平成19年6月定例会一般質問(平成19年6月25日)No.1

 1.知事の基本姿勢について
財政運営について>

 
 県議会の初日の議員全員協議会において、平井知事は10年後の県財政を見据えた誘導目標である財政指標を発表されました。平成19年度6月補正予算後の県債残高は19年度末見込みで 6,150億円余り、そのうち臨時財政対策債を除く通常の県債残高は75%に当たる 4,610 億円、基金残高はすべてを合わせて 310億円です。こうした現状を踏まえた中、平井知事の任期が終わる4年後に、現在の基金残高 300億円台を確保し、実質的な借金は18年度末の 4,267億円程度を維持しようとする財政指標が示されたわけです。これは、現時点での国の財政フレームを前提する中での指標であり、この目的の達成のために、さらなる行財政改革による財源の捻出をしながら、課題とされている各種施策に集中的投資をしようという知事のマニフェストです。これは、臨時財政対策債を勘案されない中での指標であり、代表質問の中でも指摘があったように、私自身も違和感というか、とても心配するところです。
 私は、議員になって以来、この議場で何度ともなく交付税制度の厳しい現状と窮状を訴え、制度すら維持できないところまで来ていると申し上げてきました。したがって、平成13年度から始まった臨時財政対策債についても、地方財政法上は赤字地方債であり、本来、禁じ手であるものをあえて特例措置法で位置づけ、附則を改正し続けながら、厳しい交付税会計を乗り切ろうという制度であり、私自身は危機感を覚えるとともに、厳しく批判をしてきました。そうはいっても、現行制度の中では避けて通れない制度であることも認識をしているわけですが、大きな危険を感じている制度です。
 臨時財政対策債について、平井知事としてはどのように認識をされているのか、また、この制度を信頼される根拠並びに考え方についてお伺いします。
 今、どの地方自治体も厳しい財政運営を強いられている一つの大きな要因として、バブルが崩壊して以来、その景気浮揚対策の一つとして大量の財政出動が国策として行われ、有無を言わせない状況の中で地方自治体もつき合わされ、結果的には将来の交付税措置を絶対的に信頼する前提の中で起債を大量に発行し続けてきました。そうした起債の償還のピークを迎える中で、国からの交付税が約束どおり措置されているかと言うと、県を初め、どの地方自治体とも交付税の全体額が削減される中で交付額が減少しているのです。
 この結果、鳥取県においても、平成15年度から19年度にかけての交付税削減の影響額は 227億円、税源移譲の影響額は61億円、トータルでその影響額は 288億円にも上っています。つまり、交付税の中では、起債充当の部分は措置されているようになっていますが、交付税の本体自体の目減りが激しく、残業手当はつくけど、本俸自体は減っているのが実態であると思うのです。
 こうした状況が今後も想定される中で、我が県においてはいち早く行財政改革を進めてきたのが現実であり、議会総体としても前知事と同じベクトルで今日まで来たのです。
 県内の雇用対策を進める一つの政策である鳥取県版ニューディール政策が現在も取り組まれており、その政策の果実を生み出すため、平成14年度から3カ年、県職員の皆さんで平均5%、特別職の皆さんで5〜7%のカットが行われ、その後も財政健全化のために職員の皆さんも2〜4%のカットが継続され、我々議員も 3.2%報酬を引き下げた上に5〜7%のカットを継続しているのです。ちなみに、知事を初め特別職の皆さんは、今年度から5%のカットです。
 今日までの鳥取県における行財政改革の取り組みについて、平井知事としてどのように評価されているのか、また、課題があるなら何が課題であったのか、その思いをお伺いしたいと思います。
 また、平井知事のマニフェストを見ると、さらに行財政改革を実行しながら財政出動をされたいのではないかと思えますが、果実を生み出すために想定されている行財政改革の具体的な中身、また果実の投資先として具体的に想定されているものがありましたらお聞かせください。

●知事答弁

 
 臨時財政対策債について、私はこのたびの財政誘導指標を提示するに当たり、これをこれからの将来負担の上ではカウントをしていないということについての御疑念の点だと思います。
 私が、このたび財政誘導指標を提案しましたのは、先般、議場でもお答えしましたけれども、財政の民主主義というものを私は一層推進したいという思いです。財政について、これまでこの議場で語り、県民の皆様にある一定のものを示そうということでやってきましたのは、例えばこれから数カ年にわたり、我が県の借金の状況はどうなるか、基金の状況はどうなるかというのを一定の前提のもとに推計をすると。そうならないように、最悪の状態にならないように、それを脱するように努力しましょうと、そういうことをこれまでは御説明してきたわけです。
 そういうやり方も一つの行き方ではありますが、ただ、ではどういう方向性でこれからの財政を立て直していくか、財政を誘導していくかというところについては、実は明確にコメントせずに、年々の予算編成の中で努力をしていきましょうということにとどまっていたわけです。
 私は、この財政の問題は、今、夕張市の破綻のような状況も発生しており、県民の方の関心も高いと思いますし、何か皆さんで議論してもらいやすい、そうした手がかりをつくる必要があるだろうと。それで初めて財政について民主的に語り合い、方向性について議論できる土俵ができるだろうと考えた次第です。
 そういう意味で、財政誘導指標を示すに当たり、いろいろと考えをまとめてきましたが、2つ提示させていただきます。1つは、貯金の残高が今以上に減らないようにしましょうということと、あともう1つは、将来の借金が、これも今以上増えないようにしましょうと、今を天井にしましょうということです。
 こうした指標を示す際に、いろいろと割り切った考え方を一部はしなければならないところがあると思います。と申しますのも、では将来の財政負担をどうやって提示するのが県民の皆様にとってわかりやすいかといえば、今、議論になっている臨時財政対策債ですが、これは 100%交付税として措置をされるというもので、そのほかの借金とは、明らかに性質が違うわけです。そのほかの借金は、これは借金であって、年々にわたってお返ししていく。それについての財政的な手当てがないというようなものです。これに対して臨時財政対策債は、将来 100%交付税で返すという約束のもとにつくられた制度であるという違いがあるものですから、これをどうやって、では数字上表現するかということです。
 私は、これについては返ってくるということで、制度は決まっているのですから、これは除いた上で数字化した方が議論はしやすいだろうと思いました。もちろん、これについて、もし議論があるのであれば、例えば臨時財政対策債は 100%返ってくるという制度になっていますが、ただ、ちょっとでは8掛けでもしようか、9掛けでもしようかというようなことで一定の数値を掛けることも可能ですけれども、ただ理屈として、それを 0.8とか 0.9を出すような材料もありませんので、これは、では交付税措置の 100%があるので、これだけは、では切り取って、それで起債残高というのを示しましょうとさせていただいた次第です。いわば頭の整理として、そういうふうに整理させていただいたということです。
 では、臨時財政対策債についてどういうふうに考えるか、この見方はどうかということですが、これについては伊藤議員がおっしゃったことと、私は意見を一にしております。そもそも臨時財政対策債自体は地方財政法の禁止している赤字特例債です。地方財政法第5条で、今の地方債として我々が借金できるものは一定の建設事業などに限られるわけで、それに対する例外ですから、これは本来あってはならないというように法律も考えているものです。
 ただ、これについて、このたび臨時財政対策債が発行されているのは、そうはいっても年々の財源不足と必要な交付税のこの算定額とが、ずれがあると。これを一部、緊急避難的に穴埋めするために、今は借金する、臨時財政対策債という形でそれぞれに借り入れしてもらって、後々その交付税の方から入れていくという形で、これはいわば繰り延べをしましょうというようなことで制度が認められたものです。
 本来、これは例外ですし原則に反するものですから、伊藤議員と同じように、私も、これは一刻も早くやめるべきものだと思います。
 地方財政法の考え方、そして交付税の法律の考え方によれば、交付税法の第6条3第2項は財源不足が地方でトータルで発生します。それに対して交付税の算入額といいますか算定額がずれますと、これが引き続きずれた場合には交付税の税率を変えましょうというのが本来の考え方だと思います。この場合、今回、国は交付税の税率を変えるかわりに地方財政の制度を変えて、臨時財政対策債という便法を使ったわけですが、本来は、それは借金で先に送るというものですから、健全なことではないので、交付税率の改正の方を本来は行うべきだという意味で、私もこの臨時財政対策債については非常に否定的に考えております。
 将来的に交付税の特化の中で原資を食べてしまう部分になります。これよりも、さらに交付税特化へのお金が伸びてくれば自然と解消されるかもしれませんけれども、それを期待できるような状況でも一般的にはないだろうと思っていると思います。
 ですから、そういう意味で、どこかでトリックが行われる可能性がありますので、警戒しなければならないというように考えております。
 次に、これまでの行財政改革の取り組みについての評価と、私が考える課題は何であるかということです。
 これまでも、この鳥取県議会でも随分旺盛な議論をいただき、鳥取県は行財政改革を進めてきたと思います。例えば、いろいろとお話がありましたが、中部ダムを中止するとか、また職員の給与について是正をするとか、あるいは緊急避難的ということでしたけれども、御協力いただいてニューディール政策というような形で職員の給与カットを行うとか、あるいは公共事業について一件査定を行い、真に必要な公共事業を選別しながら予算化していくというやり方をやってきたとか、他県にはない先進的な取り組みをしたと思いますし、そういう意味で鳥取県の行財政改革は評価をされてきたと思います。私も、これについて実は副知事として携わっておりましたので、そこそこの成果を上げたのではないかと自分では思ってきたところです。
 ただ、これで財政状況の悪化がすべてふせげたかというと、まだこれは途上だと思います。そういう意味で、これからやるべき課題は多くて、行財政改革についての終着駅には至っていないと思いますし、これからも積極的に皆様と議論をしながら、痛みを分かち合いながら進めていくところは進めていくということだと思っております。
 これまでの行財政改革の進め方での課題ということで、私の思いは何かということですが、1つは、先ほど来、議論していますように、こうした行財政改革を年々の、例えば定員削減努力だとか予算編成努力で、いわば個々にやってくるというやり方を今までとってきました。そういう意味で、私どもは一生懸命やっていますし、成果は上がってきましたし、これがいいやり方だったと今でも思ってはいますが、ただ、県民の皆様に、鳥取県の行財政改革はどういうビジョンで進めるのですかと問われたときに、それに答える何か明快なものがあったわけではなかったと思います。ですから、そういう意味では、こうした行財政改革を民主的なプロセスで進めるという意味で、これまでとは違って、ある程度割り切った指標のようなことを作っていかなければならないのではないかと考えております。その1つが今回の財政誘導指標です。
 何のためにこの行財政改革を行うのかということで申し上げれば、これは県の発展のため、地域の振興、産業の発展あるいは福祉の充実、そうした他の財源にきちんとお金を振り向けていけるだけのアラウアンスといいますか、余裕財源を自分たちでも努力して作っていく。また、これは将来の財政破綻をなくすための、その引当金のような形で持っておく。そうした方向性をもう少しはっきりと自分たち行政の執行部としては認識すべきところはないだろうかということです。
 ですから、仕上がってみて、年々これだけ随分とスリムな予算になりましたというところで満足してしまう以上に、ではこの予算は地域の発展のために、産業の振興とか福祉の充実、教育の発展のために、こういう意味で進歩がありましたねということも、やはり手ごたえを持っていただけるような、そういう予算にしていく必要があるだろうと。そういうことも必要だと思います。そういう意味で、行財政改革もそうした地域の発展につながるような方向性をしっかりと認識すべきではないかというのが2つ目の課題だと考えております
 そして、これも議場でよく問われることですが、公と民との境目の問題にはもっと踏み込んでいいのではないかと思っております。今まで県庁が基本的にいろいろなことをやってきました。大分アウトソーシングのことだとか連携事業も進めてきましたが、まだ十分ではないと思います。一層公と民との垣根を低くして、随分と民間の皆様の活力も高まっていますし、市民意識も高まっていますので、そうした方々と一緒になって県政を運営していくという、そういうスタイルに変えていく。これも行財政改革を進めていく一つのエンジンとして必要ではないかと思っていまして、こうした3点については、これからの課題ではないかと思っております。
 次に、行財政改革の具体的な中身、それから果実の投資先として選定しているものが具体的に今あるのかどうかということです。
 まず、前者の方ですが、行財政改革は一つ一ついろいろなことを積み重ねてやはりやっていかなければならないと思います。何とか、先ほど申し上げたような財政誘導指標が保たれるところまで行財政改革を進めなければならないと思っております。
 そのうちの一つの大きな柱として、私が申し上げていますのは、5%定数をカットできないだろうかということで、こうしたことに挑戦していきたいと思っております。この5%カットの定数削減というのを、私、マニフェストに書かせていただき、あちこちでしゃべっておりまして、今回もそうした思いを議場でもたびたび言っているものですから、あたかも既定事実といいますか、もうこれはできたものだという、そういう受けとめ方をされる向きもあるかもしれませんが、これはなかなか厄介です。相当にいろいろな見直しをしたりしていかないと、県民サービスを低下させない中でこの5%カットというものを、5%以上できればカットしたいのですが、そういうことに向けていくのはなかなか大変なことだと思っております。
 片山さんが8年間県政をやってこられて、平成11年度からこの19年度まで定数がどれだけ削れてきたか、人がどれだけ削れてきたかということを調べてみますと、病院とか警察、これはちょっと別の意味で増えてきます。企業会計だとか、あるいは警察の充実だとか。こういうものを除いても、 200人ぐらい減ったぐらいで、1万人の中で 200人ぐらい減ったぐらい。だから2%なのですね。これを今度は、これから4年間で5%カットしなければならないというふうに、自分はちょっと打って出たつもりで、これはなかなか本人としては、腹をくくってやらねばならない課題だと思っているところです。
 ですから、口では5%と言うと、それだけのことかもしれませんけれども、これまでの県政でこれだけ行財政改革をやってきて、なおそういう状況である。それをさらにもっと強めていこうということですので、それを皆様に御理解いただきながらやっていきたい。これを柱の一つにさせていただいています。
 あわせて、いろいろな県庁の業務がありますので、その業務の棚卸しをして不要不急の事務を減らしたり、仕事のやり方を簡素簡便にしたり、これはあわせて県民の皆様の利便性にもかなうと思います。共同連携を進める、あるいはスクラップ・アンド・ビルドを進める、そうしたことも必要だと思っております。
 財政的には、選択と集中というこれまでのキーワードは引き続き使っていく必要があると思っております。必要な事業を取捨選択しながら、それに集中することで行政効率を高めて県民の皆様に手ごたえを持っていただく必要があるだろうと思います。
 また、未利用、低利用財産、これも議場でも御指摘いただきましたが、まだ随分残っております。お金がない中で、ここにも手をつけていく必要があると思いますので、加速していきたいと思っております。
 あと、税外収入も考える必要があると思っていて、就任して、例えばネーミングライツをやったらどうだとか、庁内でも議論をしてもらいました。とりあえず博物館の展示事業の中で1つネーミングライツを使って広告料収入を得たものもあります。こうした、そのほかの広告だとかいろいろな収入もこれから模索、検討して、積極的にやっていきたいと思います。
 そういうことをいろいろ含めて、何とか4年後に我々が一緒に任期を終えるまでの間、 300億ぐらい貯金を残しておくというような姿にできないだろうかと思っている次第です。

財政運営について>bQ

 
 要するに民主的デモクラシーを前面に出して取り組みたいというふうなことが理解できました。ただ、今日の交付税制度の一番大きな課題と言うのは、将来を先食いする形に偏重していることと、やはり約束が守られていないということ。交付税制度の本来の役目は、やはり財政調整機能であり、この部分にもっともっとウエートを置いて、約束を守るべきだと思っています。特に、地方は県も市町村も行財政改革を一生懸命やっております。職員の給料も削り、議員の報酬も削っております。国会議員は何ですか。たった1年だったでしょう、削ったのは。本当に国は何をやっているかということを、もっともっと私は声を上げてほしいと思いますし、そういう意味を含めて、この交付税の問題についても、知事としても物申すべきだと思いますが、所見を求めたいと思います。

 また、臨時財政対策債、まさに債務のつけかえであり、ローンの借りかえなのです。19年度県債残高、つまり借金のうち臨時財政対策債は借金全体の25%に当たる 1,542億円にも既に達しています。今のまま推移するとすれば、もう3割、4割と行ってしまうのです。交付税すら約束が守られていないというこれまでの経過からして、うのみにするのは私はいかがなものかと思っております。もっと慎重な見解で財政運営に当たるべきだと考えますが、知事の所見を求めます。
 また、交付税制度の円滑な維持のために、本来、交付税率を引き上げるなどして対応すべきで、特例が特例でないうちに、やはりこの臨時財政対策債の廃止を強く求めるべきだと考えます。この臨時財政対策債の撤廃についても知事会で議論すべきだと思いますが、知事の所見をお伺いします。

●知事答弁
 
 まず、交付税の性格について、これは財政調整を果たすべきで、この機能をしっかりと求めるべきだということ、これは全くそのとおりだと思います。地方交付税の機能として、このいろいろと財政力に差のある自治体間の調整を行うという財政調整の機能、それから、あと年々のサービスを必要なだけちゃんと調達して提供できる、その財源を保障する機能、この2つは重要だと思います。
 私どもの場合は、税収が非常に少ないですから、この交付税が財源を保障してくれて年々の行政サービスを提供できる機能がなければなりませんし、また東京だとか愛知のようなところと引き比べて財政力には差があるので、それを均すというこの機能は当然に必要だと思います。
 現在、この地方交付税について非常に否定的な財政論が広がっているのも事実だと思います。片方で交付税は交付税率があり、法人税、所得税、酒税、そうしたものの一定部分がそのまま交付税になるということですから、これはいわば国の財政から見ると、硬直的な経費だと見えるという側面があります。ですから、国の方は、これを目のかたきにして、何とか自動的に蛇口をあければ地方の方へ逃げていってしまう水を自分の方に取り戻せないだろうかと、こういう圧力につながるわけで、私ども地方側としては、大いにこれを警戒して何とか食いとめていかなければならないだろうと思います。
 特に、今、地方分権の議論が進展して税源の問題がクローズアップされてきます。税の総体が動くというときに、必ずこの交付税のところに議論が波及します。税が行くのだからいいではないかということになりやすいものですから、今こそ交付税が、そうした財政調整機能、財源保障機能を果たすことの役割の大きさを地方部の方からきちんと声を上げていく必要があると思います。知事会もそういうスタンスでいると思いますが、私も積極的に、これは厳しく声を上げていきたいと思います。
 また、臨時財政対策債について、伊藤議員の御心配、非常によくわかりますし、ありがたく存じます。これもどれほど信用するかといえば、なかなか将来、その年、その年でやはり心配は続くのだろうと思いますが、今は交付税法ですべてその算入の額まできちんと決められてきておりますので、理論上はすべて入っているということになろうかと思います。問題はそれ以外の部分が意図的に圧縮されるのではないかと、そういう圧力につながるのではないか、あるいは圧力につながらなくとも、もうとてもこんな財政、地方は支え切れないから国はもう放り出すと、税を上げるから適当にやっておいてくれと、その流れた税が大都市部に行ってしまって、私どもは疲弊してしまうというようなことにつながる危険があるわけで、これについても慎重に当たっていく必要があるだろうと思います。
 たとえ、その臨時財政対策債をこのたび財政民主主義との関係で財政誘導指標上、控除しましたが、だからといってこれは借金には変わりありませんので、借金の残高はこうやって膨らんでいくという現状、これは前、湯原議員がおっしゃったと思いますが、これも県民の方にきちんと御説明して、そういう意味で財政状況はなかなかまだ好転する状況にないということに誤解がないように御理解をいただき、私どもの方も慎重な財政運営を引き続きやっていきたいと思います。
 その臨時財政対策債は、本来そうしたハームといいますか弊害をもたらすものですから、これを撤廃すべきだという論は私も一致します。知事会でもこれはしっかりと訴えていきたいと思いますし、知事会もそういうスタンスでこれまで国に向かっていると理解しております。近々、7月12、13日にそうした知事会の議論が予定されていますので、その場でしっかり、こうした議場での皆様の御懸念が伝わるように私も発言していきたいと思います。
<財政運営について>bR


 私が心配しますのは、これまでの経過からして、やはり空手形になることですし、先ほど知事が言われたように、どこかでトリックが行われる、多分行われると思いますよ。これ全国にしたら物凄い金額ですよ。絶対払えっこないのですよ。そういう部分で、私自身は本当に危惧しております。
 私は、財政運営のあり方として、先行投資という美名のもとに無造作に次世代の生活権というか自治権を奪うことは、やはり避けなければならない、そう思っております。したがって、今を生きる私たちは、やはり自分たちがつくってきた借金、つまり起債を減らすことに最大限の努力と汗を流し、絶えず次世代のことを考えながら慎重かつ有益な財政運営に努める責務があると思いますが、知事の所見を求めます。

●知事答弁


 財政運営についてですが、起債を減らして次世代に対してツケを残さないようにという伊藤議員の御指摘です。私もそれは共感するものです。ただ、注意しなければならないと思うのは、その地方債自体がすべて悪であるかというと、そうでもない面があって、これはその建設のときにいっときにお金がかかりますが、その建設のときにかかるお金を世代間で実際に使う世代の人にも分担をしてもらおうという意味で負担を将来世代と分任するという、そういう性格もあります。ですから、地方債自体がすべからく悪であると、それを発行することはいけないということではなくて、それも手段としては使いながらいかなければならないと。ただ、大切なのは結局総体としての財政が倒れてしまう、膨大な負担を将来に残してしまう、結局我々の世代だけが横臥して将来苦しむという、そういうことになってはならないという、そうしたバランスの問題だと思います。
 そういう意味で、財政誘導の指標の中でも、将来の負担を、実質上はこれから4年間の我々の任期の中ではふやさないようにしましょうという目標を立てた次第です。そのぐらいがいいところだろうかというように思っております。
 その中で、ただ地域の活性化のためだとか、あるいは福祉の充実のためだとか、そうしたいろいろなお金の使い道はあると思いますので、一定のアラウアンスを何とか行財政改革も含めてつくって、それをそうした未来への投資の方に振り向けていくということが必要ではないかと思います。財政を健全に経営することと未来の投資とのこの両にらみでバランスをとりながらやっていくことを心がけていきたいと思います。
 

<財政運営について>bS


 否定的な部分ばかりではないのですよね。これまで、どちらかというと行政とか政治主導で余りにも走り過ぎてきた部分があったのです。ですから、やはりこれからは県民の皆さん、納税者の皆さんの合意形成を得る形の、そういう起債の発行等はすべきだと私は思っております。

●知事答弁


 今まで余りにも地方債を乱発し過ぎた、そういう時代があったという認識だと思います。私もそうだと思います。かつて経済対策をやる際に、地方も随分巻き込まれて、いわば動員をされた格好になりました。その結果が今日の地方債の累増につながっているわけで、そうした時代を繰り返してはならないと思います。ですから、そうした反省を自分としてもしっかりと腹の中心に据えまして財政運営に当たっていきたいと思います。