平成17年9月定例会代表質問(平成17年9月26日)No.33
<日野町の財政状況について> |
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●知事答弁 |
今回、日野町の方でいわゆる地方財政再建促進特別措置法に基づく準用再建の道を選びたいと、こういう発表されたのは、私も新聞報道で知りまして、寝耳に水でした。そこで改めて日野町の財政状況というものを見てみたわけです。それからもう1つは、日野町の方で今回の発表をするに当たり、日野町財政の現状とこれからの対応というのをまとめておられて、それも改めて拝見しました。その点で気がつくことを少し申し上げますと、日野町では、財政がにっちもさっちもいかなくなるという見通しを立てておられて、その背景として、1つは鳥取県西部地震の復興経費の財源として多額の借金を県からして、その返済時期を迎えたことが1つの背景であると。それからもう1つは、交付税が削減されてきたのがその背景だと。この2つを上げておられるわけです。 そこで、県が貸し付けたお金がどれほどの財政圧迫要因になっているかということですが、実は、今年度日野町から県が返してもらいます無利子融資の償還金は 4,000万円です。一方、日野町が今年度返さなければいけない公債費の額は7億 3,000万円です。7億 3,000万円を返さなければいけない、これは大変な金額です。ただ、その代表選手に県に返す 4,000万円を取り上げて、だからだめになったのだというのは、これは何とも説明がつかないわけで、この背景説明、原因説明にはちょっと詭弁があると私はにらんでおります。むしろ過疎債ですとか、過去にいろいろなハード事業に伴います借金を重ねておられて、これが積もり積もって今年度7億 3,000 万円返さなければいけない、これが最大の要因だろうと思います。 もちろん、震災復興のために県からお金を貸しております、無利子です。けれども、その返済額をもって財政破綻の原因だと言われたら、県としてはせっかく無利子融資をしたのに立つ瀬がないわけで、この点には私は少し違和感を持っております。 もう1つの理由として、交付税が減ってきた、これは事実ですが、これはどこの団体も一緒です。日野町だけが交付税が減っているわけではありません。したがって、これは理由にならないわけです。交付税が減ったから再建団体の道を選ぶというのなら、全国のすべての団体が財政再建団体にならざるを得ないというわけです。 日野町が作成された「これからの対応」という文書には、今後の対応策が幾つか書いてありまして、その1つは、例えば新たな起債事業は極力抑制して、起債償還金の弁償を促進しますと書かれているのですけれども、今改めて、今日時点からハード事業を縮小することにされたのかと、これはよく分析しておりませんけれども、今まではどうしておられたのかという気がしないでもないです。もう1つは、町の行財政もこれから適正な規模に改革していきますと書いておられますけれども、これもこれから始められるのかという、少し驚きです。行財政改革への取り組みが少し遅いと思います。県などは、私が就任した平成11年度から行財政改革に取り組んでおり、できるだけ借金がふえないようにということで、批判も顧みず、いろいろなハード事業をやめてきているわけですけれども、伺いますと、日野町では16年度の末あたりからやっと行財政改革に取り組まれているような印象もあり、行財政改革の取り組みがちょっと遅過ぎるのではないか。これもそれぞれの自治体の事情があることですけれども、今から見ると、そういう印象はぬぐえないと思います。 最後に町民の皆さんに今後は情報公開に徹しと、こう書かれているのですけれども、今まで情報公開をやっていなかったのかという、これも本当に今さらこんなことが出てくるのかと思うわけで、こんなことが財政が今日のような状況になった背景であり遠因であり、真因であるのかなと思っているわけです。 もう1つ、奇異に思いましたのは、実は準用再建団体になるというのは、どんなに努力しても結局だめで今年度赤字が出てしまいましたと、それが一定の標準財政規模に対して2割だったでしょうか、それを上回る赤字が出てしまって、にっちもさっちもいかなくなりましたというので財政再建団体になるのです。したがって、これは当該年度努力をしてもどうしても赤字がふえてしまって、来年度起債ができないと、こういう話になったときに駆け込むわけです。それをもう先を見越して19年度から財政再建団体になりますなどという計画的財政再建団体というのは、今まで私も聞いたことがない。長年地方財政に携わっておりますけれども、こういう計画倒産というのは聞いたことがないわけです。今から19年度までまだ時間がある。今までやっていなかったというのもありますけれども、まだそれでも時間があるわけで、これからやれることはいっぱいあるわけです。ただ何となく、こうなったらああなります、このままいくとこうなります、準用再建団体になりますというのは、何か、なすすべなき無為無策倒産みたいな、そんな印象もあるわけで、正直言いまして、私はちょっと奇異な感じがしております。今からでも遅くないですから、こんなのにならないためにどうすればいいのかという大胆な行財政改革をぜひやられるべきだと私は思うのです。何となく無機質的に単純計算で準用再建団体になりますというようなことは、ちょっと信じられないのです。 実は、再建団体になるというのはそんなに生やさしいものではないのです。私は昭和49年に公務員になりまして自治省に入り、しばらく後に熊本県庁に出向を命ぜられて、熊本県地方課というところで仕事をしたのですけれども、そこで最初に担当した仕事が、この準用再建団体の管理でした。これはもちろん当時、自治大臣が所管をするわけですけれども、県の地方課がそれの前線で管理をする係になっておりまして、私がその責任者になったのですけれども、それはそれは大変なものでした。極端なことを言えば、鉛筆1本買う予算をつけるのも県の地方課を通じて自治大臣の許可が要る。やむを得ず予算の補正をする場合も、一々全部、県と国の許可を受けなければいけない、日参しなければいけない、こういうことです。給与などもすべて労使の話し合いもあるものかは、国の方で一方的に決めてしまうということになるわけで、何かちょっと勘違いされている節があるのではないか。準用再建団体というのは非常に居心地のいい、コンフォタブルな、面倒を見てもらいながら起債もしながら再建できるという、そういう楽なことと勘違いされているのではないかと、そういう印象を受けました。私も直接お話を伺っておりませんので、これは新聞報道で見た感じでの印象ですので、当たっていなければ失礼ですけれども、そういう感じに思っております。 すると、どうして自主再建の道ではなくて準用再建団体の方を選ぶように助言したのかということですが、私は助言などしておりません。相談も受けておりませんので、これは町の方で自主的に判断されたものだと思います。 こうなったのは、西部地震の復興事業に問題があったのかということですが、それは日野町も西部地震によって大きな打撃を受けまして、それは財政上も大きなダメージになったことは確かです。ただ、これは日野町だけではなくて、当時の西伯町ですとか会見町ですとか、そういうところも同じような打撃を受けているわけです。 ただ、日野町が少し違うというのは、例の住宅再建支援を行う場合に、県の方がその事業のスキームを決めまして、例えば家屋の修繕ですと県が3分の1を出します、地元の市町村が3分の1を出してください、残りの3分の1は本人の負担という、そういうスキームを決めて、総じてそのスキームどおりにやったのですけれども、日野町だけは本人負担なしということにされた、これは少なからぬ財政への圧迫をもたらしたと思います。ただ、それが決定的な理由になったとは思いません。これも分析はしておりませんけれども、そんなに多額の金額が重なったということではないと思います。 例えば、皆さんが 150万円目いっぱいの補修をされたとして、本人負担部分が50万円ですから、その50万円を町がかぶったということで、これを例えば 1,000戸やっても5億円でしょうか、それなりに大きい金額ですけれども、それだけが決定的な打撃を与えたというわけではないような気がします。やはり、地震による影響もありますけれども、それ以外のハード事業、例えば庁舎の問題ですとか文化センターの問題ですとか、広域農道ですとか、いろいろなハード事業を行ったことに対する、その元利償還金が多額に上っているということ。それらは当時としては賢明な措置だったのでしょうけれども、総じて、多くは後で元利償還のある、例えば過疎債というような起債を活用されております。したがって、いつも言いますけれども、今が元利償還のピークになるのであれば、交付税も交付額がピークにならなければいけないのに大幅に削減されている。要するに、算入したとは言うけれども、手取りは減っているという事態で財政が非常に困難になっているということだろうと思います。 県の貸付金を繰り延べしてもどうにもならなかったのかということですが、具体的に正式にそういうお話もありませんでした。もちろん、以前からチャラにしてくれないかとか繰り延べしてくれないかという話は、非公式にないわけではありませんでしたけれども、そういう話は必ずしも正式にあったわけではありません。 ただ、先ほど言いましたように、今年度の償還金が 4,000万円、来年度が 8,000万円ぐらいだと思いますけれども、今の日野町財政の将来見通しを見ますと、県のそういう4, 000万円なり 8,000万円なりを繰り延べしたから事態が一挙に解決するというものでは到底ないわけで、元利償還金は県の寄与する部分が5%とか1割とか、その程度で、あとの本体の方のハード事業の借金返しの方が、これが大変だということだと思います。 他の震災市町村でも、日野町と同じように財政危機が到来するところがあるのかということですが、今のところそういう非常に厳しい財政状況に陥っているという認識はしておりません。ただ、午前中の話ではありませんけれども、これも粉飾があるとか、そういうことがありましたらわかりませんけれども、適正に決算されていれば、情報公開されていれば、そういうことはないと思っております。 |
<日野町の財政状況ついて>No.2 |
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●知事答弁 |
日野町の問題に関連して、準用再建団体になると県や国の支援が受けられるので、そっちの方がいいというような安易な考え方があるのではないかとのことでしたが、これは当事者に伺ってみないとわかりませんけれども、私も新聞を見て、伊藤議員と同じようにそういう印象を受けました。 ちょっと勘違いがあるのではないかと思いましたが、1つは、一定の規模を上回る赤字が生じたときに、以後、一定の地方債を起こせなくなるという規定が地方財政法にあります。標準財政規模の2割を超えるということだったと思いますけれども。そうしますと、基本的にハード事業はほとんどできなくなるということがありますので。ところが、準用再建団体という正規の手続をとると、国の管理のもとで、国が管理した上で、国の認めたものについては起債ができるという、こういうことになるわけです。したがって、ハード事業がある程度できやすくなるという印象は受けるのですけれども、再建団体になると、事実上、ハード事業ももうほとんどできなくなるのです。ですから、ちょっとその辺に勘違いがあるのではないかという気がします。 もう1つは、実は準用再建団体というのは、準用といいますのは、昭和29年に地方財政再建特別措置法ができて、そのときは準用ではなくて本物の再建団体の制度だったわけですが、それが時限法で期限が切れたのですけれども、その後も準用を認めようということで今日まで来ているわけです。実はその後、再建団体になっているところはほとんどないわけです。最後は福岡県の赤池町というところがなったのですけれども、そのとき、交付税がどんどんトータルで伸びる時期だったものですから、再建団体になったものの、交付税が伸びたことによって一気に赤字が解消したわけで、その赤字解消の再建成功の例が喧伝されていまして、何だ、再建団体になったら楽に再建できるではないかと、こういうような錯覚があるのです。それは、再建団体になったから楽に再建できるのではなくて、たまたまその時期、赤池町が再建期間中に地方財政が膨らんで交付税がどんどん伸びたので、一気に解消できたと、こういうことなのです。今は全く情勢は逆で、どんどん交付税が厳しくなっているときに、再建団体になったからといって簡単に再建ができるわけでは決してないということもよく関係者の皆さんは認識しておくべきだと思います。 |