<指定管理者制度について> |
指定管理者制度は平成15年、地方自治法の改正を受けて民間企業の経営感覚、ノウハウを取り入れることによって施設の効用を最大限に発揮させ、住民サービスの向上や行政コストの削減などを期待し、これまで公共団体、公共的団体などに限定されていた管理委託制度から民間事業者、NPOも参入できる制度として始まったもので、本県においても、平成17年度のみなと温泉館を皮切りに、18年度には30施設が指定管理者制度として適用されています。
そうした中、18年度に指定をされた数多くの施設が今年度末には指定管理者制度の指定期間の満了を迎えます。期間更新を迎えた今、指定管理者制度が当初の目的どおりの成果を上げることができたのか、どう分析され総括されているのかお伺いします。また、このたびの更新に当たり募集や評価等についてどのような観点から見直しをされ、何を具体的に変更されたのかお聞かせください。
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●知事答弁 |
詳細は行財政改革局長からお答えしますが、例えば経費を縮減する、県民の皆様からお預かりした大切な税金を無駄なく使うという意味では一つの効果がありました。年間で大体4億5,000万ほど削減するということもかないました。また、サービスの向上こそが大切ですけれども、この点でも、例えばゆめみなと温泉館では入湯時間を延ばすことができましたし、それから、これはもちろん事業者のほうの御好意ということでしょうが、ポイントカードを作ってリピーターを増やすなどやりました。この温泉館の場合だと、そうしてリピーターも増えて入湯客が増えて、料金も下がったわけですが、しかし、その売り上げと言うか、収入は増えて、支出を上回る黒字化をすることが達成できたということで、そういう良いケースも報告をされています。
ただ、その一方で私どももこの議場で議論しましたが、遵守すべき法令が守られていないようなケースがあるとか、利用者の方々から苦情を頂くようなケースがあるとか、サービスの提供において問題が発生した事例もないわけではありません。ですから、陰の部分とひなたの部分と両方がある状況ではないかと思っていますが、ただ、当県の場合はおおむね費用の節減には役立ちましたし、全体監査をさせていただきましたが、おおむね適正以上の評価ばかりになっていますので、特段の大きな問題はなく移行が進んだと考えています。
次に、募集や評価等についてどのような観点で見直し、変更したかということです。 今回変更したのは、いずれもこの議場での議論に基づくものばかりです。まず、雇用が不安定になるということが大分この議会でも議論されました。ですからそれに対する対策として、従来だと3年間の契約期間を5年間に延長するという取り組みを今回しています。さらに、法令などの遵守事項を審査事項の中に加えようと考えています。例えば、労働基準法など関係法令の遵守だとか、環境対策、環境推進活動をしっかりやっているかとか、男女共同参画の観点とか、そういうものをプラスの審査基準として採用しました。あわせて、実際に人が運営するのが施設なのですが、その有為な人材が育成されるようにしなければならないわけで、これも議場での議論に基づき、今雇っている人を引き続き雇用していくような、継続的な雇用の計画というものも、審査項目として入れたわけです。
こうした見直して、サービスの内容だとか、それから運営する団体の社会的な貢献だとか、いろいろなことを審査の対象として厳正に指定管理団体を選定していきたいと思っております。
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●中山行財政改革局長答弁 |
まず、経費の縮減の面ですが、これは知事も申し上げたように指定管理の導入施設が31施設ありますが、18年度の県費負担額を指定管理者制度導入前の17年度と比較して、単年度で約4億5,000万の削減を果たしています。また、今回、今議会で審議をお願いしています19施設分の21年度の県費負担については、18年度の制度導入のときに比べ約2,800万の削減が見込まれるのではないかと考えているところです。
さらに利用者サービスの面ですが、開館時間の延長ということでみなと温泉館のほか、障害者体育センターでも開館時間の延長を行ったほか、倉吉体育文化会館、武道館において、休館日を削減して利用者サービスの向上を図っております。また、利用料金も生涯学習センター、夢みなとタワーの一部の利用料金を値下げしたほか、布勢総合運動公園、鳥取砂丘こどもの国において、例えばスポーツ教室を増やしたりイベントを増加したりといった利用者サービスの向上を果たしているところです。
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<指定管理者制度について>bQ |
指定管理者制度の問題は、この議会でもいろいろな部分で不安が出されて、選定項目の中にもいろいろ入れておられます。法人の社会的責任遂行という状況を見るということで、例えば障害者雇用の状況、男女共同参画推進企業の認定状況とか、環境への配慮の状況、これらがこのたびの選定基準の中に新たに設けられております。したがって、このたびの常任委員会の中で、それぞれの担当部局が所管する施設の指定管理者候補者の選定状況が報告されました。そして、それぞれ議案が提出されています。
その中で、障害者雇用、男女共同参画推進企業の認定、それから環境への配慮、要するにISOとかTEASとか、これらはまさに県が重点施策としてこの数年間取り組んできた大変大きな私どもの課題であると認識しているわけですけれども、このたびの指定管理を受ける予定の事業者の一部には、まだ全く取り組まれていないという状況が散見されました。そのことから、私も常任委員会の中で担当部長に、なめられているのではないかと厳しく言いましたが、知事の所見と、今後の対応策についてお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
CSR、社会的な企業の責任を果たすことを今回加点項目として審査の中で入れたわけですが、そうした審査項目について予定事業者の一部でまだ取り組まれていないということが問題ではないかということです。
私どもも今回、審査は審査として、プラス要素だとかマイナス要素がいろいろ総合して客観的に可否を決するわけですが、それはそれとして、ただ男女共同参画の推進、あるいは環境基準の設定などの取り組みができていない企業が見られること、非常に残念だと思います。今回、議案のほうに指定管理については提出していますが、企業の社会的責任の中でも鳥取県として遵守をお願いしている、男女共同参画などの項目について、それを果たしていただくうにきちんと指導を行いたい、協力を呼びかけていきたいと考えています。
現状として、まだ指定ができていない、協力企業となっていない状況ですが、ただ、こうした審査項目があることもあってだろうと思いますが、チャレンジをしてみようということで認定を求めて動いている企業、団体も出てきています。そうした状況について、行財政改革局長から補足させていただきます。
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●中山行財政改革局長答弁 |
今議会に指定を提案中の団体、9団体ありますが、この社会的責任条項の遂行状況について、まず障害者雇用については雇用義務違反の団体はありません。また、男女共同参画推進企業認定については、9団体中4団体が認定を受けておられます。次に、ISO14001を初めとした環境の条項ですが、これについては1団体がTEASU種の認証を受けていますが、その他については認証を受けていないという状況です。
今回、選定の際に面接審査等で今後の状況とか、各部局において聞き取り等を行ったところ、申請時点では認定を受けておられませんが、審査項目につけ加えられたことにより、TEASだとか、あるいは男女共同参画推進企業の認定の準備等を始めたところがあります。例えば男女共同参画推進企業については、未認定の5団体のうち2団体で検討を始められたほか、TEASについても3団体で検討を始めているところです。こういった状況なり、あるいは取り組みの状況を見ながら、個別にそういった団体について協力をお願いしたいと考えています。
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<指定管理者制度について>bR |
先ほど、経費の削減を主な成果として上げておられますが、ただ経費削減の中身を見てみれば職員、要するにそこで働く職員の皆さんの人件費が6割、7割掛けになっているのです。そのことが一番大きな経費削減なのです。結局そこにいる職員一人一人の生活給が大幅に下げられたということです。それと、これまで単年度契約されていた各種委託料、これが複数年契約にされたことによってかなりの金額が浮いてきました。私はざっと見ると、経費的にはこの2つが削減の一番大きな要因になっていると思っています。
コストダウン、それでいいでしょうが、逆に言うと、このことはどこにつながるかということを私は真剣に考えなければならないと思うのです。つまり、地域の経済が今本当に疲弊しているということで問題になっています。この人件費の削減、それから各種委託料、業者の皆さんの金額を下げることによって、地域の疲弊にますます拍車をかけるのではないかということを心配していて、もしこの程度なら――この程度という表現はよくないのですけれども、これだったら指定管理者にしなくても、これまでの状況でもそれだけの汗をかけば、ある程度コストダウンにつながったのではないかと私は思っておりますが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
このたび、議場での議論を踏まえて、いろいろと指定管理のやり方、選定のやり方を変えてきました。そういう意味で議場の議論が我々の運用に役立ったというように認識しております。その際に人件費などの副次的な効果の問題もここで提起され議論しました。そういう中で継続雇用のこと、あるいは職員の配置計画とか、そういうものも私たちのほうで審査基準にしましょうと申し上げたわけです。
そもそも、この指定管理者制度が導入されたのは、官と民との関係を境界線を少しずらしてはどうだろうかという議論だったと思います。すべて公が独占をしてしまうのではなく、民間のやり方を入れれば、例えば施設の使い方について、お役所だと全部規則で決まっていて9時から5時までしかあけませんということかもしれません。しかし、現にみなと温泉館で言えば2時間も入湯時間を長くすることになりました。これは、サラリーマンの方にとって家に帰ってからお風呂に行くことができるようになった。今までだと、御飯を食べている間にもうお風呂は閉まってしまうということだったのですが、だからこそ利用も進んで逆に黒字化が達成された。こういうような事例も出てきているわけです。
ですから、私はあながち民間、あるいは公的な財団法人などもありますが、そういうところで一定の競争をしてもらいながら、価格だけでなくサービスの内容も競い合っていただくこと、この制度自体は否定し去るものでもないだろうと思います。もちろん中には、とても行政的なものだから、単に人件費の切り下げだとか、複数年契約による切り下げだったら役所でもできるではないかと、ただそれだけの指定管理だったらやめたらいいというものも中にはあるかもしれませんが、今回提案しているところは、そうした一定の競争性を課しながらサービス内容や価格についてのトータルな競争をしてもらうにふさわしいところだということで選定作業を進めたところです。絶対のものではありません。ですから、今後も内容によって指定管理に付すかどうか、随時見直しをして点検したいと思います。
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<指定管理者制度について>bS |
指定管理者制度、このたびが2回目の切りかえになるわけですが、少し心配するのは、私は労働者派遣法と少し似てきたかなという思いがしています。というのは、労働者派遣法で派遣された職員の皆さんはその仕事についた時点で次の仕事を探さなければならないわけです。指定管理者制度、確かに3年から5年というスパンに延びたのですが、しかしながら、そこに働く皆さん、いわゆる将来が見えないという部分で非常に不安を抱えているわけで、次の指定管理が受けられるか受けられないかわからない。要するに指定管理者制度になったために本当に待遇が悪いということで優秀な技能を持った職員はやめてしまわれたということも聞いております。
しかも、最初の指定管理のときには年間多くの経費の削減ができました。大きな成果がありました。それからサービスも、温泉館ばかり言っておられて、ほかのことがどこも出てこないので、ほかのところはどうかと心配しているのですが、結局サービスも最初の年はごろっと変わるのです。ああ、よかったなという感激ができますね、成果として出ます。それが次の更新、次の更新になったら経費の削減するところがないのです。汗をかいて売り上げが伸びればいいのですが、一般的には人口が減りますから、利用者も減る。そうした中でサービスをよくしようと思ったら、経費もかかる。どこを削減するかといったら、人件費を削減するしかないのです。
当然、我々も気をつけなければならないのですが、指定管理者制の成果として、更新のたびにやはりどれくらい経費が削減できたかということを目に見える形で求めてしまうわけですから、逆に言うと本当にそこで働く県民の皆さんが、十分な生活のできる環境にあるのかないのか、その辺の保障というものも、私どもはしっかりこの制度の中で見ていかなければならない、関心を持っていかなければならないと思っています。そういうものも含めて、指定管理者制度が労働派遣法と同じように、働く皆さんが不安に陥らないようにすべきだと私は思います。やはり、地域の経済、非常に疲弊していますが、このことが逆にそのスパイラルの一環にならないようにしていただきたいと思いますが、知事の感想を求めます。
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●知事答弁 |
指定管理者制度を導入すること自体が自己目的化してしまって、肝心の地域のための公共施設であるという本質が抜け落ちてしまうことを我々は戒めなければならないと思います。私どもは今こうして指定管理者制度をやってきましたが、それはやはり民間のノウハウと言うか、役所ではできなかったことができるようになるのではないかという期待も込めています。これは利用者、住民の方の利便にも合致することです。
みなと温泉館に限らず、例えば障害者の体育センター、これも午後8時閉館だったものが午後9時まで延びた、あるいは生涯学習センターも利用料金を下げることができた、また氷ノ山では自然観察の機会が増えた、また布勢の体育館も単なる器具の説明ではなく指導を行うようになったなど、いろいろと皆張り切って、我々は県から委託されて任されているのだから、利用者に役に立つようにしようということも現実にできてきています。それが利用者増につながったりファンが増えたりして収入が上がってくる。収入が上がってくれば、その分はもちろん人件費も含め運営のほうに回り得るわけですし、現にそうなった例も出てきているのです。
ですから、役所が規則で縛って直営でがんじがらめにした上で施設の運営をすることの是非は、やはり問われていいだろうと思いますので、指定管理者制度も一定の領域を持っていいのではないかと私は思っています。その中で議場でもたびたび言われていることですが、極端にそこで働く人たちに不利益を与えるようなことがないようにしなければならないわけで、ここでの議論を踏まえて実際にこれから雇用計画、どうしますかというのもヒアリング対象の中に入れたわけです。継続して雇用するとか、技能を持った人をちゃんと優遇しておくという計画になっていれば、その分は評価していこうという仕組みに改めてきています。まだまだ試行錯誤の面はあるかもしれませんが、私たちとしては民間の手法を公共施設の運営に導入しながら、かつ地域に対して例えば雇用だとか、そうしたことも含めて負の影響を最小限にするように努力をしていきたいと思います。
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