平成20年9月定例会一般質問(平成20年10月8日)No.2

<栽培漁業センターの調査船について>

 
 湯梨浜町にある鳥取県栽培漁業センターでは、安定した海洋資源を継続的に、しかも安定的に確保するため、魚介類を初め海藻などの種苗の育成、放流、追跡調査、生物環境調査、沿岸海洋観察などを行っており、アワビ、サザエ、カキ等の種苗育成、放流を初めワカメの養殖育成、潮やけ対策としてアラメなどによる藻場の再生を行うなど、育てる漁業と沿岸の環境整備に向け成果は着実に上がってきていると私自身は認識しています。
 ところが、昨年11月、当センターの調査船第二鳥取丸、平成2年建造、10トンが老朽化し、更新時期を迎えるに当たり廃止され、以後の資源調査、海洋調査についてはその都度民間の漁船を用船として借り上げ、いろいろな業務が行われています。したがって、こうした背景の中、20年度は県下8地域で調査の用途に応じて13隻の用船契約が行われ、143項目もの各種調査が計画され実施されています。県としては、調査船を県所有船から用船に切りかえて間もなく1年になるわけですが、今日までのメリット、デメリットをどのように総括され、今後の対応をどのように考えておられるのか、お伺いします。
 

●知事答弁

 

 
詳細は水産振興局長のほうからお話ししますが、調査船を県所有船から用船に切りかえて1年になるけれども、メリット、デメリットをどう総括し、今後の対応をどうするかということです。
 これもトータルコストの削減にはとりあえず役に立っています。1,400万円ほど削減効果はありました。さらに、これは別に想定していたわけではありませんが、イカ釣り漁船の油代が高くなって大変に困られたわけです。ですから、我々のほうで漁場調査をしましょうと、県としてしましょうということにしました。今、用船ということで、現実には漁船が借り上げられて出動していただくということですので、たった1そうではなくて複数の船でその漁場の調査に出かけることができた。これは非常に好評だったと思います。こうした意味で、用船であったことのメリットがありましたが、ただ、その片方でやはり従来とは違った状況になります。我々のほうの調査と言うと、海に潜って潜水調査をするということになりますが、そういう目的のために漁船がつくられているわけではありません。また、調査項目によってはデリケートな調査が漁船ではできないものもあるわけで、メリット、デメリット両方があったと思います。これを今後、総括したり、当面は今のデメリットになるようなことを克服するための対策を考えたりして、こうした対応がいいのかどうかということは、検討の俎上に今後も上げていきたいと思っています。
 

●安住水産振興局長答弁

 
 老朽化が進んだ第二鳥取丸の代船建造とアウトソーシング等の業務の効率化を比較検討して、昨年の9月に用船による調査に切りかえたところです。約1年たちますが、検証した結果、メリット、デメリットを説明します。

 まず、メリットですが、同時に複数船による調査が可能になったという形で、今年の春のイカの調査あたりがその例に当たります。それから、漁業者と研究員との情報交換が活発になったということがあります。調査活動を漁業者の方と一緒にやっているので、こういう成果があったと。それからトータルコストの削減ができたということです。 また、デメリットとして、海上業務での安全性の確保に不安がある。これは漁船を借りてやるので、船が小型なものだからいろいろ安全性の問題があるというようなことも出ています。それから調査ごとに観測機器等を載せる必要があるもので、手間暇がかかるということがデメリットです。また、そのほか調査データの精度が低下するということで、13隻の船を借りてやっているので、それぞれの技量があるので、精度は若干落ちるかと。それから漁業者の方は漁業を中心にやっておられるので、調査とのタイミングがなかなか合いにくいことも時たまあったようです。また、漁船ではできない調査という形で、超微速で網を引かなければいけないという調査もあり、こういう部分はどうしてもできませんので、今は中止しています。
 こういうデメリットに対して、今現在は昨年の11月から漁船の乗船業務安全管理マニュアル等で安全性の確保、徹底をやっています。それから業務の分担、整備ということで、第一鳥取丸にも海洋観測を担うような形を進めています。それから安全性等の問題で、海上支援職員を今年の4月から採用して、こういうものを補完しています。今後も、さらに検証しながら進めていきたいと考えています。
 

<栽培漁業センターの調査船について>bQ

 
 今日の漁業の状況は、あえて私が申し上げなくても燃油価格の高騰など大変な状況にあります。特に沖合漁業は、暫定水域の問題も絡み大変です。しかし、県内漁業者の大半は沿岸漁業で、しかも零細漁業者がほとんどで、日々の生活に大きな影響も心配もされています。

 逆に言うと、こうした時期だからこそ、過去のように、魚がとれなくても漁に出てみようかという漁業ではもう立ち行かなくなってしまった。したがって、ある程度魚の回遊状況や海洋資源の状況をしっかり把握して漁業者に提供することが県に課せられた非常に大きな役割であると私は考えています。

 そこで、先ほどありましたが、私もこの用船に乗船させていただきました。最初の予定は、海が荒れてだめになり、2回目に乗りました。このように、現在の用船方式では船を、要するに用船を係留している港まで、例えば泊から赤碕なら片道が1時間以上、それに荷物の揚げおろしに本当に時間を要することになっていますし、先ほど申し上げたように借りる船が漁業者のものですので、本当は午前中に調査をしたいのだけれども、午後しかできないとか、調査が制限される。私は、そういう状況の中で本当に満足な調査ができると到底思えないし、これまで栽培漁業センターが続けてきた調査のデータがこの1年間で狂ってしまうと思っているのです。やはり県の調査船を整備して、県の役割というものを真剣に考えるべきだと私は思いますが、知事の御所見をお伺いします。
 

●知事答弁
  
  議員は、荒天の中、出かけようと港に行って、また、実際に乗船されて見聞されたということです。かなり小さな船ですので、研究員の苦労もおわかりいただけただろうと拝察しています。 
 このことですが、栽培漁業センターの調査に支障がないように、我々としては代替のやり方でやってみようということで1年やってみました。先ほど水産振興局長からも申し上げましたが、今13隻ぐらい用船しているのですが、そうではなく、いつも乗る船ということにしておけば、機材のことだかですね、あるいは今後改造して専用船に変えていこうかということもあり得るかと思います。そうしたことで運用をまずはいろいろ試してみたいというのが率直なところです。

 ただ、議員が御指摘のように、ではそれで研究が果たせるかどうか、それから大きな欠陥があるのではないか、この辺は十分検証したいと思っています。現場のほうから、絶対にこれではだめだということではない、という報告は来ているのですが、ただ研究員もかなり四苦八苦しながら、新しい体制に適応しようとしているのも事実ですので、そこは謙虚に現場のお話も聞きながら検討したいと思います。当面は、今の運用の改善をできる限りやる、先ほど説明したような方向で試して、その上で調査船問題をどうしていくか、さらに検討してみたいと思います。

<栽培漁業センターの調査船について>bR
  
 トータルコストで議論されていますが、予算編成もそうなのですけれども、漁業、農業は今トータルコストでしてほしくないのです。本当に農業の皆さん、漁業の皆さん、大変なのです。トータルコストで議論されてしまうと、政策ができないのです。栽培漁業センターの調査船は、やはり自然を相手に、本当に日々の天候に左右される中での作業が求められていますし、やはり調査のタイミングというのは大変重要です。
 現在行われている用船調査では、複数の調査というのは別にやればいいのです、一斉に。どっちみち調査船1隻ではできませんから。それは切り離して、私は今の体制では十分な調査ができないと思っています。漁業センターの調査船というのは、農業試験場に例えるとトラクターなのです。今後もトータルコストで議論すれば、トラクターも一般農家から借りるのですか。私はやはりそういうトータルコストだけで議論してほしくない。知事に感想を求めたいと思います。

●知事答弁
  
 トータルコストだけで議論すべきではない、単にリース料だとか建造費の節約ということだけで片づけるべきではないという主張で、私もそのとおりだと思います。これは、平成18年、私が就任する前にサマーレビューという事務事業の見直しの中で決定されてきたことです。その際は、いろいろなデメリットまではちょっと想像できなかったところもあったようです。ですから、今回デメリットも報告されていますので、今後、冷静にメリット、デメリットを考えて、この調査船をどうするか、検討したいと思います。ただ、当面はまだ始まったばかりで、用船によるメリットも逆にありますので、今のところの改善をまずやってみて、それで妥当するかどうか考えてみたいと思っております。
 ゆめゆめコストだけの問題とは考えませんので、実際にできる調査ができなくなって、これが致命的だというのであれば、やはり調査船、あるいは専用船を借り上げることも選択肢には当然入ってこようかと思います。私どもとしては、現場とよく話し合って今後の方針を決めていきたいと思います。