<生徒の能力を伸ばす取り組みについて> |
9月8日、ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会において2020年のオリンピックとパラリンピックが東京で開催されることになり、青少年を初め多くの国民に大きな夢をいただきました。
9月議会に続いて今議会でもいろいろな議論がされている中、平井知事の答弁にあったように、東京だけでこのオリンピックを終わらせてはいけないと私も思います。できるものなら、一人でも多くのオリンピック選手がこの鳥取県で誕生し、県民の皆さんが世界各国のオリンピック選手、トップアスリートと交流できる機会ができればと願うものです。
さきのロンドンオリンピックでも、人口60万人を切る鳥取県から川中香緒里さんが見事アーチェリー女子団体で銅メダルを獲得しました。人口が全国一少ない鳥取県でもメダリストは可能であるということを川中さんはみずから実証してくれたと思います。
ところで、川中さんが幼少のころ過ごした以西地区は船上山の麓に広がる250世帯余りの中山間地域で、ことしの以西小学校は児童数37人の超小規模校で、1学年は多くても10人までの児童数です。しかし、今この以西小学校の卒業生がスポーツ界で大ブレークしています。アーチェリーの川中香緒里さん以外にも、ことしの全日本実業団陸上男子やり投げで高力裕也君が優勝、アジア大会でも4位入賞、さらにはことしの東京国体陸上少年の部で小椋健司君が男子やり投げで3位入賞、同じく東京国体少年の部山岳競技リードの部で高力秀幸君が7位入賞、さらには昨年まで全国都道府県女子駅伝のメンバーだった高力香織さんと、次々と全国で活躍する卒業生が相次いでいます。
横濱教育長にお尋ねしますが、超小規模校の以西小学校の卒業生が近年スポーツ界で大ブレークしていることへの感想と、その要因をどう認識しておられるのかお伺いしたいと思います。
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●教育長答弁 |
最初に2020年の東京オリンピック・パラリンピックの話がありましたが、私もその大会においてアーチェリーの川中選手、あるいはホッケーの佐藤選手のように本県から一人でも多くの選手が出てほしいと願っていますし、同じ気持ちでおります。また、東京オリンピック・パラリンピックが東京で始まって東京で終わってしまうというだけでしたら開催の意義は余り大きくならないと思っています。鳥取県の子ども達を含めて県民が夢や希望を持ってこの地域の一体感につながっていく、そうしていく必要があると思っています。
琴浦町の以西小学校は、全校の児童がわずか37人の小規模な学校です。川中選手を初め陸上男子やり投げの高力選手など多くのトップアスリートが輩出されており、これは偶然とは思えないことだと思います。私も議員からお話を受けて改めて気づかされて驚いているというのが正直な気持ちです。
川中選手には、ロンドンオリンピックの活躍により昨年知事から県民栄誉賞を授与された際に私もお会いしましたが、右手と左手の握力が同じだということとか、練習の虫で集中力がとにかくすごいということを顧問の先生からお聞きして、とても印象に残っています。以西小学校では、地域に根差し未来を目指す以西っ子ということを教育目標に掲げておられ、学校が家庭や地域と子ども達に対して愛情を持って接しておられる。そしてまた、家庭や地域が学校に非常に協力的で強いきずなで結ばれているということが背景にあると思います。また、ふだんから子ども達が運動することに対して肯定的で理解のある家庭が多く、地域として運動やスポーツを応援するような土壌があり、運動が子ども達の生活の中にしっかり根づいているということもあるかなと思います。こうした地域のよい意味での風土とか教育力が数多くのトップアスリートの輩出につながっているのではないかと考えています。
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<生徒の能力を伸ばす取り組みについて>bQ |
私も、偶然にしてもこんなに次々と全国で活躍する選手が出る学校はないだろうと思っています。川中香緒里選手は小学時代はバレーボール、中学時代はソフトテニス、高校では珍しい競技がしたかったという単純な動機でアーチェリー部に入部、ところが1年の秋の新人戦でいきなり優勝と、要するに才能が開花したというか、アーチェリー競技とのマッチングがあったと私は思っています。その背景として、以西小学校の学校生活も今日のベースになったものと思っています。
以西小学校では、始業前に毎日グラウンドで全校生徒が走り、雨の日は体育館でサーキットや縄跳び、肋木で体を動かしています。さらに1学年が5人から6人程度ですので、上手下手にかかわらず全ての児童が全ての競技を行っています。こうした環境の中で基礎体力を徐々につけ、高校に入り専門的な競技と出会うことによってうまくマッチングしていったと思っています。
残念ながら、この以西小学校も入学する児童が減少して、来年の3月で町内の他の学校との併合の中でなくなってしまうわけですが、子ども達の持っている個性を伸ばす観点からいえば、以西小学校の取り組みというのは大変大きなヒントがあると思いますが、横濱教育長の所見をお伺いしたいと思います。
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●教育長答弁 |
今年度の国体やインターハイで優勝した倉吉西高等学校の弓道部の選手、昨年の国体で優勝した自転車の佐伯選手、たくさんいますが、そうした選手は小学校時代に身につけた基礎体力がベースとなったり、あるいは高校から始めても、よい指導者と出会ってその才能が花開いた良い例だと思います。
県教育委員会では、今年度から各学校が行っている体力テストの全ての結果を入力すると、その学校の子どもの状況が全県的に、全国的に比較できるというシステムをつくり、今運用しています。そのシステムで以西小学校の体力テストの結果を調べたところ、驚いたことに、以西小学校の子ども達の体力は大変なものです。例えば25年度の体力テストで特に成績がよかったものを上げると、6年生女子のボール投げですが、これは全国平均が17.41メートルに対して以西小学校の6年生は32.75メートル、5年生女子のボール投げ、全国平均が14.58メートル、以西小学校21.33メートル、3年生女子の50メートル走、全国平均10.42秒が9.67秒、また5年男子のボール投げは全国平均が24.86に対して以西は34.00メートルということです。確かに人数が少ないということはありますが、これだけの粒がそろってこんな成績が出るのはなかなかだと思っています。
学校から直接お話を伺ったところ、以西小学校では全校児童による毎朝のミニハードル運動、マラソン、キャッチボールに加えて、週2回の鉄棒運動などの業間運動を積極的に取り入れていますし、そういうことを通して子ども達の体力向上につなげているということです。また、3年生以上の児童のほとんどがスポーツ少年団に入っており、日ごろから子ども達は意欲的に運動を行っています。
以西小学校は児童数が少ないということですので、学校を代表する陸上や水泳の県の大会や東伯郡の郡民体育大会などには全員が選手となって出場しており、特に4年生以上は全員が大会に向けて放課後残って練習をしているという状況です。
さらに、以西小学校の教職員たちは、体育学習や運動の方法について積極的に研究して実践に取り組んでいます。また、現場の教職員に聞いてみると、子ども達は素朴で教員の指導を素直に受け入れてくれる、家庭との連携ができており運動に対する肯定的な意見がよく聞かれる、児童数が少ない分、学校全体が一つの家族のようにまとまっており、何事にもみんなで取り組んでいこうとする教員や児童の雰囲気があるというようなことを聞いています。
以西小学校の取り組みは、小さいということがありますが、非常に普遍的な要素もあると思いますので、このすぐれた点を県内の小学校に積極的にPRしていきたいと思っています。
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<生徒の能力を伸ばす取り組みについて>bR |
鳥取県における選手強化は、先ほどもありましたが、どちらかというと、私はこれまでそれぞれの競技団体に任せ切りの現実があったと思います。余り金も出さないから口も出さない、ただ頑張れの応援と激励が中心であったと私は思っています。
そうした中、今、福岡県では、オリンピック選手を初めより高いレベルで活躍できる選手を育成しようと、子ども達の能力を見つけて育て、生かす、いわゆるタレント発掘事業というのに取り組まれています。この事業は、子ども達にいろいろなスポーツに触れ合う機会をつくり、参加した全ての子ども達を対象に、先ほどあったように、体力測定を行い、それぞれの能力と体力に応じたスポーツの可能性についてアドバイスするもので、すぐれた能力と体力を持っている子ども達には、ふだん体験することのない競技も改めて実践するという中で、自分の可能性を生かせる競技は何かというものを探っていくというものです。このタレント発掘事業で、バスケットボールをしていた女子高校生が体力テストのデータからライフル射撃に挑戦、途端に高得点を出したことから転向して、わずか1年でアジア大会まで出場する選手になったということです。
子ども達の数が少ない鳥取県ですが、それぞれの子ども達が持っている能力とそれぞれの競技で不可欠とされる体力や能力を見出してマッチングさせるということが私は本当に必要だと思っています。川中選手にしても、アーチェリーとの出会いで持っていた能力が開花したわけです。
県内の子ども達は、数が少ないわけですが、逆にこうした事業は取り組みやすく、7年後の東京オリンピックを視野に入れた取り組みができるのではないかと思います。横濱教育長の所見と、そのほか県教委としてもし計画されているものがあれば強化策をお伺いしたいと思います。
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●教育長答弁 |
タレント発掘事業については、福岡県を初めとして全国でそういう動きが少しずつ広がってきています。議員からはバスケットをしていた女子高校生がライフル射撃に転向したという、私もそれをニュースで見て、その高校生が迷いながらも自分の適性に気づいてその道を目指していき、次はオリンピックを狙うということまで語っているのを聞いて、非常に感動しました。実際に福岡県での例で、例えば4期生というのは現在高校の2年生になりますが、ラグビーをやっていたが、そういう授業の中でやり投げに転向して日本ユースで1位になったとか、あるいは1期生、現在の大学1年生になりますが、バスケットをやっていた者がフェンシングの適性があるということで、フェンシングのときには高校総体で優勝したというような例もあります。全てがそうなるとは限りませんが、非常に可能性がある取り組みだと思います。
本県も人口が少ないわけで、その競技人口の少ない競技を中心に子ども達とスポーツの出会いを提供しようということで、本年度から小学生が同じ会場で幾つかの競技を体験できるスポーツ体験会を開催しました。今年度はボート、自転車、クライミング、ライフル射撃、ウエートリフティング、フェンシングの競技を行い、340名の子ども達が参加しました。その中で、例えばクライミングを体験した子どもは、初めての体験で最上部まで登り切って本当に得意そうに目を輝かせていたとか、あるいは自転車やフェンシングの体験が楽しかったという感想を寄せているようです。こうしたことから、本県としても、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れながら鳥取県版の子ども達の能力や可能性を引き出す取り組みを考えてみたいと思っています。体育協会あるいは競技団体と協力しながら、子ども達の夢を応援する取り組みの検討を始めたいと思っています。
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<生徒の能力を伸ばす取り組みについて>bS |
これまでのように根性だけで子ども達を強くするという時代ではないと思っています。子ども達が持っている体力と能力を科学的に分析して、個々の能力に適した競技をマッチングさせ、可能性を伸ばしていくという環境をつくることも子ども達を育てるという観点で教育行政の仕事ではないかと私は思います。改めて所見があればお伺いしたいと思います。
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●教育長答弁 |
子ども達の持っている可能性を伸ばしていく環境づくり、こういうものを進めていくためには、議員がおっしゃったように、子どもの体力、能力を科学的に分析するということ、体力に適した競技をマッチングさせていく、そういうことが大切だと思います。
来年度に向けて、子ども達の持っている可能性を引き出していく、伸ばしていく、そういう授業を考えており、その際には、やはり子どもがやりたいとかこの方向を目指したいという、そういう気持ちも大事にしたいと思いますし、あわせて保護者の協力もいただかなければできないことだと思いますので、そうしたことをうまく調整しながら子ども達の能力が開発できるように成果を上げていきたいと思いますし、また、そうした事業を通して子ども達が心身の面でも成長していくようにしていきたいと思っています。
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