平成16年2月定例会一般質問(平成16年3月9日)No.2

<鳥取県の沿岸における漁業の操業区域について>

 我が鳥取県は、日本海に面し、全国一の水揚げを誇ったこともある境港を初め、県東部には本県の特産である松葉ガニを水揚げしている網代、田後、賀露港などがありますが、全県的には沿岸漁業を中心に漁業が営まれております。中山から赤碕にかけての沖合にはよい魚礁があり、春はアジ、秋はハマチと、名和から赤碕にかけての中西部の漁協においては漁獲高の大きなウエートを占めております。

 ところが、このよい漁場を目がけて島根県の中型まき網船団──20トン未満の漁船ですが、やって来てアジやハマチをごっそり漁獲してしまうため、地元の漁協関係者はいきり立っているのです。

 なぜ漁業関係者がいきり立つのか、よく調べてみると、鳥取県沿岸で行われる漁業については、漁業法並びに水産資源保護法に基づき、漁業許可を初め操業できる漁法、操業区域、漁具の制限、採取禁止期間、罰則規定など事細かに鳥取県海面漁業調整規則に定められております。しかし、中型まき網漁業についての操業禁止区域は、海岸線から 7,000メートル以内の海域としか定めておらず、昭和50年8月に鳥取県の水産課長と島根県の漁政課長による「中型まき網漁業の操業調整について」と題した覚書でもなく相互確認書のようなものに、鳥取県と島根県とは、最近における中型まき網漁業の操業実態にかんがみ、当分の間、中型まき網漁業の入会海域について了解するものとするとして、鳥取県中山町御崎西北の線──これが東限であります──から島根県の大崎鼻と隠岐島の三度崎を結ぶ線、これが西側の線であります。この間は島根、鳥取両県の中型まき網船団が操業でき、検挙の対象としないと記してあります。

 その後、昭和61年に操業区域が沿岸から 6,000メートルであったものが 7,000メートルに改正されただけで、現在もこの相互確認書に基づいて原則として操業されているのです。確かに当時は島根、鳥取両県に中型まき網船団があり、海の中に県境を引くわけにもいかないことから、トラブルを防ぐ最善の方策の1つとして、この入会海域が設定されたものと推測されるのです。

 ところで、県外の中型まき網船団が、この入会海域を守って操業していたならば問題も起きなかったでしょうが、海に線が引けないことを幸いにしてかどうかわかりませんが、昨年秋からハマチをねらって再三にわたり、東限である中山町御崎を越えて赤碕沖から、ひどいときには大栄町の沖合まで出没したため、地元の漁師の皆さんがいきり立ったわけです。しかも、この中型まき網船団は60隻にも上る船団ですから、魚を根こそぎとられてしまい、生活権が侵されるのではないかと漁師の皆さんがいきり立つのもよくわかります。また、この中型まき網船団が、海が少ししけていて地元の漁師が出漁を見合わせているときにやってくるものですから、余計火に油を注ぐような状況です。

 そこで、こうした現状を踏まえ、知事に4点の質問をいたします。

 まず1点目は、鳥取県海面漁業調整規則にも明記されず、島根、鳥取両県の主務課長だけで取り決めてあるこの入会海域が法的に有効であるのかということです。

 2点目は、入会海域での操業については、適用する罰則規定等が明記してありませんが、適用されるとする罰則規定の根拠は何かです。

 3点目は、この相互確認書の中に誠意をもって指導すると明記されていますが、鳥取県として島根県に操業の指導を要請された事実があるかということです。

 4点目に、このような入会海域での操業に業を煮やした漁協や漁業関係者から、何度も取り締まりの強化を県に要請されたそうですが、県としては取り締まり要請についてどう対応されたのか、お伺いします。
●知事答弁
 海面漁業の問題で幾つか御質問がありましたが、これも今まで余り取り上げられなくて、水面下にあったような行政の分野をこの議場に取り上げて広く議論をするきっかけをつくっていただき、大変ありがたいと思っております。改めてこの分野について点検をしてみますと、不透明なことがやっぱり随分あります。

 御質問にありました鳥取県の水産課長と島根県の漁政課長の課長同士の取り決めについての法的拘束力といいますか、法的な実効力といいますか、それはどうかということですが、法的な拘束力で本当に裁判のときにこれが規範になるのかといいますと、なかなか難しい面があると思います。一定の効力は司法の場に出ても恐らく認められるだろうと思います。ただし、国民の権利を制限し、義務を課するというそういう局面に至ったときに、これがちゃんとした法的な後ろ盾になるかというと、なかなか難しい面があるだろうと思います。一定の効力はあるけれども、万全ではないということは言えるだろうと思います。

 では、そういうもので海面漁業に規制を加えてきた両県の当時の課長同士は悪かったのかというと、それは一概には言えないと思います。いろんな事情があったと思います。特に海面という広いところで、陸上と違って境界もなかなか決められない。いろんな過去からの古い歴史と伝統と経緯を引きずった分野ですので、なかなか明示的にきちっと規則などに書き得ないという事情があったのだろうと思いますし、それは今でも実はあるのです。そこで、苦肉の策として、本当に苦肉の策だと思いますけれども、両県の課長が相談をして、それぞれの守ってもらうべき決まりというものをこういう形でしたためたのだろうと思います。そこのところは理解をしてあげなければいけないと思うのです。

 けれども、今日、行政が何事によらずきちっと説明責任を果たさなければいけない。きちっと根拠に基づいて仕事をしなければいけないという時代になりますと、その根拠としてのあいまいさが露呈します。そこで、いい機会ですから、ぜひ島根県とも相談をして、きちっとした法的拘束力を持つ、法的な実効性を持つ規定の仕方に変える努力をしなければいけないと私は思います。実態は実態としながらも、とりあえずはこれをきちっと表に出して、海面調整規則が一番ふさわしいと思いますけれども、何らかの形できちっと法的な効果のあるものとして規定をするという作業をしなければいけないと思っております。いいきっかけを与えていただいたと思います。

 それに関連して、この覚書には違反した場合の適用する罰則がないではないかということですが、覚書ですから罰則を科することは当然できません。ですから、覚書に基づいて罰則ということはあり得ないわけで、それは別途、漁業法によって無許可ということでペナルティーを科すという場合はあり得るだろうと思います。その際に、その覚書が本当に法的拘束力があるかどうかというと、先ほど申し上げたような、決して万全ではないけれども、一定の効果はあるでしょうということになるのだろうと思います。

 漁業法の第何条かということ、罰則規定の内容等につきましては、水産振興局長の方から御答弁申し上げます。

 覚書の中には鳥取県と島根県が相互によく相談をして、誠意を持って指導するということがあるけれども、要請したことがあるのかということですが、これも一応の要請をしております。

 その要請内容につきましては、水産振興局長から御答弁申し上げますけれども、これも覚書ではありませんけれども、課長レベルないし課長以下のレベルでやっておりますので、こういう問題はぜひもっと上に上げて、場合によっては知事同士でもいいと思いますけれども、きちっと両県で相談をしながら秩序を整えていくということが必要だろうと思います。

 現況にかんがみて、県内の漁協の皆さんが非常に業を煮やしているということ。その件についてきちっと取り締まりをしてもらいたいという要請があって県はどうしたのかということですが、これもいろんな活動をしておりますけれども、その取り締まりの状況等につきましては、水産振興局長の方から具体的に御答弁申し上げたいと思います。

●関水産振興局長答弁
 違法操業の罰則規定の根拠ですけれども、漁業法第66条違反に該当して、同法 138条の規定により、3年以下の懲役または 200万円以下の罰金に処せられることになっております。

 具体的に事例がございますが、平成8年8月に中山町沖で操業中の島根県船を無許可操業違反で検挙し、罰金20万円の司法処分が確定している事例がございます。

 次に、島根県への要請のお話がございました。

 昨年11月以来、地元の漁業者の方から違反操業に対し取り締まりの要請をいただきました。漁業取締船「はやぶさ」により洋上での漁業取り締まりを実施するとともに、島根県に対して昨年12月、水産課長から電話にて島根県船の指導の要請を行ったところです。島根県におかれましては、隠岐支庁経由で12月25日、関係漁業者に対して違反操業をしないよう指導したと伺っております。

 また、2月9日ですけれども、島根県の方に水産課長が出向きまして、違反の取り締まりを要請するとともに、いろいろ協議をしました。これに対して島根県よりは、両県が連携して取り締まりをしようじゃないか、共同取り締まりをしようじゃないかという御提案がありましたので、今後、具体的に島根県と協議をしてまいりたいと考えております。

 取り締まりの状況ですけれども、11月以来、ことしの1月までですけれども、延べ17日間、出航が可能な日については出かけております。集中取り締まりを行ったところです。

<鳥取県の沿岸における漁業の操業区域について>No.2

 基本的にですが、この相互確認書なるもの、約30年近く前のものであるとともに、既に県内には中型まき網船団があるわけでもなく、鳥取県海区漁業調整委員会を初め漁業関係者の皆さんの了解が得られれば、この入会海域は廃止すべきだと私は思います。そもそも相互確認書には「当分の間」として明記してあるように、暫定的に作成してあります。初めから30年近くも想定はされていないのです。どうしても入会海域が必要であるならば、先ほど知事も申し上げられましたけれども、設置目的等規則できちんとわかりやすく明記すべきだと私は思います。知事の御所見をお伺いします。

 もう1点、このような入会海域内での操業取り締まりのため漁協から要請を受けた県は、何度も県の取締船「はやぶさ」を出動されたわけです。しかし、毎年のように区域外での操業が繰り返し行われる中で、平成10年以降は検挙されている実績が全くありません。つまり、県の取締船である「はやぶさ」が賀露の港を出航すると、なぜか船団が一目散に退散したり、「はやぶさ」が警戒行動をしているときには船団が全く姿をあらわさないなど、一部では「はやぶさ」の行動が島根県の中型まき網船団に漏れているのではないかという情報もあるわけですが、県としてはこの問題をどうとらえておられるのか、お伺いします。

近年、鳥取県の沿岸では、サザエの放流を初め養殖漁業も盛んになってまいりました。これらの密漁対策にしても、今のままの取り締まり方法では対応できないのではないかと私は危惧いたします。取り締まりの方法、あり方、いま一度見直す必要があるのではないかと思いますけれども、知事の御所見をお伺いします。

●知事答弁

 今のような不透明なことは改めるべきではないかということですが、そのとおりだと思います。ぜひ関係者とよく相談をして、これは島根県と両県の関係ですから、島根県ともよく協議をしながら改善をしていかなければいけないと思います。

 差し当たっては、伊藤議員もおっしゃいましたように、法的な手だてになるようにきちっと明確化をする。それがすなわち透明化にもつながるわけで、そういう明確化、透明化という観点で、規則がいいと思いますけれども、ちゃんとした法令形式に書いていくということをしなければいけないと思います。そういう点も含めて、これも島根県とこれからよく相談したいと思います。

 「はやぶさ」の行動が漏れているのではないかということですが、これは推測になりますけれども、この辺の事情につきましては水産振興局長の方から御答弁を申し上げたいと思いますが、漏れる漏れないも重要ですが、今違法操業をしている方々がぜひ自覚をして、資源管理、法令の遵守ということをやっていただかなければいけないので、違法と取り締まりとのイタチごっこになるようなことではなくて、ちゃんと守っていただくということを一方で促していくということも必要だろうと思っております。

 養殖漁業もふえているので、今までのような取り締まりのやり方だったらまずいのではないかということですが、この際いい機会ですから、これまでのやり方をよく点検してみたいと思います。そこで関係者の協力も得ながら、取り締まりも含めて実効性のあるものに仕立てていきたいと考えております。

 これについても、補足等について水産振興局長の方から御答弁申し上げたいと思います。
 

●関水産振興局長答弁
 
 取り締まりの漏えいの話ですけれども、通報を受けて「はやぶさ」が現場海域に到着するのに約1時間程度かかります。そのときには違反操業船は見当たらない。通報時には違反操業船があるということですので、やはり「はやぶさ」の船長も議員と同様、本船の行動が漏れているのではないかという疑念を持っております。

 このようなことから、検察庁等の相談、あるいは意見を聞きながら、実効の上がる漁業取り締まり方法がないか。例えば漁船を借り上げて、水産課の司法警察職員を乗せて取り締まり業務に当たる。あるいは少し狭隘ですけれども、赤碕港に「はやぶさ」を待機させて到着時間の短縮を図る。このようなことをした場合に問題があるのかないのか、検討しているところです。

 密漁の件ですけれども、議員お話しのように、アワビ、サザエ、栽培漁業の中心になっておりますけれども、現在のところ、密漁に対しては、漁業者あるいは漁協からの通報により、県警あるいは海上保安部の方で対応していただいているのが現状です。

 今後の密漁の取り締まりにつきましては、漁業者の方々の意見を聞きながら、県あるいは海上保安部、県警、漁協で構成する例えば密漁防止対策協議会のようなものを設置して、密漁の防止、あるいは取り締まりのあり方について検討していきたいと思っております。

<鳥取県の沿岸における漁業の操業区域について>No.3

 いま一つの一例として議論しましたが、このほかにもこうした相互確認書で設定された入会海域のようなものがありはしないのか、お伺いします。

 多分あると思いますけれども、もしあるとするならば、あわせてこれも見直すべきではないかと思うのです。いかがでしょうか。

 そのほかにも、鳥取県の小型底引き網漁船の操業区域は県漁業調整規則によって大山町の阿弥陀川で区分されているため、境港の漁船は阿弥陀川より東では操業できないのに対して、島根県の県外の小型底引き網漁船は操業可能という、。まさに不可解な現実があるのです。これらの問題に対しても、やはりきちんと見直しをかけるべきだと思いますけれども、御所見をお伺いします。

●知事答弁

先ほど伊藤議員が御指摘になられましたように、規則によらないで、役人の覚書で処理をしているようなものはないのかということですが、これはほかにもあります。詳細につきましては、水産振興局長の方から御答弁申し上げます。

 これも含めて、ちゃんとした実効性のあるもの、明確化し、透明化するようなそういう取り組みをこれからしていきたいと考えております。

 島根県の小型底引き網の漁船は中山町の辺まで来れるのに、境港の漁船は大山町の阿弥陀川のところで区分されているのではないか、これは不可解だということですが、確かにそういう実態になっております。何となく変だなという感じを私も受けるのですが、これも過去からの長い経緯と歴史を踏まえたもので、その実態を今直ちにそれこそ一刀両断に否定するというわけにはいかないだろうと思います。これもよく実態を解明して、経緯もひもといて、これからどういう対応ができるのかということを検討してみたいと思いますし、県内の関係者の皆さんの意見も聞いてみたいと思います。

 県内の皆さんにも、実はこっちの方がいいという方も多分おられるのです。関係者の皆さんの意見も伺って、そして、その上で島根県ともこれから相談をしていくべき分野だと思っております。
 

●関水産振興局長答弁


 他の入会海域の有無ですけれども、隠岐島周辺に小型イカ釣り漁業に関する入会海域というのがございまして、島根県と鳥取県の水産主務課長で覚書を結んでおります。

 小型底引き網漁の操業区域のお話がございましたけれども、これは規則、覚書協定等によらない、現在実態としてある海域です。

<鳥取県の沿岸における漁業の操業区域について>No.4

きょうは約束を守らないという2つの共通テーマの中で質問をしました。約束を守らないというモラルハザードが今日の日本の社会でまかり通っておりますけれども、せめて鳥取県だけは約束は守るという信頼関係の中で、みんなで鳥取県政をやっていきたいということを願いながら質問を終わりたいと思います。