平成16年2月定例会一般質問(平成16年3月9日)No.1
<地域経営について> |
今議会に提案されている平成16年度鳥取県一般会計の予算編成に当たっては、財政課の職員の皆さんを含め、片山知事にとっても大変であったであろうと推察をするところです。
自民党の代表質問の答弁で三位一体の改革をもろに否定されましたが、事実三位一体の改革、財政調整機能を保証した交付税制度などが確定しない状況下で、しかも交付税の総量規制だけにこだわる政府の姿勢では、来年度以降も引き続き地方自治体にとっては殊のほか財政運営には厳しいものがあると予想されます。 「改革なくして成長なし」と大きなかけ声のもと、小泉総理は構造改革に着手し、自動車やIT産業においては好調な輸出に支えられ、一部の企業においては県内でも景気回復の兆しがあると言われているものの、建設や流通業界においては構造改革どころか構造破壊が進んでいるものと危惧するところですが、今や地方自治体も、まさに構造破壊の分野へ既に入っているものと心配するものです。 我が国の台所事情をわかりやすく表現すれば、 400万円の借金をしながら 800万円の生活をする一方で、1億円の借金を背負っているのが現状です。だれが見てもこんな借金生活が到底続くわけがないのを承知の上で、無理やり続けているのが日本の国であり、それをつかさどっているのが今日の政治であり、政治家です。本来、一日でも早く構造改革に着手しなければならないのは国の行政システムであり、国の財政であるとぼやくのは私だけでしょうか。 幸いなことに、我が県においては、財政通の片山知事が誕生以来、今日の到来を予想される中で、就任以来、大型プロジェクトの見直しを初め、地方分権時代によりふさわしい県政のあり方が模索されてきたのです。私自身も役場の職員時代、町の財政危機を経験し、幾らきれいな理屈を並べても金のない、袖の振れない現実、だれが責任をとるわけでもない政治の現実、そして財政再建に向けての苦い経験から、我が県の財政見通しをもとに交付税特別会計の現状と見通し、臨時財政対策債への疑問など、この議場で何度となくあえて片山知事と議論を交わしてきたのです。 そもそも今は地方分権の時代だ、三位一体の改革だと言ってはいますが、過去にも知事と議論したように、1991年にバブルがはじけて以来、交付税の原資である国税がふえないどころか減る一方であるにもかかわらず、根本的な交付税率の見直しや制度の見直しをしてこなかったところに原因があり、その後も交付税の算入を前提とした先食い事業を国が推し進めてきた結果であろうと思います。 またまた小泉総理は、ここでも「国から地方へ」と声だけは張り上げていますが、支持率を気にしたパフォーマンスであり、根本的な改革は何一つされておらず、形だけの三位一体で、そのツケは住民に一番近い市町村に押しつけられているのではないでしょうか。片山知事の発言のとおり、つじ斬り的な交付税と財源対策債を合わせて12%の削減は、地方自治体に大きな衝撃を与えるとともに、地方の自立を大きく阻害するものと私自身心配するところです。 交付税には、大きく分けると財源調整機能と財源確保機能の2つの要素がありますが、このたびの削減は、国が地方に一定の行政ができるよう約束し、地方に奨励してきた事業の先食い制度を一方的にほごにするものであり、国を絶対的に信頼し、素直に交付税算入の事業をより多く実施してきた地方自治体ほど、その痛みは大きくなっているものと思います。 では、なぜこのようにつじ斬り的な交付税の削減をしなければならなかったのか。うがった見方かもしれませんが、市町村合併が一斉に始まる前に、交付税を削減することにより、合併後の交付税を大幅に圧縮したいがための一つの手法であったのではないかと私は思うのです。 そこで、鳥取県という1つの自治体を預かる片山知事に、次の3点のことについてお伺いします。 まず1点目として、片山知事は今日までの国の財政状況の推移の中で、交付税を含めてですが、どんな危機感を感じられていたのか。2点目に、このたびの国の予算編成の中で、つじ斬り的に交付税並びに臨時財政対策債を12%削減しなければならなかった背景と思惑について、どう理解されているのか。3点目は、今後の国の財政状況並びに交付税の推移をどうなるものと見込まれているのか、お伺いします。 |
●知事答弁 |
財政の問題で、伊藤議員が今日の地方財政の状況、それから、こういう地方財政の危機的な状況に至った遠因というか、政府の対応などについて率直な御見解を述べられておられましたが、私も伺っていて、ほとんど違和感がありません。同じような気持ちを持っています。 それを前提にして、質問のうちの1つは、現時点での交付税を中心にして、本県を含めて地方財政の状況にどんな危機感を持っているのかということですが、私は、このまま政府がやりたい放題と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、一方的に地方財政を締めつけるようなことがあれば、本当に全国の自治体は財政運営をやっていけなくなるだろうと思いますし、また、先般も申し上げたように、地方財政主導の我が国全体のマクロ経済に対してデフレ効果を大きく及ぼすだろうと思っています。 政府も大変なことはわかるのですけれども、やはり過去約束したことはきちっと守るということがないといけないと私は思います。今日の危機的な状況というのは、政府が約束を守っていないから起きていること──それだけではありませんけれども、それが1つあります。今になって地方財政が何かルーズなことをして、この1〜2年、地方財政がモラルハザードで何か要らないものまでどんどんつくって今日の危機を生んだわけではないのです。10年以上前から政府が音頭を取って、景気対策やら単独事業をどんどんどんどん慫慂した。奨励した。場合によってはしりをたたいたわけです。その際に政府が約束をした。それはすなわち借金で仕事をしておきなさい、後で返すときはちゃんと政府が面倒を見るからというそういう言葉を信じて、伊藤議員のおっしゃったことによれば素直に応じてきた自治体が、今困窮しているわけです。 政府がちゃんと約束を守るべきだというのは、余り多くの人が言われなかったので、私は一生懸命言っていました。最近になってやっといろんな人が言ってくださるようになりまして、これから大きな声になると思いますけれども、いずれにしても、このままいくと地方財政は成り立たなくなるし、日本経済に悪影響を及ぼすというそういう危機感。もう1つ、本当の危機感は、政府が平気でうそをつく。自分の都合の悪いことは口をぬぐって相手を責めるという、これが一番のモラルハザードです。政府が信用できなくなるのです。それが一番私が抱いております危機感です。 交付税と臨時財政対策債を12%も削減したその背景と思惑ということですが、それは今申し上げたとおりで、政府が約束を守らなかったということが1つ。 のみならず、政府がというか国の財政当局が、ある意味では悪乗りをしたのだろうと私は思うのです。悪乗りといいますのは、今日財政危機の状況になったのは、さっき言いましたように、過去10数年前から地方財政は、政府の景気対策に連動してハード事業を目いっぱいやってきたわけです。それが今日償還の時期を迎えたのに、それについて政府が約束を守らない、これが1つですが、そのときに、我々はもう二度とこういうことになりたくないので、過去の反省にかんがみて今後は交付税の先食いをやめよう、先食いにつながる交付税の悪用はやめようということを主張してきたわけです。そうしたら、まるでそこを逆手にとったかのごとく、それでは交付税の先食いはやめましょうというので臨時財政対策債を切ったわけです。これは趣旨を全然履き違えているのです。 我々は、将来に向かって新たに事業を起こして、将来に向かって債務をふやすことをやめましょう、そこで先食いをやめましょうということを言ったわけです。ところが、過去の先食いした分のツケについて、これはどうしても処理しなければいけない。だから、臨時財政対策債をローンのつけかえのように発行してでも処理しなければいけない。そこのところを先食いだというので圧縮しようとしたわけです。これは全く論理のすりかえと悪用といいますか、悪乗りだと思います。そういうことをしたために、地方財政は今大変大きな困窮に陥っているということだと思います。 交付税の推移がどうなるかということはわかりません。本当にわかりません。また来年、どんどん削ろうとしていろんな手を講じてくるのだと思います。非常にあくどい手口もいろいろ出てくるのだろうと思います。ですから、わかりませんが、とにかくこれははねのけなければいけません。我さえよければというわけでは決してないのですけれども、少なくとも過去の政府の約束だけは守ってもらわなければいけない。それだけは我々は堂々と言えると思います。しかし、今後に債務を残す、新たな事業を起こしてそれに伴って債務を積み増すということは、我々自身の地方団体側の努力で避けなければいけない。この2つの要素がポイントになるだろうと思います。 後者の面で言いますと、私がいつも言っていますけれども、合併特例債というのは悪いもの、地方財政全体として将来に大きなツケを残すものですから、過去いろいろ経緯はあったにせよ、これはもう即刻やめるべきだと私は思っております。それが地方財政をこれから再建する大きな一歩だし、それができないならば、地方財政の再建と言っても絵そらごとになるのではないか。スリムにしようスリムにしようと言っても、交付税の先食いをどんどんどんどんしてしまうというのは矛盾をしていると私は思いますので、地方財政関係者、地方団体関係者が本当によく自覚すべき問題だろうと思っております。 |
<地域経営について>No.2 |
このたびの交付税削減措置の中で、被害者はやはり国を信頼をしてきた地方自治体だろうと思います。つまりこのことは、地方自治体の行う公共サービスを頼りにしている住民、殊に負の遺産を先送りにされてきた次世代を担う子ども達が、一番の大きな被害者だろうと思うのです。 長年にわたり事業の先食い制度による国のシステムにどっぷりつかってきた地方自治体に、急に 180度方向転換しろというのは極めて至難なわざであると思うのです。知事も鳥取県の健全化財政のために努力はされているものの、これだけの大型プロジェクトを見直したり公共事業を削減していると、あらゆる部分で県民からの風当たりがかなりきつくなっているのではないでしょうか。どうしても有権者の皆さんは、道路をつけたり建物をつくったりするハード事業中心の首長、つまりそうした市町村長や知事の方がやり手の首長として高く評価される傾向が強い中で、次の選挙も勝つためには、少々財政が窮屈であってもハード事業をやらざるを得ないのが現実ではないでしょうか。 市町村合併も、合併特例債というとても甘いハチ蜜、なめ過ぎると先ほどありましたように劇薬にもなりかねないハチ蜜があるわけですけれども、知事としては、こうしたハード偏重型の有権者の意識改革を今後どう進めていかれるのか、お考えがあればお伺いしたいと思います。 続いて、長年こうして先食い制度を続けてきた県にしても市町村にしても、今一番大きな負担となっているのは、バブル時代の前後にたくさんの事業をしたためにつくってきた高い金利の借金です。問題なのは、今日の低金利時代にあっても、この高い金利の借金を減らすことができないという現実です。 我が鳥取県においても、平成14年度末で5%以上の高金利の県債残高が 275億 7,000万円もあります。中でも7%以上の高金利の県債が32億 3,000万円もあります。その大半は政府資金で、以前の大蔵資金です。政府の財政投融資計画もある中で、今日の社会状況をかんがみ低利な資金に借りかえることができるものもありますけれども、大蔵資金や簡易保険など、一応は借りかえができるというものの、利ざやの保証金を義務づけるなど一定の制限がかけられております。結局はこの保証金があるために、借りかえをしたくてもメリットのない仕掛けとなっております。 市町村においても、大半がこの大蔵資金を利用しているために、極めて厳しい財政運営を今強いられております。政府は画一的な行政を進める一方で、高金利の地方債を押しつけたままで、この厳しい社会情勢になっても地方自治体を何とかしようという考えが全くないことに、私自身は大きな怒りを感じます。知事は、この高金利の大蔵資金などについていかがお考えかお伺いしますとともに、この時期でもあり、特例としてでも借りかえができるよう国に物申す考えはないのか、お伺いします。 |
●知事答弁 |
地方財政で、政府が急に方向転換をしても、自治体はなかなかついていけないのではないかということをおっしゃられましたが、方向転換は決して急ではないと私は思います。現に、従来やっていたような財政運営のままではだめだということを私は5年前に予測したものですから、就任早々、前知事の計画しておられたいろんな大型箱物事業をやめたり、凍結したりしたわけです。ですから、そのころ気づこうと思えば気づけたわけです。
ただ、正直言いまして、政府の方も従来のやり方をずっとついこの間まで続けてきておられたわけで、政府の方を信じていた市町村は、恐らく急に今方向転換を迫られたということでしょうけれども、気のきいたところは5年前から気がつくわけです。特に県内の市町村は、県が大きくかじ取りを変えたわけですから、そこで市町村も変えなければいけないということをぜひ気づいていただきたかったし、私もいろんな機会に市町村長さんには申し上げてきたのです。従来のやり方をしてはいけませんよということを申し上げてきたのですけれども、残念ながら、なかなか目立ってかじ取りを変えたところはなかった。したがって、今回、交付税の大幅削減という形で一種のショックが来て、方向転換を急に迫られたという印象かもしれませんけれども、私は必ずしもそれは急な話ではないだろうと思っております。 それはともあれ、従来どおりに大きな箱物とかハード事業とかを、しかも補助金やら有利ないろんな仕組みで実施していく首長が評価されるという政治風土を変えなければいけないのではないかということですが、御趣旨は私もよくわかりますけれども、そもそも地方自治というのは住民、有権者の皆さんの意思によって成り立っているわけで、にもかかわらず、有権者の意思が悪いから変えろと政治が言うというのは、何か自己矛盾のような気もするのです。 ハード事業とか箱物が大好きで、それが一番いいと住民の皆さんが考えられておられれば、それを実現するのも地方自治ではないかとニヒルに考えたりもするのですけれども、そういうところは恐らく多分痛い目に遭うと思います。もっと痛い目に遭うと思います。それを自業自得と言ってしまえばそうかもしれませんが、ぜひそうならないように、痛い目に遭わないように、転ばぬ先のつえでかじ取りを変えていただきたいと願っております。市町村の議会でもこうした議論を積み重ねられることが必要だろうと私は思いますし、首長さん自身もぜひ意識改革をしていただければと思っております。有権者の意識の問題もありますけれども、首長や市町村議会の議員の皆さんの意識の方が当面は、差し当たっては大切なのではないか、この問題を解決するには必要なのではないかと私は思います。 かつて借りた高金利の政府資金の借りかえはどうかということでありますが、おっしゃる趣旨はわかるのでけれども、なかなか我さえよければということを自由自在に言えるというものでも実はないわけで、やっぱり過去に約束をしてきているものですから、一定の約束も契約書の中に内在しているわけです。 その辺の内容につきましては、総務部長の方から御答弁を申し上げたいと思います。 |
●瀧山総務部長答弁 |
政府系の大蔵資金等の借りかえの話です。現在の制度です。 確かに現時点の金利と比べると高いもの、5%以上のものが、おっしゃられるように 300億を超えているわけですけれども、借り入れ当時としては民間資金と比べても低金利だったということ。もう1つは、借り入れのための特約条項の中で、議員もおっしゃられるように繰り上げ償還する場合は保証しなければならないということで、そういう契約に基づいてやっていたものです。 公債費を圧縮するためには、借りかえを認めて、特に高いものを借りかえしていただくということは非常に有効な手段だと思いますけれども、長期の固定金利という現在の仕組みで、約定の中で我々も承知して借りているというものですので、現在低い水準で借りているわけですけれども、金利水準の上下動について双方が一定のリスクを負うというのは、やむを得ないところかなということです。 |
<地域経営について>No.3 |
高金利の話ですけれども、確かに保証金を払うと明記しているのですけれども、国が約束を破ったから地方もつらいのです。国が一方的に約束を破らなかったら、高利の金利も返せるのです。そういう部分が、一方的に国にだけ守らされて、地方がつらい部分、市町村がつらい部分というのは、私はやっぱり問題があると思うのです。そういう部分できちんと物申すべきだと思うのです。 先ほど知事からもいろいろありましたけれども、当然今の国の財政状況を見ていれば、先ほど申し上げたように、どんな将来が来るのか、だれでも容易に理解できる。そのために、この県議会におきましても数々の議員が何度となく議論をしてこられました。 しかしながら、地方財政法上の禁じ手である臨時財政対策債が時限立法としてできた時点で、それらの問題が市町村の議会で議論されたかというと、残念ながら議論されていない。法律は確かに国の専管事項であっても、先ほどあったように、モラルハザードに陥った制度に対する議論は、地方分権の時代であるからこそ、もっともっと市町村の議会でもやってほしいし、それが本当にこれからの地方分権を迎えていけるものと思うのですけれども、そういう部分を私としては非常に危惧しております。知事としてその辺の御所見をお伺いしたいと思います。 また、先ほどありましたように、ようやく最近、市長会を初め町村会で国に対する動きが出てまいりました。私自身としては、もっともっと市町村の皆さんは、逆に言うとむしろ旗を国に突きつけるぐらいの意思表示をもっとすべきだと思います。知事の感想をお聞かせいただきたいと思います。 そうした中で、今年度の当初予算にも、先ほど知事の答弁にもありましたけれども、フォーラムという形で、市町村長初め地方議会議員を対象とした研修会の開催が計画されているわけです。知事と議論する前提の中で、市町村合併も進み、真の地方分権時代に対応できる地方自治体、つまり自立できる自治体をつくるためにも、市町村長を含め地方議会議員を対象にして、やはりマネジメントを前提にした地域経営の研修会がこれからは必要ではないかと思うのです。 先ほど知事から、いろんな町村長がいるのも、それも一つの地方分権の時代だよということがあったのですけれども、しかし、選んだ首長が本当に財政手腕があるのか、経営手腕があるのかまで見抜くことは非常に難しいと思うのです。逆に言うと、その4年間、住民の皆さんは失敗したといって泣くのですか。そこはやはり研修会をすべきだと思うのです。地域経営のできる首長、そういう人を県としてもサポートしていくべきだと思うのです。知事の感想をお伺いしたいと思います。 |
●知事答弁 |
県債のうち資金運用部から借りているもの、いわゆる政府資金ですけれども、これについて過去の金利の高いものがあるので、これを繰り上げ償還でもして金利負担を減らすべきではないかというのは、ごもっともなのです。ただ、それが自由自在にできないという事情は、先ほど総務部長の方が御答弁申し上げたようなことです。 本来は、金銭消費貸借の場合に、いつまでに返さなければいけない、要するにいつまでは返さなくてもいいというそれを期限の利益と言いますが、これは債務者のためにある。したがって、本来ですと債務者が早く返すと言ったら、原則はそれでいいということなのです。ただし、契約をするときに細々としたものが入っていて、必ずしも債務者の利益とみなすのではなくて、債務者が早く返すときには債権者が一定のペナルティーを科しますよということを受け入れた上で契約をしているので、自由に解約はできないということになっているのです。 では、約束したら絶対何でも守らなければいけないのかというと、それは必ずしもそうでもありません。例えば最近クレジット、サラ金、クレサラ事件が多いわけですけれども、法外な金利を約束して借りるわけです。約束したのだから返せとなるのですけれども、それが例えば年利 200%とかそういうものであったら、それはもう無効になるわけです。それは法律上無効になることもありますし、解釈で無効になることもあります。契約はしているけれども公序良俗に反するという一般原則にのっとって、無効になるケースもあります。 県と政府資金運用部との間で結んでおります金銭消費貸借契約の中で、繰り上げ償還する場合には一定の保証金を払わなければいけないというその条項が、社会通念上に照らして公序良俗に反することになるかどうかという解釈になるわけですけれども、多分それは裁判しても公序良俗に反するということにはならないのだろうと思いますから、恐らく拘束されるのだろうと思います。 ただ、別途、伊藤議員がおっしゃるように、国も交付税の約束を守っていないのだから、一方で県だって政府資金の繰り上げ償還の約束だって守らなくていいではないかというのは、感情のレベルの問題としては私も非常によくわかるのですけれども、法的には裁判をしたら多分太刀打ちできないだろうと思います。 というのは、政府資金を借りるのは契約でありますから、きちっと法的に担保される。交付税の方はそういう契約を結んでいなくて、いわば口約束とは言いませんけれども、政府が方針を示してはおりますけれども、一つ一つ契約をしているわけではない。もう1つは、政府も一応は約束を守った。体裁だけは取り繕っているわけです。よく例に出しますけれども、残業手当は全額払いましたよ、文句ないでしょう。けれども、本俸をこっそり削っておきましたからねというやり方なのです。ですから、残業手当をきっちり払っているという部分では、本当に払っているのです。全体としては約束を守っていませんけれども。そういうレベルの問題ですので、これとあれと相討ちさせるというのはなかなか難しいのではないか。できれば私も非常にうれしいのですけれども、そういう感想を持っております。 財政の問題、交付税を先食いすることを前提にして予算を組んできた県も市町村もそうですけれども、特に市町村の場合、そういう問題についてもっと議会で議論すべきだったのではないかというのは、本当にそのとおりです。おくればせながらということでも結構ですから、こういう問題について本当に大丈夫かということを今でも大いに議論されたらいいと思うのです。そこで私がその議論の題材としてよく出しますのが合併特例債です。有利ですよと言われていますけれども、本当にそれが将来保証されますかといったら、私は保証されないと思うのです。現に過去の約束を現在守っていないわけですから、現在の約束を将来守るということは多分考えられないだろうと思います。ですから、口車に乗って安易に合併特例債でほいほいとやっていたら、後で痛い目に遭いますよということ、こういうことをめぐってよく議論していただければいいと思います。 ところが、こういう議論をしますと、中には、知事は現場の実態をよくわかっていないとか新聞に投稿された方もおられたりしまして、理解をしていただくのはなかなか難しいなと思っているのですけれども、今がいい例だと思うのです。過去約束を信じてやってきて守られていないという、これは本当にいい反面教師であります。ですから、今日の状況にかんがみて、将来のことをよく議論をするということをぜひやっていただきたいと思います。 市町村長も安易に唯々諾々と受け入れるのではなくて、むしろ旗を立てるぐらいのことをやったらどうかというのは、そのとおりだろうと思います。どんどん声を上げていただきたい。先般もある市町村長さんとお話をしておりましたら、その方が私にこう言われました。自民党の大物参議院議員が来られたときに、私は政府が約束を守っていないということをはっきりと申し上げました。そのことについて、知事からああ言ってもらったので胸がすっきりしたということをおっしゃっておられました。 特に、かつて政府は、基金を残すな、基金を残さないで全部使え、使って公共事業とかハード事業をやれといって指導したのです。実際したのです。そういうことをしておきながら、今総務省の幹部は、基金を蓄えていないところは備えが悪いのだ、気のきいたところはちゃんと基金でやりくりしていると言っているわけです。基金がないところは自覚がなかったのだということを言われたら立つ瀬がない、知事が言ってくれたのですっとしたとおっしゃっていましたけれども、それが本当の気持ちだろうと思うのです。ですから、そういう気持ちを、知事が言ったからすっきりしたのではなくて、みずからが、皆さんがどんどんいろんなところで言われたらいいと思うのです。それでないと、政府の方は都合の悪いことは本当にぷっと口をぬぐってしまいます。都合のいいことしか言われませんので、過去の歴史をちゃんとひもといて、きちっと提示をするということを市町村長さんもやっていただきたいと思います。 合併をするところもあり、分権時代になったので、市町村長さんも地方議会議員の皆さんも、よりスキルアップをしなければいけないということだろうと思います。それはそうだろうと思いますけれども、住民の皆さんが選んだ方を県が中心になってスキルアップの研修をしましょうというのは、私は何か変だなという気がするのです。ちゃんとした人を選ぶというところが地方自治の原点で、見抜けないから当たり外れがあってもしようがないというのでは困るのです。ちゃんと見抜いていただいて、財政問題も含めてしっかりとした人を選んでいただくということが基本で、もしそういう人が出られないのなら、どんどんみずから出て、立て直しをされたらいいのではないかと思います。 ただ、そうはいいましても、県としても市町村の議会の皆さんにこれからの分権時代に本当に主役としてやっていただかなければいけませんので、今いろんな手だてを講じています。従来、年1回の年中行事的にやっておりました市町村長との行政懇談会も、今は年4回開いておりまして、しかも、今日非常に重要な問題、教育とか福祉とかそういう問題を取り上げて、かなり綿密な意見交換をしているのもそういう問題意識を持っているからですし、別途、市町村の議会の議長さんとも意見交換をやってみたいなと思って今計画をしているところですし、去年も自立フォーラムをやったりしましたけれども、フォーラムに批判的な方もおられますけれども、今年も必要な啓発のプログラムはこれからもやっていきたいと思っております。 特にその場合に、市町村の議会議員の皆さんに大勢参加をしていただけるような内容にしたいと思っております。これまでも広く呼びかけるのですけれども、意外に県外の市町村の議会の皆さんはたくさん参加されるのですけれども、県内がいま一つというところもありまして、県外から来ていただくのは大いに大歓迎ですけれども、内なる議員の皆さん方にも、そういう機会にぜひ積極的に参加をしていただきたいと考えております。 |