平成16年12月定例会一般質問(平成16年12月10日)No.2

<時間外労働について>
 この問題も、さきの議会で知事に質問をしたところです。当時知事は、行政監察室に調査を指示しているので、その結果を待ちたいということでした。その調査結果が公開され、時間外勤務の適正管理、縮減に向けた改善方策がまとめられ、各部局に指示されたところです。行政監察室から報告を受けられた調査結果について、片山知事の素直な感想をお聞かせください。
 また、ここまで課題を抱えるように至った時間外勤務の背景と原因についてお伺いします。
●知事答弁

 時間外労働について行政監察室から報告を受けた。この報告に対する私の率直な感想をということですが、まずは行政監察室がよく監察といいますか、調査をしてくれたと思っております。これには背景がありまして、突如行政監察が調査に乗り出したわけではないのです。私もかねて残業の問題には非常に問題意識を持っておりまして、とにかく原因を分析して、そして構造面からこの問題に改革のメスを入れようということで、担当部局にはしょっちゅう指示していたのです。ですから、それなりのことがなされているのだろうと思っていたのですけれども、一向に結果としてあらわれない。
 よくよく調べてみたら、結局、いつも私が指示をしますと、総務部長名で庁内に通知を出す。残業をやめましょうねとか、むだを排除し、むだをやめましょうねと。それで知事の指示はちゃんと実施しましたということのようでした。私のところにはその通知も来ないものですから、どういう処理をしていたかよくわからなかったのです。
 結局、我々も残業の問題を取り上げてメスを入れようと一生懸命やっておりましたし、議員の皆さんもいろいろ御注意をいただいていたのですけれども、結局はペンと紙の行政になっていたわけで、かつての農政だけではなかったということがよくわかりました。これではいけないというので、行政監察に調査を指示したわけです。要すれば県の残業の実態を調査するということ以上に、残業の問題を扱う部局、職員課とか総務部の担当部課ですけれども、そういうところの仕事のやり方を実は監察をしたということがその本意であります。そうしたら仕事の分野がちゃんと作動していなかった、機能していなかったということが今回明らかになったわけです。
 本来ですと、残業というのは実は体でいいますと一種の病理現象と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、通常でない状態が生じるわけです。しかも、それが恒常的に長時間労働が続くということは、やっぱり一種の病理現象と言ってもいいのだろうと思います。そうしますと、その病理現象がどの部位で発生しているのかというのを見て、それに対して適切な治療をしなければいけない。それは何が悪いのか。栄養が足らないのか、それとも休息が足らないのか。体だったらそういうことになるわけで、組織の残業ですと、人員が足らないのか、仕事が多過ぎるのか、それとも仕事のやり方、システムが悪いのか、それともその仕事に当たっている職員の資質に問題があるのか、そういう解明をしなければいけないわけです。そこが全くなされていなかったということが今回わかった。これが一番の問題点だと思います。
 病理現象があらわれているけれども、それを体質改善だとか予防とか治療に全く役立たせていなかった。残業は残業だけで管理をしている。定数管理はまた全然別の次元で論じられていた。こういう問題が明らかになったわけです。いい機会ですから、残業というのは一つの組織の問題点がにじみ出てくる部分ですから、それを見ながら組織のあり方を変えていこう。それは人事配置の問題であったり、定数管理の問題であったり、仕事の配分の問題であったり、仕事のやり方の問題であったり、そういうところを改善していこうと。そういう構造的な問題、体質の改善に結びつけていこうとしたいということです。
 ここまで残業問題が大きな課題を抱えるようになった背景は何かというのは、今申し上げたようなことでおわかりいただけると思いますけれども、もう1つ付け加えるならば、やっぱりそれぞれ管理職に問題意識が欠如していたということだと思います。従来から県庁の組織の中で、管理職は本来の仕事 ― 本来の仕事といっても実は職員管理とか残業管理も本来の仕事なのですけれども、そういう意味ではなくて、予算で事業を行うというような面を一生懸命やって、いわゆる組織管理とか人事管理とかそういうものについては余り強い意識がなかったのではないかと私は思っております。例えばそういうのは課長ではなくて課長補佐がすることだとか、そういうちょっと過った認識が従来あったようで、管理職に対して適切な人事管理とか組織管理とか仕事の進行管理とか、そういうことのノウハウとかスキルとか動機づけとかを研修などで取り上げていなかったという嫌いがあるのです。ですから、知らず知らずのうちに管理職のこの種の問題に対する意識が低かったということは否めないだろうと思います。
 特に私はあえて申しますと、やはりこの問題で一番問題意識を先鋭に持たなければいけない例えば総務部の職員課とか、そういうところに余り問題意識がなかったことが一番の問題点だろうと思っております。
 残業問題からだけではないのですけれども、職員の研修のあり方とか、特に管理職の研修プログラムなどについての見直しを今やっておりまして、昨日も実は自治研修所長から幹部全員でこれからの研修プログラムについて話を聞き、意見交換、議論をしたのですけれども、そういうところから意識改革をしていこうと思っております。
 反省点としては、私自身も残業の問題をもっと減らそう、構造的に問題を解決しようということを常に指示はしていたのですけれども、総務部に指示をするだけで、それに対して適切なフォローとかを今日までしていなかったということもありまして、今回、行政監察室という少し違ったところから光を当てたら問題点がクリアに出てきたというので、多少遅かったのですけれども、こういうやり方も時折必要なのではないかと思っております。

<時間外労働について>bQ

 
 私は時間外労働を否定しているわけではありません。必要なものは必要として、充実した仕事をしていただきたいと思います。県の残業の実態を見てみますと、管理職の皆さんが業務内容の質と量の把握は十分でなかったと思っております。いま一度点検を行い、質と量に見合った人的配置を早急に検討すべきだと思います。
 仕事の関係上、時期的なものもあり、緊急的なものもあり、どうしてもやらなければならない仕事は必ずあります。したがって、必要な時間外は管理職が的確に把握して、きちんと保障はすべきです。私が心配していますのは、余り上司から圧力が働きますと、職場内での残業がしにくくなり、ついつい持ち帰り残業が増えてしまうのではないかというところです。特に公務災害認定などでよく問題になりますのは、持ち帰り残業という部分です。また、あわせて心配されますのは、各種の情報、先回もありましたけれども、パソコン等でかなり情報が入っています。そういう情報の保護とかプライバシーの保護、そういう部分でもなるべく持ち帰り残業はなくすべきだと思いますけれども、その対策を知事としてはどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

●知事答弁

 
 残業についての規制といいますか抑制といいますか、これを進めると持ち帰り残業がふえるのではないかということですが、そうなってはならないと思います。これは管理職の方にもぜひ対応を誤らないように、私はきちっと指導したいと思いますけれども、職員の皆さんもぜひ、自分が今どういう仕事を抱えていて、残業をせざるを得ないのだということをちゃんと上司に伝えていただきたいと思うのです。残業をめぐって上司と職員との間にちゃんとした意思疎通、対話というものがなければいけないと思います。もし残業せざるを得ないものを抱えているのに、上司から残業はやめろと言われた場合には、ではこれはどうしたらいいでしょうか、これだけの仕事はということをちゃんと言うようにしてもらいたいし、また言える環境をつくっていきたいと思うのです。
 それでも例えば上司がわけもわからず帰れとなったときには、ヘルプラインというのがありまして、これは行政監察室の方に通報をしてもらう仕組みなのですけれども、職員が上司のコンポライアンスに問題がある、要するに法令遵守とか県庁内で決められたルール、それに対して反している、理不尽だというときには、だれからでも結構ですから、行政監察室の方のヘルプラインに通報してもらうシステムがあるのです。それについてはちゃんと通報者のプライバシーとか通報したこと自体もわからないような形で調査を進めて、是正をするということを今やっているわけです。ですから、そのことを信頼してもらって、ぜひ自分の抱えている問題点、残業について抱えている問題点をちゃんと上司に言って、そこから問題の解決に取り組むということをしてもらいたいと思います。
 
 これまで一人の職員が残業せざるを得ない業務を抱えているときに、必ずしも周りの応援体制が円滑にできていなかったという面があるのです。一つのプロジェクトを途中から他の職員が加勢するということが、官庁では実はなかなか難しい面もあるのですけれども、そこのところをできるだけ計画的に、1つの係だけにとどめないで課内、もしくはもっと言えば部内、さらに大きいプロジェクトでしたら県庁内全体で柔軟な応援体制をつくるということも課題で、今その検討を、これも総務部に命じているところです。これも一片の通知に終わらないように、ぜひフォローしていきたいと思っております。そんなことも今考えながら、できる限り残業がリーズナブルな形で減るように、それが決して持ち帰り残業のようないびつな形で解消したことにならないようにしたいと思っております。