<障害者施策の推進について> |
片山知事就任以来、 障害児・者の施策は全般にわたりかなり充実してきたと認識しております。中でも小規模作業所の支援策については大変喜ばれ、小規模作業所の開設並びに施設運営の充実化が進み、障害者の皆さんにとっては随分身近なものになってきました。
しかし、障害児・者を抱える家族の皆さんと意見交換をする中で、家族の皆さんの切なる願いは、障害児・者の皆さんが仕事についてみずからの力で生活をしてくれることだと話されます。まさに御家族の皆さんの切実な思いであると思います。これまでどちらかというと障害者の皆さんの就労の場といえば、通所授産施設とか、福祉工場とか、小規模作業所など、福祉的就労の場が中心であったかのように思います。本来ならば、個々の障害に応じてできる仕事を健常者の皆さんと一緒にやりたいということが皆さんの強い思いであると思います。
そこで、障害者の皆さんの雇用を促進するために、障害者の雇用の促進等に関する法律により、従業員の規模により雇用率が法令的に定められておりますが、県内の民間企業並びに市町村の雇用実態はどのようになっているのか、知事にお伺いします。 |
●知事答弁 |
障害者の雇用を進める必要があるということで、全く同感です。障害者の皆さんが自分の持っている能力というものを精いっぱい発揮して社会に貢献するということは、これは障害者本人にとっても大変すばらしいことですし、社会の方にとっても大変ありがたいことです。伊藤議員がおっしゃったように、従来ともすれば障害者の雇用という問題は、福祉的観点から小規模作業所とか授産所のようなところで行われるという固定観念とか通念がありましたけれども、これを変えて、やはり社会のいろいろなところで障害者一人一人の持っておられる個性とか能力とかが十二分に発揮できるような、そういう社会にしなければいけない。そうすることによって、一方では福祉施策に対する負荷も軽減されてくるはずですし、もっと言えば、障害者の方々が所得を稼ぐことによって、場合によっては納税者になるということもあるわけで、これが私は一番理想的だろうと思うのです。障害者の皆さんが社会に貢献しながら所得を稼得して納税者になっていくという、みんながみんなそれはできませんけれども、そういうケースがふえてくるということは大変望ましいことだと思うのです。ですから、個性と能力に応じて雇用の機会が与えられるような、そういう社会になるようにみんなで努力をしなければいけないと思っております。
そういうことからすると、現在の法定雇用率すらも達成していない企業や事業所があるということは、いささか問題であると認識しております。
県内の障害者の雇用状況について、商工労働部長の方から現状などを答弁申し上げたいと思います。
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●山口商工労働部長答弁 |
まず、民間事業所ですが、これが常用労働者56人以上のところです。法定雇用率が 1.8%のところ、全体として障害者雇用率は1.71%になります。義務を受ける企業の数が 345あるわけですが、達成している企業が 189ということで、54.8%の達成率になります。
一方、市町村の方ですが、これは 2.1%が法定雇用率になりますが、障害者雇用率は2.12ということになります。市町村の場合は役場と病院と別々の事業所になりますので、トータルで29の機関数があるのですが、達成数が20ですので、69.0%が達成率になります。雇用者の数でいきますと、民間事業者の方では身体障害者 520名、知的障害者 155名、合わせて 675人を今雇用していただいております。地方公共団体全体では身体障害者のみ 171名ということで、独立行政法人等も入れますと、全部でトータルすると 861名ということになります。
ちなみに、一般の民間企業の近年の状況ですが、平成15年までは雇用率が減少にありましたが、ここ16年、17年と増加になっておりまして、全国平均、これは1.49%になっておりますが、それよりも現在2.22%高くて、全国で第11位という状況です。 |
<障害者施策の推進について>bQ |
市町村の採用、まだされていないところがある、到達していないところがあるということですけれども、やはり市町村も合併により、職員定数管理とかいう問題、さらには業務の合理化、そしてアウトソーシング、そうした部分が進められているわけですけれども、果たして法定雇用率が今の状況の中で喫緊の課題として達成されるのかという思いが私にはちょっとあります。民間の企業の場合、法定雇用率に達していない企業については、採用計画、さらに指導、勧告、公表という部分がありますけれども、ところが公的機関にはこのような義務が課せられていない部分があると聞いております。市町村の中には法定雇用率を達成していないところがあるわけですから、その対応について知事は今後どのように考えておられるのかお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
障害者の皆さんの法定雇用率の問題で、自治体でも達成していないところがあるが、民間の事業所と違ってさしたるペナルティーもないのでとおっしゃられましたが、法律の建前として民間の企業を対象にしているわけですが、それは公的機関はどうでもいいと言っているわけではなくて、公的機関は当然守るはずだということだと思うのです。ですから、いろいろな事情はあるとは思いますけれども、市町村も法律で定められたことは守られるように、ぜひ努力していただきたいと思っておりますし、県からも働きかけをしていきたいと思います。これは実は昨年の行政懇談会でもこの問題を提起しまして、ぜひ雇用率を達成するようにということを要請したような次第です。
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法定雇用率に達していない自治体があるということですけれども、私は、民間と同じようにそういう自治体はやはり公表すべきではないかと思いますけれども、知事の所見を求めます。
それと、この4月から障害者自立支援法が施行され、まさに市町村は主体的に地域における障害者の皆さんの自立を支援し、福祉サービスを行わなければなりません。私が心配するのは、障害者の皆さんの法定雇用率が守れないような現実の中で、果たして障害者自立支援法が円滑に、しかも障害者の皆さんの目線に基づいた取り組みやサービスが本当に提供されるのかということです。障害者自立支援法を円滑に進める上でも、こうした市町村の意識改革を早急に進めなければならないと思いますけれども、先ほどの法定雇用率を下回る市町村の公表とか、また県としてのそれらに対する助言、そういうものについて知事の所見をお伺いしたいと思います。
それと、実を言いますと、今思えば本当に恥ずかしい話ですが、私は赤碕町役場に勤務していた時代に、鳥取の聾学校を卒業したばかりの女性を部下に配属されまして、当時全く知識がなかった私には、うまく仕事が教えられるのか随分不安を覚えたことがありました。私がそうでしたから、入ってきた彼女も随分不安だったと思うのです。ところが、その彼女、本当に仕事の覚えは早いし正確な仕事ぶりで、すぐに課にとっては不可欠な存在になりました。このように障害者の皆さんがいざ就労ということになれば、私のように知識を持ち合わせていない者がいる、そういう企業では、雇用者も不安、雇われる方も不安、この障害者の皆さんの就労というのは、私はまさに不安と不安のミスマッチだと思うのです。このミスマッチを解消するには、もっともっと仕事を体験する機会が必要だと私は思いますが、いかがでしょうか。知事の御所見をお伺いします。
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市町村の障害者雇用状況を公表すべきではないかということですが、私はこんなのは当然公表されてしかるべきだと思うのです。秘密でも何でもないわけです。今聞きましたら、平成18年の調査から市町村も含めた障害者雇用状況を鳥取労働局が公表される予定だということなのですけれども、何かピントがずれていると思います。こんなものは何も秘密ではないです。ですから、労働局が公表されるのは結構ですけれども、それより前に、市町村に情報公開請求をしたらいいと思うのです。この町は法定雇用率を達成していますか、どうですかということを情報公開請求したらいいと思うのです。プライバシーにも関係ないし、それで秘密にする事由は何もないと思います。ということです。
市町村が法定雇用率を達成していないという、そういう現状の中で、市町村が主体となる障害者自立支援法のサービスが円滑に提供されるのか不安であるということですが、市町村長さんも議員さんもみんな住民の方から選ばれているわけで、県が任命しているわけではありませんので、これをどうすればいいのかと県に言われても困るのです。ですから、そもそも本来は、例えば法定雇用率を守っていないのはいけないのではないかとか、そういうことをちゃんと守って、それで障害者自立支援法のサービスも我が町はちゃんと的確に行われなければいけませんと言って問題を提起するのは議会なのです。県議会ではなくて市町村の議会なのです。だから、そこが円滑に作動しなければいけない。それが仮に作動していないのだとすれば、それは選んだ側に問題があるわけです。ですから、県からやいやい言うよりは、やはり住民の皆さんがきちんとした人を選ぶという自治の原則に戻らなければいけないと私は思うのです。
というようなことで、草の根自治支援というものがやはり必要だということに結論がなるのだろうと思います。
障害者の皆さんを雇うとすれば、雇う方にも不安があるし、雇われる方にも不安がある、不安と不安のミスマッチというのは、これはまさに言い得て妙だと思うのです。
私も雇用主になられる方、企業の側の皆さんと話をしてこの問題を提起しますと、ぜひ働いてもらいたいと思うのだけれども、一体どういう仕事をどういう人にしてもらったらいいかわからない。それから、正直なところ、慣れていないので、気がつかないうちに自分が何かハラスメントみたいなことをしてしまうのではないかという不安があるということをよく聞くのです。そこを解消することが1つの大きなポイントだと思うのです。
これは自己啓発も含めて啓発をしていただかなければいけませんし、もう1つはやはり、障害者の皆さんの雇用モデルというものをできるだけ数多く示すということが必要だと思うのです。例えば、この種のこの程度の障害を持っている方でこういう仕事をちゃんとてきぱきとやっておられますというような、そういうような具体的な雇用モデルというものを情報として提供することが必要なのではないかと思うのです。県も障害者の方を雇用しまして、今、例えば視覚障害の職員を採用して仕事をしてもらっていますけれども、そうしますとその職員がどんな仕事をてきぱきとやっているか、その職員に気持ちよく仕事をしてもらう、快適に仕事をしてもらう、伸び伸びと仕事をしてもらうためにはどういう配慮が必要なのかなどということは、実はもうある程度経験を積みましたから、実は雇用モデルとしては出せるわけです。そんなことがいろいろな障害の程度、種類に応じて提示できるようになればと思っていまして、これは行政だけで全部しつらえることは無理ですから、いろいろな障害者を雇用されている企業、事業者がありますから、そういうところを一回情報をまとめて、関係の皆さんに提示するというようなことが必要なのだろうと思います。そういうことをちょっと手がけてみたいと実は思っているのです。
もう1つは、雇われる方の不安というのも当然あります。これは、例えばインターンシップのようなことがあれば少し違ってくるのではないかという気がします。その点でも、県はちょっと問題意識もありまして、例えば知的障害を持っておられる人を県庁で仕事をしてもらうというインターンシップもやってみました。そこでやはりいろいろなことがわかります。県だけではなくてほかの事業所とか企業でもインターンシップのようなことをやってみていただきますと、またより障害者の皆さんにも雇用に対する不安がなくなるのではないかと思っておりまして、こういう点をこれからの障害者の皆さんの雇用促進の一環としてやってみたいと思っているところです。
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障害者の皆さんの働く場というか、そういうモデル的なものも含めて、やはりもっともっと情報をたくさん公開といいますか、提供していただきたいと思っております。
それと、例えば県にしてもそうなのですけれども、障害者の皆さんを雇うときに、どちらかというとこれまでは8時間仕事をしなければならないという固定観念がどうしてもあるのですが、例えば半日勤務でもできる仕事というのはあるのです。そういう形の中で障害者の皆さん方を受け入れていく、そういうことも大切ではないかと思うのです。そういう部分は県で、米子に県民局も、中部県民局もあるのですから、そういう機関でも試行的にでもどんどんどんどん受け入れていただきたいと私は思っております。
ところで今、トリノパラリンピックが3月10日から始まりました。日本選手団の活躍が伝えられているわけですけれども、私はこのパラリンピック、勝敗よりも、いろいろな障害を抱える中で選手の皆さんの頑張りには本当にいつも大きな勇気をいただいております。過去には、障害者の皆さんがこのように果敢にスポーツをすることは想像もできませんでした。殊に私たち健常者が障害者の皆さんの可能性を逆に決めつけ、仕事にしても、スポーツにしても先入観の中から極めて狭いものにしてきたものと思っております。障害者の皆さんは、個々の障害に程度の差はあるにせよ、未知なる可能性は何ら変わるものはなく、仕事にしろ、社会生活にしろ、私たち健常者の意識改革をこのパラリンピックは訴えているものであり、意識改革を迫られているものと思いますが、知事の所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
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障害者の皆さんの雇用の多様化ということを問題提起されたと思うのですが、それは全く私も同感です。障害の種類、程度によって、どういう勤務形態がとれるのか、就業形態がとれるのかというのは、一人一人によって違うわけで、これを大量生産、大量消費社会に典型的に見られた単一のシステムで一くくりにするというのは、やはりそれは無理があると思います。やはり健常者以上に一人一人の態様に応じたきめ細かい形態がとられなければいけない、そういう社会にしなければいけないと思います。
実はこれは障害者の皆さんだけに言えることではなくて、一般の健常者の皆さんにとってもやはり言えることで、多様な生活の仕方、就労の仕方というのはあってしかるべきだと思うのです。みんな同じシステムで勤務をするというのは、まさしく大量生産、大量消費社会のシステムの1つの産物だろうと思いますので、もっと高度な知的社会になりますと、勤務の多様化ということが求められると思います。これは県庁でも同じことで、私は先ほどちょっと説明が足らなかったかもしれませんけれども、職員の給与体系が硬直化していることがあって、その硬直性を柔軟に変えるところの埋め合わせで非常勤というものが一種の便宜的に使われているという、そういう問題意識を申し上げたのですけれども、そのこととも関連するのですけれども、もうちょっと公務員の勤務形態なども、その処遇も含めて、いろいろな多様性があっていいと思うのです。それがこれからの公務員制度の一つの見直し課題だろうと思っております。
パラリンピックを見ての感想を言われましたけれども、私も似たような感想を持ちまして、障害者の皆さんを障害者というだけで一くくりにするのは全く間違いです。一くくりといいましても、知的障害とか、障害の種類によって幾つかのくくりにするのも間違いで、やはり一人一人が違う、一人一人が個性を持っている、一人一人が障害の種類も程度も違うし、発揮できる能力も差があるという、これを前提にして、その違いを受けとめられる、そういう柔軟な社会にしなければならないと思います。
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