブメントを広げていく。そのためには、農業だとか林業だとか、その辺がてこ入れの柱になるだろうと思います。そうして個別具体的に改善を図っていく。
産業領域としても、農林水産業対策もあれば商工対策ということもあるでしょう。それにあわせて都会地から人材を引っ張ってくる、それで持続可能な企業経営ができるような、そういう人材バンク機能なども果たしていく。このようなことでアプローチをして、それなりの産業の受け皿、雇用の受け皿というものをつくっていく。こういうように、やはり一つ一つの領域に対して考えていって、活力というものをつくっていくべきだろうと思っています。
あと、それから持続可能な地域をつくっていくのが大事だという、議員が強調されたことについては、例えば支え愛の活動をするとか、あいサポート運動のようなこともありましたし、また、防災の安心できるようなまちづくりをやる、そういうことで村々の連携を図っていく、そういういろいろと安心をつくり出すようなアプローチも大切なわけです。
そういうようなことが相まって、持続可能な地方創生の地域づくりということができるのではないだろうかというふうに考えています。
したがって、それぞれのところで何人ふえるとか何人減らないで済むとかというのを個別に積み上げていけば、一つのトータルの数字が出るのかもしれませんが、そのトータルの数字よりも大切なのは、それに至る具体的なアプローチ方法、これをしっかり議論することがとても重要なことだろうと思っています。
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<地方創生について>5 |
地方創生の推進に当たり一番気になるのが市町村間の競争です。当初、政府関係者の発言の中には、市町村はしっかり知恵を出してくださいと、市町村間の競争ですよというコメントがありました。私はふと、また競争ですかと。競争となると、全ての市町村が勝者にはなれませんし、選択と集中で選択された市町村はいいけれども、選択されなかった市町村はどうなるのですかと。財政支援が集中された市町村はいいでしょう。集中されなかった市町村はどうなるのですか。市町村間でまた格差が生じてしまいます。
住民の皆さんにとって選択権のない世界でそれぞれの行政が進んでしまうということを私は大変心配しています。結局その犠牲になるのは選択権のない住民の皆さんになってしまうのではないかと思います。こんな素朴な疑問を抱くのは私だけでしょうか。知事に所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
市町村の人口データについては、我々からも基礎データを提供させていただきたいと思います。また、市町村もそれぞれの総合戦略をつくられるときに、そういう人口についてのコメントを計画の中でされることを勧めていきたいと思います。そういう意味で、それぞれの市町村ごとにつくっていくということになろうかと思います。
また、競争が激しくなることで選択されない市町村の問題が出るのではないかということがありました。また、町が目標とする指標に向けて未来づくりに仕切り直していくと、こういう観点のお話がありました。
議員がおっしゃったことと全く同感です。別にこの地方創生というのは、どこかの市町村だけを選抜してそこを伸ばすということを考えるべきものではないと思います。むしろそれぞれチャレンジを起こして、このままではじり貧になるかもしれないので前向きに元気を出して前進していく、そのことが各地域でやっていくべきことだろうと思います。それは選別のためのものではなくて、それぞれの未来を描くためのものだと思います。
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<地方創生について>6 |
また、地方創生は、それぞれの市町村の未来づくりに向け、改めて仕切り直しの作業を行うということであると思っています。市町村ごとに地域の歴史、文化、風土が違います。それを一律に競争という土俵に上げるのではなく、それぞれの町が目標とする指標達成に向けて地域の皆さんでしっかり汗をかき、その地域らしい知恵を出していただくということが私は一番大切であると思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
議員が今表現されたのには、私も同感ですが、未来づくりに向けた仕切り直し、それが地方創生の最大のメッセージであって内実であると思います。それを旨として私たちも市町村や地域の住民の皆さんと一緒に絵を描き、行動を起こしていくことではないかと思います。
増田レポートにある選択と集中で特定の市町村に集中投資をするというのには、私はくみしないものでして、それぞれの市町村、さらに言えば中山間地域の頑張りを支えるべきタイミングだと思っております。それはたくさんのお金がかかるかというと、そうでもないだろうと思っていて、それぞれの地域のいいところを自分たちで分析することから始めていけば、それぞれの道筋は違っても、前へ向かって動いていくことができるだろうと思います。
鳥取県でも集落支援シートというのをつくり、いわば自己採点をして、いいところと弱みを考える、その中で対策を考えましょうということを始めました。このようなことがあちこちで進んでいけば、私は地方創生の道筋もおのずから見えてくるのではないかと考えているところです。 「勝った負けた」というための地方創生ではなく、みんなで前に進むための地方創生であるように、全体として県としても統括していきたいと思っています。
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<地方創生について>7 |
知事も御承知のように、ことしは地方分権推進法成立から20年を迎えます。国の権限を県や市町村に移譲する分権改革は、ある程度進んできましたが、自己決定、自己責任による本来の住民自治にはまだ至っていないというのが現状です。
したがって、地方創生を推進する原点は、やはり何といっても地方分権と税源移譲であると、私も県議会で何度も申し上げてきました。しかし、残念ながら税源移譲も思うように進んでいないのが現状です。
地方へ回す交付税の原資となる財源の根拠として、地方交付税第6条に、所得税及び市税の収入額のそれぞれ100分の32、法人税の収入額の100分の34、消費税の収入額の100分の22.3、たばこ消費税の収入額の100分の25並びに地方法人税の収入額をもって交付税とすると明記されています。その後、新たに消費税が引き上げられたりして、少し条文の中身も変わったりしていますが、所得税及び酒税について32%、これは実に49年間も変わっていません。この49年間に、まさにその当時と社会情勢も随分変わって、地方の時代だ、地方分権だ、地方創生だと、声高に叫ばれていますが、配分率だけは変わっていないわけです。27年度には一部法定率の見直しが予定され、900億円程度の増額が見込まれていますが、せめて私は配分率を5対5ぐらいに引き上げる、それぐらいの認識が国にあってもいいと思います。それくらいの大胆な政策を打たないと、やはり地方分権、地域主権というのはできないと思うのです。地方としても、もっと声を上げるべきだと思いますが、平井知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
私ども地方団体側は、政府総支出の6割ぐらいを支出しています。国のほうは4割の支出です。やはり身近なさまざまな行政サービスを提供するのが県や市町村の役割ですので、要はそちらの方がウエートが高いわけです。
入りのほうの財源ベースでいくと6対4で国のほうが多い。この逆立ちの構造を何とか直さなければいけないのが長期的な地方分権の命題であり続けていました。いまもってこれは解消されていません。直近のデータでもほぼ6対4のまま、国のほうに財源が残っており、やはりこの辺の是正はまだまだこれからということになろうかと思います。
今回、地方交付税法6条の3第2項に基づき、ようやっと地方交付税率と言われる配分基準に手がつき、所得税で33.1%の配分となったことは歓迎できると思いますし、900億円という、余り大きく額は出ていないですが、若干地方側に配分が寄ったということは、これは一定の評価はできるのではないかと思います。
ようやく今まで動かざる山だったものが動き始めました。この動きをあるべき姿へと結びつけていかなければならないと思います。そういう意味で、議員が例えば5対5というようなお話をされましたけれども、もっと地方側のほうに配分が行き、一般財源をもって市町村や県が自由度の高いお金により、効率がよく、そして実効性が上がる政策遂行ができるように、政府を挙げて地方分権に取り組むべきだと思います。このことは今後も市長会、町村会といったような市町村とも一緒になり、我々も高らかに旗を掲げて運動を展開していきたいと思います。
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<地方創生について>8 |
前段で申し上げたように、古くて新しい問題である人口減少問題が急に浮上して、今まさに国策の中心課題となって、全国一斉に地方創生祭りの感じがします。時間を経ての課題であり、本来なら時間をかけながら軌道修正していくことが必要であると思います。しかし、この終着駅の見えない地方創生という課題、国は先ほど言われたように当面5年という一つのスパンと考えているようです。将来も継続的に支援し続けなければならない課題であると私は思いますが、ただ、国としてはなかなかそれは継続しないではないかと思っています。
やはり短期間に一定の道標をつけるのが精いっぱいで、県としてもある程度短期決戦を覚悟して政策立案すると、この前から言われています。地域を守り支える人材を含めて、もう少し長い期間で、特に市町村自治体、目標を立てて取り組みをすべきと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
これについては議員のほうからきょう、質問戦を通じていろいろとお話があったように、長いスパンの中でなければ恐らく解決しないことです。ただ、その中で現在の限られた機会になるかもしれない、つまり財源配分として支援が5年から先どうなるかということがまだ見通せない中ですので、今、ある程度できることをやってしまって、将来に影響が残るような土台をつくっておかないと、これからの鳥取県の発展、成長には影響が出てしまう時期なのだろうと思います。 ほかの地域も同じような材料を持って、恐らく地方創生に挑んでくるはずですが、鳥取県もそれとあわせたチャレンジをやはりしていかないといけないのではないかと思います。
今、市町村とも話し合いを始め、若い方々や経済界などとの対話も進めていきたいと思います。そういう中で、未来の絵をしっかりと描くことが新年度のテーマではないかと思っています。
ぜひ伊藤議員が御指摘いただいたような流れの中で、大きく地方創生という考え方が市町村や現場で前へ進んでいくことを願っていますし、そのための可能な限りの材料提供や環境整備をやり、県も独自の少子化対策、それから移住対策、それから産業政策、こういうものを地方創生の枠組みの中で用意していきたいと考えています。
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<地方創生について>9 |
地方創生を議論させていただきました。本当に今まさに次世代の子ども達のために、あるべき姿の鳥取県の道標をつける時期だと思っています。ぜひともそれぞれの市町村も含めて、鳥取県もそうですが、やはり全ての英知を結集して議論し、そして将来を一緒に考えていけたらと思っています。また、いくべきだと思っています。
次に、財政問題ですが、先ほど言いましたように2月17日、本当にずれ込んでの閣議決定で、地方財政計画が国会へ送られたわけですが、地方交付税等の詳細についてはなかなかまだわからない、多分4月の交付決定を見ないと鳥取県の配分額がわからないというようなことで、非常に模索しながらのことしの財政編成といいますか、そういう状況だと思っています。
これまでも財政問題は私もずっと議論していますが、今まさに消費税の引き上げに伴い、あらゆる税制が一斉にガラガラポンされている中で、かなり注意深くその流れを見ていかないと、政府の思いどおりになってしまうのではないかと。やはり小さい自治体ではやっていけませんねと。道州制が必要ですねという議論に傾くのではないかと私は心配しています。
地方税制にとって大きなターニングポイントであった平成26年度税制大綱は、本当に財政力の弱い地方に配慮されたものだったのか。特にこのたびの地方法人特別譲与税の大幅な減額、鳥取県では15億円なのですが、大企業の少ない地方税財政にとって大きなダメージになりはしないかと、非常に心配しています。
さらにこの税制改正後に間髪を入れずに、意味深い増田レポートなるものが発表されました。ますますこの国は、先ほど申し上げましたように道州制へのかじを切ろうとしているのでないかと、そう思うのは私だけではないと思うのです。改めて知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
今回の予算編成に当たり、私どものほうでも税制改正等の税財政の状況を織り込ませていただきました。
議員御指摘の地方法人特別税並びに譲与税については、片方で法人事業税には復元がありましたので、こちらで10億円ほど増収がありましたが、他方で、それをもとに配分してくる、地方法人特別税を譲与してくるお金のほうからいくと、15億5,000万円減収ということで、差し引きでいくと5億円余りの減収ということになっています。
これは我々としても厳しい話ではあるのですが、片方でどちらかというと税体系を分権型に修正していこうという大きな流れの中で、片方で地方消費税等増収を図っていくこととのセットですので、やむを得ない面もあるかと思いますが、いつまでもこういう法人課税に依存していてはいけないのだろうと思います。
そういう意味で、地方法人課税についての付加価値税化、加算型付加価値税のほうの動きとか、さらに先ほども触れさせていただきましたが、消費税の配分に当たり、より地方の実情に沿ったような配分を行うこととか、議員が先ほど御指摘なさった交付税改革だとか、そうしたことを進めていかないと、こういう弊害が生まれ、税収の偏在化が逆に進んでしまうことになってしまいます。本来、地方分権のためにやっていたことなのですが、現場のほうでは格差が広がってしまうということにならないように、目をみはっていく必要があると思います。
道州制については、議員のほうから増田レポートのお話がありましたが、確かに地方の中の地域拠点都市というものを形成していって、そこに集中投資をしていこうというレポートが出されていますが、道州制本体の検討については国会レベルでは進んでいないのが実情です。恐らく年末まで、11月ごろに若干議論があったのですが、そのときに自民党内での話ですが、道州制ということよりも広域連合のほうに権限の重点を考えて、現実的なアプローチをしようではないかという議論が出かかったのですが、それが頓挫してしまっています。
では片方で、逆に道州制への弾みがついたかというと、そうでもなくて、道州制については国民的議論の中で検討していきますというような形に今、与党側のほうは、特に自民党のほうは変わってきています。公明党は今、道州制を枠組みとして考えて分権を図ろうという御議論ですが。
そういうように、従来とは大分空気が変わってきていて、以前のように道州制の検討を前提として物事を地方分権も含めて考えていくというスタイルから、地方創生ということも同時に入ってきて、分散を現実的に図ったり、現在の市町村の枠組みや県の枠組みで地域開発を進めていこうというモチベーションも高まっているのも事実だろうと思っています。
ですから、増田レポートと道州制を結びつけて考える必要まではないのではないかと捉えていて、私どもとしても冷静に道州制についての検討には注視をしていきたいと思います。基本的なスタンスとしては、地方のほうに抜本的に分権を図るような、連邦制に匹敵するような道州制であれば検討に値するとは思いますが、そうでない限りは現状の都道府県と市町村のレベルのほうが鳥取のデモクラシーの実情には沿っているのではないかと思っています。
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<地方創生について>10 |
まさに税制改正、次々変わっています。地方税法も改正され、今度は外形標準課税というものが新たにされました。そういうことで、県の地方税法も改正になるということで追加議案もされるということですが、また我々としてもしっかりとその税のあり方というものを、まさに今、我々議員一人一人がしっかりと見ていかないと大変な時期を迎えているという意味で、皆さん方とそういう状況を共有していきたいと思っています。
何度も申し上げますが、2月5日開催の臨時会冒頭の提案理由において平井知事は、地方創生に向けてロケットスタートを切ると説明されました。今まさに全国一斉に地方創生一色ということで、各自治体ともスタートラインに並んでいるわけですから、大臣の地元であるこの鳥取県が後塵を拝するわけにはいかないという平井知事のかたい決意というものも感じられます。
そこで、ロケットスタートを切るには何が必要でしょうね。県庁組織を強力なロケットエンジンとして整備して点火し、最大出力を発揮しなければ、地方消滅という強力な引力に一方ではなかなかこれを振り切って飛ぶことはできないと思います。
気になるのは、そのロケットエンジンの燃料です。ロケットエンジンの燃料は、職員の知恵と汗だと私は思います。その燃料が疲労こんぱいやため息、涙では、エンジンが点火しないばかりか、たとえ点火できたとしてもエンジンを最大出力に上げることはできずに、地方消滅という引力に負けてしまうのではないかと心配します。平井知事は、このロケットスタートを切るための必要条件についてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
前回の11月議会のときも伊藤議員とお話をしたことをおっしゃっているのかとは思いますが、私としては、職員の皆さんの職場環境として、当然ながら生活権も保障されているのが地方公務員法の中にも規定されていますので、そういう意味で安心して働ける職場づくりというのは心がけていきたいと考えています。
そういう意味で、前回もやりとりしましたが、職階制です。本県の場合、1、2、3、4ということで、大体人数割でいけば、1、2級のほうが多い、そういう編成になっています。これは本来、地方公務員法が目指しているのはこの世界なのですが、全国の実相とちょっと乖離がある。沖縄などはうちと同じように1、2級のウエートが4割とか35%とか、非常に多いですが、本県の場合はそこに厚みがある。そういうことを例えば職の問題、ポストの問題、職階制ですので、そういうポストの問題などとあわせながら改革していくとか、実際の給与の決め方だとか、若干工夫できる余地があるのではないかと思っています。
この給与原則だとか、職員のわたりをやめろというような議会の声もありまして、我々も悩みながらつくってきた鳥取県のシステムですが、そのシステムが余り過度にきき過ぎないようにすることも必要なことかなと思っています。
またあわせて、先般は小谷議員とのやりとりの中で申し上げましたが、これから地方創生という、いわば未来志向の政策づくりをしていく、単なる既成行政とは違うものを手がけていこうということになれば、若手の職員の意見というものを十分に取り入れていく、そういういわば協議の場というか、意見の交流の場、コミュニケーションの場というものを重視していかなければいけないだろうと思います。
さらに、職員の皆様のメンタル面での課題が発生しないような対策とか、庁風のこととか、さっき笑顔のお話がありましたが、そうしたいわば基礎条件をつくっていくことは、こうした大きな政策展開には必要なことだと認識しています。
私自身も関係方面ともよく協議、指示はさせていただきたいと思っています。
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<地方創生について>11 |
これから市町村は総合戦略を作成されるわけですから、どちらかというと市町村は、総合計画に代表されるように人口がふえる前提での計画作成にならされてきたので、人口が減少する前提での計画策定は、私はやはり一つの試練かと思います。
ただ、心配されるのは、総務省自治財政局の交付税算定に、現状の指標が悪い団体には割り増しし、指標を改善させた団体にはさらに割り増しをすると明記されています。その指標とは、人口増減率、転入者、転出者の人口比等です。つまり全ての市町村が県外から人々を受け入れるのならいいのですが、また県内の市町村同士で人口の奪い合いが新たに始まるのではないかと心配しています。そうならないよう、県としても助言をしてほしいと思います。
昨日の東部の会では、東部という一つの圏域の中で人口を考えるということも話されていたようですが、これからぜひともそういう一つの町村ごとの競争というのではなく、せめて圏域ぐらいで対策を進めてほしいと思います。
また、これからの計画策定をする地方創生の総合戦略の中で、それを担い生活していくのは、まさに今の若い人ですので、何度も言っていますが、県を初め全ての市町村が、若者の声が反映された計画になってほしいと私は願っています。最後に、平井知事に感想をいただきたいと思います。
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●知事答弁 |
熱い情熱を込めて地方創生、新しい地域をつくっていくことについて御見識を頂きました。議員がおっしゃるように、未来づくりのための仕切り直し、新しい未来の姿を描くための仕切り直しがそれぞれの市町村なり地域に今やるべき課題として与えられている。それを地方創生と呼ぶのか、地方の再生と呼ぶのか、それはともかくとして、そういうタイミングに来ているということだと思います。
大切なのは、市町村の間で過当競争を起こすことではなく、議員がイメージされているように、ある程度広いレンジの中で人間がだんだん大都市から地方のほうへと寄ってくる、その単年をとってみれば出入りが多少あるかもしれませんが、そういう圏域ごとなり県全体の取り組みも含めて、市町村の計画づくりをサポートしていく、これが重要だと思います。
鳥取県としても、今、東・中・西で鳥取創生チームを立ち上げて動き始めたところですが、個別の市町村とよく腹を割って話し合いをしていきたいと思います。
その際に、議員が一貫しておっしゃられるように、これは我々の生きていく時代よりも後の時代のことがテーマなのだと思うのです。その意味で、若い人たちの意見がどう反映され得るものか、それを意識的にやっていかなければならないと思います。若い人たちの意見を聞き、それを一つのベースとしながら、現実可能な政策アプローチには、例えば何省のこういう施策があるとか、県のほうのこういう施策があるとか、いろいろ組み合わせてやっていくのかもしれません。その辺のアドバイスなりオーガナイズは我々世代というか、議会や我々執行部、そういうところでも力を出しながら加工していく、形にしていくということではないかと思います。あくまでも未来を担う若い人たちに展望が開けるような、そういう地方創生をやらなければならないのだと思います。
「若者たち」という有名な、口ずさんだ歌がありますが、若者が行く道は果てしなく遠いというわけです。空にまた日が上るとき、若者はまた歩き続ける。その空に日を上げるのが我々の役目であって、それをやるのが地方創生の絵描きではないかと思います。そういう意味で、若者の行く道筋をつくっていけるかどうかを我々は真剣にみんなで議論をしていくべきときだと思います。
そんな意味で、鳥取県全体で全力を挙げてこれに取り組んでいきたいと思います。
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