<鳥取県教育について> |
藤井教育長も、教育長に就任されて1年余りがたちました。畑違いからの就任で、この1年間、見ること、聞くこと、体験すること、初めての連続であり、大変であったろうと推察をいたします。しかし、1年間、教育長という責任ある職につかれて、教育とは一言で何と理解されたのか、お伺いをいたします。 また、子ども達を取り巻く環境には数々の問題が取り巻く中、鳥取県教育をどう進め、何に力点を置かれて取り組みを展開されていくのか、御所見をお伺いいたします。
また、情報公開をどうするかという議論が今なされておりますが、基礎学力調査についてお伺いをいたします。
この基礎学力調査の目的は何で、何に活用されるのかをお聞かせください。また、基礎学力の基準とは何かをお尋ねします。
次に、高等学校における生徒に対する自宅謹慎、停学、退学等のあり方についてお伺いをいたします。
鳥取県では、問題行動により20人近くの高校生が自主退学をしておりますが、これらの自主的な退学処分等についての基準、あるいは指導状況についてどうなっているのか、お伺いをいたします。
最後に、高校生の携帯電話についてお伺いをいたします。
今、高校生の8割が携帯電話を所持していると言われており、ぜいたく品でもなく、手帳と同じように、高校生にとっては生活用品の一つとなっております。しかし、県下の高等学校における携帯電話の取り扱い規制の状況は実にまちまちで、学校ごとにより取り扱いの見解が大きく異なっております。
しかし、私たちの生活環境をよく見詰めてみると、これまで町じゅうにあふれていた公衆電話は、極めて特定の場所しかお目にかかることができなくなりました。したがって、高校生の皆さんは、クラブで遅くなる、急用で連絡をとりたい、何かトラブルに巻き込まれたとき等、電話で連絡をとりたくてもとれないような社会環境になっているのです。
このように大きく社会環境が変化する中にあって、時代に合わない理屈をつけて携帯電話を規制することより、学校に入ったら電源を切るとか、逆に社会生活の中にあって携帯電話の使用マナーを教育の一環として生徒に教えることの方が、時代に合った、まさに生きた教育ではないかと思うところですが、教育長の御所見をお伺いいたします。
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●藤井教育長答弁 |
最初に、教育についての今後の取り組みといったような御質問でした。
この1年間、正直申し上げまして数多くのさまざまな体験といいますか、判断といいますか、経験をさせていただきました。いろんな現場に足を運びまして、現場の実態を見聞きしたり、教職員の皆さんや保護者を初め、地域の住民の方々のいろんな声を聞いてまいりました。自分なりに考えて、施策に反映してきたつもりです。もちろん教育委員の皆さんともよく話し合いをしてやってきました。
最も強く感じていますのは、教育に対する県民の皆さんの関心や期待が非常に強く、また多様なことです。もちろん教育にはさまざまな課題がありまして、また施策もなかなか特効薬のように一朝一夕に結果が出るといったものではないと思います。一つ一つの積み上げであると改めて実感しているところです。
教育というのを一言で言うことは難しいのですが、21世紀鳥取県教育ビジョンでは、やさしさとたくましさをあわせ持つ子供たちを育てることを基本理念に置いていまして、地域の将来を担う子供たちが、夢と希望を持って個性豊かな人間として、生きがいのある人生を歩めるよう取り組むことが必要だと思っています。
また、今後の進め方といいますか、どこに力点を置くかということですが、引き続き現場に足を運び、県民の皆さんや保護者の皆さんの意見を踏まえながら、教育委員会でよく議論して、また知事部局や市町村との連携とか、役割分担といったことを大切にしていきたいと思っております。
とりわけ今議会でも御質問、御提案いただいていますが、不登校とか中途退学等の問題解決に向けての取り組みですとか、基礎学力の向上、あるいは豊かな心や健康な体の育成等、個々の子どもの力を伸ばしていくための取り組みですとか、あるいは教職員の研修ですとか、例を挙げれば学校図書館の充実など、教育環境の整備などに努めていきたいと思っております。
こうした取り組みを初めとして、いろんな取り組みがあるところですが、これまでも何回かお答えをしておりますように、やっぱり開かれた学校づくりというのが必要でして、保護者や地域住民の声を学校の運営ですとか教育行政に一層反映させることができるような仕組みづくりを進めていきたいと思っております。
また、地域の将来を担う子ども達の育成という観点から、市町村にももっともっと主体的に取り組んでいきたい、働きかけていきたいと思っていますし、先ほどもお話ししましたが、学校とか行政だけでなくて、鳥取県に暮らすすべての皆さんに、いわば教育者であるという認識を持っていただきたい、鳥取県の教育を支えていただきたいとお願いするものです。
次に、基礎学力調査の目的と活用についてのお尋ねです。
この調査は、県内の小中学校の児童生徒の基礎学力の実態を把握して、結果を分析することによって各学校における学習指導の改善、そして今後の教育施策の充実を図ることにあります。
子ども達の基礎学力の状況がどうであるかという議論が今なされておりますが、これまで全県的な児童生徒の学力状況を把握した資料というのは正直言ってありませんでした。これは平成15年1月に初めて実施したものです。
基礎学力の基準ということですが、きちんとした基準というようなペーパーがあるわけではありませんが、考え方としては、単なる知識や理解だけでなくて、これにあわせて学ぶ意欲ですとか、考える力、判断する力、表現する力等そういった能力も含めて学力ととらえるものだと思っております。そして、学んだことがさらに次の知識を生み出すもととなるといいますか、礎となるようなものということで、それが基礎学力と言えるのではないかと考えているものです。
今回の調査は、児童生徒の学力の状況をペーパーテストで調査するとともに、家庭や地域での生活の様子ですとか、学習習慣などについてもアンケート形式で調査しております。
この調査結果の活用方法についてですが、児童生徒一人一人に応じたきめ細かな学習指導の充実改善につながっていけばと思っておりますし、授業への興味とか関心とか、家庭での生活の様子、地域とのかかわりなど、子どもの学力にかかわるいろんな要因についても分析できたらと思っております。そういった調査結果の分析を参考にして、学校現場で取り組んでいただきたいと考えております。
このため、学校現場におきましては、これまでもお答えしているとおりですが、学校の規模にかかわらず、一人一人の児童生徒の状況ですとか学校の状況を、県の平均的な状況などとも比較しながら、児童生徒、保護者に伝えて、皆さんで考えていただくことが必要だと思っております。
そして、この調査は、ことしの1月に初めて実施しましたが、決して一回だけでなくて、今後も継続して実施することにより、いわゆる基礎学力の定着とか学力の向上に結びつけていきたいと考えるものです。
次に、問題行動のあった高校生に対する処分基準でありますとか指導状況についてのお尋ねがございました。
生徒の懲戒につきましては、県の学校管理規則、あるいは県立高等学校の学則において規定いたしております。また、学校教育法の施行規則に基づいて文部科学省からの通知がありまして、学校は生徒の問題行動等に対して懲戒として処分した場合、その旨を生徒指導要録に記載することとなっているところです。そういったことがありまして、生徒の将来等を考慮し、できる限り懲戒としての処分ではなくて、指導を実施しております。本人の判断による退学へ向けての指導ということであります。
指導の結果ということになりますが、自主退学しておりまして、鳥取県の場合、懲戒としての退学はないといった状況にあります。また、生徒の自主的な退学等について、県の教育委員会としての統一的な基準は定めていないところです。
学校では、生徒の問題行動に対しては、生徒の成長を促すという教育的観点から、随時指導を実施しております。担任や生徒指導部等を中心として、生徒や保護者の気持ちや意向を把握し、職員会議で指導方法等について共通の認識を持ち、校長等により保護者への説明と協力要請ということで繰り返しの指導を行います。しかしながら、繰り返しの指導にもかかわらず、どうも改善の見込みがないと校長が判断した場合、先ほどのように生徒と保護者との話し合いのもと、自主退学を勧めているものです。
県の教育委員会では、退学等に関する指導に際しては、中途退学の防止の観点から、各学校で粘り強く対応するよう、また学校側から一方的な指導とか処分にならないよう、校長会や学校訪問等で指導しているところです。
最後に、高校生の携帯電話の所持に対する指導についてです。
確かに携帯電話は近年多くの高校生が所持している現状にあります。御承知のように、携帯電話は出会い系サイト等から生じる問題行動ですとか、列車内あるいは公共の場での使用、迷惑的な使用、あるいは使い方によっては非常な使用料金が出てくる。携帯電話に過度の依存の状況にあるのではないかというようなトラブルとか問題も多発しております。
そうした状況にありまして、社会の変化に対応して、生徒の実態に応じた指導が必要と思っておりまして、まずは使用に関する社会マナー、ルールの遵守等についての指導は必要でありますし、もちろん携帯電話に起因するトラブルとか事故防止に対する指導も大切だと考えております。このことはきちんと行うことが必要だと思います。
携帯電話の学校への持ち込みについてのお話もありましたが、現在、高等学校の間では、高等学校指導部連盟というところで、これに限らずいろんなことで基準を設けておりまして、携帯電話を学校に持ち込ませないというような申し合わせ事項を決めております。ただ、この申し合わせ事項につきましては、基本的には基準的なものでして、最終的には学校における実際の指導は学校が判断するということになります。実態は、学校への持ち込みを禁止している学校もありますし、持ち込みは認めるが、学校内での使用を禁止している学校と分かれております。
ただ、どちらの学校であっても、もし違反するような使用があれば、家庭への連絡とか、それを見つけたときに預かるということを実施しているところです。
学校へ不必要なものを持ち込まない方がいいという意見もありますし、学校で使用しなければいいのではないかというような意見もありまして、これは携帯電話に限らず、いろいろと意見があるところです。 ただ、最終的にはやっぱり各学校で教職員、保護者、生徒の意見を踏まえて、それこそ各学校が判断される事項ではないかと思っております。
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<鳥取県教育について>No.2 |
先ほど携帯電話は学校にお任せということがあったのですけれども、各学校の指導部が本当に苦し紛れの答弁をしているのです。携帯電話の指導なのです。現実公衆電話がないのです。連絡をとりたくてもとれないのです。もし何か事故が起きたとかというときに、そういう問題が起きたときに、子ども達は本当に困るのです。今、次々次々思わぬ事件があちこちで起きているのです。ですから、やはりもっと現状をきちんと認識して──携帯電話が悪いのではないのです。使い方が悪いのです。ですから、認識をどこに置くのか。携帯電話を許可しても、きちんと迷惑がかからないように、モラルのある携帯電話を使うという指導の方が、本当に生きた教育です。やめろやめろと規制はやりやすいのです。そういう部分で、きちんと現実に合った教育をしてほしい。
各学校の指導部の先生は、本当に苦し紛れの答弁です。保護者の皆さんから言われても答弁できないのです。教育長、歩いてみなさい。今公衆電話がありますか。ほとんどないでしょう。そういう現実を無視しないで、他人任せにしないで、教育長はトップとして、きちんとした一定の方向は出すべきだと私は思いますけれども、御所見をお伺いします。 |
●藤井教育長答弁 |
保護者からも、携帯電話は学校生活に不必要であるので禁止してほしいという意見、あるいは帰宅が遅くなる場合の連絡とか緊急時の連絡において必要という双方の代表的な意見があります。一律に禁止するとか、保護者の了解のもとに許可制にするとか、持ってきてもよいが学校では使わない、いろんな意見があると思います。
指導部の皆さんが困っておられるというお話がありましたが、指導員の皆さんが本当に困っておられるのだったら、指導部の中で話し合いもされると思っております。決して他人任せにしているわけではありませんで、責任ある学校長の判断でしていただきたいということを言っているわけです。公衆電話がないということもありましたが、公衆電話の状況なども勘案されると思います。最終的には、それぞれの学校で意見を出し合って判断する性格のものだと思っております。そういった意見を出し合う中で、約束事というのもできてくるのではないかと思っております。
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<鳥取県教育について>bR |
先ほど子ども達の停学、退学処分の問題についてちょっと答えていただきましたけれども、子ども達の将来を傷つけないために、教育的配慮として鳥取県では子ども達の個々の指導要録に記録として残るような懲戒処分は行わないということでした。現実的には、問題行動により自主的な退学、そして停学等あるわけですけれども、教育的配慮ということになれば、要するに教育法施行規則で言うところの懲戒処分は行わないということですので、それはそれで是といたしますが、現実的には懲戒処分と同様な行為は行われているわけです。
問題は、そのプロセスのあり方ですけれども、議員の皆様も御存じのように、1994年に国連で既に採択されていた子どもの権利条約を我が国も国会において批准をいたしました。つまり、幾ら問題行動を起こした子供であれ、個々のそれぞれの子ども達に人権もあるわけですし、権利もあるわけです。やはり子どもやその保護者に弁明の機会を明確に設けるとともに、処分に当たっては、すべて学校長に権限を任せるというのではなく、やっぱり一定のガイドライン、そういうものを設けていく必要があると思いますけれども、教育長の御所見をお伺いいたします。
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●藤井教育長答弁 |
生徒の処分に関するガイドラインというのは、問題行動等に際して、処分に至るまでの過程というようなものを定めるというようなものだと理解させていただきますと、例えば正確な事実を確認するとか、弁明の機会を確保するとか、指導方針の十分な説明、こういった内容になるのかと思います。
先ほどそれぞれの学校における対応についてお話ししましたが、学校では当然生徒の指導に関しては人権等に十分配慮することが必要だと思っております。今後も、生徒の問題行動等に対する指導に際しては、特に生徒及び保護者の意見を聞くことに努めて、学校側からの一方的な指導や処分にならないように留意しなければならないと思います。
ガイドラインの策定ということでありましたが、まず現場がどのように考えているかということを聞いてみたいと思います。全国でただ1つ、お隣の島根県がガイドラインのようなものを策定しておられるようでして、その内容を確認してみたいと思いますし、そういったことも踏まえて、校長会を初めとして現場の意見をまずは聞いてみたいと考えております。
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