平成13年2月定例会一般質問(平成13年3月14日)No.1

<行政評価システムと臨時財政対策債について>

 初めに、行政評価システムの導入について片山知事にお伺いします。
 行政評価システムの導入につきましては、昨年の9月議会の代表質問の中で小玉議員と私が議論を提起したわけですが、片山知事に軽くいなされましたので、多分議論が最後までかみ合わないかと思いますが、再度質問したいと思います。
 確かに片山知事が答弁されたとおり、現在の地方自治法上は、監査委員と議会に行政評価をする権限が与えられております。また、これらの機能が十分徹底すれば事足りる。行政評価システムはしょせん自己評価であり、どうしても自己満足的な評価になりがちである。行政評価というのは他者が評価する緊張感の中で評価することこそが一番大切な評価につながると答弁をされました。その思いを反映されてか、このたびの機構改革において総務部に行政監察室が新しくつくられますが、これまでの延長線上の考えに基づいて設置をされるのか、お伺いいたします。
 また、行政評価システムについての考え方に変わりがないのか、お尋ねいたします。
 私は、行政評価システムに対する片山知事の考え方は、間違いなく一つの考え方であろうと思います。片山知事も就任以来、行政のあり方を従来の手法から変えようとされている努力はだれでもわかります。確かに今行政に問われていることは、いかに質の高い行政サービスを効率的に提供できるかであろうと思います。これまでの行政は、自己批判さらには改革ということが一番苦手であり、しかも終わった事業の見直しなど到底できる体質ではありませんでした。このことは、県だけでなく市町村にとっても同様なことが言えると思います。
 そこで、時代の要請に基づき、いかに質の高い行政サービスを効率的に提供できるかという課題の中で、その一つの手法が行政評価システムの導入であり、取り組みであると私は思います。全国的にも行政評価システムを既に積極的に導入している都道府県を初め市町村はたくさんあるわけですが、その取り組み状況は事務・事業評価であったり政策評価であったりと画一的なものでなく、評価のあり方もまちまちです。
 私が申し上げたいのは、片山知事が議会のたびに言われているように、行政が提案したものは絶対ではありませんということです。とするならば、監査や議会など第三者からの評価を受けることなく、職員みずからが自分たちがよかれと思って進めている事業のその時々に、成果や課題を客観的に評価し、次の事業や施策に反映させることが極めて重要なことであり、いかに質の高い行政サービスを効率的に提供できるかということにつながると思います。
 確かにみずからやったことをみずから評価することは評価が甘くなるということは十分に考えられますが、質を求めるとするならば、これからは外部からの評価のみに頼るのではなく、内部からの視点でより鮮明に成果と課題を明らかにできる行政体質をつくり上げることが、将来の事業をより充実したものにすることだと思います。特にこうした速い時代の流れと県民ニーズが多様化する中、より県民の視点に立った事業や施策をするためにも、行政評価制度を定着させることが不可欠なものと私は思いますが、片山知事の御所見をお伺いします。
 次に、これまでにも何度か議会で財政問題を質問しておりますが、このたびは臨時財政対策債について片山知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 平成13年度の国の交付税総額は約20兆3,500億円と発表されたところです。こうした中、長引く景気の低迷の中で、出口ベースに比べ入り口ベースとなる国税5税の財源が確保できないため、交付税特別会計として借金を重ねながら綱渡りの運営がなされてきたわけですが、平成12年度末の交付税特別会計の借金残高は、予算額の倍近い38兆1,000億円と言われております。こうした状況の中で、当面平成13年度から15年度までの3カ年にわたり、地方交付税を現ナマですべてを交付するのではなく、県・市町村とも交付税額の一部、鳥取県においては5.8%を臨時財政対策債、つまり赤字地方債として交付税を肩がわりしてくださいよという地方財政対策が新しく盛り込まれたことです。
 なお、この赤字地方債の元利償還金は、後年度に全額交付税として措置されるため、起債制限比率には影響を及ぼさないという奇妙な制度でもあります。つまり、お金のない痛みを国と地方で2分の1ずつ分かち合いをしましょうという制度であり、鳥取県では本来13年度に交付税として1,680億円を見込んでいましたが、このうち98億円は県債として鳥取県が借金をして賄ってください、残りの1,582億円を現ナマの交付税として交付しますよというシステムです。
 もともとこうした地方交付税特別会計の財源不足が6年も続けば、地方財政の抜本的な構造改革を行うか、地方交付税率を引き上げての対応をするのか、それが本来の姿であり、このたびの改革は目先を変えた小手先の改革にしかすぎず、ただ単に将来へ負の遺産を先送りするだけではないかと思いますが、片山知事の御所見をお伺いします。
 また、赤字地方債への交付税の振りかえ割合が現在のところ約6%ですが、来年度以降、この振りかえ割合が今より大きくなる予想が具体的にあるのか、お伺いします。

●知事答弁

 最初に、このたびの機構改革で行政観察室を設けることにしておりますが、それといわゆる行政評価との関係についてですが、私は行政評価についてこの議場でも幾たびとなく議論をしたわけですが、そのときに申し上げたのは、行政評価というものを全く否定することを申し上げたわけではないのです。
 ただ、今日地方団体、国もそうですが、行政評価というものが非常に脚光を浴びて多くのところで礼賛をされているのですが、これは何か基本を少し見失っているのではないかという気がどうしてもするのです。それはどういうことかといいますと、伊藤議員も先ほどおっしゃられましたが、既に我が国の地方自治制度の中には行政評価のシステムというのはきちっとビルトインされているわけです。それは事前評価と事後評価がありまして、事前評価は予算査定という行政内部の評価です。これは膨大な人数と膨大なエネルギー、時間を費やすわけです。その後で議会に提案した後、議会での審議という事前評価もあるわけです。事後評価は、我々も決算の調整でやりますけれども、その後監査委員の監査もありますし、議会で決算の認定という作業を通じて事後評価があるわけで、きちっとしたそういう事前、事後の評価が既に仕組まれているわけです。
 しかし、今日行政評価というものがこれだけ取りざたされるということは、基本的な自治法で仕組んだ制度がちゃんと機能をしていないから、別の形の行政評価が要るのではないかということではないかと私は思うのです。本来ならば、既存の本来のシステムが機能しないのならば、それをそっちのけにして新しいシステムをつくろうではなくて、本来の機能するはずの仕組みを活性化させる、本来の機能を取り戻させる、これがやはり本来あるべき姿だろうと私は思うのです。
 行政評価は政府の方からも出てまいりましたが、私は、政府のケースを見ますと確かに本来の機能というのはなかなか発揮しづらい面があるのかなという気はします。私も政府の一員でありましたから。それはどうしてかといいますと、まず事前評価であります予算編成というのは極めて形骸化しております。シーリングの名のもとに中身よりも本当に量的な管理、しかも計数の整理に専ら力を費やしている。去年に対して何%かというその量的管理さえしておれば中はどうでもいいと、そこまでは言いませんが、余り中身について一々吟味していないのが実情です。そういうことでは事前の行政評価はほとんどなされていないと言っても過言ではないと思います。
 議会の審議ですが、国会の審議を見ていましても、この間もちょっと国会の審議のあり方を私も批判いたしましたけれども、予算審議といってもほとんど予算の中身は審議していない。専ら政治姿勢の問題だとかゴルフの問題だとか、そういうことばっかりやっているわけで、ああいう状態を見ていますと、やはり国の場合には事前評価というものはほとんどできていないのではないか。では事後評価はどうかというと、事後評価も膨大なもので、決算の審査を国会がちゃんとやっているという記憶も私もありません。そうしますと、どうしても質的な劣化が起こってまいりますので、何か新しい仕組みとして行政評価が要るのではないかということが出てくるのは、現実の問題としては当然だろうと思うのです。
 国の場合だって、本来はきちっと大蔵省が、今は財務省でありますが、シーリングなどというつまらない仕組みはやめて、本当に一つ一つ中身を吟味するということに立ち返ってもらいたいと思いますし、議会だって予算委員会は予算のことをきちんと審議すべきだと思います。それができれば相当改善できるはずでありますけれども、今のようなていたらくではなかなか難しいでしょうから、国の場合は行政評価というものが活躍する舞台もあるだろうと思います。
 では、県の場合はどうかといいますと、県は国ほど図体も大きくありませんし、国ほど形骸化しておりませんから、まだまだ本来の機能が持っている力を取り戻す脈があると私は思っております。今年から予算編成も、量的管理しかやっていなかった公共事業などにつきましても質的管理をやることにしまして、これからもやろうと思っておりますし、その他予算編成の過程で、よりチェック度というものを強化しようと思っております。監査委員の事務局も充実したいと思っておりますし、議会でもぜひ常任委員会等を通じて予算の事前チェックシステムをもっと強化をしていただきたい。これが私の本心です。
 ともすれば本来の機能がうまくいかないから、また新しいものをつくろうという屋上屋を架すということはよく見られるのです。全国で監査委員が余り機能しない。監査委員事務局でさえ不正をやっていたということが発覚をしまして、それでは外部監査を導入しようということになって今日になったのですが、私はあのときに、本来ならば監査委員というものがもっと本当の力を発揮するように改善する、そっちの方向を選ぶべきだったと思うのです。外部監査を導入するのではなくて。そのためには例えば監査委員の独自性、独立性をもっと強化するとか、場合によっては監査委員自体を公選制にするとか、そういう方向だってあったはずですが、既存の監査委員制度にほとんど手をつけないで、そして外部監査制度という屋上屋を架したというのは、方向としては余り褒められたことではないと私は思うのです。
 何か物事がうまくいかないときには、やはり常に基本に立ち返るということが必要だろうと思います。ですから、あえて申し上げるのですが、その基本とは事前評価の予算と議会のチェック、事後評価の監査委員と議会のチェック、こういう機能を取り戻すことが必要だろうというのが私の基本的な考え方で、今も変わっておりません。
 ただ、そうはいいましても、私自身今知事として県行政を預かっておりまして、今各部各課で行っておる仕事について例えば途中経過を点検してみたいとか、伊藤議員が言われるように、外部チェックを受ける前に内部でも少し点検してみたいとかというのはあります、正直に言いまして。仕事をしている各部局に聞きますと、おおむねつつがなく運営しているという返事が返ってきがちです。それを少し離れた客観的な立場で、本当にうまくいっているかどうかということをチェックしてみたいという欲望は私にもありますので、そういう意味で、このたび総務部に行政監察室を設けて、部内のチェックではありますけれども、少し違った立場で途中経過の点検とか事後の点検をしてみたい。
 これは、いわゆる伊藤議員が念頭に置かれておられます行政評価とは異なります。事細かにすべて網羅的に、すべてのあらゆる業務を点検するというそういう意味での行政評価ではありません。やはり気のついたこととか、関心を持っていることとか、例えば外部から指摘のあったこととか、そういうものを重点的、個別的にチェックをしたいということです。したがって、すべてを網羅的にやるわけではありませんが、個別の実践を通じて、それを一つのモデルというか素材にして、ほかの部局、ほかの分野にもこれを応用していくというプロセスをとってみたいと思っております。
 昨日も少しお話しましたが、現場の事務に携わっております職員自身の客観的な評価といいますか、その業務について改善点とか、むだがありはしないかとか、そういう率直な意見を出してもらいたいと思っております。従来はそういうものは余り組織の外に出てこないのですけれども、それをあえて引き出す工夫をしたい。職員の積極性を促すような仕組みも考えてみたいと思っております。
 そんなことを今考えておりますので、繰り返しになりますが、ぜひ監査というものも本当に本来の機能を発揮するようにしていただきたい。遠慮なくやっていただきたいと思っております。今ももう既にやっていただきつつあります。監査委員の事務局の充実も図りたいと思いますし、監査の分野も広げてもらいたいと思っております。議会におかれましても、ぜひ十分なる事前・事後のチェックをお願いしたいと思います。
 今回の地方財政対策で、いわゆる臨時財政対策債というものが出てまいりまして、従来は交付税が不足しているときには交付税特別会計を国の方で借金をして、そして普通の交付税とまぶして地方団体に交付をした。もらう方は、その中に借金がどれだけ入っているのかわからないままもらっていた。これを、今回はそういう手法を変えて、足らない部分はそれぞれの地方団体でとりあえず借金をしておいてもらって、後で後年度交付税で返していくというやり方に変えたわけです。
 本質はそんなに変わらないと思います。しょせんは交付税会計で借金をしておくのか、それとも今地方団体が借金して将来交付税で返してもらうのかというのは、結果的には同じようなものだろうと思いますが、交付税が今現時点において国全体で足らないのですよということを地方団体、我々が自覚をするという意味では、それなりの教育的効果、啓発効果はあるのだろうと思います。しかし、しょせんはびほう策であるということには変わりはないと思います。やはり本質的に例えば交付税率を上げる、もしくは対象税目をふやすという形で交付税の総額をふやすのか、それとも地方財政計画をつくるときに歳出をできる限り削減をして、歳入と歳出のアンバランス、収支不足というものを小さくしていくか、そこが本質的な解決になるわけですが、そこのところは余り手がつかないで、借金のつけかえをしたような形になっております。これが実態です。
 今後、この振りかえ額といいますか、地方団体で行う特例債、財政対策債というものがふえるのかどうかということですが、これはわかりません。毎年国の方で地方財政計画というものをつくって国会の承認にかからしめるわけですけれども、その段階で財源不足額、いわゆる収支不足が全国でどれくらい出るのかということと関連をいたしますので、私どもでは今わかりません。さっき申しましたように、できる限りこの財源不足額というものを少なくする、なくするということが地方財政の健全化の一歩でありますので、交付税の総額をびほう策ではなくて抜本的にふやす、そういう制度改革をやるか、それとも思い切って歳出を国全体として削減する地方財政計画にするのか、これがこれからの解決策だろうと思います。

<法期限後の同和対策事業について>bQ

行政評価システムについては、私と知事とちょっと思いが違いますけれども、やはりこうした時期ですから、みずから、中からどういう形であろうと、政策決定前、途中、その後ということで絶えず見直すといいますか、やはり絶対的ではないわけですから、いろんな反省部分をきちんととらまえて次の事業に生かしていく、将来に生かすと。その辺を柔軟に取り組んでいただきたいと思っております。
 次に、財政問題ですけれども、私が心配しておりますのは、地方交付税が赤字地方債に振りかえられることによりまして、やはり市町村財政というのは少なからずとも影響があると私は思っております。これまで市町村は、県も含めてでありますけれども、国の景気浮揚対策事業とそのおつき合いという中で、交付税算入交付税算入という仕掛けのかけ声の中で膨大な借金を抱えてまいりました。そうしたことで公共事業をやってきたのですけれども、このたびの赤字地方債というのは、さらに今度は市町村が独自で起債を起こすわけですから、借金をふやすということになります。幾ら国が保障するという赤字地方債といえども、やっぱり借金は借金だと私は思います。したがって、それぞれの市町村が住民の皆さんの望むような事業をいざしようかというときに、本当にそれができるのだろうかという部分を私は心配しますけれども、その点について片山知事の御所見をお伺いします。
 どっちにしても、多分来年度も振りかえ割合がふえてくると私は思います。向こう3年間ですから、今年、来年、再来年。鳥取県にしてもことし98億です。来年がふえたところで100億を超えます。それが3カ年になるとまあまあの金額になります。300億になります。そうしたときに、鳥取県の財政状況、中期財政見通しは出ておりますけれども、交付税で後年度に返すというものの、本当に私は厳しい状況になろうかと思っております。
 そういう意味で、この制度が3カ年続くのですけれども、片山知事としてこれでいいのか。確かに制度の中身が変わっただけだと知事は言われたのですけれども、それでいいのか。それとも国に何かアクションを起こされるのか、あわせてお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 伊藤議員が、今のような地方財政のシステムを続けていくと市町村の財政が憂慮すべき事態になるという御指摘で、そのとおりだろうと思います。私は、市町村だけでなくて都道府県も同じ状態、東京都はちょっと別にしまして、他の道府県も同じ心配があると思います。赤字地方債を出して、確かにそれは後年度交付税で全部見てもらえるということになっておりますから、安心して借金をするわけですけれども、各県、各市町村がそういう借金をずっと重ねていって国が面倒を見るということになったときに、全国をトータルすると膨大なものになって、将来本当に国が面倒を見てくれるのだろうかという一抹の不安は私にもあります。
 後年度、この借金の返済が始まるときに交付税算入するということになりますから、そのときの交付税の総額というのは通常時よりふえていなければいけないわけで、そういう状況に本当になるのかどうか。交付税がふえるというのはいろんな要素があると思いますが、例えば経済が非常に好転して景気がよくなって、法人税や所得税がたくさん入るようになる、こういうことが想定されれば、それは一つの解決の道であります。果たしてそうなるのかどうか。
 そのときもやはり交付税がふえないから、さらに借金を重ねて、借金をして借金を返すというこういうローン地獄に陥ってしまうのか。これは最悪の道であります。
 そのときに、もうしようがないから交付税率を上げるとか、交付税の対象税目をふやして構造的な改革をするという意思があるのか。ひょっとしたらそうなるかもしれません。それを期待しますけれども、今政府にそういう意思があるとも思えません。ですから、非常に不安定な中で今の財政運営がなされているのは確かです。
 しからば、そういう状態で県も県内の市町村も赤字地方債というものを避けて通れるかということになると、それはやっぱり無理なのです。というのは、将来が心配だから借金しませんという選択肢は、これはこれでミクロのレベルでは県や市町村にとっては最悪の選択になるわけです。今借金をしないのと借金をしたのとどちらがいいかといったら、地方財政のシステムの中で考えたら借金をした方がいい、財政対策債に限って言えば。そういうシステムになっていますから、本当にどうしようもないといいますか、せざるを得ない体質になっているわけです。
 ですから、セットされたものですからしようがありませんから、それはそれとして活用するとして、一方で県は県として、市町村は市町村として歳出のあり方を見直す。従来ともすれば量的な管理しかしていなかったような公共事業、その他のハード事業についても質的な管理に入る。これは県はやりましたから、市町村でもぜひやっていただきたいと私は思いますけれども、そういう別の面での努力をすることが、将来に備えて今やるべきことではないかと思います。