平成20年2月定例会一般質問(平成20年3月13日)No.1

<中山間地域の振興対策について>

 
 昨年の暮れに鳥取県がまとめた2005年度県民経済計算によると、1人当たりの県民所得は前年度比 2.7%減の 230万 8,000円で、国民所得を 100とした場合80.2と 6年連続で下がり、国との所得格差は過去10年間で最大に広がったと報告されました。この要因としては電機部品産業の減少がそのまま県民所得に反映したと分析されていますが、これは県民の皆さんの平均的な所得であり、ぎりぎりの生活をされている人が多くあるという現実をまず共有しておいてから、中山間地域の振興対策の質問に入りたいと思います。
 
我が鳥取県は米子市、境港市、日吉津村、北栄町を除き、大半の市町村が中山間地域を抱えており、それぞれの市町村行政において今一番大きな課題となっています。このことは中山間地域を抱える全国の自治体に共通の課題であり、中山間地域の振興策を進めるため、通称過疎法、辺地法、そして山村振興法、さらには特定農山村法と、大きく分けて4つの法律の支援を受けながら、国策として莫大な税金を投入し、ハード事業を中心としながら、またいろいろなソフト事業が今日まで取り組まれてきました。もちろん、鳥取県においても各市町村においても、それぞれの単独事業が並行するかのように実施されてきました。しかし、県内を見渡してもその効果は限定的で、過疎が進み地域が疲弊する勢いが全くといっていいほどとまっていないのが現状です。平井知事のマニフェストには、未来を語って今を考える県政を改革の視点の一つに掲げられていますが、知事としては今日までの鳥取県の中山間地域振興策をどのように総括されているのか、お聞かせください。
 
また、その総括の前提として知事自身、中山間地域の未来をどう語り、何を具体的に進められたいのか、今後の取り組みについてもお聞かせください。知事も御承知のとおり県内の中山間地域の水田は地形的にも湿田が多く稲作以外は極めて困難な環境にある中で、転作といってもなかなか適する作物もなく、稲作をやめたら結果的には休耕田にするしかないのが現実です。ところが近年、社会情勢の変化に伴い新たに稲作が脚光を浴びる時代がやってきたと私は思っています。つまり、石油の高騰が続きバイオエタノールの原料として世界的に穀物の需用が高まる中、国内では米がバイオエタノールの原料になるのではないかと注目を集めているのです。ある県においては、既にそれぞれの地域に適した超多収穫米のバイオ米の育種などの研究が進められ、バイオエタノールを製造するためのプラントさえ建設されています。そこで、鳥取県でのバイオ米の研究の取り組みの現状並びに今後の計画についてお伺いします。
 
また、世界的な穀物需用の逼迫が家畜用飼料の不足をも引き起こしています。そこで、家畜用の飼料米についても品種改良は耕畜連携等に今まで以上積極的に取り組む必要があると思いますが、県としての取り組み状況並びに今後の計画についてお伺いします。

 次に、水田活性化機緊急対策事業についてお伺いします。
 
我が国の農政は猫の目のようにめまぐるしく変わり、今は品目横断的安定対策事業が取り組まれているわけですが、担い手を中心とした事業であり、中山間地域の農家の皆さんを中心に大変不評でした。ところが、昨年の参議院選挙の結果を踏まえ、向こう5年間新たに転作をすれば、19年産の目標を達成している農家には10アール当たり5万円、目標を達成していない農家には10アール当たり3万円が、これまでの産地づくり交付金に上乗せして支払われるという水田活性化緊急対策事業が新たに新設され、この取り組みが市町村の地域水田農業推進協議会を中心として進められています。この事業、向こう5年間転作することを前提に交付金が一括前払いされ、その約束が守れなかったときには支払われた交付金を返還するという制度で、仕組み自体、中山間地域直接支払制度と同様なものです。中山間地域直接支払制度でも、それぞれの地域の事情で当初計画が変わったことにより、会計検査院の検査指摘により交付金を返還した事例が県内でも生じ、交付金は使ってしまって、その返還については大変だったように聞いています。実績に基づいて支払う交付金ならまだしも、事前に一括して交付金が支払われる関係上、既に転作地を向こう5年間監視していかなければならず、事務量も膨大になる上、さらに水田活性化緊急対策事業も中山間地支払制度と同様な問題が発生しないかと、市町村や地域水田農業推進協議会の皆さんは心配されています。県としては市町村や地域水田農業推進協議会に対してどのようなアドバイスをされるのか、お伺いします。

 

●知事答弁

 
 これまで、鳥取県は一つは国の制度を活用して、辺地法とか過疎法、特定農山村法、それから山村振興法、そうした法律の枠組みを利用して過疎対策事業、辺地対策事業、例えば交付税つきの起債でやる市町村を応援したり、あるいは国の補助金などを充当し県も応援するというようなことをやってきましたし、最近ずっとうるおいのある村づくり事業だとか、あるいは中山間地域の活性化を補助する、そうした交付金事業をワークショップのような形で行ったりしてきました。一応の成果はこれまで上がってきてはいると思います。例えばハード事業です。道路を建設するとか、ちょっとした集会所をつくるとか、あるいは集落によっては加工場をつくり、そこに集落の方々が出てこられて、いろいろな事業をされる。そうした意味での進展はあったと思います。現に幾つかのところでは成果があらわれてきていると思います。例えば、倉吉市関金の小泉の清流遊YOU村ですとか、あるいは智頭町の新田における浄瑠璃の館といいますか、あれを中心としてNPOでやっておられる。こんな取り組みが、少しずつですけれども県内で広がってきている。そういう力強い集落の自立の動きも出てきているのも、また事実だと思います。ただアンケート調査をしてみると、そうした意味でハード事業が随分制度されてきていることへの満足感は出てきているものの、他方で安心して住めるというところがかけてきているのではないか。特に中山間地域は高齢化が進んできています。そのために集落を維持することができないという話があります。集落のみんなで雪かきをするのも大儀、非常につらくなってきたとかですね、あるいは農作業などにもひょっとするとこれから支障が出てくるかもしれない、そんな声まで上がり始めているわけです。そういう意味で、これまでの事業を生かすことはできる素地はできてきたと思いますが、根本の暮らしの豊かさというか、安心感、そこのところがこれからの政策的な課題になりつつあるのではないかと思っています。

 次に、中山間地域の未来をどのように考えるか、そして政策について具体的にどう取り組んでいくのかという話です。
 先ほど申したように、中山間地域を取り巻く環境というのは必ずしも楽観的なものではないとは思います。しかし、鳥取県の場合U・I・Jターンを呼び込むのにふさわしい自然環境の維持が図られています。また、中山間地域自体が国土の保全だとか、あるいは水の保全、また歴史や伝統の継承など産業、農林業など以外にも果たしている役割は非常に大きなものがある。これが、現在スローライフとともに見直されつつあるという、そういう好機も来ていると思います。
 ただ、片方で市町村が中心となって中山間地域の集落対策をやるわけですけれども、今市町村の財政状況も限りがありますので、難しいという声も上がってきているわけで、県としても看過できない状態になってきている。すなわち、限界集落などの問題が出てきていると考えています。こうしたことから、県は今、市町村やTORC、鳥取大学などと一緒になり、研究会を立ち上げています。過疎中山間地域の研究会を立ち上げて、ここを中心として市町村とやりとりをして、できれば中山間地域の振興の基本的な条例を県からつくってみてはどうだろうかと、今、議論を重ねているところです。それから新年度に向けて、企業さんが例えば集落の見守りをするということを、新聞の配達員の方とか、そうした協力者を得てやってみてはどうか、こんな事業などを盛り込んでいます。今、取り組もうとしている具体的な事業については企画部長から御答弁申し上げます。

 次に、中山間地域の振興と関連して、米づくりなどについてのお話をいただきました。まず、バイオエタノール米について、鳥取県での取り組み状況、今後の計画についてというお尋ねです。また、飼料米についてもお話がありましたが、この双方、詳細は農林部長の方から御報告申し上げます。
 バイオ米については非常にすばらしい発想ではあると思うのです。ですから、私ももしこれが実現可能ならば地域として取り上げてみるべき価値はあるだろうと思っています。ただ、今すごく厳しい隘路があるのも事実で、10アール当たりの収量を例えば 800kgとしたところでも、通常の、食べ物としてつくる米に比べるとキログラム当たり20円ということで、通常の食糧用であれば 230円のものが今は10分の1ぐらいしかならないのが現実です。ですから、何かこう莫大な農地で大変省力的にやらないといけない。中山間地域でそれをやるのは少々難しいかなという感覚を持っています。現在、御指摘のように我が国でも取り組みは始まりました。北海道でプラントをつくる。それから、新潟でも全国の全農がモデル的なプラントをつくるということを、それぞれ国の応援を得て始めたところです。我が県でもそういうのを引っ張り込めたらいいのでしょうが、例えば北海道のものは、今、基本的に輸入米を使ってやっているということです。ですから、北海道米を少しずつ入れていきたいということですが、輸入米が価格的にベースになると言わざるを得ないということだそうです。新潟もいろいろな取り組みの中でのモデルとして試験的にやってみようということで、まず、実証的なところを見てみなければならないだろうと思います。新潟の場合だと多収米をやるわけです。たくさんの収量が上がるお米をやろうと。北陸 193号というお米を使おうとしているわけですが、そういうものを我が県でも新年度試してみたいと思います。そのための研究を始めてみたいと思いますが、現場の方におろすにはまだまだ価格の問題などクリアすべき課題が多いと思いますし、プラントとなると、例えば全農が全国のうちのモデルとしてやるとか、あるいは輸入米を入れてやるとかいうようなお話はありますが、まだまだそういう意味で試験段階なのかなという感触を持っています。

 飼料米についてですが、価格的に折り合えばこれも濃厚飼料としてやれるものはあろうかと思います。現に、県内でも八頭町である生産者が取り組みを始めました。九州のパートナーと一緒にいずれ配合飼料にするような原料生産として始めました。今年はまだ作付が初年度ということで試行的だったようですが、来年度もやってみたいということです。こういう動きを応援したり、いろいろな情報を得たりして飼料米の可能性を探ってみたいと思います。ただ、配合飼料として濃厚飼料としてやるお米の粒だけでなく、本来は粗飼料の方が県内でもマッチングがしやすいのではないかと思っています。いずれにせよ粗飼料の可能性が広いかなと思います。こちらの方を追いかけるのとあわせて、こうした濃厚飼料の可能性についても、県内の実証的に今やっておられる事業も見ながら、研究していく必要があるだろうと思っております。

 もう1つのお米についての地域水田農業活性化緊急対策についてどのようにアドバイスをしていくかということですが、これは農林水産部長からお答え申し上げたいと思います。

青木企画部長答弁

 
 県では、先ほど知事が答弁申し上げたような問題意識で、中山間地域の施策について新しい施策も含め展開しているところです。まず、1点目としては、中山間地域の所得、雇用の確保という観点で、農林業を中心とした支援策を行っているところでます。例えば、来年度だと、チャレンジプランを支援するような事業だとか、あるいは遊休果樹園の再活用をモデル地区として設定をして支援するような事業、こういった事業を盛り込んでいるところです。
 また、2つ目には定住人口、それから交流人口の増加を目指すような地域活性化の取り組みについての支援も行っているところです。例えば、知事も少し触れましたが、移住定住を支援するような取り組み、交付金を設定して県も一緒になって支援するような取り組みを進めたり、あるいはグリーンツーリズムというような動きについての促進事業というようなことも盛り込んでおります。また、市町村交付金でいろいろな地域活性化の施策展開を支援するというようなことも、これは継続をしているところです。
 3点目ですが、知事が申し上げましたけれども、住民の日常生活を支えることに支障が出ているという問題意識から新しい支援を考えているところで、1つが、これも知事申し上げましたけれども、新聞配達とかそういった民間企業と連携して地域の人々の見守り活動を支援するということをやろうと思っております。また、大学ですとか、シンクタンクとか、そういった外部の知見を活用して、生活機能を例えば複数集落で支えるような、新しいいわば共助のモデルをつくる、こういった支援も新しく来年度始めようと思っております。
 4点目にデジタルデバイド、それから地域交通機関の維持のための施策、こちらについては力を入れたいとに思っておりまして、例えば携帯電話の鉄塔の施設の整備の支援だとか、それからブロードバンド、環境を整えるためにCATVを整備する市町村に対する支援だとか、こういったものを実施したいと思っております。
 また、過疎バスの関係については議場でも話題になったところですけれども、ことしの10月の新制度に向けて検討を進めているところです。また、研究会でこういった中山間を取り巻く環境を引き続き議論して、中山間地域の振興条例を策定するような取り組みもぜひ力を入れていきたいと思っているところです。

●河原農林水産部長答弁

 
 バイオエタノール米についての鳥取県としての取り組み状況、並びに今後の計画という点です。
 県の方でバイオ米の生産の試算をしてみましたが、先ほど知事の方からも話がありましたが、反当でざっと10万円の収入額の差が出ております。かなりの収益差があるということです。したがって、全国的に見ても北海道や新潟でモデル的に実証が今行われているという状況で、コスト低減が難しい中山間地域においては課題が多いのも現実です。仮に、産地づくり交付金を活用するとしても、その差は十分には埋められないということで、さらなる公的な支援がない限りは現実的には困難だろうと思っています。県としては石油の高騰は今後も続くだろうということを考えれば、将来に備えて技術的な研究はしていく必要があるだろうということで、20年度から農業試験場においてバイオ用の多収米の品種の選定だとか、栽培技術の研究、それから生産コストの削減、こういった研究課題にも取り組んでいきたいと考えているところです。
 2点目、飼料米についての県としての取り組み状況、それから今後の計画ということです。
 国内では幾つか例があります。山形県の養豚農家が飼料米を給与するということでブランド化を図ろうとか、養鶏業者の皆さんが、4カ所だそうですが、飼料米を活用した畜産物を出そうということで付加価値をつけていこうと、こんな取り組みを今されているところです。本県においては、先ほど知事が申し上げましたとおり、八頭の大規模農家が飼料メーカーの委託を受けて19年度から生産を始めたということですが、聞くところによるとなかなか価格交渉が厳しいというのも現実のようです。課題としては、輸入のトウモロコシとの価格差が4倍程度あるということ、産地づくり交付金を活用しても 2.5倍ということで、なかなかここの入り口のあたりで難しい面があろうかと思います。それから、流通供給体制の整備とか、こういったことも課題に上がっています。県としては、これから実際に配合飼料を扱っている関係者のお話を伺いたいと思いますし、八頭の農家の方の事例等もよく研究して、今後の飼料米の生産の可能性についての研究をしていきたいと考えています。
 3点目、地域水田農業活性化緊急対策の推進について市町村や地域水田農業協議会に対してどのようなアドバイスをしていくのかというお尋ねです。
 この緊急対策に取り組んだ農業者の方が、仮に生産調整実施者でなくなるというような事態が発生した場合は交付金の返還が発生するというのも事実で、地域協議会の皆さんからは確かに不安視をされている声も聞いているところです。ただ、つくれなくなった、契約を守れなくなったという場合にも、免責要件がどうも設けられているようです。これは、圃場で災害が起きたとか、公共用地への転用、御本人が疾病にかかられた、あるいは御逝去されたというような場合には免責がされるというようなこともありますし、それから生産調整の確認ですが、既存やっている生産調整の確認の範囲でできるというような簡易さもあるようです。いずれにしても、国の制度を、ある以上はいかに有効に活用するかということについては努力していかないといけないと思っておりますので、そういった観点から、県としては、この1月と3月に地域協議会、あるいは市町村を集めて、事業の実施に当たり農家の方へ制度の仕組みを丁寧に説明していただくということ、それから向こう5カ年間の生産調整の計画の妥当性、これは協議会と契約になるものですから、そういったその妥当性についても十分あらかじめチェックをいただくと、こんなことをアドバイスしているところです。

  

中山間地域の振興対策について>bQ


  新たなる中山間地域振興策を策定するために、県としても研究会を立ち上げられて鋭意検討をされているということですけれども、現実問題として中山間地域振興対策に取り組むのはやはり市町村です。確かに中山間地域の振興策は多岐にわたるため、市町村だけではどうしても解決できる問題ではありません。引き続いて国の支援策や県の支援策は不可欠であるわけですが、私自身、側面的に見ていますと、行政としての限界があるかもしれませんが、何か先ほど言われるように画一的で直線的な振興策がやっぱりこれまで多かったかなと思っております、ハード事業を重視しながら。そこでせっかく研究会を立ち上げられて、これからの振興策について協議をされるのですから、私はぜひともお願いしたいことが1つあります。知事は、あなたも東京の下町の出身ということで東京の下町がふるさとのようですが、やはり長年住みなれてきたふるさとを家族そろって離れるということは、私は断腸の思いの中での決断であると思っています。ぜひとも中山間地域を離れられた皆さんに、要するにふるさとを離れられた皆さんに、離れなければならなかった理由は何なのか、私はそれをしっかり聞いていただきたい。やはりその中に私は今後の振興策のヒントが隠されていると思っています。例えば、新しい人を何ぼ入れてきても、やはりその、なぜふるさとを捨てなければならなかったのか、そのことを理解していないと同じことが起きてしまうと思うのです。
 平成12年度から始まった過疎地域自立促進特別措置法、要するに通称過疎法ですけれども、21年度でとりあえず終了します。そこで22年度から始まると予想されるポスト過疎法に知事として何を望まれるのかお伺いします。中山間地域の皆さんは、耕作面積も少なくて現実的に農業だけで生活するのは本当に厳しいものがあると私は思っています。かといってコストがかかる中山間地域に企業があえて進出することはあり得ません。自宅から通勤できる雇用の場を確保することが、まず必要だと考えます。したがってポスト過疎法自体特別措置法ですから、中山間地域に進出する企業については通常の生産コストも割高になるわけですので、法人税をゼロにした上に、プラスアルファの支援策を明記するなど、やっぱり大胆な政策をポスト過疎法に講じなければ、この流れを変えることはできないと思っています。ぜひとも知事に提言していただきたいと思いますけれども、所見をお伺いしたいと思います。
 バイオエタノールの問題と移りますけれども、県の職員の皆さん、中山間地域に出られて本当に農家の皆さんに聞かれているのかなと少し疑問に思っています。確かに課題が多いのはわかっています、初めから。しかし、農家の皆さんは大半高齢です。この年になって米がつくれないというのが本音なのです。そしてもちろん、水田は湿田が多いし、圃場の区画も広くありません。転作の政策が進む中、休耕田を遊休農地でするのでなく、時代を先取りする形でバイオ米や飼料米など作付することによって、産地づくり交付金に少しでも上乗せになれば、農家にとっては大きな励みとなると思っています。当然、鳥取県に適した多収穫米の研究開発もすれば、ひょっとしたら採算ベースに乗る可能性も出てくるかと思います。もちろん、今ある田植え機やコンバインが使えれば改めて投資する必要もないわけですから、メリットもさらに大きくなると思っています。さらに、例えば、雇用の場が少ない鳥取県にとってバイオエタノールのプラント建設を本当なら全国に先駆けて取り組み、全国からバイオ米を集めるくらいの姿勢が県に欲しかったということが私の本当に偽らざる思いです。知事の所見をお伺いしたいと思います。
 また飼料米についても、先ほども答弁がありましたが、私は本当に家畜用の新たなるえさとしてやっぱり注目を浴びていると思っています。この前も肥育農家の皆さんと話をしたのですが、大きな関心を持っておられます。ただ、先ほどありましたように採算の部分です。採算が合えば使ってみたい。ただ、県としても肥育試験をやってほしいということを強く望んでおられました。これについて、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 もう1点、水田活性化緊急対策事業についてですけれども、現場の市町村は本当に心配されています。結局、先ほどありましたように、先回の事業の中で、会計検査院からの指摘で返還という事実がたくさん出ましたので心配されています。それと、選挙の結果を受けてこのプランも官僚の皆さんが多分デスクワークで緊急につくられたものであると思いますけれども、これから5年間現場では毎年毎年確認作業をするわけで、その労力といいますか、やっぱり大変なものがあると思います。また、約束違反があれば、渡したお金の回収という作業も生じてきます。特に中山間地域では突然離農される農家もありますし、その対応についてはまさに大変であるということを聞いています。こうした制度を立案する場合、もっともっと現場の事を考えた上で立案するように、国の官僚の皆さんに働きかけていただきたいと、県としても。地方の声を上げていただきたいと思いますけれども、知事の所見をお伺いします。

 

●知事答弁
 
  ふるさとを離れなければならなかったその思いをしっかりと聞くべきだと、その中にこれからの中山間地域の振興策のヒントがあるのではないかと、こういう御指摘です。
 私もおっしゃるとおりだと思います。なかなか難しい生活やなりわいを行う場というふうに、中山間地域がなりかけているからこそ出てしまったということかもしれません。それは一般論とか理論ではわからない部分だろうと思います。やはり集落の中から出ていかれた方々とか、現実に住んでおられる方々、ここの目線で、施策を組みかえていかなければならないと思います。ですから、そういう意味で過疎中山間地域の、今、研究会を市町村と一緒にやっておりますが、その皆さんにもそうした現場の声を聞いてもらうように働きかけさせていただきたいと思います。
 先般、東京とか大阪に出ていった子ども達といいますか、大学生の声を聞きました。これは将来ビジョンに関連して伺ったわけです。なかなか正直なものがいろいろあります。例えば、交通機関が不便であるというのが、まず1つ。道路の問題も実は書いてありました。それから、なるほど、と思うのは、やはり働く場がないではないかというようなお話とか、何年も住むにはやはりちょっと遊ぶところがない。老後に帰って来るのだったら私はぜひやってみたいけれども、住んでみるとなるとちょっと気が引けるとかです。中には鳥取に就職すると上に行けなくなるのではないかと思うとか、悲しい御指摘もあって、そういういろいろなところが実は実態に近いのかもしれません。そういう思いに対して我々が地域として受けとめて、どういうふうに対処していくかということが求められるのだと思います。中山間地域対策のヒントもこうした子ども達の声にも隠されているような気がしました。ぜひ、現場主義の政策立案を心がけたいと思います。
 次に、ポスト過疎法に何を望むかということです。
 平成22年の3月でこれは失効いたします。今までも過疎地域振興の措置法は昭和45年からずっとやってきました。今も自立促進の特別措置法を掲げてやっているわけですが、これがいよいよ期限が来るということです。これまでハード事業は随分と進んできました。それを市町村が担いで、例えば過疎対策事業でやってきたわけです。しかし、その借金の重みもだんだんと重くなってきまして、私はもうハード事業ばかりの過疎法は時代が終わっているのではないかと思います。これからはもっとソフトといいますか、人づくりだとか、あるいは地域を興していくために周辺地域も協力をしていくとか、そういう視点が必要なのではないかと思います。手法を転換することとあわせて要件も変える必要があるだろうと思います。随分合併して町の形が変わりました。片方で集落の限界集落化がどんどん進んでいる、そういう深刻な実態があります。ですから、できればその集落ごととか旧村単位とか、そうした視点での要件づくりも必要なのではないかと思います。いずれも従来とは違った過疎法になってくると思いますので、我々鳥取県の地域の現状が反映されるように努めていきたいと思います。
 産業振興の関係で思い切った対策が必要ではないか、法人税をゼロにして進出企業を呼び込むなど、そういう提案をしてはいかがかということで、私もおっしゃるとおりだと思います。
 ポスト過疎法の面でやるのか、あるいは産業振興一般として鳥取県として主張していくのかということはあるかと思いますが、今の補助金合戦で企業誘致をするのでは、我々のような財政力の厳しいところではついていけないところがあります。ですから、国も制度として法人税をまけるとか、そうした応援の仕方を、めり張りをつけてやるべきではないかと思います。今、第2の過疎化が進んできていて、我々のようなところを含めて大多数の中山間地域などは人口の減少に苦しんでいます。その1番の原因は産業がないことです。農家の所得を見ても、実は農業所得は1割弱というのは統計的な常識で、それ以外の、農業外の所得をどうやって得ていくかというのが大切なのです。そういう意味で議員の趣旨を踏まえて、これからの運動を他県、秋田県などと連携して展開していきたいと思います。
 バイオ米や飼料米などについて、もっともっと研究開発をして採算ベースに乗せる取り組みが必要ではないか、そもそもバイオエタノールのプラント建設を全国に先駆けて取り組むということが必要ではなかっただろうかということです。
 私も、思想はよくわかります。これからエネルギー需給が逼迫をしてくる。ですからバイオエタノールが向上してくるだろうと。いずれはバイオ米が採算ベースに乗る時代がやってくることもあるかもしれません。ただ、今、余りにも価格的に折り合いがつきづらい、飼料米以上に非常に厳しいと思います。米づくりを現場でやることが実はフィットするのだというのは私も共鳴します。ただ、それを実際に採算に乗せていくのはまた別のことだろうと思います。県として全国に先駆けてプラント建設をということでしたけれども、現実問題、今回全国的にやっている北海道と新潟は、それぞれが国の事業を得てやっています。この国の事業は都道府県とか市町村は除外されています。ですから、そこに進出するという企業さん、北海道の場合だとこれは酒造関係のメーカーさんです。それから、新潟の場合は全国のモデルとして全農がちょっと自分たちでやってみようということで、農業者代表としてやっているというケースで、なかなか自治体として取り組むには難しかったと思います。ただ、今後のことを考えて、先ほど申しましたように研究開発とか、採算ベースに乗せられるかどうかの検証活動はやっていくべきだと思います。もちろん手を挙げる農家がいれば応援していくという姿勢はとっていきたいと思います。
 飼料米について採算が合えば使ってみたいが県が肥育試験をすべきではないかということです。
 先ほど、農林部長から申し上げましたけれども、山形ではお米を食べる豚ですよと、だからおいしいという、こういう売り出し方はできないか。これで付加価値がつけば確かに飼料米の影響で単価は高くなりますけれども、豚の単価も、それでも売れるということができないだろうか。こういう取り組みをしています。ですから、肥育試験をやってみるという、そのアイデアはうなずけるところがあります。ちょっと現場の研究機関の方と話をさせていただきたいと思います。ブランドづくりを県でやるのとあわせて、そうした飼料米をやってみた豚が、どういうような仕上がりになるかとか、あるいは鳥などにも使っていますので、そうした鳥がどういう仕上がりになるのか、その辺の実証研究の余地は十分にあるだろうと思います。
 水田農業活性化緊急対策についてです。
 これについては、おっしゃるように現場として取り組みにくいという、そういう声もいろいろあるのだろうと思います。実情いろいろと、今始まったばかりですので伺いまして国の方にぶつけていきたいと思います。これは今年度限りの事業ですから、次にということですので、今後の農業施策の展開に当たっては、ぜひ現場を見てやっていただきたいと思います。水田農業活性化緊急対策事業自体は取り組みたい農業者はぜひやってもらってもいいだろうと思います。例えば、飼料米も対象になりますので非常に価格差があって難しいと言っておりましたが、飼料米なども、では5年間やってみようかというようには乗りやすい事業になっているという面もあります。いずれにしても、政策の立案の過程で現場のやりやすいように動きやすいようにするよう、国に今後も求めていきたいと思います。

<中山間地域の振興対策について>bR

 水田活性化緊急対策事業自体、私も否定するわけでもないし、ただやはり官僚主義的に制度がつくられていくこと自体が、私はおかしいではないかと。地方の現場の皆さんの声が本当に生かされるような感じの制度システムをやはりつくる必要があるのではないかという思いなのです。

●知事答弁
 
 現場の声を届けるということだろうと思います。確かに今回のこの立案過程がちょっとどたばたな感じが私もします。官僚主義のつじつま合わせではないかという御指摘なのだろうと思いますが、そういう面も多分にあるかもしれません。ただ、いずれにせよ今回いろいろと品目横断的安定対策の見直しとか、国の方も今動きつつあるわけで、我々としても現場主義の農政を今後も求めていきたいと思っております。


<中山間地域の振興対策について>bS

 ピンチがチャンスという言葉がありますけれども、これまで稲作はもうだめだと言われておりましたが、社会情勢の変化によって、私は今新たな転換期を迎えていると思いますし、迎えてくると思っております。ところがどうでしょう。先ほどありましたようにバイオ米、飼料米の取り組みですけれども、さらにバイオエタノール、精製プラントの取り組み、聞いたわけですが、私自身は少し本当にがっかりしました。他県はもう進んでいるのですよ。隣の島根県なんかももっと研究が進んでいるのですよ。そういう時代の流れを現場は酌んでいるのですよ、見ているのですよ、試験研究機関は。やはりそういう意味で私はもっと現場の皆さん、時代の流れを、空気を読んでほしいのです。それで、まさに産業乏しく、雇用の場の確保が喫緊な課題になっている我が県ですから、先ほどのエタノールの精製プラントにしても、出来る出来ないは別にして農商連携の中で一緒になって研究してみるとか、全国に先駆けて、全国各地からバイオ米をかき集めて、鳥取県に。そして新たな産業を起こそうという、何か意欲的な視点というものが、このたび本当に質問するに当たり感じられなかった。本当に私自身は残念です。知事、あなたもマニフェストをつくられて、今、鳥取県のビジョンをつくろうとされております。県職員がこのような待ちの姿勢ではすべて計画が絵に描いたもちになってしまうと、私は心配しています。もっと職員の皆さんが意欲的な発想のもとに仕事ができる、時代の流れとか、どうすれば鳥取県の雇用の場がつくれるのか。そういう部分を、本当に積極的な視点の中で仕事ができる、そんな環境をつくることがまず必要ではないかということを、私は痛切に感じました。

●知事答弁

 
 我々の発想力に問題があるのではないかと、それは思い当たるところがないわけではないと思います。バイオ米は今、たしか価格差があって難しい課題ではありますが、今研究機関の方も新年度から取り組もうということになっていますので、それの芽を育ててまいりたいと思いますし、ピンチはチャンスだという意味で米づくりに光が当たるような、例えば海外に売り込むだとか、それから飼料米というよりも例えば粗飼料として、わらも使うような、そういうことであるともう少しマッチングをやりやすくなる。いろいろな可能性があると思います。そこで米をつくるのであればどういうのがいいのか、研究機関は何をやるべきか、また普及員は何をやるべきか。これをもう一度庁内でも体制を立て直す必要があるだろうと思います。今から県庁のかじを少しずつ切っているところで、新しい時代を開くような施策をつくっていかなければなりません。しかも、これからの行政というのは県民と不即不離の関係で、協働でやっていかなければなりません。これは役所として苦手だった分野だろうと思います。そういう意味で若手職員だとか現場の職員の発想こそが生かされるようでなければならないと思います。私も今の話を伺っていて、庁内での仕事のやり方、もう一度点検してみて、若い人からもいろいろな意見を聞いてみて、新しい時代にふさわしいような県庁の仕組みづくりを議論してみたいと思います。今サブチームをつくって施策の検討をやりました。今回も予算の中に若手がつくった施策も盛り込まれています。ただ、若手の方の感想をお聞きしますと、すごく大変だったということはあります。県庁に入庁して初めて、県庁の中の壁を知ったと。政策をつくって、それを実現しようと思うといかにハードルが高いか、意見がなかなか言いづらい状況はやはりやってみてわかったけれども、見つかった気がするような、そういう話がありました。また、若手のサブチームがあったら参加したいかという人、半分ぐらい参加したいという人いますけれども、なかなかもうこれだったら大変なのでやめたいという人も本当にいます。これはいいことなのか悪いことなのか、先輩が後輩を指導するということは必要ですけれども、それとあわせて発想の芽が摘み取られないような、そういう県庁の機構をつくり上げていかなければならないという思いも持ちました。今の言葉を腹の中にしっかりと入れさせていただき、取り組んでいきたいと思います。