平成21年11月定例会一般質問(平成21年12月3日)No.4

<保育環境における個人情報の管理について>

 ことしの夏、県内のある保育園の保育士が車上荒らしに遭い、担任する家庭の児童調査票や職員の連絡網などの個人情報が入ったかばんを盗まれるという事件がありました。この事件は改めて2つの課題を投げかけた事件であり、私たちも、きれいな議論ではなく、真摯にその実態に向き合わなければ再発が想定される問題であり、あえて議論させていただきます。

 まず1点目は、当該自治体の個人情報マニュアルに反して園外に持ち出したこと。当然社会的に叱責される行為であり、その責任は問われると思いますが、個人情報に対する当該自治体の認識とセキュリティーがどうであったのか、です。2点目は、あえてリスクを冒してでも個人情報に関する書類を持ち帰り、仕事をしなければならない保育現場における保育士の労働環境の実態です。

 そこで質問に入りますが、1点目の個人情報の取り扱いについては、児童福祉法を初め保育所保育指針でも明記され、保育に携わる者として最低限守らなければならない義務でもあります。もちろん一義的には、それぞれの主体がこの事例を契機におのおのしっかりした対応を進めるべきものです。しかし、私はこのような事例が発生した場合、県として、市町村、幼稚園及び保育所等必要な機関に的確な助言をすべきだと思うのですが、この事例後、県はどう対応されたのでしょうか、知事にお伺いします。

 2点目の保育士の労働環境についてですが、日々園児の保育、園児の家庭との連絡ノートの記入、片づけ、清掃、週・日事案の点検記入、月案の作成等に追われ、昼休憩もまともにとれない保育士に、現実問題として勤務時間中に10数人の園児の一人一人を考察しながら児童家庭票を書く時間が保障されていると思われるのか、保育士の労働環境について知事の素直な所感をお尋ねします。

 

●知事答弁
 
 今やっている状況等について福祉保健部長からお答えしたいと思いますが、県としてもこれを最初に認知したのは7月23日だったと思いますが、新聞報道があって初めて認知した状況です。その後、市当局のほうにもいろいろと事情を聞いたりというような接触をしています。個人情報という非常に微妙な情報が保育現場にはどうしてもあります。それに対する対策が今後何らかは必要であるというのはおっしゃるとおりだと思います。ぜひ現場の状況も調べながら、今後対策をとっていきたいと思っています。

 私の素直な考えを問うということですので、素直に申し上げさせてもらうと、これは現状がそのままでいいとは私も正直思いません、素直に申し上げれば。特に憂慮しているのは、もともと保育については国が負担していたわけです。その国庫が出てきていたことで一定の縛りがあったのでしょうが、これが三位一体改革などで、地方分権という錦の御旗のもとに一般財源化されました。これは保育現場を自由に動かせるようになったというメリットはあったかもしれませんが、逆にそちらについていろいろな影響が出てしまったのかなと憂慮しているところもあります。率直に申し上げれば、一般財源化以降、現場のほうの勤務環境は徐々に変わり始めてしまったのではないかと思います。

 今、私立でいえば正規の保育士の方は6割ほどおられますが、公立のほうは半分以下に落ちてきています。これは非常に不思議な現象だと言わざるを得ないと思われるところもあります。ただ、市町村の言い分をいろいろと代弁させてもらえば、市町村もなかなか財政状況が厳しいとか、機動的に保育サービスを提供するためだとか、時間外保育だとか新しい保育サービスを考えれば、そうした対応もやむを得ない、理解してほしいというのは当然あると思います。ただ、これからいろいろな社会の財政資源を振り向けていくという考えをするのであれば、国全体としてこの問題については適切な配慮も必要ではないかと思います。

 そもそも保育士の配置基準というのが、国庫が入っていた時代からあるわけですが、実情から考えると相当厳しいものがもともと組み込まれていて、いまだにそれが直らない。それが直ってきて交付税を入れようというのなら理屈は通るかと思うのですが、ただ全体として、そうした子どもに対する支出のあり方、歳出構造のあり方というのは国として見直さなければならないのではないかと思います。市町村という現場にすべて押しつけて、うちは一応制度だけつくったから、形だけつくったから後は自分たちで好きなようにやればというのでは現場は回りませんので、財政の支弁というか、保障も含めて国全体で本当は議論をしていただくテーマではないかと思います。

 その辺が、今御指摘がありましたが、保育士さんは保育基準の最低基準があり、保育の指針がそれに基づいて定められているわけですが、それによれば、例えば連絡ノートを毎日つけなくてはいけないとか、今おっしゃった児童票と言われるような、子ども達の措置状況というか、保育の状況について記録を、いわばカルテのようなものをつくるとか、いろいろな事務に忙殺されている実態があるだろうと思います。これはぜひ国として考えていただきたいテーマではないかと思っています。

●福祉保健部長答弁
  
 担当部署としては、7月23日付の新聞報道で事案を知ったところです。早速該当市に対して事実関係及び対応方針を聞き取りしました。そこで個人情報の管理等について、今後厳格な対応を行うことを確認しています。この事件でその市町村に特段の対応はしていませんが、原則的には個人情報の保護については、保育所のみでなく管理者が考えていただくこととは思いますが、いろいろな研修があるので、その機会をつかまえて、幼稚園とか保育所等へ注意喚起を促していきたいと思っています。
<保育環境における個人情報の管理について>No.2
 私は保育現場における個人情報の保護及びセキュリティーについての認識、その対策の整備は随分おくれていると思っています。幼稚園にしても保育園にしても私立が多数あり、どうしても個人情報の取り扱いに関する情報が公立に比べて不足しているように私は思っています。

 なお、県の教育委員会では、過去いろいろな問題がありましたが、個人情報紛失事件等の経過から、丁寧な個人情報の取り扱いとか管理のあり方などを学校現場に流しておられます。県でもこうした反省に立って、例えばUSBメモリーの取り扱いについても取り扱い要領を定めておられますが、そういう取り扱い要領を定めて、全庁的に適正な取り扱いを実践することをしておられますが、このような情報を、保育所は市町村の仕事だということで片づけずに、ぜひ県とか教育委員会で取り組んでいる情報を現場にも流していくということは大切ではないかと思いますが、知事の御所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
 これはそのとおりだと思います。保育士さんは、専門は子ども達の成長を支えることであり、保育に欠ける児童を守ることですので、個人情報というのは新しい行政領域の話です。ですから、そういう意味で積極的に我々も情報提供をしていかなければならないと、議員のおっしゃるとおりだと思います。近々、12月15日に保育指針についての研修会を全県的に予定していますので、こういう場などを皮切りにして、個人情報の保護について今後も現場のほうに伝えていきたいと考えているところです。
<保育環境における個人情報の管理について>No.3
 保育園では事故防止のため子どもから目が離せず、本当に大変で、保育士の皆さんは厳しい日々を送っておられます。そうした中で家庭への持ち帰り残業、これは本当にごくごく当たり前の状況になっていると私は思っています。このような状況から見ると、先ほど知事も思いの中でお話しになりましたが、保育士の人員配置が本当に実務の業務量に適して配置されているのかと、私はとても疑問に思っています。知事は本県を子育て王国にすると標榜されています。しかし、保育現場の充実なくして子育て王国などはあり得ないと思っています。

 県としても本当に良好な保育環境整備のため、1歳児の保育士配置に関しては独自の加配制度をつくっていただいており、本当に現場の皆さんは感謝しておられます。しかし、今現場ではまだまだ障害児保育などたくさん大きな課題が取り巻いています。子どもが主役となって保育が行われる、やはりそういう現場をつくることがまさに子育て王国ということになろうかと私は思っています。知事の所感と今後の取り組みについてお考えがあればお伺いします。

 消費生活相談センターですけれども、中部の場合、消費生活相談センターは未来中心の奥まった一角にあるのですけれど、行ってみますと、来客者があっても電話の対応等声が丸聞こえということや、専用の相談室もなく、横手にある部屋を借りるという形です。相談に来られた方のプライバシーの保護に配慮されることを、もう少し考えていただいたらということを要望しておきたいと思います。

●知事答弁

 
 現在問題はあるだろうと思っています。例えば国の保育士の配置基準だと、3歳児は20対1になっています。県内の実情は10対1です。それから4歳児は30対1ですが、県内は12対1です。そういうように、市町村だとか現場のサイドで子どもさんに配慮して、国の基準よりもかなり加配をしてきている状況にあります。保育上の運営は、これは市町村マターで県のマターではないので、市町村が一生懸命御自身で取り組むべき分野ですが、やはり国の基準のほうが現実離れしているのではないかと思っています。このことは繰り返しこれまでも政府側に申し上げてきたところで、政権は交代しましたが、このことも重ねて新政権にお願いというか、政策提言をしていかなければならない事項だと思っています。

 なお、県としては、伊藤保議員のかつての御質問もあって、1歳児については加配を独自にさせていただいています。これは乳児と2歳児とのはざまのところが制度上あるので、特別の措置をさせていただいていますが、国がやらないから県が加配分全部10人分だとか18人分持てというと、それは制度設計上も市町村の自治の部分になっていますし、なかなか難しいところだと思いますので、何かそういうテーマがあれば、県としても市町村の応援をすることは可能かと考えています。

 今、子育て王国の樹立といいますか、確立に向けてプランを練っているところです。ぜひ多くの県民の皆様にも御意見をいただいて、子育て環境の整った鳥取県を目指していきたいと思います。