平成13年2月定例会一般質問(平成13年3月14日)No.3

<LDとADHDの対策について>

 LD及びADHDの対応について、片山知事並びに有田教育長にお尋ねいたします。
 議員の皆さんも余り聞きなれない言葉だと思いますが、LDとはラーニング・ディスアビリティーズの頭文字をとったもので、学習障害と言われるものです。つまり、LDは知的な面ではなく、全体のおくれはありませんが、特に学習に関した読むこと、書くこと、計算など一部の能力の習得と使用に著しい困難を示すさまざまな状態を指すものであると言われております。また、ADHDとはアテンション・デフェセット・ハイパーアクティビィティ・ディスオーダーの頭文字をとったもので、注意欠陥/多動性障害と言われるものです。代表的な症状としては、落ちつかない、衝動的、興奮しやすいというものであり、専門医の診断が必要とされております。ともに日本語的には学習障害、注意欠陥/多動性障害という解釈がされており、障害というイメージが前面に出てしまうということもありますが、体の病気などではなく、ともに一つの個性ととらえた方がよい場合も多くあると言われております。したがって、私は、LD、ADHDという表現で問題提起をさせていただきたいと思います。
 このLD、ADHDは、児童生徒の問題行動の一因になり得るとも指摘がある中で、今、教育の中において新たなる課題とされております。そうした中、鳥取県教育委員会においても、昨年度から小中学校課の中に障害児教育室を設置され、積極的に取り組みを展開されているわけですが、鳥取県教育委員会としては、県内の小中学校にLD、ADHDの児童生徒がどの程度在籍しているのかを把握されているのか、お尋ねいたします。
 私が見ている限りでは、学校現場でも地域においてもLDやADHDについての正しい理解はほとんどされておらず、多くの子供についてもわがまま、変わり者、指導が困難などと解釈されている実態があるのではないでしょうか。また、LDやADHDの該当者がいても、だれもが気づかぬままに放置されているのが大部分で、いじめや不登校、児童虐待につながりやすい要因の一つだと思います。中には不登校になり、相談機関、医療機関にかかって初めてLDやADHDの該当者と認知されるケースが圧倒的に多い状況であると聞いております。そこで、有田教育長に何点かお伺いします。
 まず1点目は、保護者を含め現場の教師にLDやADHDをどういう手法で正しく認識させていかれる計画なのかお尋ねします。もちろんLDやADHDの定義のあり方も含めてです。
 2点目は、LDやADHDの児童生徒に対して適切な教育が行われるようにするため、どのように取り組んでいかれるのかということです。
 3点目は、LDやADHDの児童生徒の進路保障をどう考えておられるかということです。特に中学校に入ってからの指導では適切な進路保障が極めて困難と思われますが、いかがでしょうか。
 また、県内にはLDやADHDの専門医師が非常に少ないと聞いておりますが、相談体制を充実させる意味で何らかの対応策を考えておられるのか、お伺いします。
 さらに、ADHD、注意欠陥/多動性障害は、保育所の段階、つまり3歳から5歳の間に症状があらわれる子どももあり、早い段階から専門医による治療や適切な指導をすれば中学生くらいには症状がおさまる子どももあると言われており、保育所、幼稚園における指導体制の充実が求められるわけですが、それぞれどう対応を考えておられるのか、片山知事並びに有田教育長にお伺いをし、1回目の質問を終わりたいと思います。

●知事答弁

 
LD、ADHDの問題、特に相談体制の充実ですとか保育所等での対応につきまして御質問がありましたが、これは福祉保健部長の方から御答弁申し上げます。

●林福祉保健部長答弁

 学習障害、あるいは注意欠陥/多動性障害の相談体制の充実についてです。
 専門の医師が少ないではないかというお話もございましたが、現在は鳥取大学医学部、あるいは鳥取大学の地域教育科学部、県立皆生小児療育センター、国立西鳥取病院などにLDやADHDの専門の医師が在籍しておられまして、相談や治療に対応していただいております。数はそう多くはございません。
 また、県の保健所で実施しております発達クリニック、母子保健関係ですけれども、これらの場でもそういった専門の医師の応援をいただいておるところです。
 さらに、鳥大医学部の脳神経小児科の竹下教授から提案がございまして、昨年の11月、知事も出席して、障害児のための福祉教育、あるいは医療関係者による情報交換会の場を設けたところです。これまで2回の会議を開催し、LDやADHDへの対応を含めて話し合いを行っているところです。まだ始まったばかりですが、今後、この会議の場を通じて関係機関による相談体制の充実や連携強化について協議を進めたいと考えております。
 次に、保育所への対応についてです。
 保育所の保育士が障害をよく理解し、子供の障害に早く気づき、専門医への相談につなげることが非常に大切であろうと考えております。先日も県立皆生小児療育センターの専門医師が講師となって、保護者や保育所、幼稚園の職員等を対象にセミナーを開催したところです。今後、関係職員はもちろんのこと、保護者に対しても適時・的確に情報提供をするなど、理解の促進を図っていきたいと考えております。
 また、児童相談所の相談対応や保健所の発達クリニック、さらには今年度から開始している地域療育等支援事業について、保育所などへの周知を図っていきたいと考えております。
 なお、先般新聞で報道されておりましたけれども、厚生労働省におきましては、来年度を目途に注意欠陥/多動性障害の子供に関する指針を作成しておられるということで、これが完成次第、本県においても活用を図ってまいりたいと考えております。
 

●有田教育長答弁
 LDいわゆる学習障害、ADHD、注意欠陥多動性障害、このことにつきましての6点御質問がございました。順次お答えいたします。
 この言葉そのものが、ましてやどういう子どもの状態を指すのかということ、これはまだ耳新しい言葉でもあり、状況が十分に把握できていない、このことが全体を通しての実感です。
 ただ、LD、いわゆる学習障害と言われている子ども達は、我が国にあっては平成5年ごろから教員の研修会であるとか、あるいはマスメディアの中にも登場しているやに聞いておりますし、一方のADHDに関しては、ごくここ2〜3年からの用語ではないかと思います。いずれも新しい子ども達の発達障害の概念であると理解しております。
 第1点目のお尋ねですが、県内小中学校における在籍者数です。これは本年2月現在の調査で、条件つきです。医師が診断したもの。先ほど福祉保健部長からございましたように、県内を中心とした専門の医師が診断したものに限定しますと、その結果は、学習障害児、LDの方は小学生で44名、中学生で23名、合計67名。さらに注意欠陥/多動性障害児は小学校で68名、中学校で10名、合計78名。しかし、これは限定をした数値です。
 教育的な観点から、この判断であるとか、あるいは実態把握の体制がまだまだ十分ではありません。したがって、この数を申し上げましたけれども、県内の児童生徒の数も、まだ多いのではないかという実感を持っております。全国的には、アメリカでは合衆国全体で4.89%、州によるばらつきはあるようですけれども、約5%という報告もあるようですし、我が国でも関東周辺で2.2%、これは後にも触れますけれども、現在日本の第一人者である東京学芸大学の先生の調査結果です。
 先ほど申しました鳥取県における小中学生の数字は、割合にしまして0.11%となります。全国的には我が国では2〜4%、あるいは3〜5%程度ではないかというふうに類推をされております。
 2点目に、こうした発達障害の概念について、保護者とか教師に対する理解、啓発が必要ではないかと、おっしゃるとおりであると思います。率直に言いまして、私どもも今、本年度からの障害児教育室の立ち上げを通しながらこうしたことを急速に勉強しているところです。とりわけ教師に対することが急がれますので、本年度から3名ではありますが、先ほど申しました第一人者と言われておりますところの教授が在籍の東京学芸大学に3名の教員を派遣をして、直接研修に当たらせ、実地にも当たらせております。13年度以降も引き続き派遣をお願いしたいと考えておりまして、そうした専門的な研修を積み、さらにそれを多くの教員に波及させていく、この繰り返しをやりながら、国の指示を待つまでもなく独自の対応を行っているところです。
 保護者に対しても、同じように正しい理解が必要なことは申し上げるまでもございません。教員だけでも当然限界がありますから、県内の医療の専門家の方々のお力をおかりしなければいけませんので、福祉保健部との引き続きの連携の強化も図っていきたいと考えております
 3点目に、適切な教育をどのように行おうとしているのかということです。まずは乳幼児の段階からさまざまな教育が重要であると考えておりますけれども、とりわけ小学校、中学校のできるだけ多くの教員が、LDあるいはADHDに対して正しい理解を急速に広げていく、深めていく、このことがまず私どもにとっては急を要することのように考えております。
 先ほど触れましたように、学習障害等の専門教員をどうやって年次的にふやし、さらにその輪を広げていくのか、波及効果を高めていくのか、このことについても引き続き努力したいと思っておりますし、さらに来年度、13年度からは、学習障害の判断であるとかあるいは実態把握の体制をどう確立するか、こういったことを中心とした研究学校としまして、町立の大栄小学校で文部科学省の委嘱事業を実施してもらうこととしております。この学校に在籍児童が多いということではなくて、中心的な研究をやっていただき、県内に広めていただこうというねらいです。
 その次に、進路保障ということです。これもまた非常に重要であり、かつ現在ではなかなかすぐに結論の出せない重要な課題です。まずは早期に発見をして、どういう対応をして、そしてできるだけその障害を軽くさせることができるのか、こういったことにも当然意を注がなければなりません。これを放置しておきますと、お話しの非常に重要な進路の保障を欠くことにもなりかねません。そういったことがございまして、まずは学校に在学している段階で具体的にはどのようなことをしなければならないのか、全くまだ手つかずと言っていいような状態でありますから、具体的な対応のあり方、そして将来を見通したこれから末永く力強く生きていくための、すなわち進路の保障をしていくための具体的な手だてなどについても多くの方々のお力をおかりしながら検討したいし、そして必要な手だては、また順次予算要求等でもお願いをしていかなければならないと考えております。
 いずれにしても、強い問題意識を持って、専門家の方々などのお知恵をおかりしながら、関係機関との連携を密にしたいと考えております。
 5点目に、相談体制の充実方策ということです。LDとADHD、それぞれ多少の状態の違いはありましょうけれども、いずれにしても新しい概念でありますから、教員だけでは当然限界がございます。教員も資質の向上に努めたいと思っておりますけれども、先ほどからたびたび触れておりますように、福祉保健部と連携しながら県内の医療機関あるいは県外の大学の専門家の方々、こういった方々との連携なり御指導をいただきながら、できるだけ相談体制の充実に努めたいと思っております。
 ただ、先ほどからたびたび触れておりますが、本年度から始めております学習障害等専門教員をどんどん広げていきたいと思っておりますけれども、あわせてこうした教員はただ1つの学校だけに所属するのではなくて、一定地域の保護者の方々の相談にも対応できるような仕組みを考えたいと思っておりますし、さらに13年度から、現在予算でお願いしておりますけれども、県の教育研修センターの中に新たに学習障害等専門相談員を配置して、こういう症状であればどういうところに相談されたらいかがですかという具体的な相談先の紹介なども含めた相談体制の充実にも努めたいと思っております。
 最後に、幼稚園、すなわち小学校に入ってくるまでの指導体制の充実ということであろうかと思います。これも議員お話しのように、小学校に入ってくるまで、できるだけ早い段階でその症状をより的確に判断をして、専門医との連携の上での治療対応が必要であると言われておりますから、就学前での対応のあり方というのは非常に大きい重要な意味があると考えております。
 ただ、現在の本県におきます一般的な家庭環境なども考慮して、できるだけより的確な判断なり、あるいはおやっと思って専門医に相談できるような、いわゆる冒頭にも御指摘がありました保護者に対する啓発、こういったことがより一層重要になってこようかと思います。赤ん坊のころから非常に動きが多いということで、単なる多動的な傾向の強い幼児であるのか、あるいは本当にADHDの要素があるのではないか、それを疑問に持つようなことも含めながら、やはり正しい理解に向けての啓発に努めなければいけないと思っております。
 全体的なことで、これも以前の御質問とも重複するかもしれませんけれども、小学校に入ってからはもちろん学校教育の充実ということで、教員も大変になりますけれども子ども達のためですから、新しい分野の研修も充実をしなければなりませんが、もっと観点を変えて、学校に入ってくるまでの間に、こうした状態の子どもも含めて就学前のいわゆる幼保一体的な幅広い教育のあり方、あるいは指導体制のあり方、こういったものを鳥取県全体として、より充実方策について引き続き検討する必要性を非常に強く感じているところです。
<LDとADHDの対策について>bQ

最後に、LDの問題でちょっと誤解があってもいけませんけれども、歴史上の人物でありますアインシュタイン、徳川家康、坂本竜馬にしても、また現在映画俳優で活躍中のトム・クルーズにしてもLDであったと言われておりますし、今も言われております。
 LDに関して言えば、先ほど申し上げましたように、学習に関連した読むこと、書くこと、計算問題など一部の機能の能力だけに症状があらわれるため、わがまま、変わり者、怠けているなどということで片づけられる場合が非常に多くて、教師にしても保護者にしても、専門医の診断でLDと聞けば、何だうちの子はLDかということでお互いがほっとする。そして、子どもに合った指導ができるということです。
 先ほど教育長からあったのですけれども、県の実態調査もされているのですけれども、やはり県内でも潜在者の数は実際はまだ多いと思うのです。専門家によっては3%〜5%と言われております。やはり定義づけをすることは現時点では極めて困難な作業であると思っております。他県では研究会など立ち上げて、いろんな分野で研究がなされております。したがって、現場の教師の皆さん、保育士の皆さん、さらには就学指導委員の皆さん、やはりあらゆる部分で研修の場を持っていただいて共通の理解を深めるとともに、保護者にもその辺のきちんとした認識を深めていただく努力をしていただきたいと思っております。
 やはり心配するのは、例えば国語90点、社会も90点、理科も90点、算数だけが全くだめとこういう極端な例なのです。だから、学校では今のところどうしてもその子一人に対して対応できない。塾に行っても塾も今競争時代ですから、塾でもどうしても一人だけ見ていただけない。そういう子は特別な塾に行かないと見ていただけない、それが現実なのです。そういう部分を本当にきちんととらえて、それぞれの一つの個性として伸ばしていただきたい。
 私は、こうしたLDやADHDの児童生徒が、学校とか地域において差別や偏見を受けることなく教育を受ける権利を全力を挙げて保障していただきたいということをお願いしまして質問を終わりたいと思いますけれども、もし教育長の方でコメントがあればお伺いしたいと思います。

●有田教育長答弁

大変重要な課題の提起をいただいております。
 まずは、私どもみずからがしっかりと勉強しなければならないということから、実はこれは今どれであります。来年4月からぜひ新学期に間に合わせたいということで、学習障害児等の理解と指導ということで、今お話のありましたLD、ADHDに関する最も初歩からの認識に関するパンフレットが、やっと2日前にでき上がりました。本日、全議員さんにもお届けすべく事務局には届けております。これをすべての小学校、中学校、盲・聾・養護学校の先生方にはまず届ける。その前に、私たち事務局の指導主事等がしっかり勉強したいと思っております。あわせて、保護者あるいは学校関係者等からの御要望にも対応できるように、このパンフレットを中心としたものですけれども、教育委員会のホームページにもその紹介をしております。学習障害等の理解と指導を含む障害児教育のホームページを開設しておりまして、こういったことの紹介にも努めていきたいと思っております。
 私自身、長い間同和教育の実践ということから多くのことを学んできましたが、今、伊藤議員の御指摘いただきましたこと、例えば最終的には進路の保障も含めて、まずは該当者、児童生徒に対する条件の整備をどうしていくのかということ、あわせて最後にお話しになりましたように、その子供たちが伸び伸びと生きていくためには、周りの偏見、差別意識を取り除かなければならない。まずは正しい理解を身につけなければならない。学校教育ではもとより、保護者の方々の啓発も含めて、先ほど申しましたように専門科医等の御指導も受けながら、福祉保健部と関係機関との連携を深めて、強い問題意識を持って引き続き努力したいと思っております。