平成27年6月定例会一般質問(平成27年6月17日)No.4

<鳥取県版事業棚卸しについて>


 鳥取県版事業棚卸しは、県が行っている事業において、その必要性ややり方について、外部の方の意見を取り入れながら公開の場で議論し、事業ごとに評価していく取り組みで、今年度で6年目を迎えます。

 当初は有識者中心の公募の委員、行政職員の代表らで2班に分かれ、20以上の事業について個別の事業評価が行われてきましたが、今では公募の県民委員中心で、評価委員も縮小しながら、県が提案した事業について現状どおり改善、継続、抜本的見直しの判定が行われているところです。
 なかなかスクラップ・アンド・ビルドを含めた事業の見直しが担当事業課だけでは進められなかった行政事務の中で、一つの選択肢として外部の目線で評価を受け、事業の見直しをされること自体、一定の評価はしますが、例年、何か事業仕分けのあり方について物足りなさを感じますが、知事に感想をお伺いします。
 また、このたびの議会で船上山少年自然の家と大山青年の家の施設管理に指定管理者制度の導入が提案されています。6月15日、特別に開催された常任委員会で改めて詳細について説明を受けたところですが、なかなか納得できないためお尋ねさせていただきます。
 このことは、平成24年の事業棚卸しの中で、社会教育施設なのか、生涯教育施設なのかを明確にした上で、指定管理者制度の導入を含め、運営のあり方を抜本的に検討すべきである。可能なものは個別事業ごとに委託すべきであるとし、料金についても県内外、利用者別などの設定を検討すべきという指摘で、改善、継続という判断が下されたことが発端で、教育委員会として検討されてきた結果、今回の提案になったように思います。そもそも社会教育施設と生涯学習施設ならわかりますが、指摘された生涯教育施設とは何なのか、教育長にお伺いします。
 事業棚卸しの中で、先ほどのような指摘がされていますが、評価者の皆さんは現地での活動状況、利用状況を視察され、このような判断に至ったのか、平井知事にお伺いします。
 

●知事答弁

 
 事業棚卸しについて2点お尋ねがございました。後段については、行財政改革局長のほうからお答えしたいと思いますし、教育委員会のほうから詳細なお話もあろうかと思います。
 前段についてですが、これは平成21年度、22年度に政府のほうで、民主党政権で事業仕分けが行われました。本県でもその考え方を入れて、いわば外部評価でやっていこうということを導入したのが私ども流の事業棚卸しです。しかし、単純に丸だバツだといったようなことではなく、それからできるだけ慎重に議論する時間をとる。ですから、国の場合ですと1日で班分けもしてかなりの数をやったわけですが、私どもはそれよりももう少し時間をとってやろうと。それから、その成果も、よくよくまた議論して、議会とも相談した上で最終的な翌年度以降の取り組みにしていこうと、こういう国の事業仕分けを参考にしながら、事業棚卸しという制度を始めたところです。実に 100件ぐらい、既に6年たっていますので、その見直しの事業にかかったところでした。
 これについては、いろいろと課題も指摘されているのもまた事実です。平成22年度の私どもスタートしたころは、12の県が同じような制度をやっていました。しかし、今では6県だけで、半減しています。さらに、その中身からいうと、6県のうち民間の委員がその議論を先導していく、議論を主として行う、そういうタイプ、それ以外は専門家によるものという趣旨ですが、そういう民間が主導する鳥取県のようなタイプは、私ども以外は京都府のみで、全国47都道府県で原形に近いものは、この2府県だけとなっています。
 ですから、議員のほうでも問題意識を提起されて、まさに民主党政権のときに始まったものですから、議会として問題ありとされるのであれば、この制度についても従来も見直しを重ねてきましたが、この際、そのあり方を抜本から問い直すということもやぶさかではありません。いずれにせよ、いろいろ課題はある中でも、いろいろとこれまでも議論を出していただき、外部の目が入れられたということの評価はできると思います。
 ただ、民間主導ですので、結構その後で話題になることも多かったのが記憶されていると思います。例えば、老人クラブ連合会への補助金、これは廃止しろということになり、大騒ぎになりました。また、名古屋本部、これも廃止しろということになりました。廃止したものの、今、名古屋代表部で新たに少数精鋭でやっています。私どもとしては人材を送り込めば結果も出ようかということでやったところ、最近、中京圏から観光客も多く来るようになりましたし、企業誘致も優良な企業の進出もゲットできました。ですから、事業棚卸しのとおり、単なる廃止でよかったかどうかといえば、今残っていてもよかったのではないかということで、最終的に議会と相談して県で選択した結果というのは、それはそれで妥当であったということかと思います。
 そのように、大分行政の中身に分け入って、ふだんからいろいろと議論をしている議会の皆さんとか、あるいは有識者の方とか、そういうところである程度さばきながら、県民の御評価をいただくというほうが本当はいいのかもしれないという議論もあろうかと思います。いずれにしても、謙虚にいろいろな方々の御意見を聞いて、事業棚卸しのあり方については考えていきたいと思っています。 

●行財政改革局長答弁

 
 この事業棚卸しについては、議員も御指摘のとおり、公開の場で議論するということで取り組んでいますが、その公開の場での議論についても、時間をかけて丁寧に取り組みをするということをやっていますし、さらに公開の前に事前に勉強会を開催して、その事業の目的とか意義、成果等を評価者へしっかりと説明するということをやっています。その際に、現地説明、現地調査についても委員のほうに投げかけて、どうしますかということもやっていますが、この2施設を評価した24年度の事業棚卸しのときに関しては、現地調査は行っていません。ただ、その際も、事前勉強会については、所長さんにも来ていただいて、口頭説明とか書類での説明の中で、利用状況とか活動状況についてもしっかり説明していただいた上で、会議に臨み評価結果を取りまとめるという取り組みをさせていただいています。

 また、この棚卸しに関しては、やはりここだけでの評価ということではなく、改めて事業の必要性等を予算編成の中で議論していただくというような取り組みをしており、このたびの件に関しても教育委員会において、この24年度の事業棚卸しの結果を踏まえて、その後、運営委員会等を開催され、今回の結論に至ったと思っています。

●教育長答弁


 平成24年度の事業棚卸しについては、この両施設の管理運営が議題とされたわけですが、この議論の中では、両施設を捉えて社会教育施設であるとか、生涯教育施設、あるいは生涯学習、生涯教育といった発言などが出ていたと承知しています。

 御質問は、生涯教育施設とは何か、ということですが、私も初めてこの結果を聞いたときに、生涯教育施設という言葉はそれまで聞いたことがなかったので、どういったことだろうか思ったのが正直なところです。いろいろ考え方なりはあるのかもしれませんが、この事業棚卸しの議論をつぶさに議事録等を拝見すると、この生涯学習だとか生涯教育というところの厳密な意味を捉えて何かを議論されたということではないと感じ、結果どういうことだったのかを理解するに当たって、議論の流れからいろいろ判断するに、社会教育施設なのか生涯教育施設なのか明確にせよという指摘については、青少年に多様な体験活動あるいは学習、交流の場を提供する施設なのか、あるいは青少年に限らずあらゆる世代を対象として体験学習等を行う、いわゆる生涯学習の機能を持った施設なのか、そのあたりを明確にすべきだという御指摘だったのだろうという理解しています。
 教育委員会としては、この認識のもとに運営委員会を設置して、両施設の運営のあり方を検討してきたところで、このたびそこの方針としては、青少年に多様な体験活動、学習、交流の場を提供する、いわばコアな部分の社会教育の部分と、それから幼児から成年、高齢者層を含めた生涯学習施設としての役割もあわせ持つ機能として、改めて再整理させていただこうと提案しているところです。

<鳥取県版事業棚卸しについて>bQ

 船上山にしても大山にしても、社会教育を目的に設置されたものを、なぜ殊さら生涯教育施設として明確にする必要があったのか。また、社会教育、青少年教育で取り組まれているその活動を個別メニューごとに委託を求める必要がどこにあるのか。利用された大半の皆さんが、満足という回答を多くされている中、今までの施設運営の中で何が不合理だったのか。安易に私は教育現場に競争と合理性を持ち込むことだけで、教育の実効性と質が高まると本当に思って提案されたのか、知事と教育長に所見をお伺いしたいと思います。

 
●知事答弁
  
 船上山と大山の件については、行財政改革局長のほうからお答えしたいと思いますが、今回2年間にわたり教育委員会でも精彩な議論をされたということで我々は伺っており、今回の件は教育委員会においてきちんと説明責任も果たしていただき、その姿勢を我々としても尊重していくべきと考えています。

●行財政改革局答弁

 この指定管理者制度の導入について、この2施設の導入に関してですが、今回は施設の管理業務に限るという考えです。具体的には、受け付け対応とか、使用料の徴収等の管理部門に限るという形をとっており、体験活動など学校教育と密に連携している部分については、このたびは直営とすることで考えています。これにより職員がさらに教育・指導等に関するところに注力できるようになればいいかなと思っています。
 教育委員会のほうは、先ほど知事も申しましたが、2年間にわたって両施設のあり方について検討されてきたということで、この指定管理者制度の導入に伴う新たな体制について、より効果的な運営ができるようになればいいと考えています。

●教育長答弁


 両施設では今回運営委員会を開催していろいろ検討していただいていますが、こうした外部の方々の評価を一切受けることなく、いわば県の考え方だけで運営を行ってきておったわけですが、この事業棚卸しを契機として、施設ごとに運営委員会、第三者評価委員会と言われるようなものですが、設置して施設運営の現状及び課題を整理するとともに、今後の運営のあり方等についても議論をいただいたところです。こうした中で、両施設の運営状況については、先ほど議員からも御指摘がありましたが、年々利用者も増加しており、利用者の満足度も非常に高いということ、関係者の努力や地元の皆様の大変な御理解、御協力を得て、順調に推移しているものと考えています。運営委員会の中でも、今のままの直営方式で支障がないので、このままでよいのではないかといった御意見とか、指導部門を教育職員が担っている今の形をぜひ残すべきといった御意見もありました。 一方では、県民目線からすれば、ノウハウのある民間等と協働すれば、今よりもなおよい運営ができるのではないか。あるいは、管理部門など民間委託により、より効率的な運営ができるのではないかといった御意見もあったところで、昨年夏に県民電子アンケートを行ったところ、この中でも望ましい運営方法として、県直営がよいというのが45%、民間委託がよいというのが43%と、ほぼ半々の結果でもあったわけです。こうしたことを踏まえて、運営委員会の中でもさらに他県の状況なども勘案しながら、さらに検討を重ねていただいたわけですが、その際、県直営方式か指定管理方式かの二者択一ではなく、近県では島根県等でやっておられるように、施設の中核機能である体験活動等の指導部門は県直営で、教育職員がこれまで学校教育との連携により蓄積した知識や技能などをしっかりと生かして、しっかりと当たる。一方で、清掃業務や設備の点検業務などを初めとする施設の管理部門については、ノウハウのある民間業者に委託するいわば分割方式とでもいうやり方が検討の俎上に上がり、私どもの事務局のほうも島根県の施設に何度かお邪魔して、この状況等を聞き取りさせていただき、これなら十分今よりもよりよい方向に行けるのではないかといった感触を得たもので、今回の提案となっているものです。
 指定管理により経費が大幅に下がらなければ、指定管理に出すメリットがないという考えもあろうかと思いますが、部分的にですが、指定管理を行うことで行政と民間との協働により、行政としては教育的視点をより重視した運営を行うことに力を注ぐことができるし、また、よりよいサービスを同等のコストで県民の皆様に提供できるのであれば、トータルとしては県民的にはコスト面で効果があったと見るべきではないかと考えています。両施設とも、これまでの成果を継承しつつ、利用者がふえていることに満足せず、今後の方向性をしっかりと見きわめて、絶えず対応強化を図っていくといったことが施設の発展と改善につながるものと考えていて、今回の指定管理制度の一部導入についてぜひとも御理解を賜りたいと思っています。
 お話の中には、個別メニューの事業の委託の話もありましたが、これは現在も実はやってきていまして、山岳協会の方々のお力をいただいたり、あるいはスキー連盟の方々のお力をいただいたりということで、個別にそれぞれノウハウのある県民の方々、団体と協働しながらやっているところで、そこについては変わらないと考えているところです。

<鳥取県版事業棚卸しについて>bR


 こうした社会教育施設は、施設管理も利用者の教育の一環であり、ホテルに泊まって研修するのではありません。全てが満たされた家庭から離れ、十分でない環境の中で子ども達が集団生活することで、そこに大きな意義があると思いますが、教育長の所見をお伺いしたいと思います。

 

●教育長答弁


 子ども達の教育の面で非常に意義があると思いますが、例えば清掃なども今やっているが、その辺はどうかということですが、清掃については、個々、個々切り分けてですが、実際に今も業者のほうに委託をしているといった状況の中で、今度は指定管理ということで包括的にそこについては委託するわけですが、船上山、大山、どちらの施設も設立時から一貫して高い教育理念だとか、生活信条を持ちながら、その体験学習そのものだけではなく、施設内での生活全般にわたって子ども達への高い教育効果というのが期待できるように、全職員が子ども達に当たってきたわけです。例えば、利用した宿泊室や研修室などの清掃活動を帰る前に全員で行うといった取り組みも行っているところで、そうしたことについてはこれからも変わらずやっていく予定です。子ども達にとって、施設での集団宿泊体験が心に残り、生きる力となっていくように、今後とも機能の充実を図っていきたいと考えているところです。

<鳥取県版事業棚卸しについてbS


 電子アンケートもされたようでが、施設を使っていない人に、その施設の評価を問うても仕方ないです。施設を利用した人が、本当に使ってみて満足だったのか、その評価が一番なのです。使わない人に評価を求めてもどうするのですか。それは否定しませんが、やはり使った人の評価というのをもっともっと大切にしてほしい、そのことは言っておきたい。
 それと、このたび運営委員会でいろいろ議論されました。運営委員会の皆さんは、このたび指定管理者制度を提案されたという新聞の記事を見て、皆さん驚かれたのです。会議録を見てみると、いいですか、審議もまとまっていないのに、審議のまとめの議論に関して終了したということでよろしいでしょうかということで、それで事務局は審議のまとめを受けて、教育委員会として方針を決めていきますと。いろいろ提案していただきありがとうございます。提案はされたけれども、運営委員会は何も方向を出していないのです。したがって、新聞の記事を見て、えっ、指定管理されるのと。そこが大きな問題なのです、このたびの。もう少しやはり慎重を期してほしかった。これは答弁要りません、もう時間が限られていますから。そのことを言っておきます。
事業棚卸しで各種の県の政策を見直されてきました。そのこと自体、私は評価します。しかし、現地を視察することもなく、現場の声も聞くことなく、書類審査だけの評価がこのたびの混乱を私は招いていると思っています。改めて県版事業棚卸しにかける時期に私は来ていると思っています。知事に所見をお伺いします。 

●知事答弁


 先ほども申しましたように、これ民主党政権のときの事業仕分けから始まり、全国でも同様の制度が起きる中で、我々も採用して改良しながら使ってきたというものですが、今、全国の趨勢は、そのころからは大分変わってきています。議会での御議論も踏まえて、当初予算に向けて次年度以降どうするか、私どもも検討させていただき、また改めて議会に御相談させていただきたいと思います。

 ちなみに、鳥取県の場合、平成22年にその事業棚卸し制度を採用したわけですが、その後、県民参加基本条例を議場の御賛同を得て導入しました。それに基づき、現在、各種の審議会等に県民の公募委員が入っています。ですから、本県は全国の状況とは違って、県民の皆様の県政参画の道は別途開いている、それが現実にも機能しているというところがあり、代替性のある手段は整ってきている環境もあるかと思います。ただ、いずれにせよいろいろな議論もあるでしょうから、冷静に各方面の御意見もお伺いして、結論を得て皆様にお諮りしたいと思います。