<指定管理者制度について> |
御承知のとおり、昨年9月に地方自治法が改正され、公の施設の管理運営については、従来の管理委託制度にかわって指定管理者制度を導入することにより、直営または公共的団体に限定されていたものが、株式会社など民間事業者も行えるようになりました。また、現在の直営施設、新設施設については、随時指定管理者制度への移行が可能です。
しかし、既に管理委託に出している施設については、平成18年9月までに指定管理者制度または直営への移行を選択しなければならないという制約があり、鳥取県でも今、条例の検討がなされているところです。
そもそもこの地方自治法の改正目的は、公の施設に対し、住民サービスの向上、管理経費の節減、管理運営の効率化、新たな発想の活用が期待されることとされております。全国的に見れば、既に指定管理者の公募を実施している地方公共団体もありますが、検討中のところが大半で、鳥取県でも第1号として夢みなと温泉館が今議会の議案となっております。
鳥取県でも、これから本格的に条例の制定が次々行われるわけですが、県民が直接利用する施設のことでもあり、他の条例以上に県民とのコンセンサスを得る形で、取り組みを進めていかなければならない問題であると思っております。そこで、知事に何点か質問なり意見を申し上げたいと思います。
指定管理者制度の導入に当たっては、もっと地域住民の意見を反映して、管理者を選定できる仕組みをつくってほしい。利用者を含めた評価機関を設置し、管理運営の評価ができるようにしてほしいなどといった意見を住民サイドから聞いております。
やはり心配されるのは、公の施設が別の目的にすり替えられたり、特定の指定管理者だけが利益を享受する運営になる可能性があり、そのことを県民がチェックできないことにその理由があるようです。その対応について、知事の考えはいかがでしょうか。
また、地方自治法第 244条で、住民の福祉を増進する目的を持って、その利用に供するための施設を設けることができる。正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならないと規定をされております。
そこで、行政が直接管理運営すること、または行政が監督する法人、団体によって管理されてきたことで、効率、サービスなどについて不満や批判はあったにせよ、公の施設として一定の公的責任、公平性が確保されてきたことは事実でもあります。民間事業者の場合、どうしても利潤追求が中心で、経費節減と効率性に重点が置かれるため、公的責任と公平性の確保が懸念されるところです。指定管理者制度では、行政機関や議会が一定のチェック機能を果たすことができるものの、そのことだけで公的責任や公平性が継続して保障されるのかという疑問もありますが、その対応について知事はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
また、県民から疑惑や誤解を招かないために、設置者、首長や議員、その親族が経営する会社、法人の参入を規制する規定を定めることも必要ではないかと思いますが、知事の考えをお伺いします。
とっとり花回廊は、これまで地域農業振興と相まって、管理運営が行われてきたのではないかと認識しております。また、これまで県のイベントなどが企画されれば、県西部の観光拠点として、大山や皆生温泉などと連携し施策を実施するなど、多くの実績とノウハウが蓄積されていると思っております。指定管理者制度は、利用者へのサービスの向上が主目的であることから、施設管理を安定して行える物的能力、人的能力の確保が極めて重要な要素であると思います。このことを保障するためには、とっとり花回廊のような施設では、施設固有の必要な専門性、サービスの質、継続性、安定性などを具体的に条例規則に盛り込むとともに、選定基準の明確化も必要でないかと思いますが、知事の御所見をお伺いします。
最後に、先日、湯原議員の質問に対して、一つの方向として厚生事業団への譲渡案が知事の方からあり、会派「信」としましても協議をしましたが、金額的な検討は今後の課題としながらも、入所者の視点からしても、方向としては一致して了解しましたことを申し上げます。
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●知事答弁 |
指定管理者の問題ですが、今までは行政サイドの中で、ないしはそれにごく近いところで県の外郭団体などが管理しているものですから、比較的チェックとかが見えやすい形になっていた。それが今度は場合によっては少し手が離れるので、それに対して住民の皆さんのチェックとかが必要なのではないかという御趣旨だろうと思いますけれども、私も同感であります。
今回、いずれ順次指定していくことになりますけれども、その際も、ここでも何度か議論になりましたが、広く意見を聞きながら、その意見を反映させながら指定にこぎつけていく。我々の方で案をつくりますけれども、最終的に決めるのは議会で条例という形でお決めいただくことになりますから、その段階で議会でよくチェックしていただいて、我々の選定方針が正しいかどうかという吟味をしていただければ結構だと思います。
これから何年置きかにそれが順次繰り返されるわけで、私はその間の評価といいますか、チェックというか評価システムが重要ではないかと思っております。特に伊藤議員がおっしゃったようなユーザー、利用者による評価、チェックというものが非常に重要だと思いまして、その点、これは何らかの形で利用者の声が反映するような評価システムが必要ではないかと思っておりまして、ぜひ検討してみたいと思っております。幅広い評価、チェックについてのシステムというものを検討してみたいと思っております。
それと同じような意味合いだと思いますけれども、利用の面で公正さがチェックされるのか、例えば差別的な利用システムになるのではないかとか、恣意的な運用になるのではないかということですが、これは基本的には仕様書といいますか、委託をするときの契約の内容になるわけで、基本的にはやはり公の施設ですから、制約なく公平にということになります。
ただ、特定の施設で一定の利用に重点を置くというケースもないわけではなく、それはこの議会の同意を得て、そういう契約になるという場合はそうなると思いますけれども、そういう個別の場合でなければ、一般には制約なく広く利用ということになると思います。それが契約どおりちゃんと受託を受けた指定管理者からそのサービスが提供されているかどうかという、そこがポイントになるわけで、それもチェックが必要だろうと思います。
そのときに重要なのは、1つはやはり透明性だと思います。例えば情報公開。情報公開がきちんとなされるかどうか。これも指定管理者になった者は県に準じて情報公開をしなければいけないということになります。場合によっては、法人によってはそういうことに熱心でないところもあるかもしれません。したがって、それは当該法人だけに任せるわけにはいかないので、外部からそのこと自体をチェックするというシステムも必要なのではないかと思います。
それから、先ほど言いました評価システム、利用者にとってちゃっといいサービスが契約どおり提供されているかどうかというチェック、これは行政もやりますけれども、行政だけではなくて、広く利用者の皆さんの声が届いた方がいいだろうと私は思いますから、そういうことも含めて、先ほど答弁しましたように評価システムというものを考えてみたいと思っております。
今回、通則条例を出しておりますけれども、場合によってはまた早い機会にその通則条例自体 ―今回御承認いただければということですけれども、その後でまた通則条例の手直しも順次あるかもしれないと私は思っております。
なお、指定管理者のチェックというのは我々もやりますし、さっき言いましたような評価システムを検討してみたいと思いますけれども、指定管理者の指定は議会に最終責任を持っていただくわけですので、議会も平素、日常チェックについては関心を持っていただければと思っております。
指定管理者の指定をする場合に、当該法人が例えば首長、県の場合ですと知事、議会の議員の皆さんと深い関係を有する、場合によっては本人が法人のトップであるとか、一定の範囲にある親族が経営している場合とか、そういうケースを言うのだろうと思いますけれども、やはりそれは参入を一定程度規制する必要があるのではないかというのは、私も同感です。例えば知事が法人をしている、指定管理者の募集に対して手を挙げて応募をする。知事が指定管理者の選定をするということで、私の場合は仮にそういうことがあっても公正にやる自信はありますけれども、一般論としてなかなか外部の人から見た場合に、本当に公正かどうか疑念を持たれることが多いだろうと思います。
もう1つは、知事が選定するといいましても、作業はほとんど職員がやるわけです。その職員が、知事が理事長になっている法人から手が挙がったときに、やっぱり何らかの心理的な圧迫感とか圧力を感じるということは当然予想されるわけで、私は自分自身のことを考えますと好ましくないと思っております。
これをどうするか、私も実は前の知事から知事職を引き継いだときに、多くの外郭団体の理事長とかはやめているのです。私がなっていないのです。ただ、いろんな事情で例外的に理事長職を務めているものも幾つかあります。そういうものの中で、今回、指定管理者制度の導入に当たって、この問題を惹起するものが若干あると思いますので、それをどうするか今検討しているところですけれども、いずれにしても、私の考えでは、双方を代理する ― 双方を代理するといいますのは、申請する側のトップであり、かつ認定する側、指定する側のトップが両方一致するというのは決して好ましくないと思っておりますので、何らかの制度的解決が必要だろうと思っております。
議員の皆さんも実は同じような問題があるわけで、最終的には議会で承認になるわけです。案はもちろん執行部が出しますけれども、それが本当に指定管理者としてふさわしいかどうか、是か非かを判断するのはこの議場です。議会の皆さんです。自分で手を挙げて自分で判断するというのは、やっぱりそれは双方代理になるわけで、知事が双方代理は好ましくないのと同じような意味で、議会の議員の皆さんも同じような立場にあるのではないかと私は思っております。
これについて一定の制約を − 自粛ということもあるかもしれませんが、もしちゃんとするのであれば、私は制度的な仕組みをつくった方がいいと思いますので、これも通則条例になるのか個別条例になるのかわかりませんけれども、考え方としては、次の議会にでも何らの対応をお示ししたいと考えております。
とっとり花回廊などでは、指定管理者にゆだねるといっても、やっぱり実績とかノウハウが要るのではないかということですが、実績だけを強調しますと新規参入が実にしにくくなりますので、実績はともかくとして、ノウハウとか本当の意味の能力があるかどうかということですが、これはやはり必要だろうと思います。ノウハウがないのに生き物を相手にするような施設を全面的にゆだねるということについては、やっぱり不安も当然あるわけです。したがって、個別の施設の指定管理に当たっての選定基準をつくる場合には、やはりその施設の態様に応じてきめ細かい条件設定が必要だろうと思っております。花回廊などでありますと、花卉類の植栽などについて見識と能力を持っている、これは当然だろうと思います。そのほかにもいろいろあると思いますけれども。合理的でふさわしい専門的な資質、能力、そういうものは選定基準にできる限り明確に書きたいと思っております。
ただ、幾ら書いてもそれはしょせん文章です。伊藤議員が先ほどいみじくもおっしゃったように、みんなが都合のいいように解釈をしますと幅が出てきますので、なるべく都合のいい解釈にならないようにしたいと思いますけれども、後はやはり事後のチェックと評価というものが本当に必要なのだろうと思います。
幸い未来永劫指定ということではありませんので、数年置きに指定替えが行われますので、そういうことを想定しますと、事後のチェックシステム、評価システムというものがよほど重要になってくるのではないかと思っております。
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<指定管理者制度について>bQ |
とっとり花回廊の建設にあたっては、生活や生産の基盤であった土地、農地を提供していただいた方の中には、花回廊との何らかの接点で生活を営まれた方もおられることでしょう。花回廊の指定管理者がもし観光事業団から民間事業者となれば、大きな雇用不安が生じてまいります。また、指定管理者としての指定期間が3年から5年となっておりますけれども、期間満了時に継続して指定が得られなかった場合には、また新たなる雇用不安が生じてまいります。
また、福祉施設などは、利用者と職員との信頼関係の上で行政サービスを提供しているわけですから、人材の継続性が不可欠な要因であると考えます。しかも、サービスを提供する側の職員精神的な安定、生活の安定がなくして十分な福祉のサービスは提供できないと思っております。
このように、指定管理者制度に移行した場合、職員の身分、労働条件、雇用保険を含めた雇用問題について、一番大きな不安がつきまとっていくわけですけれども、公の施設の管理者、運営の最高責任者である知事としての所見をお伺いします。
次に、指定管理者制度の導入の大きな目的は、やはり経済性だけではなく、行政が管理運営をしているがために、いろいろな規制やノウハウが不足していることから、施設はあるけれども十分なサービスがどうしても提供できない。規制が少ない民間事業者の参入と民間事業者のノウハウを活用することで、これまで以上のサービスを利用者に提供しようというものであると私は理解しております。そのために、指定管理者制度を導入する前に、それぞれの施設でどのようなサービスが不足しており、どのようなサービスが必要なのか、点検をきちんとすべきであると私は思いますけれども、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
とっとり花回廊に限りませんけれども、指定管理者制度を導入した場合に、一応その期間が3年から5年という一定の期間ですので、そうすると雇用が安定しないのではないか。仮に継続するにしても、常に数年置きに不安要素が加わることになる。それが継続しなかった場合には、せっかくのノウハウなどが蓄積しないことになるという御懸念で、それはその通りなのです。その通りなのですけれども、また別の目的で指定管理者制度を導入しようということになったわけです。それはやはり継続をすることによる慢心とか非効率とかサービスの低下とか、そういうことのデメリットの方が大きいので、それを解消するために新たに指定管理者制度を設けようということに法律が決まって、もう一定のルールができたわけで、それはやむを得ないのではないかと私は思うのです。
今伊藤議員がおっしゃったような至極もっともな要素、すなわち継続性を重んじる、雇用不安を解消する、ノウハウの蓄積を大切にするということで、それをしようと思ったら指定管理者制度は導入できないということになってしまうのです。その辺は御指摘のような問題点を抱えながらも、しかし、我々は決められたルールでやらざるを得ないということなのです。
これをどう理解するかということですが、やはり我が国が従来の戦前から続いてきた ― 戦前といってもそんなに長くないと私は思うのですけれども、1940年代から続いてきた日本の終身雇用制度、非常に安定した制度ですけれども、これが大きく流動化してきているという今日の我が国の労働事情を反映したことによるのだろうと思いますし、官庁の独占に伴う弊害、こういうものを除去しようという行政改革の流れの中で出てきたわけです。この大きな流れの中で、我々は指定管理者制度という新しい試みをしなければいけないということで理解しなければいけないと思います。
しからば雇用不安などをどうするかということですが、これは指定管理者制度に伴って生ずる副作用だけではなくて、日本全体の問題ですけれども、であるがゆえにセーフティーネットをしっかりと張りめぐらさなければいけないということになるのだろうと思います。
指定管理者制度は、経済性だけではなくてサービスの向上、不足しているサービスを補うということも一つの目的ではないかということですが、指定管理者制度が導入された経緯を見ますと、必ずしもそこには余り重きが置かれていなかったようです。やはり民間のノウハウを使ってという面は、専ら効率性とか決められた範囲内でのサービス水準の向上とか、そういうところに振り向けられているのだろうと思います。
ただ、御指摘のように、この際、本来ならばもっとサービスがあってもよかった、不足している面を点検したらどうかというのは、そのとおりだろうと思いますので、気がつく範囲内で注意をしていきたいと思いますし、今後指定管理者制度に移行した後も、もっとこういうサービスが付加されていいのではないかというのは、ユーザー、県民の皆さんから広く伺ったらいいと私は思います。それで、その次の指定替えのときから、また新しい契約内容とか選定基準にそういう条項も盛り込んだらいいと思っております。
当面どこまでできるか、ちょっと自信がありませんけれども、そういう問題意識を持って臨みたいと思います。
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