平成25年9月定例会一般質問(平成25年9月24日)No.1

<手話言語条例について>

 
 

 鳥取県手話言語条例については、さきの福田議員の代表質問でも議論されたところです。個々の条文については議員間でいろいろな議論もあるところですが、私は条文の細やかな問題でなく、基本的な部分について知事の認識をお伺いしたいと思います。
 平井知事は、手話ができなかった学生のころの経験を踏まえ、聾者とのコミュニケーションをとるために手話が必要不可欠、県が障害者とともに生きるという車のエンジンを回す、県にはその責任があり提案したと、提案の思いを熱く語られました。
 そもそも手話の歴史は、条例の前文にあるように時の為政者により変遷してきた苦難の歴史でもあり、なかなか社会的に言語としての認識が得られなかったのも事実です。2006年12月、国連総会において障害者権利条約が全会一致で採択され、手話は言語であると定義されていますが、残念ながら、いまだ我が国は条約を批准していないのが現状です。こうした経過もあり、我が国では障害者基本法で手話が意思疎通の言語として位置づけされていながら社会的に認知されてこなかったものと思いますが、知事の所見をお伺いいたします。
 私が役場に勤めていた27年前頃、聾学校を卒業したばかりの聴覚障害者の女性と一緒に仕事をしたことがありました。課に配属されたときには、私自身を含め課員の中には手話ができる者が一人もいなくて心配と戸惑いがありました。彼女が口話法を学んでいたため私たちの思いは理解していただきましたが、彼女からの意思は筆記に頼るだけでした。その後、課員の何人かは町の社会福祉協議会で手話を学び、業務に支障が出ることなくコミュニケーションがとれるようになり、逆に彼女との出会いによってコミュニケーションツールとして手話の必要性、重要性を改めて認識したことを、この条例の提案により思い起こされました。今思えば、障害者雇用が十分に理解されていない当時、聴覚障害を持つ彼女を採用された、時の町長の感性と英断に敬服するとともに、共生社会のあり方の入り口を学ばせていただいたと感謝しています。
 このたび提案された手話言語条例、世界ではフィンランド、ニュージーランド、ハンガリーの3カ国で法整備されていますが、地方自治体としては我が国では初めてです。つまり、自治体として条例化するのは世界初と言っても過言ではないと思います。したがって、条文の表記についてはいろいろなご意見もあるかと思います。対案を示しながら議論が進めばいいことで、大切なことは完璧な条例でなくてもまず動かしてみる、課題が出てくれば見直すという弾力的な運用でも私はよいと思っています。つまり、聾者の皆さんにとって意思疎通を図る上で本当の力となり、共生社会実現に向け、未来が開ける条例になればよいと思います。知事の所見をお伺いします。

●知事答弁

 

 社会的な認知ないし手話をめぐる国際的な情勢についてお話申し上げます。これについては、1880年のミラノにおける国際会議の中で、手話の扱いということと口話の扱いということの混乱が始まるわけです。手話というのはある程度長い期間、確立されてきたわけですが、口話法ということで、これをやれば健常者とコミュニケーションもとりやすいだろう、これは決して、何か迫害しようとか権利を剥奪しようということでやったわけではなく、むしろコミュニケーションを図るための一つの考え方として進められたものだったと思います。その後、日本においても昭和8年、当時の鳩山一郎文部大臣が、口話法で教育を行うということを決定されました。鳥取県でもその前に聾学校ができているわけですが、そういう時代の中で手話を使いながら教育が行われていたわけです。
 新しい教育法ないし新しいコミュニケーションのやり方として当時は期待があったのだと思いますが、ただ残念ながら、これは健常者の側の論理で障害者の方に不便を強いる面もありましたし、また、コミュニケーションが十分とれなくなってしまって、それで逆に障害者の方にとって社会的なハンディキャップを生んでしまったという面が歴史的にはあります。これを見直すのに随分時間がかかりましたが、日本の教育でいえば、鳩山大臣の決定から60年たって、ようやく手話を使った教育を行うというふうに軌道修正がなされるに至りました。平成5年まで実にそれだけの時間がかかったわけです。
 我々は、やはりここでもう一度システムチェンジをしなければいけないと思います。このような世界的情勢の中で21世紀に入って、まずは国連のほうの障害者の条約に基づいた手話の認知がされましたし、さらにフィンランドの憲法とかニュージーランドの法律、ハンガリーの法律、さらにスウェーデンでも言語法が制定され、少数民族の言語とあわせてこうした手話も、スウェーデン手話ですが、スウェーデン手話も国語として認知され、その利用の促進が図られるように国全体の体制が整いました。実はこういう法律の世界では、21世紀に入り急速に認知が進みつつありますが、まだまだ世界の各国で浸透したわけではありません。では、世界の各地で手話がまだ認知されていないかというと、そうではなくて、例えばアメリカでもそうですが、州ごとに、やはり一つの言語として手話の教育というものが行われています。
 このように飛躍的に世界情勢としては進んできているわけですが、日本では手話言語法が切望されているものの、まだ制定されていないという状況です。ですから、私たちが鳥取県から国を変える思いで条例を制定する意味はあるのではないかと思います。地域社会の中で手話と親しんで暮らしていける環境を整えることは、ローカルに可能だと思います。もちろんパーフェクトにはできない、完全にはできないかもしれませんが、心を満たす、心を通ずる程度のことはできるかもしれない。また、我々がやることでいろいろと波及が広がってくるかもしれません。ですから、社会的に認知されてこなかったということの歴史的な反省も踏まえながら、条例を制定する意義はあるのではないかと思います。
 また、議員が赤碕町役場で経験された話をされました。赤碕は人権擁護の意味では先進的な取り組みをいろいろとされておられて、その意味の施策では他市町村に抜きん出たものがありましたが、そういう中で職員の採用に当たっても聾唖者を採用されたというのは敬服に値することだと思います。議員も体験されたように、なかなかコミュニケーションをとることの難しさがあって、鳥取県であれば自然とそういう人がいれば周りの人が手話を覚えたくなる、そういう人間性があると私は信じます。そのようなことで、じわじわと広がっていく可能性があるのではないかと期待しており、未来が変わる条例になると思います。その意味で、議員の皆様の御支援と御協力をいただければと思います。
 これについて、たまたまですが、この週末21日に、現在開かれている鳥の演劇祭の中で手話の劇が上演されました。鳥取聾学校の生徒さんが鳥の劇場の中島さんの演出を受けて、かなり指導が入ったわけですが、みずから創作劇を上演されたのです。ストーリーとしては、耳の聞こえない人がいて、その人たちがいろんな役割を社会で果たそうとしていくわけです。闇の精がいるのですが、闇の精は健常者とコミュニケーションがとれない、普通の人ととれないことで悩みながら、いわばひきこもりのようになる。それで自分の世界だけに閉じこもってしまうのですが、そこから旅立っていき、未来への旅ということなのですが、健常者の人とのコミュニケーションを手話を通じてとれる、そういうことで心を開いていく、そうやって未来が変わっていくと、そういうような内容のシンボリックな演劇でした。
 聴衆の方も予想以上に多く集まったようで、観客の皆様の評判も上々であったというふうに伺っています。来年は障害者の芸術文化祭を鳥取県でやることにしたいと考えており、ぜひこうした手話を通じたコミュニケーションの幅が広がって、実際に鳥取聾学校の子ども達が夢に見たような、そういう未来ができることを願ってやみません。

<手話言語条例について>bQ

 

 障害者基本法によると、全ての障害者が障害者でない者と等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としながら、全ての障害者の皆さんが可能な限り言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段としての選択の機会が確保されること等、国及び地方公共団体の責務と明記されております。そうした意味から、このたびの手話言語条例は当然、県の責務として意義ある提案と私は理解しています。しかし、多くの議員の皆さんも知事の英断に基本的な違和感はないと思いますが、ただ、私の思いとしては、鳥取県障害者計画を見てみると、手話の位置づけはこれまで全くされていません。やはり新たに手話の位置づけを県でもすべきだと思いますし、将来的に見ると、意思疎通の手段として、手話ばかりでなく要約筆記もあります。やはり何らかの位置づけを検討すべきと思っています。さらには、盲の皆さんにとっては点字がまさに言語であり、点字についても何らかの位置づけを明確にすべきだと私は思っています。
 したがって、最終的には情報コミュニケーション条例のような形で発展的に、あらゆる障害を持つ人でも意思疎通の手段を言語として社会的に認知していく、そのような検討も必要でないかと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。 

●知事答弁
 
 情報コミュニケーションの担保については、手話について今回、言語として正面から認めて、それに対する促進策、環境づくりをしましょうというご提案をしていますが、障害者総合支援法が今年成立、施行されているわけです。この中に、3年後を目途として、障害者のコミュニケーションの支援について措置を検討するという附則が入りました。これに私どもも期待していますし、関係者も期待しておられると思います。いわば総合コミュニケーション法、あるいは障害者コミュニケーション支援法とか、そのようなことになるかもしれませんが、そういう立法措置が今後検討される局面に入っていると思います。
 言語かどうかということで言うと、言語とは言えないものもあります。手話は、国際的に言語として認知されていて、英語でもサインランゲージという言葉で言われるように、独自の文法を持ち、独自のコミュニケーションの手段になっています。いろいろな特性があり、細かい一字一字に当たるような表現は余りしません。むしろ概念で組み合わせて使えるという手法で、そういう意味で独自の言語だと言えるわけですが、点字だとか要約筆記は、これは音声に基づく日本語、また筆記に基づく日本語のバリエーションで、日本語の伝達ツールが違うものというふうに学問的には整理されるものだと思います。ただ、言語でないからそれは排撃されるということではなく、むしろ関係者の人たちもそういうコミュニケーション支援を望んでおられるわけで、それについて、我々としてもなすべきことをなしていきたいと思います。例えばライトハウスという施設がありますが、そうしたところも十分機能はしていますが、まだまだ情報量が十分でない。そういうことを支援していくためにはどういうふうにしたらいいのか、関係者とも話し合いを始めております。

 また要約筆記も、人材育成とかさまざまな課題もあろうかと思います。特に中途失聴の方については手話を読み取ったりするのはなかなか大変で、それよりも要約筆記のほうが現実的に、全文は見えなくても大意は通じるということになるので、そうしたことを活用していくことは十分必要です。ですから、それは手話と同等に、我々としても対策とっていきたいと思います。

<手話言語条例について>bR

 

 
障害を知り、ともに生きる地域社会をつくろうと始まったあいサポート運動、今まさに全国的に大きな広がりを見せてきました。このあいサポート運動の広がりとあわせて手話言語条例も広がればと私どもも願うところです。
 知事として、手話言語条例を全国的な運動とする呼びかけをされていく思いがあるのか、あるとすれば、今後の構想についてお聞かせをいただきたいと思います。
 私がさらに望むのは、いろんな課題があるにせよ、我が国として早く国連の障害者権利条約を批准し、国家として障害者の皆さんとまさに正面から向き合う社会、共生する社会を目指すべきだと。知事にはそういう意味で国へ早期批准を物申すべきだと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 

●知事答弁


 これについては、ぜひそうした方向で取り組みたいと思います。まず手話言語条例については、ご審議を賜り皆様のご賛同が得られれば今議会で制定ということになるかと思いますが、あいサポート運動同様に、我々として障害者の皆様が笑顔で過ごせる地域社会を我が国のあちこちで実現していく必要があるかと思います。我々も一つのいわばチャレンジに入っていくわけです。条例をつくるだけでは意味がない、むしろその後の話で、条例とともに予算も提出したことにも意思表示をさせていただきましたが、いろんな施策をこれを皮切りにしてやっていく必要があるだろうと。それはおっしゃるような要約筆記や、あるいは点字等のほかのコミュニケーション手段にも波及させていかなければなりませんし、我々としても取り組んでいく方針です。
 これは実は全国的な団体も非常に注目をしてくださっていて、11月の下旬には東京で開かれる手話言語法ないし手話言語条例といった、そういうシンポジウムを開くときに、鳥取県からも今回の審議の状況等を話してくれというか、表現してくれと、こういうことで私も呼ばれたところです。これは全日本ろうあ連の会長さんのほうからじきじきに依頼が来ました。我々としても、これから議会の審議のいろんな議論も総括させていただきながら、国全体での動きにつながることができるように報告させていただきたいと考えています。
 また、全国メディアでも、手話ニュースだとか聾唖者の方のコミュニケーション手段の中で熱心にこの問題を取り上げているところです。そういう意味でインパクトがあるのでしょう。石狩市が同様の手話言語条例をつくるという動きになってきていて、今その成案を練っている最中だと思います。私どもでこれは検討を始めると表明した後、そういう動きが北海道の中でも生まれてきています。大切なのは、恐らく当事者の皆さんだと思います。当事者の皆さんが私たちのことをモデルとして、他地域でも働きかけることになってこようかと思います。そうなると、住民の皆さんですので、住民の声を聞いた視点でこうした動きが広がってくることになると期待をしています。
 また、障害者権利条約については、環境は整いつつあると思うのです。このたびの総合支援法ができ上がりました。まだまだ十分でないということで、先ほどのコミュニケーションの問題のように3年後に先送りされているものもありますが、ただ、前進していることは間違いないわけです。条例批准の環境は整いつつあると思いますので、我々としても批准を国に対して求めていきたいと思います。

 

<手話言語条例について>bS

 
 
 山嵜警察本部長に改めて要望したいのですが、地域の皆さんの安全を守るという、生活を守ると
いう意味で、特におまわりさんなど地域を巡回して、そして聾者の皆さんとの接触もやはり緊急事態のときには出てくると思うのです。やはり警察官の皆さんも積極的に最低限の手話、助けてとか何かお願いしてという最低限の手話は警察官にも身につけていただくように、ぜひともそういう研修をお願いしたいということを、これは私からのお願いです。よろしくお願いしたいと思います。