<ふるさと納税制度について> |
このふるさと納税、つまり個人住民税の寄附金税制制度で、今国会で審議されているところですが、平井知事はこの制度が発表されたときにもろ手を挙げて歓迎されていました。このふるさと納税制度、納税者が自分のふるさとや自分が望む市町村に個人住民税の1割までの金額を寄附した場合、翌年の確定申告後に寄附した金額の
5,000円を超える部分について個人住民税と所得税から税額控除を受けることができるという制度です。県でもこのたびの当初予算に県外から個人住民税の寄附金が
3,000万円あると見込まれ、鳥取県こども未来基金として計上され、子ども達の読書環境の充実並びにジュニアスポーツの振興に使われる予定です。まさに、ウハウハするような夢に満ちた制度のようですが、じっくり点検してみますと手放しでは喜べないからくりがあることがわかりました。
例えば、私が財政再建に頑張っている夕張市に10万 5,000円を寄附した場合、私自身は来年度の個人住民税と所得税から10万円の税額が控除されます。仮に私の所得税率が20%だった場合、個人住民税の控除額は8万円となります。ところが、夕張市に寄附した10万
5,000円のうち8万円は本来個人住民税として鳥取県に3万 2,000円、琴浦町に4万
8,000円入る予定の税金です。つまり、私が寄附することで、来年度鳥取県税で3万
2,000円並びに琴浦町の町民税で4万 8,000円の穴があくわけです。この補てんについてどのような方法で国は対応する予定なのか、知事にお伺いします。
また、このふるさと納税制度を活用した寄附金集めのために、どのような方法で県としてPRされる予定なのか、お伺いします。
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●知事答弁 |
ふるさと納税制度は、私は非常に効果のある施策となるのではないかと期待しております。ただ、正直申し上げてロットはまだまだ小さいと思います。と申しますのも、欧米のように寄附を、篤志家として自分が共鳴する事業に対して快くやろうという、そういう文化がまだ日本には根づいていないからです。ただ、その呼び水として、実験として、このふるさと納税制度が働くのではないかという期待がありますし、またわずかかもしれませんが、わずかといいますか、そんなにロットは大きくないかもしれませんが、我々が新年度で見込んでおります、例えば
3,000万円とか、そうしたロットでの地方財政への貢献というものも当然期待できるだろうと思います。それから実際にふるさとに対する関心をふるさとから出た人に持ってもらう。これはふるさととの結びつきをこれからも深めていく上で効果もあるかもしれませんし、またあわせて選択して、そして寄附するわけですから、我々の方の地方団体側にも切磋琢磨しようという意識が芽生えるのではないか、そういうメリットはあるかと思います。そういう意味で一つ大切なものではないかと思いますが、議員が御指摘のようにワークするかどうかはこれからいろいろ検証しなければならない点はあろうかと思います。
1つ御指摘いただいたのは、国は例えば住民税の減収分が、夕張に寄附をした方が県内におられれば県で発生するわけですが、どのようにこれを行うかということですけれども、これは交付税の仕組みで補てんすることになります。当然、住民税は減りますので、基準財政収入額が減少するということになります。ですから、減収分のうちの75%は、私どもは交付税を受ける交付団体ですので、補てんされるということになります。もちろん不交付団体の東京のようなところであれば、この分は補てんされない、丸々その分は結果的には落ちるということになりますが、私どもは75%は補てんされるというふうに考えたらいいと思います。他方で寄附の方は完全に歳入されますので、これは何をもたらすかといいますと、交付税の減収分は交付団体に対して補てんされる。寄附は丸々地方団体の方に残るということになりますので、地方団体の一般財源のトータルはマクロベースで増えるという事になります。これも隠れた本来の効果ではないかと思います。
次に、寄附金についてのPRをどのように行うかという点については、総務部長からお答え申し上げたいと思います。
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●瀧山総務部長答弁 |
本県を支援していただく方を1人でも増やすために地域の魅力を高めることがまず根幹です。県人会などの関係団体とも連携して、県内外にタイミングよく効果的な情報発信を行いたいと考えております。今、既に取り組める対策として、県のホームページにふるさと納税制度の寄附金で行う施策の概要を掲載しております。それからまた、県外事務所で本県ゆかりの方との会合の際には、簡単なチラシを作成しておりますので、それを配付して理解を求めているところです。またさらに、来年度の当初予算にお願いしているところですが、ふるさと鳥取納税PR事業を計上して、その中で本県ゆかりの方へ重点的に働きかけることとして、県人会、あるいは鳥取ファンクラブだとか、高校等の同窓会などを通じた呼びかけだとか、ポスター、広報誌などによる周知を行っていきたいと考えているところです。
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<ふるさと納税制度について>bQ |
確かにこの制度はマクロの部分では税が増えますから、まあそれはいいでしょう。しかし、このふるさと納税制度は県内の市町村間で行われることも十分想定されるわけです。確かに県は市町村に穴があいた部分については先ほど言われましたように、交付税で措置をされるでしょう。しかし、交付税の措置は減収分すべて保障されるわけでなく75%なのです。つまり、ふるさと納税制度を行えば交付税措置されたとしてもそれぞれの自治体に入るはずの個人住民税の4分の1は自治体が自動的に損をするわけです。もし、全国で 4,000億円程度の住民税が控除された場合、交付税は 4,000億円の75%ですから 3,000億円です。国は、県や市町村に 3,000億円の交付税を交付しなければならないわけです。今でも交付税の原資がないために、その対応は臨時財政対策債に頼らざるを得ない状況です。本当に大丈夫なのかと私は思うのです。こんなリスクを背負ってでも取り組まなければならないふるさと納税制度であるのかと、私は疑問を抱くわけです。そういう部分で知事の所見を求めたいと思っています。
また、このふるさと納税制度を活用した県の寄附金集めですけれども、市町村とターゲットが重複するわけです。県外に出ている人は県もふるさと、市町村もふるさとなのです。まさに熾烈なPR合戦、寄附金集めが予想されるわけです。何か県と市町村間でそのルールでもつくられるのか。さらに厳しい財政状況を考えれば、自主的な制度を逸脱して、例えば町の職員にノルマをかけながら寄附金を集める市町村、そういうところが出てきたりしないのか、そういうことも懸念されるわけです。知事の所見をお伺いします。
また、所得によっては住民税の控除に制限がかかってしまう場合があります。例えば、寄附しても所得税から減税されないということもあります。複雑な制度ですので、PRする際、丁寧な周知をされることが必要と思いますが、あわせて知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
ふるさと納税制度に伴って交付税の補てんがあるわけだけが、その分については結局、臨時財政対策債を投入するということになり、その分は原資は心配なのでリスクがあるのではないかということです。
それは確かに字義どおり言えば、今御指摘のあった、例えば 3,000億とかそういうレベルで交付税が足りなくなるというのは発生するかもしれません。発生するのは21年度からになります。と申しますのも、今出していただく寄附が住民税に反映されるのが21年度の住民税からですので、そういうことになりますが、21年度の地方財政対策のときに、ではそれだけの原資をどうやって確保するかという見積もりをやり直すわけです。本来、交付税制度はその需要と収入とが見合った形でつくらなければなりません。もし、これが何年も分かれるのであれば、交付税の税率を変更すると。国と地方との取り分の分担を変えるというのが本筋です。本来はその作業をやるわけで、それで地方財源をトータルで確保するということです。臨時財政対策債が出てくるのはその後の便宜的な話で、ギャップがどうしても生じる場合に出てくるということがありますから、そのレベルの話とふるさと納税の導入の話とは本来別の次元の話ではないかと私は思います。大切なのは、議員が今御指摘になりましたように、我々の現ナマがどんどんと乏しくなるのではないか。将来の交付税特会が危ないのではないかということで、これについては抜本的な地方税制の改革だとか財政改革を、税財政制度の改革を国に対して求めていくことで訴えかけをしていきたいと思います。
次に、ふるさと納税を行うと職員にノルマをかけながら市町村が取りにいくのではないか、あるいは県と市町村の間で何かルールでもつくらないといけないのではないかというお話です。
これについては、私は自分たちのふるさとに対して寄附をするという選択を住民の皆さんであった方、故郷を離れた方にやっていただくわけですから、県であろうが市町村であろうが、出していただければそれでありがたいということではないかと思います。本来県と市町村とで取り合いをするという類のものではないだろうと思いますし、私ども県として市町村の分を取りにいこうというような思いは全然ありません。むしろ、ホームページなど体制が整えば市町村の振り込み先とかも我々の方で表示してあげてもいいと思っているぐらいです。そういう意味で鳥取県に対する愛着をいろいろな形で市町村も県も呼びかけて、全国の関係者の共感を得ていくということこそが、これからの地域力を高める上でプラスになっていく材料ではないかと思います。
次に、住民税に控除のギャップがあるということで丁寧な周知が必要ではないかという点については総務部長からお答えしたいと思います。
職員のノルマかかるのではないかと。私はそういうことは本来あるべきものではないという趣旨で今申し上げました。これは、自然と選択していただいて、住民であった方々からふるさとを思う気持ちで出していただくというものであって、働きかけてでも取りにいくという、ノルマをかけるような性質のものではないと思っております。
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●瀧山総務部長答弁 |
ふるさと納税制度を寄附する場合に、その上限額が1割と定められておりますので、そのあたり非常にわかりにくい、計算しづらいではないかということですけれども、確かに自分の限度額が幾らかというのを計算するのが少し面倒になっております。これについては丁寧にPRしていきたいと思っております。例えば、県のホームページに載せる場合にも、簡単な試算例といいますか、ある程度、御自分の住民税の所得割の額が幾らで、それから所得税率が幾らだったら、どれくらいの上限額になるのかというような、わかりやすい工夫をしていきたいと思います。来年度も、先ほども説明しましたけれども、その中でもあわせてPRしていきたいと思っております。
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<ふるさと納税制度について>bR |
国のことですから、私がそんなに心配する必要ないし、ここで議論する必要ないのですけれども、先ほど言いましたように穴があいた部分については交付税措置ですね、ただ、国も所得税の税率によって、要するに所得税減税が出ますから、例えば私の所得税率が20%とすれば、2割、国税分も減ります。つまり、国自体も所得税が減るのです。穴があくのです。要するに国は交付税も払うし所得税の一部も入って来ないという形になるのです。ですから私は余計心配するわけです、今の制度を。こんな制度を先まで本当に全部計算しながらつくったのかなという思いがあるのです。私の思いとして言っておきます。
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●知事答弁 |
ふるさと納税について、おっしゃるように交付税で出す分とそれから国税がなくなる分があります。ですから今回のふるさと納税制度は地方自治体から地方自治体への移転とあわせて国から地方自治体に財源移転が起こるというものです。ですから、そういう意味で地方全体では私はプラスになる面があるのだろうと思っておりますけれども、これがかえって国の方の交付税制度が破綻するようなことにならないように、知事会などで訴えかけをしていきたいと思います。
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