<畜産振興について> |
第9回全国和牛能力共進会を鳥取県で開催したことを契機に、県内の和牛振興の取り組みが前進したように認識しています。
その成果として、昨年の長崎全共では、種牛の部第6区で優等賞3席、肉牛の部第9区で第1回大会において1等賞2席に入賞した気高号以来の優等賞6席などと総合成績も7位でした。
平成19年の鳥取大会の開催を契機に、和牛王国鳥取を復活させようと、それまでの和牛再生プロジェクトから21年に鳥取県和牛ビジョンに改定され、このたびも長崎全共の反省に立ち見直しが行われました。
まず、この鳥取和牛ビジョンから5点について素朴なお尋ねをします。
和牛王国鳥取の復活を目指すとありますが、ビジョンで描く和牛王国鳥取とはどんなイメージを想定すればよいのか。
ビジョンでは、10年後に目標達成を目指すとあるが、その目標とは何か。
基盤整備の拡大に新企業の参入の確保とあるが、想定されている企業があるのか。
ブランド化のためには、出荷頭数が年間3,600頭と他産地に比較して極めて少ないが、目指す目標と増頭手段について。
生産者の声として経営支援を望む声が多くあるが、その対応を担うのは県なのかJAなのか、知事にお伺いします。
続いて、畜産等でも使用できる飼料米についてお伺いします。
県内の飼料米の作付面積は、転作奨励金が反当8万円となった平成21年から急激に増え、23年には420ヘクタールにもなり、2,175トンもの飼料米が生産されるよう になりました。この飼料米の活用方法はどのようになっているのか、知事にお伺いいたします。
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●知事答弁 |
詳細、農林水産部長からお答えしたいと思います。
新企業の参入等の項目もありましたが、そういうこともタブー視せずに、今後関係者の意見も聞きながら当たっていきたいと思いますが、例えば和子牛でいえば現状2,500頭のところを4,000頭目指そうとか、和牛の繁殖のほうでいえば繁殖和牛については3,000頭のベースから5,000頭に増やそうなど考えているところです。これはオレイン55のように今後の有望種もあります。このオレイン55でいうと現在300頭程度というところを1,000頭まで増やせないかとか、ただこれを実現しようと思うと生産力の問題になってくる。これをどういうふうに上手に今後育てていくのか。先ほど企業力の導入も考えてはどうかというお話がありましたが、そういうことだとか、あるいは乳牛の借り腹だとか、いろいろなやり方が今後考えられるだろうと思います。関係者ともよく議論しながら実現を図っていきたいと思います。
また、JAとの役割分担等も農水部長の答弁の中にあるかと思いますが、これも適切な役割分担をしてやっていきたいと考えています。
また、飼料用米については、 現実には急速にこの2〜3年増えてきました。420ヘクタール、2,000トンベースになってきています。これだけ増えてきたのは、やはり関係者の間のいろいろな合意が図られてきたからだと思います。なかなか難しいのです。実際に耕す耕種農家さんからすると、人間の食糧のものと家畜用のものとまざるとなかなか圃場の管理が難しいということがあるし、手続が補助金などをもらおうと思えば面倒だとか、いろいろなこともあって、なかなか耕種農家のほうでもまとまって動きにくい状況がありました。ただ、ここ最近は畜産農家とのマッチングの機会を数多くつくり、現実にここでつくったお米をこちらのほうへ持っていくよというようなことをして、養豚業者とか、あるいは養鶏業者とか、そうしたところも含めたマッチングが図られてきたので、何とかこういうふうになってきたのではないかと思います。今後とも生産者の中の話し合い、それにJAとか私どもも入り自給飼料の拡大に向けて汗をかいていきたいと思います。
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●西山農林水産部長答弁 |
これまで、鳥取県には全国に誇る気高号のような有名な種雄牛を作出して、それが全国に広まって鳥取県の名を高めたという経験があります。そういう有名な種雄牛を本県で作出して、その子ども達が県内の市場に上場され、そこから全国に広がっていくと、そういう中で鳥取和牛が近江牛であったり松阪牛であったり、そのような名立たるブランドとして全国に広がっていくということを和牛王国鳥取のイメージとしては考えています。
その手法としては、5年に1度開催される全国和牛能力共進会で優秀な成績をおさめるということが最も有効であると考えています。このたびの長崎全共の結果を受けて、鳥取県の和牛ビジョンを見直しました。10年後の平成35年を目標年として、数値目標等を再検討しています。先ほども若干知事のほうから紹介がありましたが、和牛子牛の生産頭数を平成35年を目標として4,000頭規模にしていく、それから和牛繁殖の雌牛の頭数を5,000頭規模にしていく、肉牛の出荷頭数を5,000頭規模にしていく、オレイン55の発生頭数を1,000頭規模にしていくというふうな目標を再検討したところです。第11回の宮城大会において優秀な成績をおさめていくよう取り組んでいきたいと考えています。
また、現在企業参入の想定はありません。ただ、石川県に群馬県の大型の肥育の会社が参入されたり、山口県の萩市に島根県の牧場が参入されたりして、それぞれの地域のブランドで生産していくということである面企業参入のような形で地域と協力しながらブランドの確立に取り組むという事例が全国的にも出てきています。こういうような取り組みを検討していきたいと考えています。
また、出荷頭数の目標ですが、10年後に5,000頭規模にしていくと考えていますが、その方法については、1つは公共育成牧場に乳牛が約1,000頭上がっていますが、そこで和牛の受精卵を移植をしていくという方法で和子牛の生産頭数を増加させていく、あるいは和子牛を授乳、保育していく和牛の保育園をつくって安定して育てていくというふうなことで進めてまいりたいと考えています。
また、指導に関しては、和牛ビジョンの中でもJA、県、市町村、関係団体含めてそれぞれ連携して役割分担をしていくという整理をしています。どこどこというわけではなく、それぞれ連携して役割を波及しながら前に進めていくことが重要だと考えています。
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<畜産振興について>bQ |
和牛王国鳥取の私のイメージは、県内で生まれた和子牛を肥育して鳥取和牛として出荷するということです。ところが現実は、県内産の和子牛の大半が但馬や松阪など県外に買い取られて、それぞれ産地の牛肉としてブランドを支えているのが実態です。それで、県内の肥育業者は遠く沖縄や県外から購入して育てている現実が一方であります。
特に、肥育の出荷頭数を増やすためには肥育農家の規模拡大や肥育農家の育成も必要でしょうが、やはり繁殖農家の確保が最大のキーポイントで、よい和子牛を生産することが第一ではないかと思っています。
繁殖農家が減少する中、その対策の1つとして、先ほどありましたが、酪農家と連携して乳牛に和牛の受精卵を移植して県内産の和子牛を確保しようという計画、これも一つの選択肢だと思います。しかし、この10年間に半減した繁殖農家をこれからどう確保していくのか、私はその計画について知事にお伺いしたいと思っています。
また、オレイン55ですが、一つのブランドとして認知されてきました。需要も高くなってきました。しかし、昨年の認定率はわずか14.4%。認定率が非常に低いわけです。市場の需要に応え切れていないのが現状です。定時・定量・定質の出荷ができないと、やっぱりブランドというのは価値が下がってしまうという危険性があるので、オレイン55の増産についてどのような計画で取り組まれるのかお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
先ほど和牛の振興ビジョンのお話をしましたが、我々としても増頭することがブランドづくりにもつながると考えています。実は、平成19年から急速にこの和牛振興にもアクセルを踏んだわけですが、確かに農家の数が減ってきています。特に10年前と比べると半減するということです。5年前からも減ってはいますが、実は和牛の頭数からいくと99%、1%減にとどまっているのです。これは鹿児島とか宮崎よりもこの5年間は減り方が少ないわけです。それだけ県内の関係者と協力しながら何とか増頭に結びつくような対策を考えようとしてきたことのあらわれかと思います。
ただ、この5年や10年の状況を見ていると、一つだけ飛び抜けて増頭がなされているのは北海道です。これが議員の指摘された乳牛に受精卵を入れることで和牛を増やすというやり方をとっておられることだと思います。私どもにも非常に参考になるので、このやり方を今後関係者と協力しながら積極的に導入を目指していきたいと考えています。
ただ、これだと、乳牛の農家が和牛を育てることになるわけですが、実は和牛と乳牛で大分育て方の違いが出るそうです。ふだん乳牛をやっておられる農家さんからすると、和牛は病気とかいろいろなことがあってなかなか扱いが難しいと、飼っていて弱いところがあるということを言われます。育てる場面では、要は産みっ放しにして、それを育てるところではどこかが預かってやると。保育園をつくるという発想です。和牛の保育園をつくってみてはどうかということも新年度関係者と話をして取り組んでいこうかと思っています。このように、新機軸も導入しながら増頭対策に向かっていければと思います。
オレイン55について、認定率が低くなったのは、結局オレイン55に対する注目が高まり、全国が注目するような中で品質のいいオレイン55を要求するマーケットの芽が強く出てきたのです。それで、県内で判定をするときに従来よりも判定基準を厳しくして運用されるようになりました。これが影響して急に認定率が減ったということで、特に3等級のところが下がっているということです。
これは、ある意味ブランドづくりの上でやむを得ないところがあったと思います。現実にも、例えば1月号の料理通信で取材が来られて、これが載っていますが、前田牧場さんとか、とうはく畜産さんとか、そうしたところにオギノというレストランの関係者と絡めながら取材に基づく記事が出ているわけです。非常に評判がいいことがあり、注目が高まってくるとマーケットのほうでは例えば色づきの問題だとか要求度も高まってくる面もあって、こちらもブランドの信用力を高めたいというのもあるので、ある程度マーケットの意見に合わせながら運用しているという面があります。ですから、今年にかけてがたっと落ちましたが、また来年度以降上がっていくと思います。
それを積極的に進めるためにも、例えばつい先日は多美福という種雄牛を導入しました。これは福之国という有名な宮崎系の種雄牛の息子になるわけですが、口蹄疫で宮崎が苦しんでいるときに鳥取県から精子をお分けしたりいろいろなことをして支えようとしたわけです。肥料もこちらから送り込むということをして宮崎の応援を組んだわけですが、そうしたら宮崎県のほうで鳥取県に対する恩返しのような気持ちもあり、また和牛の関係者の方々の働きかけもあって、その結果として、向こうから普通ではちょっとあり得ないような意味でのすばらしい種雄牛をこちらにあてがったということです。これは実は気高の血がつながっていて、そういう関係でオレイン55も非常に有望視されるものです。こういうかけ合わせをさらに展開していくことで、質の高いオレイン55の生産を増やしていきたいと思います。
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<畜産振興について>bR |
前段でちょっとビジョンの話をしたのですが、畜産農家の経営支援というか、農家、JA、県と一体となった連携が必要だということなのですが、私は第三者的に見て、やはりJAのかかわりが非常に弱いと思っています。このビジョンでも畜産農家と県とがやっている感じなのです。私はそういうふうに見えて仕方がない。JAの姿が見えない。やっぱりそこのところをしっかりとJAの連携も深めながらやってほしい。これは注文です。要望として出しておきたいと思います。
先ほど知事から答弁の中でありましたが、2月1日、大阪市中央卸売市場南港市場において開催された全国農業協同組合連合会主催による第32回全農肉牛枝肉共励会において、和牛の部で、琴浦のとうはく畜産の出品牛が一昨年に引き続き4回目の最優秀賞を受賞されました。今年はさらに優秀賞1席も受賞するなど、上位独占となりました。まずは知事にこの結果を受けての評価をお伺いしたいと思いますが、このように県内の肥育農家の肥育技術が全国トップレベルだということは、結果を通して実証されているわけです。
問題は、この全国トップレベルの肥育技術をどう生かしていくのか、そしてオレイン55の牛肉をどう販売していくかだと思います。今後のこの技術を生かす中での販売戦略についての知事の所見をお伺いしたいと思います。
もう1点、飼料米ですが、飼料米トン当たり大体3万円です。トウモロコシは、今円安になりましたが、これまで高いときは大体2万5,000円程度です。今は逆転して、トン当たりトウモロコシのほうが飼料米より高いのです。ですから、そこのところで飼料米の活用の図り方、本当は中山間地で米しかできない湿田の多いところに減反というか、転作奨励を目的とした飼料米をつくれば8万円入りますから、農家にとって大変有利です。やはりそういうのを含めて、例えば飼料米の値段が合えば、養鶏農家も肥育農家も使いたいと言うのです。だから使い方もあると思うのです。満遍なく使おうとするとたくさん要りますからできません。例えば、肥育でもこの棟は飼料米で育てた牛だとか、養鶏にしてもそうです。要するにこの鶏は飼料米を食べて育った鶏ですよとか、その辺を量によってうまく使い分けしながら活用していく。ただ、問題はトウモロコシと飼料米との価格差です。今はトウモロコシが高いからいいですが、例えば円高が進んでトウモロコシの価格が下がったというときに、よく下がっても5,000円も差がつかないと思うのです。ですから、例えば鳥取県の飼料米を5,000トンなら5,000トンという目標を立てて、そしてそのあい差を価格補填をしてでも飼料米を県内の肥育とか養鶏に使っていくということに取り組んだらどうだろうかと。そうすると鳥取和牛、鳥取の鶏は鳥取県産の飼料米を食べて育ったものだと消費者にアピールできる一つのコンテンツができると思います。
そういう意味を含めて、飼料米の作付というか、もっともっと増やしたほうがいいではないかと思うのです。
先ほど言われたように、一般の米と混ざるのは嫌です。そこのところは今県下でカントリーがあくようになったので、そのカントリーを使いながら飼料米をどこか1カ所に持っていって使うというようなことも考えたら、と思うのですが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
オレイン55にいては、先般、大阪南港で開かれた共励会においてグランドチャンピオン、1位の優勝だけでなくて、1等1席のいわば銀メダル、ワンツーフィニッシュをとうはく畜産さんがされたわけで、この快挙をお喜び申し上げたいと思います。平成19年や23年に引き続き、しかも今回は上位独占という快挙で、すばらしい成績だったと思います。BMS、脂肪交雑の状況も12という最高ランクでした。そのようになかなかない出来栄えだったと思いますが、これもやはり議員の言われる高い肥育技術の成果だと思います。
問題は、こういう高い肥育技術が県内でも随分と発展してきている。さらにオレイン55のようなものを増やしていく、オレイン酸を増やしていくようなこと、そうした新しい飼養技術、こういうものを組み合わせてオレイン55の該当となる牛の増産を図っていくということだと思います。
それをどのように売っていくかというお尋ねなのですが、先ほど言ったようにだんだんと料理雑誌等でも取り上げられるようになってきて、ブランド力がついてきていますし、要求水準も高いものになっています。高級料理店向けに出ていくような道が開かれてきました。先日浜松でエンジン01の大会があったときに、そこである料理関係者とお会いしました。この方は、金田中という料亭を経営されておられる社長の岡副さんという方です。金田中というのは、かつて田中角栄さんとか金丸信さんとかの御愛用のお店ということで、そこが銀座にステーキの専門店など出しているわけです。そういうステーキの専門店で使う牛として、鳥取市で行われたエンジン01のときにオレイン55と出会われて、これはいいと認められて、それ以来ずっと使っていただいています。その状況も先般岡副社長とお話をしたら、喜々として語っておられました。はなふささんという肉屋さんが仲介をして、谷口さんという若い和牛農家が出されている牛、いわゆる万葉牛を使っておられるわけです。また、エスキスという、これも超有名店ですが、そこもやはり人気シェフ、ベガさんが気に入られて、オレイン55をその後も使っておられると。このようなことで、とてもおいしいし、ヘルシーなすばらしいお肉だと、エクセレントなものだというような売り込みでこれからもやっていって顧客を増やしていけば、付加価値も高く、農家さんの所得も上がってくるのではないかと思います。
そのような販売戦略で今後も関係者と工夫をしながらやっていきたいと思いますし、長野県、大分県ともオレインさん国同盟というもの組んでキャンペーンを一緒にやろうということも話し合っており、新年度も事業予算を考えています。
飼料用米についてですが、詳細は農水部長からお答えしたいと思います。
恐らくこの後、農政についてはいろいろな提案が政府サイドから出てくる時期になってくるかと思います。その中で、日本型の直接支払いだとか経営安定支援制度だとか、この辺もガラガラポンにこれから向こう1年間でなってくるかと思います。この辺注視をしなければなりません。それとの関係で、今おっしゃるような飼料米の価格の問題も変わってくるかと思います。そうした環境の変化もにらみながら、我々としてもできる限りマッチングを果たして円滑な作付や流通に貢献していきたいと思います。
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●西山農林水産部長答弁 |
現在の価格補償、戸別所得補償の制度、10アール当たり8万円の交付金が出されるということを前提にしてこれまで飼料用米の推進を図ってきています。やっと生産側と需要側のマッチングが安定してきて、急増していましたが、今安定した生産にモードが移ってきました。
議員の言われるように、飼料用米の生産というのは、例えば中山間地等で米しかつくりにくいというような地域には水田が有効活用できたり、一方で飼料の安定供給につながるという点でよい面はありますが、やはり為替の問題、それから制度の問題で非常に不安定な部分があります。今後とも実需者と生産者のマッチングを図りながら推進を図っていきたいと考えていますが、制度の動向等も踏まえて慎重に対応する部分もあると認識しています。
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<畜産振興について>4 |
県内には本当に全国トップレベルの肥育技術、そして優秀な若い後継者がいるわけです。要するに素地はあるわけです。ぜひとも畜産関係者の皆さん方、自信を持って鳥取県の畜産のために頑張っていただくことをお願いします。
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