平成22年9月定例会一般質問(平成22年9月29日)No.2
<鳥取県教員採用試験について> |
23年度の鳥取県教員採用試験については、1次試験が7月17、18日に、2次試験が9月6日から10日までの間行われ、受験者の皆さんは10月22日の合格発表を待つだけです。 今年度の県内の小・中・高、特別支援学校、養護教諭に952名の受験生が教職を目指して挑戦しました。鳥取県の教員採用試験の合格率は、全国でも狭き門としてトップクラスにあり、県内出身者で教員希望者の多くが県内での受験をあきらめ、県外での受験が多いようですが、それでも中学校で23.5倍、高等学校で19.6倍、養護教諭の12.3倍と大変厳しいものとなっています。 大分県で起きた教員の不正採用事件から、文部科学省の指導のもと、全国一斉に採用試験の透明性が図られてきましたが、鳥取県の場合、より早く取り組まれてきた経過もあり、厳正な採用試験になっていることは言をまたないところです。 このたびの議会においては、現場における教職員の実態、受験の実態について、何点か教育長にお伺いしたいと思います。 本県の学校を運営するために教職に携わっている教員の総数ですが、小学校で正式採用教員の2,207名に加えて、定数内講師が158名、非常勤講師が184名、中学校では正式採用教員の1,200名に加えて、定数内講師が118名、非常勤講師が75名、高等学校では正式採用教員の1,110人に加えて、定数内講師が72名、非常勤講師が229名、特別支援学校で正式採用教員が467名に加えて、定数内講師が88名、非常勤講師が8名と、いずれにしても15%以上の講師がいなくては学校の運営ができないという現実に対して私は不安と違和感を覚えますが、講師に学校経営の相当部分を依存している現状を教育長としてはどのようにお考えか、その所見をお伺いしたいと思います。 次に、教員採用試験の要項の中に、特別選考、免除事項として身体に障害のある者を対象とした選考、スポーツ・芸術の分野に秀でた者を対象とした選考、第1次選考試験免除と大きく分けて3つの特別選考、免除事項枠がありますが、中でも県議会の議論の中で新たに設置されたスポーツ・芸術の分野に秀でた者を対象とした選考についてお尋ねします。 スポーツ・芸術の分野に秀でた者を対象とした選考では、どのような実績が該当し、どのような配慮がされるのか、その特別選考による合格者の実績についてお聞かせください。また、この制度が発足後に新たに就任された教育長として、この特別選考についての所見をお聞かせください。 |
●横濱教育長答弁 |
学校には正式に採用された教員とは別に定数内講師と非常勤講師がおります。そして、定数内講師と非常勤講師はそれぞれ配置の趣旨が異なっています。定数内講師というのは、本来、正式採用教員を配置すべきところだが、今後の児童生徒数の減少によって、学校統合とか学級の増減等があるで、それに対応するもので、定数管理を行っていく上でどうしても必要なものです。また、非常勤講師というのは、定数配置だけでは十分に対応できない教科があるので、そうした教科の時間数等に対応して配置しているもので、これは本来の教員定数とは別に配置しているものです。 議員御指摘の15%以上という講師の割合ですが、これは定数内講師と非常勤講師を合わせた数値で、教員定数に占める定数内講師の割合ということでいえば約8%です。教員定数に占める定数内講師の割合についての全国的な状況を見ると、おおむね4%から11%ですので、本県が他の都道府県に比べて特に高いという状況ではないと思っています。 教育委員会としても、正式採用教員を配置して、定数内講師を減らすように努力をしてきています。今後とも定数管理を適切に行いながら、できる限り正式採用教員を配置できるように努めていきたいと考えています。 2点目、本県の教員採用試験におけるスポーツ・芸術の分野に秀でた者を対象とした選考というのは、平成20年度実施の採用試験から行っており、本年度で3年目となります。この選考の対象となる実績としては、スポーツ分野ですと、高等学校卒業後にスポーツの分野で国際的な大会に日本代表として出場した者、または全国的な大会でベスト4以上に入賞した者、芸術の分野においては、国際的または全国的なコンクール、展覧会等で優秀な成績をおさめた者と決めています。志願者に対しては、実績に応じて得点を加点するという方法によって採用試験の得点に反映させています。 このスポーツ・芸術の分野に秀でた者を対象とした選考での合格実績ですが、1次試験の段階において合格した者はありますが、2次試験を経て最終的に採用になった者はまだ出ていません。具体的には、平成21年度に実施した試験では、30人が志願して、1次合格者はゼロでした。22年度、昨年ですけれども、これは21人が志願して2人が1次合格しました。この夏に行った試験では、17人が志願して4人が合格しました。1次試験を突破する受験者が年々増えていますので、2次試験まで行って受かる人も今後は出てくるのではないかと思っていますが、この選考のねらいは、スポーツ・芸術の分野に秀でた人を対象とする選考を実施することで、さまざまな経験とか専門性とか、それから個性豊かな人間性とか、そういうものを学校教育に取り入れることによって、学校が活性化する、あるいは教育内容が充実していくというところにあると思っています。 本県の教員採用試験においては、筆記と技能と面接の試験を行って、教員のバランスのとれた人物を採用しようとしていますので、このような選考の枠の中で、引き続きスポーツ分野にすぐれた人を取りたいと考えているところです。 |
<鳥取県教員採用試験について>2 |
子ども達が持っている原石を、磨きをかけ、宝石として輝かせる技能士、つまりマイスターを発掘しようというものであったと思いますが、今の制度ではなかなか見つからないと思っています。今の県の制度では、オリンピックで優勝した者でも、合格することは極めて厳しい制度であると言わざるを得ないと思っています。 スポーツの分野に秀でた者を対象とした選考を実施する県は、全国でも22府県ありますが、実績に応じて加算というあいまいでわかりにくい配慮の内容は鳥取県だけです。教育長として、現行制度で教育委員会が心から望まれる人材が確保できると自信を持っておられるのか、所見をお伺いしたいと思います。 確かに、大手企業のない鳥取県においては得点が多い成年団体競技での入賞が望めない中、国体での上位成績を残すことは望めないものの、マイナーな競技を初め、個人競技の部門では優秀な成績を残していると思っています。人口最小県の鳥取県ではありますが、人口に対する入賞者数の数は指導者の指導力、不断の努力に敬意を表するところです。特に中学、高校の競技成績は指導者の手腕によるところが多く、県内の子ども達に夢を与え、現実のものとして実績を残すためには、指導者という人材を確保することに尽きると思いますが、教育長として指導者確保に向けての考えを改めてお聞かせください。 |
●横濱教育長答弁 |
議員御指摘のとおり、スポーツの分野に秀でた者を対象とした選考を行っている道府県は全国で22あります。免除の内容は、第1次試験の免除、第1次試験の筆記の免除、あるいは体育実技試験の免除などがあり、第1次試験の一部または全部を免除するところが多いと思っています。しかし、採用の枠については、特別選考の枠を設けずに、一般の採用見込み数に含めるとしているところが多くあり、実際そのような採用で選考された者は多くないと聞いています。 例えば、北海道では1次試験免除と2次試験実技が免除されていますが採用者は2名です。もちろん何人採用するかによっても違ってくると思いますけれども。それから、青森県では体育実技を免除していますが採用はゼロ、岩手県では面接試験、適性検査のみを実施することにしていますが採用はゼロ、京都は1次試験、一般教養、専門教科、2次試験の実技を免除して採用者は2名、三重県は1次試験免除と筆記試験の専門を免除して採用はゼロというような状況です。 鳥取県の公立学校教員の採用試験に当たっては、事前に志願者に鳥取県の教員として求める5つの姿というものを示しています。例えば児童生徒に対する深い理解と教育的な愛情のある教員、教科等に関する専門的な知識、技能と実践的な指導力を持つ教員、課題解決に向けた柔軟な発想と対応能力を持つ教員とか、そういうような形を示しており、教員としてのトータルなバランスのとれた人を採用したいと考えています。 スポーツ・芸術の分野に秀でた者を教員として採用したいと考えていますが、その際には、ただ単に一芸に秀でた者だけではなく、先ほど上げたようなケースをもとにして、バランスのとれた人物を採用したいと考えています。第1次試験を合格して2次試験に進む者も増えてきていますので、やがてはそういう人が出てくるのではないかと思っています。 実は、昨日の国体、少年バスケットボールで男子が5位になりました。これは県内の高校生が集まったチームで、指導者は倉吉東高の蓑原教諭です。私も非常に感動して、きのうはお祝いの電話をかけたのですが、指導者がそれぞれの学校で育ち、そして県内の高校生を集めながら力をつけていく、これも一つのよいモデルだと思っています。 そういう面で指導者の確保は大事なわけですが、ただ、教員として指導者を確保していくということについては、少子化の影響で、本県では中学校や高校の教員の採用数がかなり減ってきています。そういう面で、教員で指導者を確保するということは難しい状況になっていますが、しかし、すぐれた指導者を確保するということが大事ですので、教員採用試験以外の方法でも、何とかそういう指導者が確保できないか、検討していきたいと思っています。 また、中学校、高校の指導者を工夫していいぐあいに配置していくこと、それから、今の指導者をさらにレベルアップしていくような、技術の向上していくような研修をしていくこと、こういうことも大事だと考えています。 |
<鳥取県教員採用試験について>3 |
現場の指導者、実績イコールすばらしい指導者というわけではないのですが、学校の現場に担当の先生がしっかりとそういう意欲を持って取り組める環境、例えば実技のレベルにしてもそうですし、部活動するのに自分にノウハウはないけれども、だれかからノウハウをいただけるような講習会とか、そういうものを、環境をしっかりと整備していただきたい、応援していただきたいと思います。 ですから、優秀な指導者というのは、やはりしっかりと自分の思いの中でできる環境をつくってやることで私はできてくると思うので、ひとつその部分も考えていただきたい。そういう教員採用が難しいということであれば、そういう環境整備に向けての努力をしていただきたいと思っています。 もう1点、採用試験の免除事項に、第1次選考試験免除の規定があります。前年B登録された者については第1次選考試験を免除するとされています。今年度の受験生952名のうち、新卒者が150名ですから、802名の大半が講師をしている先生かと思いますが、今年度の受験者のうちB登録された人が何名いるのか、お伺いしたいと思います。 一度B登録されても翌年B登録されなかったらゼロからの振り出しとなり、先ほどあったように、定数内講師としてクラス担任、まさに日々正教員と同じ仕事をさせられて、責任もありますし、同等の対応での講師をしておられる皆さんは、教師になりたいという夢を追い求める一方で、年々受験が厳しくなるという現実もあるわけで、実績とバランスの問題もあるわけですが、一度B登録された者については、やはり講師として、現場として、そういう意味で、学校は朝から晩まで、夜遅くまで、特に問題行動を抱える子ども達がいる学級を持っている先生などは本当に大変で、まさにみずからの勉強に力を注ぐということはなかなかできない状況にあるので、何らかの配慮基準を検討する必要があるのではないかと思っています。 受験者の中には、18年と私は聞きましたが、10数年以上講師経歴のある人もあると聞き及んでいます。幾ら受験資格が49歳まではというものの、最終的には本人の意思によるものですが、やはり官製ワーキングプアという社会問題がある中で、私はいかがなものかという思いです。教育長の所見をお伺いしたいと思います。 |
●横濱教育長答弁 |
鳥取県の採用試験で合格者というか、採用候補者名簿にはA、B、Cの登載があります。A登載というのは、本県公立学校の教員として正式に採用する。B登載というは、次年度に講師として1年間任用する、ただ、年度末等、急な欠員があった場合には正式に採用することもあり得るというのがBです。もし正式に採用されなかった場合には、翌年の採用試験の第1次試験を免除するというものです。また、C登載というのは、非常勤も含みますが、講師として任用するというものです。本年度の受験者のうち、B登載については2名で、その2名が2次試験に向かったところで。 今後の本県の教員採用の見込みですけれども、小学校において退職者が増加して、採用数が増加することを見込んでいます。このようなことから、いかに人材を確保していくのかということが大事な問題であろうと思います。 大都市圏では近年退職者が多くあり、それに伴い採用者か増えているので、地方の教員志望者が都市圏に流出する傾向があります。本県においても、地元の優秀な人材を確保して流出を防ぐことが大事な問題だと思っています。 議員から、B登載の2年目以降も第1次試験を免除してはどうかという提案がありましたが、私も地元の優秀な人材を確保するという面では一つの方法かと思っています。今後B登載者の2年目以降の第1次試験を免除することも含めて、透明性を確保するという前提のもとに、採用試験のあり方について検討してみたいと思っています。地元での人材の確保も大事な視点だと思っています。 採用試験の受験資格が49歳まであることについて、 教員の新規採用については、多様な人材を年齢にこだわらず採用するということが大切だと考えており、受験資格の年齢制限を緩和して、例えば民間企業で勤務された豊富な経験を有する方、あるいは他県での教員の経験がある方、そうした方が受けやすいように、そしてまた多様な人材を集めることができるように、50歳未満まで年齢制限を緩和しています。 議員が言われた官製ワーキングプアというのは、自治体などでこれまで正規職員が行っていた仕事を非正規職員に任せるということで起きているものだと思っていますので、採用試験において年齢制限を緩和したことによって起きている状況とは若干ニュアンスが違うかなと思います。 ただ、年齢制限が緩和されて、本人の意思によるとは言っても、結果的に講師歴の長い方がおられると思います。18年と言われましたが、それはずっと常勤講師ではなくて非常勤講師もあったりという形だと思いますが、そういうお話をお聞きすると、私としても心苦しく、何とか採用にならないかと思ったりするわけですが、しかし、公正な試験を行わなければいけませんので、やはり何としてでも頑張っていただきたいと願うばかりです。 |
<鳥取県教員採用試験について>4 |
それとやはり県外に優秀な教員が出てしまうという心配をしています。例えばある競技の教員が、鳥取県でどうしても受からない、他県のそういう秀でた者の採用試験では2つの県まで受かってしまうのです。まさに鳥取県に置いて、指導者としてすれば、本当に本人もできる、現場でみずから競技できる、また子ども達を教えることができる、そんな人材がどんどんどんどん県外に出てしまっているという実態もあるわけで、そういうことも考えながら、私は改めてそのあり方について、公平、公正な採用試験という前提は当然ありますが、そこのところを本当にもう一度考えていただきたい。今、私たちが一生懸命考えないと、10年後、20年後の学校現場が大変になるという部分もあると思います。 |