<地方分権の時代にあって(税のあり方、地域の再生)> |
私たちは、2000年4月に地方分権一括法が施行され、これで新たなるまちづくりができると大いに期待しました。つまり、我が国の行政の流れが大きく変わり、地方に住む者にとっては、一々国の顔色や御機嫌、さらには煩わしい命令に従うことなく、地方の裁量が大きくなる中で、その地域に暮らす人が自己責任を基本としながら、自分たちの思いの中でまちづくりができるという期待感があったからです。
ところが、どうでしょうか、私たち県民が本当に望んでいたまちづくりの方向に地方分権の方向が本当に進んでいるのでしょうか。私は、大きな怒りさえ覚えるのです。
今議会においても、三位一体改革の後遺症を含め、代表質問で財政問題が議論されているところでありますが、私たちが幾ら議論を深めても、三位一体という耳ざわりのよい改革の中で、国の責任でつくり上げられた借金財政の負担を結果的には地方自治体に転嫁しているもので、今日までの経過や責任を総括することなく、また将来の財源保障の方向さえ示さず、対症療法的な手法に終始する国政にいら立ちを覚えるのです。つまり、地方分権の到来だと言われているものの、現実的には交付税を減らすことによって逆に地方の裁量を極めて小さくするという、締めつけ型の中央集権の社会が形成されているように思うのです。
ぼやいていても何一つ解決されるわけではありませんので、鳥取県として何をしなければならないのか、具体的な議論を知事としていきたいと思います。
私が県議会に送っていただいてから、地方交付税が将来にわたって維持できない状況、さらには地方財政法上の禁じ手と言われていた臨時財政対策債の導入について、この議場で知事と議論を交わしてきたところですが、その心配が現実化していることがとても残念です。
ところで、今日までの予算編成を見てみますと、知事はベクトルの指示だけですが、財政課の職員の皆さん方は、海底30メートルに沈められた魚礁の投資的効果を確認するため、実際、職員みずからが潜水具を身にまとい、海底まで潜って効果を確認されるなど、その検証の努力には敬意を表します。
歳入については、幾ら知恵を出しても簡単にふえるものでなく、結果的には、いろいろな投資的な効果を一つ一つ検証する中で、施策の選択をしながら、ムダのない歳出に抑え込むしか方法はないと思うのです。中でも、住民に一番近い市町村にあっては、地方交付税が大幅に減額される中で、新年度予算さえ組めないところも出てきましたが、そのほかの市町村でも既存の行政サービスをこれまでどおり維持することは極めて困難な状況で、ムダをなくすレベルを超え、サービスの質や量を思い切って見直しせざるを得ないわけで、その影響をもろに受けるのは、まさに住民そのものです。
そこで一番問題になるのは、やはり地方自治体の基幹税である法人関係税のありようかと思います。
我が国の景気も回復基調に入ったと言われ、日銀も金融の量的緩和策を解除しましたが、景気回復の恩恵を敏感に受けているのは大企業の本社が集中する都市部であって、その大多数で法人税が大幅な伸びを示したことにより、大都市を抱えている都道府県の大半の18年度当初予算は増額となっています。中でも東京都は、もともと予算規模自体が大きいわけですが、2月補正が鳥取県の18年度予算を上回る 3,850億円で、その財源の 3,150億円は税収入と言われております。地方に住む人は、汗水流しながら山を守り、田畑を守り、子どもの高等教育のために借金をしながら仕送りをして、さらにはその人材まで提供してきた中で今日の日本経済、都市部が成り立ってきているわけで、大都市偏重の法人税を地方税の基幹税として今後も継続していくことはやはり問題があり、まさにそのありようについて、地方から見直しの声を大きく上げるべきだと思うのですが、知事の御所見をお伺いします。
また、昨年実施された国勢調査の速報が発表されましたが、その速報によると、鳥取県の人口が5年前に比べ 6,300人余り減少し、60万 6,004人と、昭和60年の国勢調査以後、減少傾向にあるとともに、高齢化率が年々引き上がっています。このことは、自治体の地方税を支えている現役世代が年々少なくなっていることであり、結果的には税収入が落ち込む中、高齢者の皆さんへの行政サービスの需要が高まる一方で限られた財源でやりくりするためには、どうしても県民の皆さんへの行政サービスの質と量を見直し、どこかで水準を落とさざるを得ないことに結びつきます。
さらには、まだまだ十分でないインフラ整備、都市部と格差が広がる賃金、経済や合理性だけがますます追求される行政の中で、公共サービスの見直しや切り捨てが余儀なくされる将来は、ますます地方での生活はしづらいものになり、過疎化に一層拍車がかかると心配します。
スローライフというライフスタイルも1つの選択肢かもしれませんが、地方で生活する現役世代の皆さん方には不便な部分も多くあり、今一番求められているものは、相互扶助制度を支える人たちを一人でも多くつくり出し、自治体の自立の根源をなす地方税の確保にあると思うのです。
したがって、鳥取県としての自立を図り、継続的な県政を運営するためには、県の人口を増加させ、バランスのとれた人口構造で、地方税を納める現役世代をしっかり確保するための具体的な施策、並びに行動計画を早急に検討しなければならないと思いますが、知事の所見をお伺いします。
今日の地方財政は、人口減少が続くことが容易に予想される中にあって、あたかも人口がふえるという非現実的な計画を描かされた中で、交付税を措置という国の保障のもとにじゃぶじゃぶと借金を恣意的に国策として進められてきた結果で、この手法にすっかり洗脳され、中毒症状に陥った市町村は、理屈ではわかっていても現実的にはなかなか改革を実行できないと思います。これまでの代表質問で議論され、答弁されたように、地方分権一括法が施行されて6年も経過しているのに、時代認識を理解されていない市町村長や議員がまだまだおられるという現実は、残念ながら私も事実だと思います。今後こうした市町村長や議員の皆さんの意識をどう現実的なものにブラッシュアップされていかれるのかお伺いします。
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●知事答弁 |
最初に、地方分権との関係で、税のあり方についての御質問がありましたが、まず地方分権が本当に進んでいるのだろうか、この財政問題などを見てみますと、むしろ中央集権が強まっているのではないかという懸念は、私も実は共有しております。
地方分権をさらに進めるための受け皿として、全国の自治体は集中改革プランをつくれという号令がかかってきたわけです。これは法律でも何でもない、お役人の一片の通達ですけれども、これで何と全国のほとんどの団体、47のうち鳥取県を除く団体は全部つくってしまうわけです。法的根拠もなくて、一片の通達でざっとすぐに右へ倣えする。これを見ていますと、本当に私は中央集権だと思います。地方分権が進んでいない。北朝鮮のような国でもこんなにうまくは進まないと思うのです。私はあえて反対しているわけではないのですけれども、やはりこんなことはいけないと思うのです。法的根拠のないようなことにみんながなびくようではいけない。だからあえて反対しているのですけれども、鳥取県だけが拒否とかという話になるということは、みんなやっているわけですから、本当に分権を進めようと思ったら、原理原則にこだわるというしつこさが私は必要だと思って、あえて私は嫌われたりしながらもやっているのですけれども、本当に地方分権を進めるためには、どうか多くのほかの団体でもまずみずからが自信を持って実行しなければいけないということを自覚すべきだと思います。
税の話は、本当に伊藤議員のおっしゃるとおりで、分権を進めることで税源移譲を行うと貧富の差は拡大します。それは税源に偏在があるからなのですから、これからの税制は偏在度のより少ない税体系にしなければいけない。法人所得課税から個人所得課税とか消費課税に変えていかなければいけない、こういう基本的な考え方を持っていまして、私は今、知事会の税制問題小委員会の委員長をしていますので、まさに地方から声を上げよと伊藤議員はおっしゃいましたけれども、地方からの声を上げるべく、知事会でもこれは初めてのことなのですけれども、税をみずから検討するという作業を今やっているところです。
税をしっかり納める現役世代を確保する必要がある、これはもうおっしゃるとおりです。少子化の中でどうやって納税者を確保していくか。これは若者の流出をとめる、若者を呼び込むということですけれども、雇用を創出する、そのための企業誘致ですとか、県内企業のさらなる活性化ですとか、若い人が暮らしやすいような生活環境の整備、これはハードだけではなくて文化や芸術というような、本当に心豊かな生活を送れるための基盤も当然ですけれども、そういうふうないろいろな施策を地方でやっていかなければいけないということが課題、それを県として取り組んでいますし、市町村にもぜひ合わせて取り組んでいただきたい。そうすることによって若い人が数多く定着して、その方々が所得を生み出して納税もしていただけるということになると思います。
分権一括法が施行されて6年も経過しているのに、まだ現状認識が理解されていない市町村長さんや議員の皆さんがおられるけれども、これをどうやってブラッシュアップしていくのかということですが、それは県の仕事ではないと私は思います。県は自分のことは自分でやりますけれども、市町村のことは市町村がやるべきで、その市町村をブラッシュアップするのは住民の皆さんの役割です。首長も議員も住民の皆さんが選んでいるわけで、私が選んでいるわけではありませんので、ぜひ住民の皆さんが市町村を変えるという自治の原則に戻っていただきたい。そんなこともあって、草の根自治支援という新たな分野に県が乗り出そうとしているところです。
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<地方分権の時代にあって(税のあり方、地域の再生)>bQ |
知事、知事が一人全国知事会で異論反論をされるということは、先ほども議論がありましたけれども、賛否両論ありますけれども、私は、大いにやっていただきたい、結構なことであると思っております。やはり中央の政治や官僚の顔色をうかがうことなく、どんどん地方の声をもっともっとあらゆる機会を通じて上げていただきたいと思っております。
ただ、どちらかというと、鳥取県の情勢というか、知事一人が声を上げられているわけですが、できれば市町村長の皆さん方とも一緒になって国に、鳥取県の地方の実情を訴え、異論反論を届けていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
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●知事答弁 |
分権ですとか、三位一体改革などのような財政問題などについて、国にきちんと物を言うべきである、これは私もできるだけ実践をしているわけですけれども、その中で、できれば県内の市町村長さんと足並みをそろえて一緒になって声を上げたらどうかということですが、そういう場面がありましたらそれはそれにこしたことはないと思いますけれども、現実にはなかなかそうもいきませんので、県内でも意見がばらばらになることがあります。例えば義務教育費国庫負担金問題などは、私などは絶対に削減の対象にすべきでないということを主張したのですけれども、県内の中には何人かはやはり一般財源化に賛成だと。全国市長会や町村会でもそういう意見を出しているからというのもありまして、やはりそれは必ずしも意見が一致しないわけです。先般、報道によると、道州制についての賛否を問うたのが新聞に出ていましたけれども、やはり幾つかの県内の自治体の首長さんは道州制に賛成だというようなこともあったものですから、ケース・バイ・ケースだろうと思います。
ただ、その考え方は違うにしても、事実についての認識は共有しなければいけないと思っておりまして、そこで先般、2月14日の行政懇談会でも、実はかなり密にこの財政問題をやったのです。例のいわくの過疎バス問題もやりましたけれども、財政問題はやはりかなりやりまして、そこでは相当認識が共有できたのではないか、こういう作業をすることが、ひいては声を一つに、一緒になって国などに物を言うことができるようになる素地になるのではないかなと思ったりもしております。
先般、会派自由民主党の設営によります県内選出国会議員の皆さん方との意見交換などにおいても、町村長さんが代表で来られていましたけれども、その点では、その方々と私はほとんど認識が共有されていましたので、その限りでは一枚岩であったのではないかと思っております。
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<地方分権の時代にあって(税のあり方、地域の再生)>bR |
私は、鳥取県というのは都会のような鳥取県を望んでいるのではなく、身の丈に合った行財政運営、そして県民の皆さんの信頼に基づく行政サービスが継続的にきちんと行えるということが私の願いです。
しかし、現実的には、先ほど申し上げたように、市町村の人口減少が続いており、市町村の元気がまさに減退するという状況です。やはりそうした状況の中にあって、もっともっと市町村が元気になる、そんな指標や計画というものもこれから必要ではないかと思うのですけれども、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
それと関連してですけれども、今、市町村は、現実に大変大きな危機感を抱いております。その現実とは、農協合併で単協農協がなくなり、市町村合併で役場はなくなり、さらに合理化という中で小学校が統合され、地域の核だった小学校は姿を消す、さらには郵便局の存続さえ危ぶまれております。これまで、このような施設というのは、地域の核として地域の若い人材を受け入れて、地域の経済を含めて本当に地域の発展のために大きな寄与をしてまいりました。ところが、このように地域の核としての役割を果たしてきた施設がなくなり、若い人も職と生活を求めて結果的には県外に流出、まさに疲弊の一途という危機感を持っております。
このように地域が疲弊する中、まさに数年のうちに私は急激な過疎化が進むと思っておりますし、危機感を持っております。
知事はこの現実をどう認識され、地域の再生は市町村の責任、仕事だと言えば一言なのですけれども、そうではなく、やはり鳥取県の知事として、本当にこういうふうに地域が疲弊するということに対して、その再生をどういうふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
市町村の元気づけといいますか、人口が減る中でどうやって市町村に元気を出してもらうかということですけれども、いろいろな視点と観点があると思いますが、私はぜひお勧めしたいというか、今までもお勧めしているのですけれども、1つは、徹底して情報公開をしてくださいということです。やはり情報公開をしないで、何かこそこそした行政をするとか、密室で決めていると、これはもう元気は出ません。ですから、市町村議会との関係も含めて、オープンな議論で、透明性を徹底する、そういう環境の中で仕事をすれば、首長さんも職員も元気になります。私が鳥取県で進めてきたのは、まずそれです。とにかく情報公開を徹底する。根回しではなくてオープンに議論をする。そこで合意形成をする。これで職員の体質は随分変わりました。ですから市町村もぜひそうしていただきたい。これが元気の源の1つです。
もう1つは、これは首長さんに特にお願いしたいし、地方議会、市町村の議会の皆さんもそうなのですけれども、地方分権というものをお題目とかでとらえるのではなく、ぜひ実践していただきたい。みずから意識改革をして実践していただきたい。見ていますと、どうしてもまだ長い物に巻かれろ式の考え方が横行していたり、依存心といいますか、非常にもたれ合いみたいなことがあります。そうではなくて、自分でしっかりと考えて、それで国から言われた、県から言われたことであっても是は是、非は非、非ははねつけるだけの勇気を持っていただきたい。そして実践していただきたい。率直に言いまして、従来やはり自治の世界というのは、霞が関に本社があって、県という支店があって、そして市町村という出張所があったような、そんな関係で自治は動いておりました。それを変えたのが分権推進一括法で、みんなが本店になったわけです。ですから、市町村、小なりといえども本店機能を持つわけですから、そういう自覚を持っていただきたい。そして実践していただきたい。
この2つ、情報公開と意識改革実践という、この2つの要素を市町村がちゃんとやられれば、随分元気が出てくる、そこからいろいろなアイデアとか施策が展開できるだろうと私は思っております。
これはもう長い間ずっと勧めてきているのですけれども、なかなかはかばかしくないというのもちょっと残念なところですけれども、ぜひこの際そういうことを心がけていただければと思います。
過疎化、高齢化の中で、地域から農協のオフィスがなくなったり、合併によって役場がなくなって出張所、それこそ支所になっていくということで、こういうときにどうすればいいのかということなのですが、何かをやったら今の大きな流れ、すなわち過疎化と高齢化のトレンドをどこかでシャットアウトできるということはまず無理だろうと思うのです。ですからこの大きなトレンドの中でどうやって精いっぱい流れに抗するということに努めるかということだと思うのですが、私は一つは、やはり今までと同じシステムはなかなか維持できないという認識は持った方がいいと思うのです。やはり高コスト構造というのは持続可能ではありませんので。そうすると地域には地域にふさわしい新しい生活システムといいますか、生活基盤のシステムというものを考えていかなければいけないと思うのです。
それの一つの考えるきっかけといいますか、典型的な例が、今般問題になりました過疎バス問題なんかは典型的だと思うのです。生活の足を確保するという意味では、バスが走っているというのは従来型のシステムです。しかし、それはもう地域の実情に合わなくなって非常に高コストになってしまっている。では、これをこの際どう変えるかということになりますと、例えばバス以外の方法で、地域の皆さんが、余裕のある人もおられますから、それが例えばNPOをつくってみんなで協力し合うとか、より低コストの足の確保手段を考えるとか、そういうシステム転換が必要だろうと思うのです。これはバスに限りませんけれども。そうすることによって、高齢化が進行していても、いろいろな施設がなくなったとしても、そこそこのコストで生活の利便というのは確保できるという新しいシステムづくりを目指すべきではないか。そのためにみんなで英知を絞るべきではないかと思っております。
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