平成22年12月定例会一般質問(平成22年12月8日)No.2

<教員の人事交流について>
 
 教師を目指す若い人にとっての厳しい採用試験の現実については、9月県議会で議論をしたところですが、教師という仕事に人生をかけたいと思う優秀な人材をいかに確保するかが今日の教育委員会に課せられた重要な責務の一つでもあると思います。平井知事も人づくりが鳥取県にとっては大きな財産であるとして、人材育成をマニフェストとして掲げられております。しかし、理屈はわかっていても、限られた定数しか教職員を採用できない現状の中ではなかなか思いどおりにいかないのも、また現実です。
 9月県議会で申し上げましたが、鳥取県における教職員の採用予定者は952名の受験者に対して90名がA登載となり、来年度から教師として学校現場で歩まれることになっています。現実的には県内での採用枠は厳しいため、県外で教師を目指す人が多くなっているのも事実です。
 鳥取県のように極めて厳しい教員採用枠がある一方で、大都市では大量退職等に伴う教員不足が生じていることから、秋田県、大分県、高知県では、東京都と協調特別選考制度を結び、東京都枠で5人から10人前後の採用が行われています。この制度は若いときに大都市で教師を勤め、将来ふるさとに帰りたいという意思があれば、それぞれの県教育委員会同士が定めるルールの中で帰郷して引き続き教師として勤められる制度であると聞いていますが、この制度を横濱教育長はどのように評価しておられるのか、所見をお伺いします。
●横濱教育長答弁

 議員がお話された協調特別選考とは、東京都教育委員会が教員採用試験を実施するに当たり、連携する県の教育委員会と協定を結び、その県が実施する第一次選考を東京都教育委員会が実施する第一次選考とみなして行う選考のことで、現在、秋田県、高知県、大分県教育委員会で行われています。
 この制度では、例えば秋田県の採用試験を受験するAさんがこの選考を希望した場合、秋田県と東京都がAさんの1次試験のデータを共有し、秋田県と東京都の双方がそれぞれの基準でAさんの選考をしていくというもので、受験者のAさんにとっては一度の受験で秋田県と東京都の2つを同時に受験したことになるというものです。東京都にとっては、大量退職で採用が大幅にふえるときに優秀な教員を確保したいという思いがあるでしょうし、秋田県などの県にとっては、採用試験が高倍率で、人材が県外に流出している状況があることから、人事交流が可能なこの協調選考制度を行うことになったというふうに考えております。
 この制度を導入されている県に聞いたところ、いずれの県も今年度からの実施で、現時点での評価は難しいということですが、それぞれに期待や課題があるようです。
 例えば秋田県では、東京都で経験を積んで力をつけて帰ってくる可能性があり、他県へ流出するよりはよい。高知県では受験者にとって受験機会の拡大となり、採用のチャンスが広がるということをおっしゃっています。また課題として、秋田県では本年度採用とならなかったが、来年度採用となる可能性の高い者が東京都で採用された場合、県からの流出になってしまう。また、高知県では講師の不足につながるというようなことをおっしゃっているようです。この取り組みは、都道府県の枠を超えて複数の教育委員会が協力しながら優秀な教員を確保しようという、これまでにない新しい考え方の取り組みです。
 今後この選考方法が連携している都県の双方にとってそれぞれの課題の解決につながって非常に有効な方法となればいいと思っていますが、現時点では取り組みが始まったばかりですので、私としては今評価をすることは難しいなと思っています。
<教員の人事交流について>2

 
 我が県の教員採用のこれまでの状況を見ると、将来、年齢構成が非常にいびつになることも心配しています。それを是正する意味と、先ほどあったように、県外でいろいろな力をつけるとか経験を積み県内の教育現場に新たな息吹を取り込めるという観点から、私自身は鳥取県においてもこの制度の導入を検討すべきじゃないかと思います。そうすれば、教師を志す県内の優秀な人材を埋没させることなく、少しでも活用ができると思いますが、教育長の所見をお伺いします。

●横濱教育長答弁

 
 現在、本県の教員の平均年齢は小学校で45.7歳、中学校で43.6歳、高等学校で42.1歳、特別支援学校で42.4歳となっていますが、小学校では特に50歳前後の教員が多い状況になっています。小学校教員は今年度末では33人が退職予定ですが、平成24年度末から定年退職者がふえ始め、平成25年度には70人程度、26年度には80人程度、27年度には100人程度、28年度、29年度には110人程度の退職が見込まれています。この数がそのまま採用数になるとは思いませんが、近い将来の大量退職の時期を迎えることから、優秀な人材を多く採用するために今から必要な対策をとることが大事だと思います。

 議員は協調選考制度を検討すべきではないかということですが、協調選考によって東京都に採用された教員を、一定期間後に本県で採用するなどの人事交流を行う場合には、例えば現在本県で講師をしながら採用試験を目指している方々とか、他県で教員をしていて本県に帰りたい、本県で採用を目指したいという方々にとっては、採用枠が減ってくるという心配もあります。また、県内での講師も定数管理上必要ですので、この制度を導入して、本県で不合格となって東京都で採用された場合、それはそれでとても喜ばしいことではありますが、本県にとっては高知県と同じように講師が不足するという悩みも出てくるわけです。
 このようなことから、この制度は優秀な人材を確保するという面では一つの有効な制度であると思いますが、一方で不安もあります。私は鳥取県に愛着を持ち、鳥取県の子ども達のために本気で教育に立ち向かう人を積極的に採用をしていくことが大切だと考えています。
 今年度の採用試験ではB登載者を昨年度の2名から20名に増加させました。これも非常に戦略性を持った取り組みだと思っています。今後、採用者が大幅に増加していく時期を踏まえて、B登載のあり方、これは人材確保とか雇用確保という面もありますが、B登載のあり方、あるいは県外との人事交流のあり方、あるいは県外で教員をしている本県出身者の採用のあり方、またバランスのとれた年齢構成という点で検討して、議員御指摘の提案も踏まえながら、人材確保のための特色ある方策を打ち出していきたいと考えています。

<教員の人事交流について>3
 
 県も、本当に講師で今学校現場が成り立っているのです。ですから、講師が減ることは実際教育委員会はつらいのです。本当は正規の教員で学校現場を回すというのが原則なのです。けれども、現実的には現場の1割から1割5分ぐらいは講師の皆さんで支えられているという中で、逆に言うと、県外のほうに受験されてしまうと県内の講師が減ってしまうという危機感が私はあると思うのです。しかし、やはりそこのところは本当に教育現場のことを考えて、もう一度どうすべきかということを、私は今真剣に考える時期に来ていると思います。まさに講師なんて官製ワーキングプアなのです。これに支えられて今学校教育現場があること自体、私はおかしいと思うのです。それで子ども達をしっかり育てる、そんなことできません。みずからの生活が不安な状況の中で、本当に子ども達を一人一人育てることができるのか、教育に携わることができるのか、本当にそれは疑問に感じます。しっかりとその辺を教育委員会としても考えながら、優秀な人材が他県で経験を積んで帰ってこれる、そんなシステムを検討していただきたいということを、これは要望ですが、お願いしたいと思います。