平成12年9月定例会代表質問(平成12年9月22日)No.19

<住民の命と財産を守るために>

住民の生命と財産を守るために、まず救命救急医療体制の整備についてお伺いします。
 8月の下旬に私の父が突然亡くなりました。議員の皆さん方には御会葬を賜り、この場をおかりしてお礼を申し上げます。
 私の父は亡くなりましたが、最期に政治家となった私に2つの課題を残してくれました。その思いを込め御提言を申し上げたいと思います。
 まず第1点は、第3次医療体制というか、救命救急医療体制の整備です。
 8月24日深夜、その日も元気に農作業をしていた父が、突然大きな深呼吸とともに意識を失いました。私と娘の2人で人工呼吸をしながら救急車の到着を待ち、倉吉市内の病院へと搬送しました。搬送された病院では、脳神経外科の医師と看護士に対応していただきました。結果は脳梗塞ではなく心筋梗塞のため、手の施しようがなかったというわけです。
 人の命は地球より重いと言います。もしこうした一刻を争うときに、スタッフのそろった救命救急センターが中部地区、西部地区にあったら、どれだけ多くの人が助かるのだろうかと思いました。また、万全の施設でできる限りの処置がされれば、遺族の方も納得されるものと思います。行政の基本使命は住民の生命と財産を守ることです。先日は中部地区でも救命救急医療のあり方が議論されたようですが、ぜひとも片山知事には救命救急医療体制の整備を中部地区、西部地区でも進めていただきますよう、お願いと御提言を申し上げます。
 第2点は、農家の大黒柱といいますか、主体的に経営に当たっていた人に突然の事故や不幸があったときのフォローといいますか、アフターケアができる体制を整備していただきたいことです。
 我が家も3ヘクタール弱の農家です。農作業は主体的には父がしていたものですから、突然の死には、悲しみより先行き不安の方がいっぱいです。せめてもの救いは、週2回ほど訪れていただく農業改良普及部の普及員の栽培指導であり、大変感謝しております。
 出荷時期を迎えたハウス栽培のミニトマト、幸い機械は使いなれていましたから、何とか収穫時期までは頑張ろうかと思いますが、中には、投げてしまえ、切ってしまえとか、やけな心配をしていただく方もありますが、農家は農作物を投げてしまうわけにはいかないのです。わずかな農地ならいいですが、逆に農地がたくさんあることは、実はとてもつらいことなのです。我が家も今すぐ農業をやめたらどうなります。農地の税金、圃場整備の負担金、農道の負担金、水利組合の負担金、ハウスのリース料と、現実は大変です。しかし、今の農業はかなりの投資も必要で、農業を営むことによって何とか回っているのが現実です。
 農家では、経営者が突然亡くなられたために、結局飼っておられた牛を二束三文で手放されたり、栽培方法がわからなくて出荷目前の農作物を収穫されなかったりと、農業を放棄される話を随分聞きます。せめて収穫目前の農作物は、管理方法や栽培方法などを指導したりして、収穫だけは行うとか、さらには農地の管理の相談、負債整理の相談など、本当に農家が困っているときに間髪入れずにサポートや相談できるシステムを農業改良普及部、町、農協の三者でつくる必要があると思います。こうしたシステムがあれば、多くの農家の皆さんも安心できるわけですし、農地の流動化の促進に役立ち、優良農地を耕作放棄地として防ぐことにもつながると思います。片山知事の御所見をお伺いします。

●知事答弁

 救命救急センターの設置など救命救急医療体制を整備すべしと、こういうことです。
 私も、中部、西部では、今でももちろん救急医療体制というのは敷かれておりますけれども、必ずしも十分な救急医療体制でないという認識を持っておりますので、7月に西部に、米子に行きまして、そこで私も出席して、西部地域の救急医療を考える懇談会というものを初めて開きました。そこには、西部の医療の中核であります鳥取大学医学部の附属病院の皆さん、医師会の皆さん、さらには救急機関の職員の皆さん、関係機関の方が出てこられまして、今後の西部の救急医療体制を充実するには何が課題で、どうすればいいのかということを検討することに着手しました。現在は、それを踏まえて実務者で論点整理をしていただいておりまして、ぜひこれを救急医療体制の本当の充実につなげたいと今考えているところです。
 中部も同じで、これは私は日程が調整できなくて、私自身は出ませんでしたが、関係機関が、県庁ももちろん出て、9月に意見交換を行っております。これから、これらをもとにして中部、西部の救命救急医療体制の確立に向けて取り組んでまいりたい、こう考えております。
 伊藤議員のお父さんが亡くなられたことに伴うもう1つの、2つ目の教訓ですが、農家の支えといいますか、中核の方が突如亡くなられたときの農家の実情というのは、本当に推察するには余りあるものがあると思います。私も伊藤家でミニトマトが実っている状態を見て、収穫が大変だなと本当に思いました。こういう緊急時に農家をサポートする体制というのは、必要性がそんなにはないかもしれませんが、しかし、実際に生じた場合には、そういう緊急サポート体制があれば農家は随分助かると思います。そのことが、ふだんから農家の方が安心して仕事に取り組めることにもなりますし、後継者を確保するという道にもつながるのだろうと思います。伊藤議員の本当に悲しい体験から出た貴重な御提案だと私は受けとめました。ぜひ農協を中心にして、そういう緊急サポート体制というものをつくっていただきたいと思いますし、県もその際には農業改良普及部を含めた必要な協力もしたいと思います。したがって、関係機関とこれからよく相談したいと考えております。