<地方創生について> |
地方創生、本当に耳障りの良い言葉ですね。今の安倍内閣、私ども民主党にとっては対峙すべき政党ですが、安倍政権の政権運営については、感心するくらい有権者の心をくすぐる美辞麗句の政策、柔と剛の戦略には驚かされます。しかも圧倒的な与党を背景に抗生物質と毒薬を同時に飲むアベノミクスという経済対策に始まり、10年間で農業所得の倍増、党内でも議論が二分していた特定秘密保護法案の成立、集団的自衛権行使の閣議決定、TPPに反対するJAには農協中央会解体を突きつけ、支持率が下がると安倍内閣改造、さらには地方創生の発表等々と政策の柔と剛を巧みに織りまぜた戦略には、政治的対立軸にありながら、安倍政権維持への執念には感心させられるものがあります。
人口減少問題がクローズアップされる中、このたびの地方創生もその一つとして提案された政策ですが、果たしてその実効性についていささか疑問を持っています。つまり日本創成会議・人口減少問題検討分科会の報告を受け、慌ただしく持続可能な社会をつくろうと急ごしらえの政策であり、具体的な政策はこれからです。相も変わらず、前へ前へという政策だと思います。私としては、地方創生への思いはかねてから地方の声として政府には届いていた地方の思いでもあったはずで、今さらながらという思いもあります。
本当に地方創生を進めるためには、都市部への一極集中政策を進めてきた今日までの我が国の政策をどこかで総括し、既存の政策を見直すことから始めるべきだと思いますが、平井知事の所見をお伺いします。また、何をもって地方創生というのか。そして地方創生を具現化するために望まれる具体的な政策をお聞かせください。
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●知事答弁 |
考えてみると、我が国はもともと分権国家でした。明治の御代に維新が成り立ち、これで御一新によって中央集権政治が意図的につくられたわけです。ただ、その前をずっと振り返ってると、江戸時代、幕藩体制ですし、その前に至っては、今テレビドラマでありますが、戦国時代、その前に至ってはやはり武家の世の中ですが、それぞれ例えば東郷町のほうに荘園があったり、このように貴族や武家の世の中としても分散型の国のあり方というのがあったわけです。ただ、中央集権政府を明治政府がいわば大政奉還後に一つの権限集中を図り、それで一気にこの国を掌握しよう、変えていこうとなったことから、恐らくそういうことになったのではないかと思います。
このようにして政治体制が中央に集められ、東京に集められ、さらに輪をかけたのが戦後ですが、戦後になり高速道路、新幹線、そうしたインフラストラクチャーの整備が進み、経済の国際化も相まって、東京一極集中が進むこととなっていきました。集権だけでなく、地域的な分散に対する集中ということも起こったわけです。集権と集中が重なって我が国で起こっていて、このいわばブラックホールのような状態をどうやって解き放っていくのか、これが地方創生の目的であるかと思います。
一番大きな目標としなければならないのは、地方における人口減少に歯止めをかけること。そして女性の活躍の場ということも言われますが、産み育てることができやすい、そういうふるさとにおける暮らしを豊かにしていく、これが日本の人口を減少からとめていく、さらには上向きに反転させていく、そういう力になると思われます。
そのために少子化対策、さらには女性の社会進出ということをするわけですが、あともう一つ重要なのは、分権を図ること。集権が図られたその反転として分権が図られること。それから集中が図られたことの反転として分散が図られること、これが大切だと思います。地方分権はまた我々としてもずっと目指してきたテーマですが、ようやくここに来て分散ということがクローズアップされ始めるのではないかという期待があります。
その意味で鳥取県として主張し、7月31日にはふるさと地域ネットワークの提言に盛り込んでもらうように画策しましたし、その後、また実は与党自民党のほうでも同様のアイデアがプロジェクトチームでまとめられたのが8月の末だったのですが、やはり分散には幾つかのテーマがあると思います。一つは企業の分散、これが図られなければならない。そのためには税制とかにも踏み込んでいくなど、思い切った施策が必要ではないだろうかということです。
また、若い人たちがどんどん東京に集まってしまうということを考えると、大学も地方の大学が力を持つこと、そういう分散も図られなければならないと思います。ただ、今逆行してきて、最近は国立大学でも交付金があるのですが、そういう交付金が地方の大学に対して絞られてきている。鳥取大学でも大方1割というようなレベルで、かつてよりも絞られてきているということです。ほとんど人件費の世界ですから、結構厳しいものがあると思います。
さらに、もう一つ分散が図られなければならないのは、政府機関が地方に立地することも推進されていいのではないかということです。
これら象徴的に3つ申し上げましたが、こうした意味で多様な分散を図る。例えば文化の殿堂が地方にあってもいいとか、そういうことも含めて、地方が彩りあふれて活力のあるところにならなければならない。これを目指すのが地方創生ではないかと思います。
同様のことでふるさと創生がかつてあったではないかという御指摘もありました。それを主導したのが竹下総理、当時の総理だったわけですが、その地元の掛合町で、初めての道の駅がふるさと創生でできるわけです。この道の駅の構想を国土交通省が広めて全国へ広がっていったということがありました。また、IT教育などもそのふるさと創生の中で各市町村のアイデア競争の中から生まれて、今では一般化しているというものもあります。やはり地方の中から芽を出してきた、そういう活力と潤いのあるふるさとづくりがその後、国を変えていくことにもなるわけです。
鳥取県においても、例えば今、琴浦町ではグルメストリートをされたり、若旦那商店街というようなことをされたりする。さらには結婚式を鳴り石の浜でする。そうしたことがいろいろとある中で、人も育ってきている。なぜかこのたびアジア大会でメダルをとって帰ってきたのは、河端選手にしても川中選手にしても琴浦の出身の人でした。こういうように地方の中に輝きを持つところがある。
西部のほうでも南部町では、もともと福祉のまちづくりということをされていて、それについては地域の中で新しい結びつきのあることをやっていこうということをされ、西町のほうではお年寄りが入られるようなところをお年寄りも支える、そういう支え合いのまちづくりということをされたり、天皇陛下も御賞味いただきましたが、竹するめというものを、いわば邪魔者の竹やぶから、これを解消するのとあわせて一石二鳥で狙ったところ、ヒット商品になった。このようなことがいろいろと出てくるわけです。
こうした種が鳥取県内、今大分生まれてきていますが、もっともっと元気にしていくことで、地方創生の旗印のもとにこの鳥取県を変え、さらには国を変えていく力があるのではないかと思います。そのためにも特に地方分散、地方への分散として企業、大学、政府機関、そうした分散を希望させていただきたいと思っています。
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<地方創生について>bQ |
民主党政権では、地方主権の観点から、莫大な費用を使い、霞が関詣をなくしました。そして地方公共団体にとって自由度が高く、創意工夫が生かせる社会資本整備総合交付金や地域自主戦略交付金等、自由度の高い一括交付金制度を創設しました。
県連で私はその窓口としてその業務に携わっていましたが、やはり交付金については各省庁の抵抗が非常に大きな問題でした。確かに十分な制度運用がなされなかったというのは、私も認めたいと思います。しかし、新しい一つの地域主権の中で、私はこの交付金制度は一定の成果があったと思っています。
自民党政権になり、この一括交付金制度が廃止されましたが、地方創生の中で改めて一括交付金制度が復活しそうです。国の制度設計に当たって、各省庁とのあつれきや地方への不信感の払拭など、いろいろ困難な問題も、そして課題もあろうかと思いますが、改めて地方の一知事として、国と地方の信頼関係の構築を含め、どのような制度設計を望まれるのか、知事にお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
これについては、9月28日に今の担当大臣である石破大臣と私どものアンテナショップオープニングに際して面談の機会があり、お話をさせていただきました。そのとき意見交換をしたところで感じたのは、やはりこれから1つずつシステムをつくっていかなければならないと。確かにこれは厄介でして、各省庁はみんな縦割りで自分の都合のいい制度をつくろうとすると。ただそれは地方側にとっては使いにくいわけです。石破大臣のほうは、それをどういうふうに検証していくのか、効果があったかどうか検証するのが難しいのではないかと、地方側に全部任せてしまうと。それで地方でみずから検証する、そんな仕組みも必要なのかなということもおっしゃっておられました。今いろいろアイデアを練っているところだと思います。
私どもと地方六団体とも腹を割って意見をぶつけ合いたいということもおっしゃっていて、実は今10月2日から10日まで、国で各県知事が今分担しながら、地方創生のヒアリングを受けているところです。したがって、これからだんだんと方針が出てくると思いますが、できるだけ使い勝手のいいようなもの、地方と国との信頼関係をつくっていく筋道、そういうものも考えていく必要があるだろうと思います。
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<地方創生について>bR |
私がこの地方創生で懸念するのは、地方創生の原点になるはずの地方分権や地域主権という位置づけの言葉が見当たらないということです。安倍政権ではもうまさに地方分権や地域主権が死語になってしまったのかと思っています。やはり地方分権なくして地方創生なしというのが私の思いです。私から見れば、何か静かに道州制の導入にまっしぐらに進んでいるというふうに思いますが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
私も安倍政権の中枢の人たちとお話ししたことがありますが、どうもイメージとしては安倍第1次内閣を引き継いでやっているというイメージがあります。実は安倍第1内閣のときに、平成18年12月に地方分権改革の推進法ができて、その後、委員会ができている。これが民主党政権になっても続いて、累次にわたり分権の答申を出しているわけですが、そのときの安倍政権からまだ第2次に続いていると自分たちでは思っておられる節があるのです。
そういう意味で分権をやらないということではなく、やはり分権は中心に据えて考えているのではないかと私は見ています。現に先般、海江田さんとのやりとりの中で、代表質問で総理もおっしゃっていましたが、地方分権を進めるということが地方創生にとって不可欠であるというようにも発言しておられます。片方で道州制については最近少しトーンダウンをしているように言われており、新聞報道もそういう見方をしているところです。腰を落ちつけて分権の実を上げて地方創生をやる、そういう空気になっているのかと考えています。
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<地方創生について>bS |
地方創生という中で、鳥取県は率先して今、平成18年度から始まっている市町村交付金制度、26年度ベースで2億 7,000万円、2分の1の交付率ですが、事務の簡素化の観点から市町村には本当に大変好評な制度です。逆に言うと、この交付金制度というのは、あわせて市町村の自立も求めるわけです。ですから、市町村の自立を高めるためにも、地域主権、地方創生の観点からも、市町村の意見を聞きながら制度の拡充を検討されるべきだと思いまが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
市町村交付金制度についてですが、これはもともと泡沫的な補助金を集合させたというところ、事務の簡素化から始まっていて、そんなにロットは大きくありません。ですから、市町村財政にえらいインパクトのある話ではありませんが、一つの理念として市町村への交付金制度、これは我々としても考え得るところかなと思います。議員の御指摘もありますし、地方創生というかけ声もかかってきていますので、新しい交付金制度に見直してもいいタイミングかなと思います。自由度というものをきちんと持った上で、無用な手間をかけない、そういうようなやり方をさらに追求してみたいと思います。
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