平成22年9月定例会一般質問(平成22年9月29日)No.1
<若者施策の充実について> |
我が鳥取県も、平成20年に県の人口は60万人を割り、今年の8月1日現在で58万7,981人と、具体的な歯止め効果のない人口減少傾向に大きな危機感を抱いている一人です。 地方の若者の多くが仕事を求め、学問を求め、趣味を求め、それぞれの人生と夢を追い求めて、都市部へ出ていった結果ではないでしょうか。確かに大都市は人が集まり、情報が集まり、若者にとっては魅力的な場所であることに間違いないと思いますが、地方は、それをただ傍観するだけでよいのでしょうか。 ある会合での出来事ですが、鳥取県の若者対策って何がありますか、具体的な例を教えてくださいという若者の問いに、一瞬戸惑いながら、改めて県政における若者対策などの施策を調べてみました。 その結果ですが、子育て応援対策とか就労支援対策など、生活実態に伴うところの施策は、どこの自治体とも共有した課題で、その内容は鳥取県でも他県に劣るとは思いません。問題は、若者の課題を中心的に把握し、その施策を具体的に推進する部署が明確でないこと、将来を展望した取り組み施策が見当たらないことです。 私自身、行政における若者対策といえば、社会参加と自立のための施策が最重要施策の一つで、確かに重要施策であることは否定するものでなく、より充実すべき課題だと認識はしているものの、社会が大きく変化する中、果たしてそれだけで十分なのかと改めて考えさせられました。 知事に、改めて今日における若者像をどのように認識されておられるのか、さらに将来展望を含め、若者対策を県行政の中でどう位置づけ取り組まれるのかお伺いします。 |
●知事答弁 |
冒頭、片山総務大臣の就任についてのお話がありましたが、今改革を進めようと地方分権の推進について意欲を燃やされています。私も議員と同じだと思いますが、ぜひ地方の現場での経験を生かして、大なたを振るっていただきたいと思います。 例えば地方債についての許可制度の見直しです。これも従来からの総務大臣の持論でしたが、そうした地方の自由度が増す改革をぜひ進めていただきたいと思います。ただ、その片方で交付税など、地方の特に財政力の弱い団体の実情に配慮した改革の進め方をしていただく必要があると思います。 一刀両断にやった勢いで、結局、角を矯めて牛を殺してしまっては何の意味もないということになるので、その辺もぜひ注意していただきながら、配慮の行き届いた改革をお願いしたいと思っています。 鳥取県の若者は、特に高等教育の段階などで、県外へ出る子どもさんが多いというのは全くの事実です。残念なのは、その後、都会地を離れて、もう一度鳥取に帰ってくるということが必ずしも行われないわけで、その意味で解決しなければならない課題はいろいろと多いと思います。 鳥取県の子ども達の意識もそうですし、全国的な青年の意識もそうだろうかと思いますが、青少年の白書などを見ると、実は驚くほどに日本の若者の自立意識は高いということです。韓国とかアメリカとか欧米の国々と比較して、アンケート調査では親から経済的に自立すべきだと考えている子どもは、その中では群を抜いて高いわけです。そして、その際に、ではどういう趣味とか興味を持っているかということですが、どちらかというと文化、芸術、スポーツ、そうした趣味の領域に対する興味が深いということです。 よく言われるのは、草食系が増えたという話があります。それは結婚のこともそうかもしれませんが、全体として闘争心を燃やすというよりも、自分の身の回りのことに注意を払う、興味を持つという子どもが増えているように思います。その意味で、鳥取県の魅力を、もう一度若者に魅力あるところに再生していくにはどうしたらいいのかという手がかりが、そうした若者意識の中にもあると考えています。 一つは、議員のほうでは当然やる施策だと言われましたが、ニーズが高いのは働く場が欲しいというニーズですし、それから子育て環境を整えてほしいと、これは若い世代にとって痛切な課題であると思います。これらはぜひとも推進していく必要があると思っています。 就労の場については、度重ねてこの場でも議論がありましたが、新経済成長戦略をもとにして、我々としては新しい産業創造に向かいたいと思いますし、雇用の場を確保するために、本議会にも緊急雇用対策を提出させていただきました。 それから、子育ての関係では、子育て王国鳥取を宣言させていただきました。1,300人の方にお集まりいただく、かなり大がかりなイベントになりましたが、熱気の高まる中で、子育て王国鳥取の宣言をさせていただきました。これから鳥取でも子育て応援隊の皆さんの支援を受けて進んでいくことになるだろうと思います。 ただ、こうした領域以外の魅力をどう考えるかです。一つは、今若者の間でもスポーツだとか文化、芸術に対するトレンドが非常に高いということです。その意味で、ジオパークの指定が目の前にようやく見え始めた状況かもしれません。今正念場を迎えつつあるところですが、そういう雄大な自然というものが我々にとっての大きな呼び水になるかもしれない。例えば鳥取市内の青谷町で「デルマー」という喫茶店というか、ショップができています。これはサーファー向けのショップですが、この御家族は関西からやってこられたわけです。実は、こうした動きがここ一件にとどまらず顕著に出てきています。そういうように雄大な海を活用して、自分の人生を謳歌したいという人たちが出ておられます。 また、岩美町のほうでも同じような動きがあり、田後で山崎さん、松原さんという、これも若い世代ですが、ダイバーのショップ「ブルーライン田後」を開き活動を始められています。松原さんは奈良県から完全なIターンでやってきました。こういうことを考えると、雄大な自然という壮大なキャンバスがあるわけで、そこに若者の皆さんが自由に思い思いに自分らしい人生の絵をかいていただくというチャンスがあるのではないかと思います。 これは演劇活動を通じた鳥の劇場だとか、また、アーティスト・イン・レジデンスというような運動、湯梨浜町などでも起こってきています。そうした動きに、ここ2〜3年、ようやく見え始めてきたものがあるかなと思っています。 それから、そうやって思いきり体を動かす以外のクリエーティブな活動として、まんが王国とっとりは新しい素材を提供し得るものだと思います。全国的に見ても漫画の教育というのは定員を充足するような状況で、こうしたところに収入が果たして多いかどうかはともかく、若者たちが自分の想像力をかき立てるものを感じるのは、これはまた疑いのない事実だと思います。ですから、そうしたコンテンツ産業のような働く場、活躍の場というものを鳥取県自体で、これから国際マンガサミットの誘致に成功したので、向かっていくのも一つの道かなと思います。 さらにボランティア活動とかまちづくりの活動、こういうところにも若者を吸収してくるものがあろうかと思います。先般は、東京のほうに国体関係で出張した際に、あわせて同時に開催されていた、中部の皆さんが合同で品川区の商店街で物産展を展開する事業に立ち会わせていただきました。そこのキーマンとなっているのは、これもUターンで帰ってきた麻田さんという若い男性ですが、本当に優秀な男性ですが、みずからの人生をもう一度ふるさとにかけてみたい、それもまちづくりにかけてみたいと来られたわけです。こういうような、まちづくりとかボランティア活動、そうしたさまざまな従来見逃しがちだったジャンルで若者対策を考えていく手もあるのかな。さらに草食系と言われるような風潮にもあわせて、今議会でもたびたび議論がある婚活活動、こうしたことも一つのテーマかと思っています。 県庁としても、行政施策をもう一度見直す必要があると思います。本来、青少年文教課という課があり、伝統的に青少年対策を行っていますが、最近、鳥取環境大学で忙しくてなかなかです。青少年対策の時間をゆっくりとって、もう一度体系を練り直す必要があると思っています。 若者の意識も機会をとって、ぜひ改めて調査するなどして、本当に望まれる若者対策を県政としても向き合いたいと思います。 |
<若者施策の充実について>2 |
県としても、人口減少対策の一つとして移住対策、つまりIターン、Jターン、Uターンの頭文字をもじっての対策が進められているわけですが、鳥取県に住んでいただく魅力は一体何であるのか、改めて考えてみることが必要ではないでしょうか。 自然が豊かだからでしょうか、おいしいものがたくさんあるからでしょうか、鳥取県には素朴な人が多いからでしょうか。確かにそのようなことで移住される方もあるでしょうが、それだけでは全国各地との差別化は難しいのではないでしょうか。改めて鳥取県で生活することの積極的な魅力づくりを考えてみる必要があると思いますが、知事の所見をお伺いします。 私は、その一つの柱として、若者をターゲットにした取り組みや施策の推進が重要な要素の一つになると思うわけですが、知事の所見をお伺いしたいと思います。 |
●知事答弁 |
今、確かに我々のところでもいろいろとやってきまた。私たちは平成19年からこの任期をともにしていますが、その任期に入ってすぐ移住対策に本格的に取り組み始めました。それまでは、移住対策は市町村なり、どこかでやってくれということでしたが、県としても一つの中心課題だと方向転換したわけです。その関心が高まっているというのは最近感じるところで、平成20年度はホームページのアクセス数、これは19年末に開設したのですが、平成20年度は1万7,000件でした。それが昨年度は3万4,000件、倍増したわけです。その背景をいろいろ考えてみると、やはりそのようなところに若い人たちの関心が集まってきている。都会地での生活がテレビドラマなどでも喧伝されて、いかにもトレンディーですばらしい生活のように見えますが、ただ実際は同じ時間を使って、同じお金を使うのであれば、こうした地方部で、鳥取のような自然豊かなところで、人々に囲まれて、きずなも豊かなところで暮らしてみたい、そうした思いは若い人たちにもあるという思いを持っています。 現実にもいろんなタイプの移住者が出てきています。例えば大山の山ろくで、「小さじいち」というパン屋さんをやっている西村さんという御夫妻がいらっしゃいますが、もともとは兵庫県で暮らしておられました。しかし、こちらのほうにやってきて、そうした有機栽培などの野菜を使ったり、天然酵母を活用したりとか、自分らしいパンづくりに精を出すというようなことが始まっているわけです。 あるいは、最近、鳥取県でもいろんなイベントをやっていますが、中華コスプレの全国大会など、中部で元気にやられています。これもそうしたことの吸引力があるな、と思うのは、北海道の方で工藤さんという女性ですが、今、倉吉などのまちづくりに積極的に出てこられています。こちらのほうに移住されて、中部12万活性化チームの一員になって働いておられるということです。 こういうように、若者の自分を生かす場所がそこにあるという手ごたえを感じられれば、それは鳥取県内でも生活してみようというところにつながってくるのだなと感じているところです。 そのためにも、そうした活動の場としての職業だとか、あるいは実際に結婚生活を営んで、子育てに入ってくる時期ですので、そうした時期のサポートは全国ではナンバーワンですよと言えるものをつくっていくとか、そうした具体的な施策が、私は心に響いていくのではないかと思っています。 わかりやすく言えば、今鳥取県を説明するなら、「ゲゲゲの女房」の水木さんのふるさとですよと言えば大抵の人が、ああ、そうですかとうなずいてくれます。こういうように、今認知度が高まってきていますので、新しいクリエーティブなまんが王国なども絡めて、私は情報発信をしていけば、若者たちの心にも届くのではないかと思います。 ただ、もちろん一定程度の整備は必要な部分があると思います。例えば交通ネットワーク、すぐに思い立てば神戸、大阪にも出ていけますよというのは魅力を補完することになると思いますし、それから若者たちが思い切り体を動かし、自分をぶつけていくアートの場だとか。そうした意味では、鳥取は素材も豊かなところですし、スペースもありますので、その辺の展開の余地は十分にあるだろうと考えています。 |
<若者施策の充実について>3 |
私は若い人と意見交換する中で、随分私たちとは考え方が違うということを痛感させられています。私たちは、どちらかというと古いタイプでしょうけれども、安定した就労があって、それから趣味という感覚ですが、先ほど知事も具体例を言われましたが、今の若者と言われる世代は、まず自分が何をしたいのか、そのしたいことを優先して、それから就労を考えていくというような違いというか、それに私も驚いています。したがって、他県にはない、鳥取県にしかない魅力的なものを大胆に発信しなければ、若者は鳥取県を振り向いてくれないと思います。 それには、メジャーなものでなくマイナーなもののほうが、逆に言うと、よりその魅力をコンパクトに発信できる、そして全国各地からしっかりと愛好者を招くことができると思っています。 その一つの選択肢ですが、スケートボードやBMX、インラインスケート等の新しいスポーツの練習場や競技ができるアクティブスポーツの施設整備を進め、県外から若者の誘致や定着を進めたらどうかと思っています。鳥取県にはスペースがそれなりにありますので。 それと、これらの新しいスポーツは、世界的にもX−GAMESなどで知名度も高く、特に若者に人気があり、その愛好者も近年増加中です。海外はもちろん日本国内にもプロの選手が存在し、プロ、アマ問わず、その愛好者は日本国内でも数百万人とも言われています。新たなるスポーツ分野として注目されていますが、しかし、こうした全国的に新しいスポーツのためのスケートパークと言われる安全・安心な練習、活動場所は極めて乏しい状況にあると言われています。 地方に住む若者が、地域においてみずからの向上、目的のために充実した時間を過ごすことができる若者の居場所づくりのために、さらには県外から若者の流れをつくるための施策の一つとして検討されたらどうかと思いますが、知事の所見をお伺いします。 |
●知事答弁 |
この分野ですが、県内でも実は逐次整備をされてきています。例えば八東川のところの水辺プラザとか、鳥取駅の南側のほうに市民病院の跡地がありますが、そこにやはりスケートパークができています。さらに西の方だと、弓ケ浜の公園のところに弓ヶ浜スケートパークという、やはりスケートボードとか楽しめるスペースがあります。こういうように、逐次市町村のほうで整備を図ってきて、地区内の若者対策を進めてこられたところです。 御指摘のような需要は確かにあると思われたのは、私自身が打吹まつりのときにお伺いしたら、そこで若い人たちがバンクという台を持ち込んで、天神川の河川敷で、そこのスペースをスケートパークにして、子ども含めてみんなで練習している姿に遭いました。そして、そこに引っ張り込まれて話もお伺いしましたが、こういうような場所がなかなかなくて困っているというようなお話も聞きました。実は、それよりも数週間前だったと思いますが、自民党の石破政調会長のほうからも、そういう話が中部のほうであって、若者から声が上がっているという話も聞いていたので、ああ、こういうことかと得心がいったことがありました。 これは、これまで鳥取市だとか米子市だとか、市町村が主として整備を進めてきた分野ですので、地元の市町村とも話をしながら、若者対策としてどういう施設整備が可能であるか、必要であるか、よく協議をしてみたいと思います。もちろん県として一定の役割を果たせる分野があれば、我々としても検討してみたいと思います。 |
<若者施策の充実について>4 |
東部、西部は一部整備されていますが、十分な施設ではありません。特に中部地区にはそうした施設もなくて、若者の居場所がないというのが現状です。そんなにスペースが必要なものではありません。出雲で30m、40mぐらいです。未来中心の敷地に併設するとか、ハワイ臨海公園の一部を活用して設置するとか、そういうことができるのではないかと思います。 中でも、県内の海岸には多くのサーファーが県外からやってまいります。せっかく鳥取に来たのだからサーフィンができないときに、やはりスケートパークのようなものがあれば、さらに県外から若者を呼び込めると思われます。若者居場所づくりとして、県としてもやはり積極的にかかわるべきだと思いますけれども、知事の所見をお伺いしたいと思います。 |
●知事答弁 |
今の話だと30m、40mと言うと1,200平米ですが、議員のほうから2つお話がありましたが、1つの倉吉未来中心については、あの周りのスペースは倉吉市のほうが、ラグビー場だとかいろいろと持っている部分で、これは市の方でどういうお考えになるか、きょうの議場での御意見を伝えさせていただき、相談していきたいと思います。 東郷湖羽合臨海公園ですが、実は今でもスケート場がございます。余り利用があるわけではないと思われますが、南谷地区のほうに1周150m位のスケートリンクがありまして、ちょうど横に細長い部分があります。よく地元の人が散歩されたり、風光明媚なところですから、そういう使い方が多いところですが、その中に、もう20年ほど昔のことになりますが、インラインスケートを念頭に置いてつくった施設があります。これがさっきの出雲ドームの敷地の倍は確実にあると思います。それだけのスペースと、あと今の既存の施設がありますので、そこの利用者をもっと増やしていくというような観点で手を入れていくということは検討に値するかと思います。 ただ、いずれにせよ、つくってもらいたいと思っている若者たちの思いがまず第一だと思いますので、そんなに大きな事業費がかかるような話ではないと思いますが、つくってもらいたいと思っている人たちの御意見をよく聞かせていただいて、地元の市町村、ほかの地域でも市町村がまず主導権を持ってやっておられますので、そうしたところと協議をした上で、今後の進め方を考えてみたいと思います。 |