平成23年9月定例会一般質問(平成23年9月28日)No.1

<三朝医療センターについて>
 
 私たち中部地区選出の県議会議員6人でつくっている中部地区県議会議員懇談会は、中部地区の抱える課題を共有するため、会長の藤井県議を初め議員全員で9月7日現地を訪問し、現地調査並びに意見交換を行い、課題を共有しましたので、皆さんの意向を踏まえ、代表する形でこの問題について質問をさせていただきます。
 岡山大学病院三朝医療センターは、昭和14年に岡山医科大学三朝温泉療養所として発足以来、70年の長きにわたり地域医療の拠点として中心的な役割を担ってきました。また、県の保健医療計画においても、中部保健医療圏における脳卒中、心筋梗塞及び糖尿病に関する医療連携体制の中で役割を担っているところで、県中部地域には必要な医療機関です。特に温泉療法を加味した複合型理学療法は、全国的なニーズもあり、医師研修の面においても老年者に対する診療等の臨床実習の実践の場として活用される一方、大学病院側も、組織の改組、診療科目の見直しを行いながら今日に至っています。
 中でも、平成16年に導入された新臨床研修制度による初期臨床研修の義務化の影響は、岡山大学病院においても例外でなく、医局に属する医師が激減し、地域病院への医師の派遣が困難となり、平成19年の検討会に引き続き、三朝医療センターの将来について検討が重ねられました。三朝医療センター将来計画会議から、ことしの6月20日、三朝医療センターに関する内外の諸条件を慎重に検討した結果、本会議としては、今後三朝医療センターに勤務する職員の人事対応及び三朝町との調整を行いつつ早急に縮小・廃止すべきだとの結論に達したと医療センターの光延文裕センター長から説明を受けました。
 議長のお許しを得て、三朝町が町を挙げて取り組んでいる地域と医療連携のパンフレットを議員の皆さんに配付していますので、見ながら聞いていただいたらと思います。
 世界有数のラジウム温泉を誇る三朝町は、温泉をとことん楽しみ健康を見詰め直す現代版の湯治として、旅館の皆さんと連携し、温泉宿に滞在しながら三朝医療センターや三朝温泉病院で体と健康のチェックをする現代版温泉湯治を取り組んでいるさなかであり、関係者の皆さんにとっては大きなショックで、地元の観光業に与える影響も懸念されているところです。三朝医療センター将来計画会議から出された報告について、知事の所見をお伺いします。また、将来計画会議からは6月20日に報告が出されているわけですが、大学病院側から県の事務ベースを含めて、今日までの間何か申し入れがあったのかお伺いします。また、報告書には三朝町とも調整するとありますが、三朝町との協議は既に始まっているのかお伺いします。また、岡山大学病院の医局として、地域病院への医師の派遣が厳しいと報告されていますが、県内の他の病院で派遣されている医師の引き揚げについて、県に何か打診があったのかお伺いします。
 
●知事答弁

 これは、先般野田県議の代表質問にもお答えしましたので若干重複するかもしれませんが、なるべく重複を避けて申し上げれば、まず非常に厳しい内容であるというのが所感です。ただ、これについては地元で現代湯治という事業、これは議員のほうでも取り上げられましたが、そうした地元で今一生懸命盛り上げて三朝温泉のよさを売り込もうとしているのと、医療的なアプローチとが一致するのです。これがないとそうした観光開発だとか地域の振興にも影響するということで、ただ単に内科医のお医者さんがいて治すということ以上の意味があるだろうと。したがって、国のほうに、また岡山大学のほうにしっかりとした働きかけをしていかなければいけないと考えています。
 次に、岡山大学病院側から県の事務ベースへどういう申し出があったのか、また三朝町との協議が行われているのか、また地域の病院の医師の派遣、岡山大学が引き揚げるという打診があったのかという点ですが、これらは事実関係にかかわることですので、健康医療局長のほうからお話したいと思います。
●藤井健康医療局長答弁

 
 6月20日に報告書が出されたということでしたが、この報告書の内容を承知したのは、三朝町を含めて私ども地元としては、7月26日に行われた第1回の岡山大学病院三朝医療センターの将来に関する委員会の会合が初めてで、それ以前に三朝町との調整等は行われていませんで、将来に関する委員会、あるいはその後、8月にも開催されていますが、ワーキンググループ、こういう中での調整というふうに認識しています。

 2点目、三朝医療センターについては、平成22年3月に岡山大学のほうから担当課、医療政策課のほうに、経営不振や医師不足のため規模の縮小を考えているという情報提供がありました。ただ、その後、22年9月に大学のほうに確認したところ、現在はその縮小方針がトーンダウンしており具体化していないということを確認しています。ただ、その後、動きはなかったのですが、平成23年2月になって、岡山大学のほうから医師不足、経営不振などのため平成24年度以降に三朝医療センターを縮小、廃止する方向で検討しているという情報提供があり、県としても、三朝町にも情報提供をさせていただいたところです。その後、今回の将来に関する委員会、あるいはさらに具体的な検討としてのワーキンググループの設置ということにつながったと認識しています。
 県内の他の病院に派遣されている医師の引き揚げ等について、岡山大学から県のほうに打診とか報告ということはありません。ただし、医師不足を背景に、岡山県内の病院を優先する方針で、他県の病院、鳥取県に限らず医師派遣については縮小傾向であるというふうに仄聞しているところです。 
 県内の具体的な岡山大学の医局からの派遣の医師の状況ですが、県内の病院への派遣としては、三朝医療センターのほか鳥取市立病院に実施されており、近年その数は減少しているところです。具体的に申し上げると、三朝医療センター、これは岡山大学からの派遣がすべてですが、平成16年には8名いた医師が、23年には現在4名という状況です。また、鳥取市立病院は平成16年、病院全体で55名の医師がいて、そのうち46名が岡山大学医局からの派遣でしたが、平成23年は、病院全体では49名と6名減、岡山大学の医局からの派遣は33名と13名の減というような状況です。

<三朝医療センターについて>bQ

 
 9月4日の日経新聞に三朝医療センターでのラドン温泉療法に関する研究成果として、ホルモンの分泌量が増加して、痛みや呼吸、消化機能などを改善する効果がわかっており、海外でもラドン療法の効用に関する研究が進み始めていると研究発表が掲載されており、その効用については今後の研究にゆだねられている部分もあります。長年病と闘われている人で、三朝の地で行われているこのラドン温泉療法に期待されている人は随分多いのです。入院患者の半分が県外からということがその理由だと思います。他の地域ではできないこのラドン温泉療法を、私としてはもっともっと科学的な知見の中でこの三朝の地で確立していただくことを強く望んでいます。
 知事は文部科学省への要望活動は既に行われているわけですが、基本的には岡山大学自身で解決する課題だと私は思うのです。大学病院側にも経営的な課題、医師確保の課題など、いろいろな問題もあると思いますが、県として地元三朝町とも協議を重ねながら存続に向けての具体的な行動をすべきではないかと思いますが、知事の所見をお伺いします。
 他の病院でも医師の引き揚げというか、そういう医師不足の中で今後の動向が懸念されるというような報告がありましたが、やはり県内へ複数派遣があるので、例えばどこそこを残すからどこそこを引き揚げるという総体的な交渉ではなく、やはり一つ一つ吟味しながら大学病院側との交渉に臨んでいただくように私はお願いしたいと思います。それとまた、三朝医療センターの存続に向けて県として何か対応策を検討されていることがあれば、あわせて知事にお伺いしたいと思います。
 確かに私ども地方でこうして政権を支えている一人として、本当に皆さん以上にジレンマも感じていますが、しかし、やはり地域主権は進めなければならないということで、しっかりと頑張っていきたいと思っています。
 ただ、色々な問題がありますが、特に交付金化、社会資本整備交付金はまだ5%残っていますから、最終配分まで様子を見たいと思っています。
 ただ、この一括交付金化が来年からは市町村に及ぶということで、本当に今しっかりとした交付金の制度をつくり上げなければならないという中で、先ほどありましたが、知事会等でしっかり分析していただきながら、ことしの反省を糧としてしっかりと政府へ申し入れをしていただきたいと思いますし、また、地方と国の協議の場ですが、せっかく土俵ができたわけですから、しっかりそこで相撲ができるように、運用を含めて実効性のあるものにしてほしいなということをお願いしたいと思います。


●知事答弁
  
 御指摘の温泉療法、これはユニークなものですし、正直申し上げて、ここ以外で研究をまともにしていないわけです。ただ、野田議員の代表質問のときに申し上げましたが、全国各地から患者さんがこられて、半分は県外の方々です。そういうニーズもあるわけですし、先ほどの現代湯治もありますので、ぜひとも存置を図っていくべきだろうと。少なくともそうした温泉療法の研究だとか実践の場というのは何らかの形で今後も続いていかないといけないだろうと、これは地元としての強い願いです。具体的な行動を起こすべきですし、また対応策ということもあり、実は議会中ですが、担当部局のほうで三朝の町長とも話し合っています。そして、この10月6日にまず岡山大学のほうに大学病院も含めて県と町で要請に行くことにしました。さらに、恐らく13日ごろになると思いますが、上京の機会をとらえて、三朝町長も一緒に行くとおっしゃっていますので、私も改めて国のほうへ働きかけをすべきだろうと考えており、この辺はまた与党のほうでも調整をお願いできればと思います。
 先ほどの今後のあり方を検討するワーキンググループがありますが、10月18日にそのワーキンググループがもう一回開かれます。前回は我々のほうの主張をばっと述べたわけで、岡山大学側からこれに対する回答が18日に示されるだろうと思います。ですから、それに向けて私たちとしてもしかるべく地元の意見もいろんな形で出していく必要があるだろうと思います。
 今後そうしたことを踏まえて、10月18日のワーキングの結果というか、先方の回答が寄せられて議論がまた第2ラウンドに入ってくると思うのですが、そういう岡山大学側の示される考え方も聞きながら、地元としてではどういうアプローチをしていったらいいのか、あるいは岡山大学側と協力できることは何があるのか、まずは大学側の回答を見ながら考えていく必要があるだろうと考えています。
 またあわせて医師の交渉の話がありましたが、岡山大学と直接私どもで医師の取引をしているものでもないので、これは鳥取市のほうであれば、市立病院でその病院の管理者なりがそれぞれに交渉しているというのが実情です。医療センターの医療体制の確保については、当然ながら今やっているワーキングの中で議論をしていかなければならないと思っていまして、例えば市立病院との関係でどうのこうのというような取引をするつもりはありません。

<三朝医療センターについて>bR


 今日本当に地方の医師不足というのは社会的問題になっており、やはり保障されるべき地方の医療を崩壊させているのは、何といっても平成16年度に導入された臨床研修制度による初期臨床研修の義務化ということにあるのではないかと思います。やはり地方の医療を守るという観点からも、この制度を何らかの形に見直すということを改めて国に働きかける必要があるかと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 

●知事答弁

 
 
これについては、これまで重ねてこの新臨床研修制度が大分地方の医師不足に関与しているので、改めてもらいたいと強く申し上げています。これは我々単県でなくて中国地方の知事会でもそうですし、さまざまな形でやっています。あわせて医師不足を解消するために、私自身、文部科学省の大学の医学部の定数に関する委員会の委員を仰せつかっており、そこでも知事会としての意見という形で申し上げているのは、医師不足を解消するために大学のほうからしっかりとした定員なりをとってもらって増やしていくべきだと、こういう主張を申し上げました。席上、日本医師会の関係者の方などから大分反論がありましたが、私は地方の立場で物を申し上げました。そのようなことをしていきたいと思います。
 あわせて、本県の場合、マッチングをしながら一生懸命やって、とにかくお医者さんを定着させようということをしました。このたびは対前年で82%研修医の数が伸びて、全国からも大変注目されたのですが、全国一の伸びになりました。いろいろと議場でも意見が出て、そういうことを織り込みながら対策を打ってきたのですが、これからもそうした研修医の定着を図っていきたいと思います。