<公共工事と経済対策について> |
平成24年2月の経済対策補正から25年の当初予算とあわせて始まった14カ月予算、今回も昨年度と同様に14カ月予算が編成されました。これら14カ月予算による25年度分の公共事業費は624億円、26年度が530億円、この2カ年だけで予算総額の16.1%に当たる1,154億円が計上されております。
しかし、今日までの公共事業の発注状況の中、建設業界を取り巻く環境は、工事発注量の減少に伴い、格付の変更、ダンピング受注、資金繰りの困窮等、極めて厳しい環境に置かれ、経営規模の縮小、技術者の確保、資材の確保等、多くの課題を抱えた中での公共事業中心の経済対策です。
この間、多くの建設業者は体力が持たず倒産したり、廃業したり、他業種への転換などを余儀なくされてきました。都市部に比べ、民間需要が少ない我が県においては、公共事業に頼らざるを得ない環境の中で、私に言わせれば、自治体の公共工事に振り回されてきた業界の代表であると思っています。建設業者の皆さんは、改めてこの機会が、背伸びをするのではなく、それぞれの企業が体力強化と自立に向けての立て直しになればと願うところです。
ところで、経済対策ですので、公共事業の総額確保だけが最終目的でなく、真に問われるのは、工事発注の実効性と地元経済への浸透度だと私は思います。この大量の工事発注の実効性と地元への浸透度を高めるため、県としてどのような方策で取り組まれているのか、また、今日までの成果をどのように評価されているのか、知事にお伺いします。
次に、25年度事業については、9月、12月、2月議会において603件、215億4,300万円の繰り越し承認が行われています。今月もまだ20日余り残しているわけですが、なかなか最終的な繰り越し事業を見込むことはできないかと思いますが、現時点での見通しについて、知事の所見をお伺いします。
また、消費税の引き上げが4月から実施されます。本来なら、単年度会計ですから、年度末までに完了すれば、25年度事業分には新たな消費税が適用されないのが原則ですが、事業の繰り越しにより、どの程度消費税の上乗せが必要となるのか。また、上乗せ分の財源は誰がどう負担するのか、知事にお伺いします。
さらに、これだけ多くの仕事が出てくると、採算が合わない仕事に手を出したくないのは、ごくごく自然な考え方です。建設工事の入札不調がどのくらいあるのか。また、不調に終わった建設工事はどうされるのか、知事にお伺いします。
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●知事答弁 |
我々としては、例えば下請対策、これも議員のほうからもありましたし、度重ねていろいろと議論がありましたが、そういうところの監視を強めていく。それから、最低制限価格等のいわば利幅をきちんと確保する策、これについても十分対応をしてきたと思います。例えば平成22年度に、予定価格、これのほうについて、90%程度に設定するということにしましたし、また、最近でも低入札価格の調査基準、これを88%にとったり、それから、失格基準を80から85と、2億円以上時の工事とか、そういうレンジで実施したりしており、こういうようなことで、確実に入札価格の適正化は進んできていると思います。
その証左として、最近のデータで、いわば売上高に係る利幅のところですが、2.2%ほど確保されてきているというデータがあり、それから、平成25年度の給与総額、これも建設業界で5%ほど上がっているというデータがあります。また、実際の雇用の人数についても、減少が続いていましたが、120数名プラスに転じるということで、このように動きが出てきています。今ベアアップ等、給与の引き上げが全国的に話題になっていますが、本県の建設業界のほうでも、今の感触としては8割、9割方の企業で今度給与を引き上げるという方向性が聞こえてきています。そういうように、これまで工事発注についてさまざまな努力をしてきたこと、これが実りつつあるかなという状況です。
ただ、なお残る課題はいろいろあろうかと思います。議員のほうでも御質問がありましたが、発注の仕方、どうしても繰り越しが今増えてきていますので、その発注の仕方を適正化して、平準化した発注にするということでないと、総量としての建設工事がはけなくなってしまうと。また、いわば過剰に人を抱えざるを得ない、特に技術者の数だとかという制限もありますので。いろいろと考えてみると、その発注の平準化等々、まだ改善すべき課題はいろいろと残っているだろうと思います。今後も謙虚に、業界や、あるいは関係者の意見もお伺いしながら、改善に努めていきたいと思います。
繰り越し事業について、現時点での見通しということですが、これは県土整備部長からお答えしたいと思います。
また、消費税が繰り越し分について係る、その上乗せの財源はいかがかということですが、これはざっと試算してみると、1億2,000万円ほど上乗せの消費税増税の影響が出ざるを得ないのかなということです。それについては、いろんな工夫で対処していける範囲内ではないかなとににらんでいますが、これは現場とよく調整をさせていただいて、妙に工事にブレーキがかかるとかということにならないように、しわ寄せがどこかに寄るようなことがなるべくないようにということでさせていただきたいと思います。
若干、100万円かそこら、地元負担金への影響等も考え得るわけですが、そういう意味では、できるだけそうした繰り越しにつながらないように努力して、影響を最小限にとどめたいと思います。税制の引き上げ自体は国全体の制度ですので、いたし方ない面がありますが、影響は過小、できるだけ小さくとどめるように努力したいと思います。
建設工事の不調については、詳細は県土整備部長から申し上げたいと思います。
いろんな要因があります。例えば工事を発注するときに、技術者等の人材が必要ですが、今かなり工事量が増えてきており、それを確保しながら、入札に手を挙げることが難しいという場合だとか、それから、東北のほうの震災の影響等があり、東北のほうでは、本当に入札の不調が多いのでが、全国的にも、例えば資材費が高騰するとか、人件費も、先ほど申したように、いい意味で引き上がってきている面もあったりして、そうしたところの影響だとか、さらに、工事数が増えてきているので、手持ちの工事をそれぞれの事業者さんが抱えておられて、正直、その意味でも手が回らないというようなことなど、いろんな要因が複合して不調ということが出てきていると思います。 ただ、その場合には、後ほどまた御説明しますが、再度、契約する努力をさせていただいて、その不調の影響が残らないように、最大限の努力をさせていただいているところです。
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●長谷川県土整備部長答弁 |
今議会、最終的な繰り越し承認額は、議員御指摘のとおり215億4,000万円余です。この内訳は、11月議会までに65億3,000万円余を認めていただき、今議会で経済対策補正分として41億6,000万円余の承認をお願いしているところです。また、当初予算等についても、今議会で180億4,000万円余の繰り越し承認をお願いしているところです。
そこで、この年度末に向けてですが、現在繰り越し箇所について、工事を進めるとともに、前払い金や出来高払いの活用を受注者の皆様へ周知しています。そして、年度払いをできるだけ促進することで、実際の繰越額、承認ベースでいくと215億4,000万円余ですが、この額をできるだけ圧縮、削減するように努めているということです。
現時点での決算ベースでの見通しは、経済対策補正分の41億6,000万円を除くと、約147億円余を見込んでいます。この金額は、過去10年間の平均と比べると、約10%、15億円上回るということですが、これは、昨年経済対策に加えて、7月中旬からの豪雨等もあり、こういう影響が出てきたものと考えています。
次に、入札不調のことです。
入札不調は、工事件数でいくと、2月末までに今年度84件ありました。これは、入札全ての件数の中の発注率で見ると8.5%ということです。入札不調は10月ごろから増加して、12月がピークでした。現在は落ちついた状態に戻ってきているということです。
その原因ですが、我々が分析しているのは、14カ月予算もありましたし、昨年の秋から山陰道や災害復旧関係工事等も出てきました。このように、国、県、市町村の工事が重なったということで、業者さんの手持ち工事が増加しましたし、技術者が配置できないという状況も出てきて、全国的なことも影響しましたが、労務や資材の一部が上昇したということもあります。それから、現場条件により、採算性の吟味を業者さんもし始めたというような、いろんな要因が複合的に影響したものと考えています。特に予定価格が2,000万円未満の小規模な工事で入札不調が多く発生しています。これは、全体の8割に達しているということです。
不調に終わった工事の対応ですが、まず、原因を工事ごとに分析した上で、発注時期の調整、いわゆる手持ち工事が多いのであれば、格付を変えるとか、あるいは入札参加の条件を見直すとかする。あるいは近接工事、近くで同じような工事をやっている業者さんがあれば、近接工事の業者さんと随意契約をやる。あるいは工事内容の見直しを行うなどによって、再入札を行って、契約を進めているところです。
現在、84件の工事の入札不調がありましたが、そのうち7割強は契約済みということで、残りについても、今発注準備を進めているということです。
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<公共工事と経済対策について>bQ |
入札不調、84件ということで、8.5%、結構割合は高いと見ています。複合的な要因があるということのようですが、やはりできる限り、例えば西部においては災害復旧がたくさん出たということの中で、主任技術者のいろんな条件等を見直しされましたよね。やはりそういうものをこの時期について、できるものは、最低限本当に、その業者の力量を上回るような改革はだめでしょうが、例えば主任技術者のいわゆる入札条件で、1カ月間、準備期間は工事が完了すればいいよとか、国土交通省並みですね。その程度の規制緩和は、中部、東部もやりながら、やはりしっかりと今のある公共事業を落としていくということを私はお願いしたいと思いますが、これはまた改めてその辺の見解をお伺いしたいと思います。
鳥取県は産業育成条例を制定しており、県では1次下請については、県内業者に限定し、2次下請については、その限定もなく、100万円以上のものについては、報告にとどめられています。経済対策ですから、発注した工事のお金がしっかりと地域に流通させなければ、私はその効果がないと思っています。したがって、極端な話をすると、特殊な工事を除き、一般的な工事については、やはり最低8割から9割程度は県内の末端までお金が流れる仕組みをしなければ、経済対策の意義と効果がないと思っています。
そのために、2次下請まで県内業者という指定ができないのか、知事に改めてお伺いします。
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●知事答弁 |
詳細は県土整備部長からお答えしたいと思いますが、先ほど申しましたように、結局技術者の配置等がクリアできないと、その入札に参加できないということになり、今回西部のほうでの災害発生の状況等もあり、特別な事情ということで、技術者基準を緩和したというのが実態です。基本的には、その入札制度の枠組みは建設業協会だとか、さまざまな有識者の方の御意見も聞きながら、議論した上で動かしているところで、今後とも議会ともよく相談させていただきながら、順次考えていくということではないかなと思います。
次に、2次下請については、建設業法上の契約自由の原則があり、どうしても限界があることは仕方がないところかなと思いますが、例えばお願いベースというか、そうした指針的な、そういう対応で協力を関係事業者に求めていくというようなことは考えられるかなと思います。ちょっとこれは検討させていただきたいと思います。
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●長谷川県土整備部長答弁 |
工事現場には、建設業者さんは現場代理人と主任技術者を必ず配置しなくてはなりません。そして、現場代理人はその現場に常駐ということになっていますし、主任技術者は、2,500万円以上のものであれば専任、2,500万円未満であっても、県のほうの規定で2件までということになっています。
そこで、7月15日の西部の豪雨に伴って、秋以降、県、市町村の災害復旧が非常に出てきたということがあったものですから、西部地域に限って、西部地域の特殊な事情ということで、技術者要件の緩和を11月から行っています。その内容は、現場代理人については、災害復旧に限って、その管内でもう1件担当することができるということで、2件まで担当できるようにしました。それと、主任技術者についても、本来は契約から1週間以内にその現場を担当しないといけないのですが、1カ月以内であれば、ある一定の要件を満たせばオーケーですよというような緩和をしたということです。
これは、あくまで災害復旧に限って、西部地域で行った緩和ですので、この結果を検証した上で、今後のことについては、入札契約審議会だとか、建設業界、あるいは議会にも相談させていただきながら、検討していきたいと考えています。
次に、1次下請までは、契約書の中で県内の建設業者を使ってくださいと規定していますが、2次下請にまでなると、建設業法の関係で、契約、いわゆる元請と下請は契約を自由にすることができるという規定がありますので、県のほうで元請に対して2次下請のことまで言及することは、この規定に抵触するおそれがあるということで、今まではやっていません。議員のおっしゃるとおりです。
しかし、2次下請に行ったときに、さらに3次下請、4次下請となって、重層的な下請構造になったり、あるいはそのしわ寄せが建設技能労働者に影響を与えるということも懸念されるので、今後の検討ですが、要綱という形、あるいは指針という形で県の基準を設けて、その基準の中に、2次下請についても県内業者を使ってくださいというようなことを記載し、それをもって元請業者さん、1次下請さんのほうに要請、お願いのようなベースの仕組みができないか、今後建設業界とも相談しながら検討していきたいと考えています。
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<公共工事と経済対策について>bR |
今下請の問題がありましたが、これは土木工事ではなしに、建築関係ですよね。やはり1次下請専門の大きな業者もあるのです。そうしたときに、県外業者が次々入ってくるのですよ。私のところもそういう通報も入っていますが、経済対策として公金を使って発注したと。しかし、末端を見てみたら、県外にたくさんお金が流れていたのでは、経済対策にならないのではないですか。そこのところをしっかりと、例えば10億円の工事のうち、本当に何ぼこの鳥取県に残るのか、県民の中に流通するのか、やはり私はそれが経済対策としての真価が問われる部分だと思うのです。何か今聞いていると、いろんな条件の中でなかなか難しいですよということだけで終わっているのではないかと思うのです。改めて本当に経済対策なら経済対策して、しっかりと県民の皆さんの間にお金が回る仕組み、それを私は前向きに検討していただきたいということを、これはもう言いませんから、お願いです。よろしくお願いしたいと思います。
不調に終わった建設工事ですが、改めて発注しておられるようです。業者の皆さんは工事量がやはり多くても小さくてもしっかりした工事を取り組んでいるわけですから、採算ベースもあわせてですが、やはり設計なされるべきだと思います。
特に歩掛かりが大きな事業も、小さい事業もほとんど歩掛かりに変更はないのです。やはり小さい工事はどうしても現実的には歩掛かりが高くつくと思うのです。その歩掛かりを見直すことができないのか。そうなれば、小さい工事でもしっかりと業者も取り組めるのではないかと思いますが、それについての答弁をお願いしたいと思います。
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●知事答弁 |
詳細は県土整備部長から申し上げますが、当然ながら、実勢に応じて見直しをしていくということになろうかと思います。
つい先月も6.6%人件費の見直しをするとかというような変更をしたところで、柔軟に対応させていただきたいと思います。
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●長谷川県土整備部長答弁 |
公共工事の予定価格は、工事規模に応じて、諸経費というものをいろいろと変えて算定しています。工事規模が小さいほど諸経費は手厚く見るというようなことで、一定の補正をかけながら、予定価格を算定しているということです。
それともう一つ、歩掛かりです。歩掛かりというのは、その工事を行うための労務とか、あるいは機械がどの程度の時間なり、人役が必要かというものです。これについても、工事規模に応じて補正を行っています。それは機械においてもそうですし、施工によっても、いろんな工種によってもそうです。
これは、施工実態に応じて行っているということですが、もし仮にその施工実態と乖離しているようなものがあれば、速やかに特別調査を行って、実態に即して柔軟に対応できるように取り組んでいきたいと考えています。
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<公共工事と経済対策について>bS |
歩掛かりなどについては、それぞれの現場がありますので、しっかりと、そういうものを配慮しながら対応していただきたいと思います。
最後になりますが、今経済対策として多くの公共事業が予算化されておりますが、業者からすれば、一時的なもので、将来も引き続き多くの公共事業の発注が見込めそうもないから、新たに職員を雇ってまで対応するのでなく、現員で対応できる工事量をこなしていきたとい話す業者もおられました。私たちの社会生活を送る上で、インフラ整備は不可欠で、建設業の皆さんとは災害時の緊急対応、復旧等で必要なパートナーであると思います。したがって、必要なインフラ整備を計画的に進めることにより、建設業者の皆さんにもよい仕事をしっかりしていただき、将来もよいパートナーとして緊張感の中でもしっかりとした信頼関係を維持できることを望むわけですが、最後に、知事にその所見とその対応策についてお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
建設業など従事者の方との信頼関係も保ちながら、今後もやっていく必要があります。議員がきょう御指摘いただきました歩掛かりを初めとした諸制度、それから、下請の制度の整備だとか、さらに、人件費に対応するような将来的な発注の見込みなどのイメージを共有する等々、いろんな工夫があろうかと思います。特に災害が起こった際は、建設業の皆様がいなければ、あっという間に地域社会は崩壊してしまいますので、信頼関係、パートナーシップを大切にしてやっていきたいと思います。これからもよく議会とも議論をさせていただきながら、県の重要な雇用の場、経済活性の場として、建設事業の皆様とも、ともに歩んでいきたいと思います。
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<公共工事と経済対策について>bT |
本日は、財政問題と公共事業を中心に質問をさせていただきました。本当に地方の財源を確保するという意味の中で、たくさんの課題があると思うのです。特に交付税特会の借入金、昨年度から1,000億円ずつ償還が始まりました。これもしばらくずっと続きます。本当にこれも大きな地方にとっての課題です。それから、先ほど前段で申し上げましたが、公共施設等の除去についての地方債の特例措置、これもできましたが、交付税の裏打ちはないのです。やはりそういう制度をもっとしっかりと充実していかないと、人口減少社会の中にあって、いろんな公共施設等を、合併も含めて見直さなければならないのです。やはり地方は本当にそういう意味で、いろんな条件整備を、環境整備を進めなければならない。たくさんの余分な経費が要るわけです。それも含めて、知事には、県のみならず、市町村の皆さんの声も聞きながら、国にしっかりと声を上げていただくことをお願いします。
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