平成25年3月定例会一般質問(平成25年3月14日)No.1

<経済対策について>

 
 昨年暮れの総選挙で経済再生を掲げた自民党が圧勝し、政権に復帰され、早速12月補正予算として13兆1,000億円という大型補正予算が編成され、2月26日に成立しました。
 その大きな柱は、10兆3,000億円の緊急経済対策で、公共事業関連費はその半分の4.7兆円を占めています。
 これに呼応し、我が県においても、経済対策として2月補正予算で173億3,200万円に上る公共事業が補正予算として計上され、24年度当初予算と合わせて659億5,800万になります。さらに、25年度予算でも450億9,600万円の公共事業予算が計上されています。
 経済対策が政権の公約であっただけに、当然の予算措置であると思います。政権がかわり、円安が進み、株価が上がり、経済がよくなっているように思いますが、期待感からだと言われ、実体経済はまさにこれからで、注視していきたいと思います。
 藤井議員の代表質問で、知事との議論を聞いていると、このたびの経済対策、まさに特効薬と猛毒をあわせて飲んでいる政策で、それだけ厳しい選択肢をとらざるを得ない経済状況でもあると思うのです。
 ただ、バブルがはじけて以来、経済対策として200兆円余りの公共事業が全国で進められてきましたが、結果として、我が国の経済を立て直すところまで行かなかったのも事実です。
 グローバルの中で、妖怪のように動く経済を果たして我が国だけの力で、しかもその主導が公共事業なのかということになれば、私自身否定はしませんが、疑問を感じます。
 本来なら介護保険制度ができたときに福祉の分野がもっともっと実体経済の主導を握ると期待されていましたが、実体経済の主役になれなかったことが今日の不況要因の一つではないかと思っています。つまり、全国津々浦々の福祉分野で働く皆さんの待遇が低位に置かれてきたことが、我が国の国内需要を喚起せず、実体経済を支え切れていないその一つの大きな要因であると私は今でも思っていますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 国は15カ月予算として、県では14カ月予算になるわけですが、この2月時点で補正予算として計上されているのですが、知事は、建設業界以外にどんな効果が波及されると思っておられるのかお伺いします。
 単年度主義の会計制度をとっている我が国の行政の中にあっては、3月末には工事の大半が完成し、仕事がなくなってしまいます。一般的には国の補助が確定し、新たに工事が発注される6月ごろまで仕事がないのも事実です。特に公共事業への依存度が高い地方の建設業者にとって大変なことは理解します。
 このように、2月補正で公共事業を追加することによって、4月、5月と仕事のない時期に仕事をならすことで建設業者並びに業界にとっては切れ目のない仕事環境ができることでしょう。本来なら継続されてこそ業界の皆さんに効果が上がるので、単年度だけでは経済効果が余り期持できないのではないでしょうか。
 それでは、今後も毎年こうした2月補正のような補正が行われるのでしょうか。根本的に発注のあり方をもっともっと変えるべき課題と思いますが、知事の所見をお伺いします。
 前段で申し上げたように、経済対策の必要性は否定しませんし、一定の理解はします。しかし、24年度の県土整備部の一般公共事業だけを見ると、11月補正までの工事箇所は437カ所、予算総額288億5,120万円でしたが、このうち34.8%に当たる152カ所、77億5,417万円が繰り越しされています。これに2月補正分の356カ所、130億3,144万円が繰り越しとして追加されるので、繰り越し事業の合計は24年度当初予算の工事量に匹敵する508カ所、207億7,856万円となります。
 したがって、25年度には25年度予算の229億の事業費に繰り越し事業の207億円と原則2カ年分近くの一般公共事業をやることになります。
 さらに、単県事業や農林部分を含めると、相当大きなものになります。
 これまで県の方針として、通年県が発注する公共工事の量からして、土木の格付等級の業者数もA級で140のものを100に、B級で175のものを160に、C級で195のものを145と年次的に削減してきました。
 こうした業者の削減とあわせてコンサルも減っていると聞いていますので、公共事業が想定どおりにできるのか危惧します。
 したがって、このような状況ですので、25年度は繰り越し事業から工事を進めますので、結果的には25年度事業がまた翌年度に繰り越しされるだけではないかと思いますが、知事の所見をお伺いします。
 

●知事答弁

 
 議員のほうからもお話がありましたが、公共投資だけで全て経済を引っ張るという時代でもないのだろうと思います。また、残念ながら製造業だけで全て雇用をつくり出すという時代でもないのかもしれません。
 北欧などヨーロッパ型の社会として日本と物づくりを争っていた時期に、着々と別の経済を育てていったのが社会教育サービスと言われるようなサービス分野です。保育サービスとか教育サービスとか、高齢者福祉サービスとか、そういう福祉のサービスを実体経済の一つとして経済成長を別のつくり方で持ち上げていったと、そのような国々もあったわけです。
 日本も徐々に過渡期に入ってきているということは言われるだろうと思います。そういう意味でそういう人間サービス、人間に着目したサービスというものの経済的な重要性を改めて考える時期に来ているだろうと思います。
 現に、介護保険が導入されたときには幾つかの意味合いがありました。1つは、女性たちが家庭の中で介護に束縛をされてしまう。それを解放しなければならないということで、介護サービスというものを社会的に供給する仕組みをつくろうではないかと、そのような声が各地で上がり、こういう介護保険につながってきたわけですし、実際施設の中の処遇が当時は余りよくないものもあったというようなこともあり、もっと介護のほうに、いわば保険という仕組みで、福祉政策、福祉行政の措置ということではなく、社会サービスを提供する契約という形でもっともっと活発にできないだろうか、その財源としては税金ではない皆の納める保険をベースにしたものでできないだろうか、これが介護保険の考え方でした。議員が言われるような別の実体経済をつくろうという要素が多分にあっただろうと思います。
 現に、この介護保険制度が導入されてから全国各地で高齢者福祉サービスの質が向上してきたわけですし、ユニットケアということが当たり前のように本県でも行われるようになってきています。また、そこで働く方々の数も飛躍的に増えて、当然ながら介護関係のサービス料も上がってきています。
 私ども鳥取県の中では、全国平均が大体1.8%なのですが、本県は県内のGDPに占める介護サービスの割合が2.8%もあるのです。非常に高いところまで来ていました。2.8%占めるというのは結構なウエートで、雇用の面でも産業の面でも、こういう社会サービスの地位が高まってきているのではないかと思います。そんな意味で総合的な経済アプローチというのが求められる時代に来ているだろうというのは、御炯眼のとおりだろうと思います。
 今回県で14カ月予算を計上したわけですが、建設業界以外にどんな波及効果が出ると考えているのかというお尋ねがありました。
 これがまさにそういうことも含めて今回事業が組まれています。例えば農林水産業関係でも就業対策だとか、それから水産業関係でも境港の山陰旋網漁業協同組合や、あるいは県漁協といったところで冷凍冷蔵庫というものをつくって、それで1次加工することなど、そのような費用も今回の経済対策の中に2月の緊急補正で入っています。
 また、社会福祉サービス等の関係でも看護職員の充足対策なども入ってきていますし、教育関係とか商工産業関係でも雇用の基金など、そうした雇用対策等も含めて盛り込まれてきています。かなり総合的な対策で当初予算と合わせて2月の緊急補正とで約900億円程になり、3,900人の雇用を見込むというものとなっています。建設業だけでなく全般的に県内の各般にわたる産業、雇用の創造を目指すものだと御理解いただければと思います。
 確かに公共投資の額も結構多くて、大体500億を超えるような規模になっていますので、ウエートは高いわけですが、以前鳥取県議会でも議論をする向きがよくあって、公共投資をふやしたところで用地費が結構多くて、乗数効果が低いというお話があります。
 ただ、今回のこの14カ月予算を見ていただくと、用地関係は1.3%で、ほとんど工事費系のほうになります。それは身近な交通安全対策、子ども達の通学路とか、あるいは修繕系、長寿命化対策とか防災・減災対策、こういうところにかなりのウエートのものが入っていますので、用地を取得することではない公共投資のあり方を今回あえて鳥取県としては積極的に適用させていただきました。
 したがって、乗数効果が働いて他産業への影響も極力大きくなるようにさせていただいています。
 京都大学の藤井先生が分析をされたところでは、1兆円公共投資を今の経済状況ですると0.8%ほどデフレの改善につながる。さらにそれに加えて実際の事業創造として1.6兆円ほどの事業創造があるだろうと分析されておられます。それを適用すると、私どものところでも公共投資関係で1,000億円規模の県内経済影響ということには当然なるだろうと思います。
 次に、2月補正による公共事業の追加について、私どもとしては、できるだけ切れ目がない形で、無理のない形で公共投資を発注をする、そういうオペレーションをやっていきたいと思います。今回はたまたま2月補正という形になったので、今準備をして、年度当初の通常だと閑散期のときに発注を増やすというようなオペレーションができるわけですが、今後もそうした発注上の工夫等は考えてみたいと思います。
 また、単に繰り越し事業が増えるだけではないかというようなお話ですが、現実には我々としても調査をしながら注意深く発注の工夫を図っていきたいと思います。例えば人員的にどうだろうかとか、あるいはフォークリフトを初めとした機材の状況はどうだろうかとか、こういうことを毎月のように調査をしながら、この時期公共投資の発注をする参考資料とさせていただき、無理のない形でオペレーションをさせていただきたいと思います。

●古賀県土整備部長答弁
 
 まず、発注のあり方ということですが、議員が言われるとおり、公共事業の発注はできるだけ1年を通じて満遍なく均等に発注するのが望ましいと私ども考えているところです。
 ただ、通常の工事だと用地の取得だとか、あるいは工事の着工前の地元の調整とかそういったいろいろな準備がどうしてもかかってしまい、実際に発注するためには相当期間を要してしまって、結果的にどうしても年度当初の発注が困難になって、それが6月とか第2四半期のほうに移行してしまっているというようなことがあります。
 こういったことから、できるだけ年度当初の4月、5月にも工事量を確保するために、比較的規模が小さな修繕工事などについては、用地など地元調整を余り伴わないので、こういったものをできるだけかき集めて発注するようにして年度当初の工事量を確保するようにしていますが、それもなかなか十分ではないところも正直あります。私どもとしては、できるだけ前年度にそういった設計のストックとか、用地のストックはそれまでの間ずっと過去経年の中で積んでいくにしても、設計のストックなども極力ふやすような努力もしており、引き続きそういった努力をしながら平準化に努めていきたいと思っています。
 議員のお話にあった繰越額ですが、これは一般公共事業が中心だったと思いますが、議員御指摘のように単県とか全部正確に申し上げると、平成24年分の繰越額の全体が312億です。そのうち緊急経済対策に係るものが137億、緊急経済対策以外が175億です。この175億については、既に大部分が工事発注済みです。ですから、これから我々が取りかかっていかなければならないのは、この緊急経済対策の分の137億のほうです。この137億を年度当初、もう既に発注は進めていますが、できるだけ3月、それから4月、5月の間に発注を終えて、夏場に入り速やかに当初予算の発注のほうに入っていけるようにしたいと思っています。
 その一方で、業界の対応が十分かどうかというような御指摘もあります。平成10年の公共事業のピークのときに比べれば、今回の事業量が大体6割ぐらいなので、単純に言えば十分受け皿としてはあるのかなと思いますが、ただ実際東日本大震災とかそういったこともあり、全国的に技術者の不足とか資材の高騰の話がいろいろ出ています。ですから、私たちもそういった鳥取県の中での資材調査、それから労務単価の調査、そういったものをできるだけしっかりやり、地元業者さんの声もしっかり聞きながら柔軟に対応していきたいと思っています。
 

<経済対策について>bQ


 経済対策といえば、まず真っ先に上がるのが公共事業なのでしょうか。私自身はもっともっとほかの産業でも苦しんでいる分野があると思うのです。先ほど知事は、漁業の沖合の関係をたくさん言われましたけれども、第1次産業の農業、林業というのは結構経済支援策がこれまでもあったのです。しかし、沿岸漁業対策というのは極めて少ないのです。そういうものもやっぱり必要だと思うのです。
 そういう部分で、答弁は要りませんが、国の動向にかかわらず冷静に県内の状況をしっかりと判断しながら、声を聞きながら政策を考えていただきたいと思っています。そういう意味では交付税が減ったというのは、本当に地域主権の中で交付税を担保して地方にしっかりとしたそれぞれの政策をやってくれというのが国の筋だと思うのですが、私は意見として言っておきたいと思います。
 また、このたびの公共事業ですが、要するに政策として国が誘導しているわけですから、非常に優位な後年度交付税算定というものを用意して、まさに地方自治体、今しなければ損ですねというような形で公共事業を打っているわけです。そうすると、よほど計画的に慎重にやらないと、また後年度に公債費比率が高くなってくるというふうな過去の繰り返しを招くことになるので、その部分についても、簡単でいいですので知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁


 沿岸漁業等も含めて水産関係、今回緊急補正で10億、当初で13億計上させていただいていますが、バランスのとれた対策を今後も考えていきたいと思います。
 また、交付税については、これもぜひとも必要額の確保ができるように政府・与党においても考えていただきたい事柄です。今回、地方公務員の給与削減に名をかりて鳥取県の交付税も減らされているのは大変残念な状況で、今後ともこの点は地方六団体としてしっかりと回復を求めていきたいと思います。
 今回国の経済対策を受けて、我々でも受け皿の予算を提案し、御採択を賜りました。大分財源上の工夫をさせていただいています。議員がおっしゃるように、一気にいろいろな事業をやればそれでいいことも多いわけですが、逆に将来の負担もふえてこようかと思います。
 本県の場合、ここ5〜6年で急速に財政状況の好転を図ってきました。その結果として、平成18年度の決算では経常収支比率全国10位だったものが、平成23年度には1位になりました。88.8%というふうに全国で最も財政の硬直度が低い団体になっています。また、将来負担比率でも3位で、そういう意味でも将来負担も少ないということです。こういうことは注意深い財政運営の結果出てくるものですから、今回の経済対策を活用する際にもその辺に配慮しながら進めてきました。一般財源をなるべく使わないで、例えば地域の元気づくり交付金というのが今回できました。こういうものを活用したり、同じような起債事業をやるとしても、前倒して2月のほうでやると補正予算債を活用することが可能になり、充当率も100%で交付税算入率50%という、まともに起債するのに比べると将来負担が減るということになります。こういうものを活用することで、現実には一般財源を使った率は10分の1ぐらい、15億円ぐらいに限定することが可能となりました。今後とも注意深い財政運営を図っていきたいと思います。

<経済対策について>bR

 
 最近は大きな災害がなくて喜んでいるところですが、ただ最近災害というと本当に甚大な被害をもたらすような傾向にあると見ています。それで、25年度の公共事業の発注状況から、今6割というかなり余裕があるように言っておられましたが、秋にはさらなる補正予算も編成されるのではないかという声も聞かれますし、万一62年の台風19号のような災害が発生した場合には、復旧工事にも手が回るのかなと私は大変危惧をしています。そういう意味も含めて、県としてもある程度災害時の対応も念頭に置きながら、いわゆる公共工事への取り組みも進めていただきたいと思っています。知事の所見をお伺いしたいと思います。
 それと繰り越しなのでが、今見ていますと、市町村は繰り越しは余りないのです。市町村は公共事業の数が少ないですから。議会がしっかりチェックしているのです。何でこれを繰り越しするのか、何で年内にできないのかと。県は膨大な数ですから、チェックできないのです。我々の責任なのですが。ですから、4月、5月とならすためにあえて繰り越ししているかなという理解をこれまで私はしてきたのです。そういうことはないと思いますが。
 ただ、興治議員の代表質問で知事は100億の単県の事業予算をつけるということでした。確かつきました。今、維持関係が4月に出るのです。維持関係だけが。あそこで工事分も4月から出せるように、そんなに100億も組まなくても、例えば50億ぐらいでも4月から出せるような形で公共事業のあり方を──このたびの経済対策とは別ですよ、そういう対応をとられたらいいかと思っています。これは提言です。

●知事答弁

 
 繰り越しのこと等がいろいろとあろうかと思います。御提言もいただきました。参考にさせていただき、これから組んでいきたいと思います。
 聞いていて思ったのは、例えばゼロ県債みたいなやり方である程度契約の準備をしておいて、それでどんどんと4月からかかれるようにというような体制を組むのも一つかもしれません。現状は議員がおっしゃったように繰越額が結構多いものですから、そこをまたいで工事発注も続くという現状になっていて、その辺状況を見ながら適切な平準化の方策を考えていきたいと思います。