<酪農の将来について> |
我が県の酪農は、以前、納屋の一角で乳牛を飼育するという兼業的な小規模な酪農が県下一円で営まれ、乳業メーカーも点在していましたが、平成5年にガット・ウルグアイ・ラウンドが合意されて以降、国際競争力を高め、国内の乳業の体質強化の一環として、酪農家の多頭化が推し進められるとともに、国内の乳業メーカーの合理化と統廃合が進められてきました。
当時、県内にも大山乳業を初め、広谷さんの岩美牛乳、日進乳業等がありましたが、品質向上に努め、コストダウンを図りながら、競争力の強化と健全な経営を図ることを目的として、国及び県の助成を受け、平成16年4月から大山乳業農協に県内工場を一本化し、新工場での乳製品の製造出荷が始まりました。結果的には、全国的にも珍しい一県一乳業という画期的なスタートが切られました。
本日は、一企業である大山乳業農協の視点でなく、県内の酪農の将来をどう維持、成長させていくのかという視点で、知事と議論をさせていただきたいと思います。
大山乳業は、平成26年の資料ですが、約 149戸の酪農家が 9,371頭の乳用牛を飼育し、年間5万 6,000トンの生乳を生産しています。酪農による生産額は66億円と、米、養鶏に次いで3番目で、牛乳、乳製品の販売高は約
140億円と、本県農業の主要品目の一つです。このことは、酪農家の先人たちが幾多の困難を乗り越えながら、今でははやりの6次産業化にいち早く取り組んできたモデルであり、大きな成果でもあります。しかし、新工場が稼働を始めた平成16年当初、生乳の生産量は6万トンを超えていましたが、近年、離農する酪農家がふえ続け、生産量も減少の一途にあります。
県として、今後の酪農振興と乳量増産に向け、どのような対策を考えておられるのか、知事にお伺いします。
先ほど申し上げたように、現在の生乳の生産量は年間約5万 6,000トンですが、工場操業当初想定されていた6万トンの生乳の生産量に引き上げるためには、どの程度の搾乳牛の増頭が必要なのかお伺いします。
また、県はTPPが締結された折には、外国からの乳製品の輸入により、北海道産の生乳が国内で乱売され、県内の酪農家は存続できないと県議会でその甚大な影響を想定され、報告されましたが、県としては想定だけなのか、それとも虎視たんたんとその対応策を検討されているのか、お伺いします。
平成13年と14年度にスーパーカウ改良促進事業として、優秀な受精卵導入事業が実施されましたが、その成果とその後の経過についてお伺いします。
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●知事答弁 |
酪農については、今議員の話のように、大山乳業に今一本化され、全国的にもまれな生産体制が本県の場合はできています。また、それだけでなく、それを裏打ちすべく、各農家の皆さん、それから大山乳業農協も一体となり、指導体制をしっかりやり、ブランドをつくろうと。さらには、加工品など、新しい世界に乗り出して、付加価値を高めようと。安定的な酪農経営をみんなでやる、そういう意気に燃えて、実際に結果も出てきていると考えています。
これからの目標と、当面のことになりますが、今々のことで言えば、ちょうどアトランタで甘利担当大臣が日本側から乗り込み、TPPの閣僚間折衝が始まりました。その閣僚間折衝に先立ち、事務ベースでの会議も開かれていますが、まだ見通しがつかないというような状況です。
今TPPの交渉では、7万トンという数字も出ていますが、そうした合意しかけていると言われたような数字がありましたが、ニュージーランドが自国だけでももっと大きな枠が必要だということで、話をいわばやり返して、それがハワイの結果でした。それが今回ということになりますが、昨日というか、日本時間の今までの状況で、事務ベースでの折衝では、この酪農対策については決着がまだめどが立っていないという状況です。ただ、アトランタの折衝、その会場の外においては、カナダとか、関係国の酪農団体が集まり、このニュージーランドの要求が出て、TPPで自由化が極端に進むのではないかという警戒心で、いわばデモンストレーションが行われているというような報道もあります。そのように、今緊張感を持って、この酪農が一つの焦点となってTPPの会議が開かれているということです。
我々として、今申し上げているのは、しっかりと守るべきものは守る交渉をすると、これは日本の場合は国会決議にもありますので、その原則を外さないような対応を厳しく求めたいと思いますし、また、このTPPの結果、一定程度、1次産業を中心とした影響が出るでしょうから、そうした場合には、それを払拭するような、これから成長力をもって、そうした産業が発展していけるような政府の毅然とした、また、大型の対応をする必要があるのではないか。この辺はこれまでも議会と相談しながら、国に求めてきているところです。
そういう中で、やはり我々は大乳さんとも、組合長や、あるいは組合員の皆さんとも話し合いをしましたが、6万トンを割り込んでいる。その6万トンという生乳レベルを回復する、これに向けてやっていく対策が、そうした強い生産体制をつくることでもあり、また、未来に向けての展望が開けることになるのではないかということで、さまざまアプローチをして、これに向けていこうと今かじを切っているところです。
ここ数年も対策を相次いでやってきました。例えば大山乳業さんの若手と話をすると、後継者対策が大変だと。後継者が仕事できるような環境が必要だということで、例えば畜舎とか、そうしたものの整備に向けて支援をするような制度をつくったり、また、その対象についても、従来だと、単なる後継者、家の中で引き継ぐというのは対象でなかったですが、その辺も含めて対象者としていこう、とか、また、牛がなければいけません。その牛を育成していくために、当初の構想では北海道から導入して牛を確保するということを、大乳さんと県と共同して基金を設置してやっていこうというような動きをするとか、さまざまな対策をして、6万トンを目指そうということで動き始めたところです。今、農業の元気をつくっていくためのプランの中でも、そうした個別の対策を入れて、何とかこれを目標に向けていこうというところです。これがおのずから県としてはTPP対策にもなるということで、応援させていただいているところです。
かつてスーパーカウの導入事業があり、その受精卵を入れることで乳牛の改良を促進するということで進めてきました。一定の成果はあったと思います。ただ、それとあわせて、当然ながら、雄牛の選抜をして、いい牛をつくるために、大山乳業一体となって、県域、全県一致しているので、そういう幅の中で改良を進めてきました。スーパーカウのことも当然影響は一部ありますが、現状は、その乳牛の検定率からいくと90%を優に超える検定率で、他の乳業生産体制の地域とは全然違うという生産体制になっています。それで、いい牛をつくろうと意思統一してやっている。
その中で、例えば乳量の状況、1頭当たりで、10年前 8,500キログラムだったのが、今は9,200キログラム、これは平均です。1万キログラムを超える牛も当然いるわけで、要は、スーパーカウ並みに改良は進んできているところまで進歩してきました。その品質面でも評価されているがゆえに、4割以上は関西地域に出ていますが、今関西地域にはおいしい牛乳のブランドとして定着してきているところです。
また、先般は、このたびホルスタインの共進会が北海道で開かれることになり、まさに来月、その正念場を迎えるわけですが、そのための選抜を、県の予選会をしたわけです。それで、9頭の代表牛が決まりましたが、そのうち8頭は全て琴浦町さんの牛でした。あと、倉吉農業高校の牛も15年ぶりに選抜されて出ることになったわけです。実は、スーパーカウの系統の牛も当然候補牛の中には入っていましたが、結果どうなったかというと、スーパーカウ以外の牛が全部代表牛になったと。それぐらい今凌駕する勢いで、鳥取県内、大山乳業さんの努力のおかげで、品質の向上がなされています。
そのようなことですので、今後も今やってきたような改良方針をさらに発展させていくということで対応していく。それを県としても応援していきたいと思います。
増頭数は 500頭、 500頭ほど増頭する必要があるかなということです。このために、先ほど申したような対策を打つのとあわせて、例えば導入牛を図るとかということとあわせて、今クラスター事業に取りかかろうと、中西部は大乳さんが、東部では鳥畜さんが中心になって進めているところです。
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<酪農の将来ついて>bQ |
私が本日あえてこの酪農問題を質問として取り上げたのは、先ほど申し上げたように、米、養鶏に次ぐ鳥取県農業の主要な基幹品目であるとともに、他の品目にはない、生産、製造、販売と、非常に裾野が広い産業でもあります。地域の雇用、地域の経済に大きく起因しているということからです。
質問に当たり、大山乳業に無理を言いまして、いろんな資料を提供していただきました。生産から販売にかかわる雇用の総数は約 1,019人と推定されていますし、取引業者は、宅配販売店も含めて約
1,000社にも上っています。まさにその裾野の広さは、地方の一企業であっても、大きなものがあると思っています。改めて県内の酪農が担う、この広い裾野について、知事の所見をお伺いしたいと思います。
また、酪農家が牛の餌となる粗飼料を確保するため、県内で耕作されている採草地は約 1,600ヘクタールにも及ぶとのことです。耕作放棄地対策の分野でも酪農が大きな貢献をしています。しかし、現在のTPP交渉は、酪農家に大きな不安を与え、後継者育成にも私は大きな影響を与えていると思っています。
もしTPPが締結されれば、改めてこの 1,600ヘクタールの耕作についても、そのあり方について心配されるところですが、知事の所見とその対応についてどのように想定されているのか、お伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
議員も言われたように、雇用だけでも 1,000人を超えるようになっていますし、非常に大きな影響もあります。生産も直接には66億円ですが、さまざまな関連、販売高を入れると
135億円というように、かなりの経済規模にもなっているところです。
また、この大山乳業さんの活動で、鳥取県の食のみやこのいいイメージが伝わっているわけです。関西、あるいは山陽、さらには九州方面まで含めて販売網があり、また、関東などに出しても、このおいしいソフトクリームだとか、そうしたことは評判を呼ぶわけで、非常に我々としても大きな戦力になるところだと考えています。その意味で、しっかりとこの酪農対策を県政の中でも中心軸の一つに据えていかなければならないと考えています。
この大乳さんも、もともとは昭和21年、伯耆の酪農組合から生まれて、それが、先ほど言われたように、岩美とか、いろいろと後々合併していき、今の体制になってきたわけですが、実に70年の歴史を誇るわけです。その間培ってきた技術、そうした人的ネットワーク、信頼、そうしたものを看板として、我々としては次の新しい鳥取県の農業をこの酪農を一つのリード役としてつくっていくことができるのではないかと考えています。食材としても、我々提供することもいろいろありますが、パティシエさんとか、あるいはシェフの皆さんにもその価値をわかっていただけるわけです。場合によっては、海外への売り込みの中にもこの関係商品などを入れて持っていったこともありました。今後ともその振興に努めていきたいと思います。
粗飼料の確保等、採草地等々、 1,600ヘクタールの耕作がこのTPPの影響でどうなるかということですが、TPPは今交渉していて、その実情はこれから見きわめなければいけないだろうと思います。正直な話で、今言われているような7万トンベースという脱脂粉乳とか、ああいうベースでいくと、県内の酪農関係者からは甚大な影響にはならないだろうとは言われています。ただ、見通せませんので、これから注意深く見ていかなければいけないだろうと思います。
ただ、いずれにしても、 1,600ヘクタールと今お話もありましたが、コントラクター組合さんとか、粗飼料、トウモロコシ、あるいは飼料用稲、飼料用米、いろいろと生産もあるわけですが、そうしたことは我々の食料安全保障的な観点や、あるいは輸入飼料の価格ヘッジのことを考えると、県内生産をふやしていくべき方向性だと思います。これはTPPにかかわらず、そこはやはり考えていかなければいけないだろうということです。
そういう意味で、今クラスターの事業の議論が始まりましたが、例えば東部のクラスターのほうでは、今の倍以上の栽培面積、耕作面積にしようというような計画もつくり始めておられて、中西部もややふやそうという計画になっています。このようなことをやはり積極的に、国の事業も活用しながら支援して、耕作放棄地対策等にもつなげていきたいと思います。
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<酪農の将来について>bR |
県では、乳牛の増頭対策として、国の新しい制度、要するに畜産クラスターを活用した 500頭規模のメガファームが県内2カ所で計画されているようですが、確かにお隣の島根県では次々と民間の
500頭規模のメガファームがつくられています。 500頭規模のメガファームとなれば、環境対策や粗飼料の確保対策等の課題もありますが、何よりも大きな課題は、計画予定地周辺の皆さんとの理解と協力です。メガファーム構想の推進も一つの手段でしょうが、メガファームへの条件が整備しやすい北海道では非常に希望が多いと聞いています。国の補助金が本当にこの地方に配分されるのかという不安も私はあると思っています。
そんな中で、既に地域の皆さんと共存されている既存の酪農家の増頭意欲を高める政策が、そして努力が、私は今鳥取県では必要でないかと思っています。県としても増頭対策として、担い手農家が増頭するための牛舎の増改築や乳牛導入等を市町村と協調して助成する次世代につなぐ酪農支援事業や、増頭する酪農家に大山乳業が、預託貸し付けをする事業へ融資するがんばる酪農支援事業がありますが、例えば
100頭増頭するためには、牛舎の増築整備、牛の導入等で 3,000万円という限度額では到底足りるものではなく、堆肥舎等の資金に回るという余裕もないわけです。
例えば育成牛1頭60万円から70万円です。 100頭すれば、もうそれだけで 6,000万円、 7,000万円飛んでしまうのです。ですから、増頭対策と要するに全く乖離した今の県の政策だと思っています。もう少し増頭数に応じた牛舎の増改築、堆肥舎、そして乳牛導入費等、個別に仕分けしながら、現実的な支援が必要ではないかと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
まず、酪農対策ですが、詳細は農林部長のほうからお答えしたいと思いますが、議員がおっしゃるように、いろんな増頭対策の道筋があろうかと思います。一つは、一番手っ取り早いといいますか、強力なのは、国の畜産クラスター事業に乗ることで、これをやるのがまず一つの基本戦略だと思います。先ほど申したように、県としても今まで増頭対策になるようなことを進めてきて、それなりの評価はいただいているのですが、議員が言われたように、使い勝手がもう一つという意見もあるかと思います。今回新年度どういうふうにクラスターに採択されてくるかということはありますが、それと調整というか、要はすみ分けを一定程度しながら、県の単独事業についても重点化したり、また、幅を広げたり、その辺を関係者ともよく話し合って、当初予算までに検討してみたいと思います。
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●農林水産部長答弁 |
酪農基幹牧場の整備については、今東部のクラスター協議会で、鳥取県畜産農協が中心となり、牧場整備のための新たな法人の設立について検討されているところです。現在建設場所の選定とか、牛舎の施設規模とか、自給飼料の確保対策等を検討されているところです。中西部のクラスター協議会については、29年度に牧場整備をしたいという考えは持っておられますが、現時点では具体的な検討までは至っていない状況と聞いています。
大型の牧場整備というのは、県内でも取り組まれた事例がありません。議員からお話のあった環境対策等を含めて、用地確保の問題、飲料水の確保の問題等、いろんな問題を解決する必要があると考えています。県としても、検討の場に参画して、支援していきたいと考えています。
また、既存の酪農家への現実的な支援策が必要ではないかということです。
今後の酪農の維持、発展を考える上で、基幹牧場の整備ということもありますが、既存農家の規模拡大というのが大変重要な課題だと認識しています。知事からもありましたように、畜産クラスター事業というのは、個人の施設での整備でも補助対象となったということで、今後、28年のハード整備に向けて現行の単県事業とのすみ分けを整理する必要があります。単県事業においても、議員から指摘があった要件の事業費
3,000万円だとか、対象者が45歳以下、それから、増頭が10頭以上というような要件の中で、単価として資材高に対応できていないこととか、幅広い年齢層に対応できていないというような課題もあると認識しています。
現在検討中のクラスター計画の内容を踏まえた上で、農家や大乳等団体の皆さんの声を十分聞き取り、現行の単県事業がより使いやすくなるように再構築をしていきたいと考えています。
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<酪農の将来について>bS |
県内の酪農振興を図るために、やはり第一はもうかるものでなければならないと思います。また、若い人や後継者が参入したり、後継しやすい環境づくりを進めなければ、長期的な酪農の継続は困難です。特に休みがとれるようヘルパー制度の充実を初め、酪農を取り巻く環境を、早期に総合的に点検を行い、政策を構築しなければ、後継者離れが進み、増頭対策を上回る勢いで廃業のほうが上回るものと懸念しております。
そこで、時間もありませんので、何点か問題を提起したいと思います。
まず、 100頭搾乳している農家は、毎年50から60頭の育成牛を育て、2年から3年で牛の入れかえをしなければなりませんが、最近、優秀な種雄牛ができたことから価格が高騰している和牛やF1を生産したほうが、ホルスタインを生産するより経営の安定にいいということから、和牛の受精卵を乳牛に着床させる酪農家がふえています。そうなると、将来的に乳牛の育成が不足するということが心配されますが、今後の政策的な対応についてお伺いしたいと思います。
情報として申し上げるなら、生まれたばかりのぬれ子、乳牛の雄で65,000円なのです。それが和牛のいわゆる受精卵を着床したら25万円です。要するに1頭で19万円の差が出るのです。これを10頭和牛に産ませると、もうそれだけで
190万円。農家は経営的には非常にいいのです。そういうのを含めて、育成牛がなくなるという心配があるので、その辺についてお伺いしたいと思います。
また、おがくずが牛舎の敷きわらがわりに不可欠ですが、近年、バイオマスの発電への需要が高まっていて、最近農家へ値上げの通告がされるようになりました。そして、おがくずは不足ぎみの傾向にあります。ところが、県内の森林組合の中には、おがくずをつくる機械がありながら、価格が合わないことや、生産能力に限りがあり、十分に活用されていないのが実態ですが、林畜連携の観点から、県内の畜産農家が活用しやすいものにするために、政策的な支援をやはりそこにスパイスとして付加する必要があると思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
今酪農家は、協業化等で、粗飼料をコントラクター事業で確保していますが、増頭化の中で作業量が膨大なものになっています。将来的には粗飼料のコントラクター作業を全て外部に立ち上げた組織に分業委託し、作業の軽減化を図るとともに、酪農家の皆さんが集中して増頭できる酪農環境を検討すべきと思いますが、知事の所見をお伺いします。
一方で、今県内各地に集落営農が順次組織化され、中山間地域の農地を初め、耕作放棄地だった農地も管理されるようになりました。しかし、中山間地域では大型のコントラクター作業の導入は、現実不可能であり、耕作放棄地もふえているのが現状です。
そこで、少し小型の鳥取方式のコントラクターを導入することで、稲作用稲を初め、イノシシの被害を招くためトウモロコシは困難かと思いますが、何らかの粗飼料をつくる耕畜連携を検討することも必要ではないかと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
まず、和牛の生産も、ぬれ子ということですることがあったりするわけで、将来的に乳牛の育成が不足するのではないか。政策的な対応はいかがかということです。
ここはいろんな要素が入っていて、そういう意味で、我々としても懸命なアプローチをしなければいけない。それも従来とやはり違った技術を使いながら、ということになろうかと思います。TPPの話が冒頭ありましたが、TPPのことでいくと、特に牛の肉ですね。和牛のような高級な牛の肉ではなくて、安い肉が今以上に入ってくる可能性がある。これは今回のTPPのことで決着しようがしまいが、いずれはそういう方向に経済が流れてくる可能性があるわけです。そこで、酪農家の所得確保の意味で、和牛を受精卵で抱えてもらうというのは一つのやり方で、そこで妊娠するということで、生乳生産はできるということになるわけです。今、議員も言われたように、単価差が随分ありますので、それはそちらのほうが収入の安定にはつながるということです。
それと、後継牛となるような母牛をつくること、これも大切です。現状どうなっているかというと、やはり農家のほうでは、自分で牛をつくる方は、後継牛の確保をまず優先されます。それは当たり前で、酪農を続けるためには母牛を確保しなければなりません。ですから、この2つが矛盾するようですが、これを調和的にやる必要があるわけです。
どうするかというと、雌雄性別判定がきく精液を用意して、それで乳牛については、母牛をつけることをやる。もちろんその分単価が高くなりますけれども、それをすることで、ただ母牛が確保できる。それから、また、和牛生産もあわせて行う。ここを両立させながら経営したほうが安定的な経営になるし、収入も確保できるということです。もちろん最初はその雌雄のことをきちんとやった上で、一定量、後継牛が確保できれば、その後は普通の精液を入れて、雄牛も雌牛も乳牛でつくればいいかもしれませんし、その辺の組み合わせを上手にやっていこうということで、今現場のほうは動き始めていますし、指導もさせていただいているということです。
和牛生産のほうの立場からしても、今白鵬85の3とか、そういう効果もあり、実は子牛が足りないぐらいになって、高騰しています。ですから、生産力を高めるという意味では、乳牛と和牛と連携してやっていくのは一つの方策だろうと思います。
もう一つは、大乳さんが中心となり、そうした生産体制が確保できるような牛を入手していくということです。当初我々は北海道からホルスタインを入れようとしたわけですが、価格が高騰して、どうも採算が合わないということになり、今そうした県内の後継牛生産、これを活用しながらやっていこうということで動いており、こういうように、仲立ちを大乳などがしながら確保していくというのも一つの道筋です。こうしたことなどを促進するための施策を堅実な形、賢明な、クレバーな形で組んでいく。これをまた新年度以降の予算の中でも考えていきたいと思います。
第2点として、おがくずの課題が出ました。これについては、農林部長のほうからお答えしたいと思います。
第3点目として、コントラクターについてお尋ねがありました。
これは、生産をどんどんしっかりとやっていくということですが、何せ皆さんお忙しいです。酪農家の皆さんは朝から晩まで働かなければいけないという、生き物とともに生きる宿命があって、なかなか大変さもあると。それで、平成25年度から外部にこれを委託するという検証作業をしてきて、今その状況がだんだんわかってきました。収穫時期の機械操作などは、やはりコントラクター組合を構成している農家さんがやるのがいいだろうと。しかし、それ以外、通常の機械操作については、これは建設会社とか、そうしたところでもやれそうだと。通常のそうした土木作業と同じような技術水準で可能ではないかと。その辺の外部委託を導入することで、コントラクターの作業の効率化を図り、場合によっては生産拡大などにもつながるのではないかということで、この辺を一層推進する必要があるかな、というのは一つです。
あと、議員が言われたように、耕畜連携をなお一層進めるということで、今例えば別宮初め、琴浦、北栄の地域ではそうした耕畜連携の新しい組織による動きも出てきており、もちろん大規模なところでは船岡でもやっておられますが、そうしたことを推進していき、こうした飼料生産につなげていく必要があると考えています。
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●農林水産部長答弁 |
議員からお話があったように、県中部ではおがくずの流通をモデル的に行うために、中部森林組合のほうで平成22年度に国庫補助を受けて間伐材からおがくずを製造する機械を導入され、現在肥育牛の農家、それから養豚農家などに供給されているということです。昨年の供給量
5,090立米ということで、毎年 5,000立米程度の供給がされているということです。
機械の導入時に中部森林、それから中央農協等で、このおがくずの安定供給のための協議会を設立しておられます。これは、酪農関係者は入られていないということです。先般、8月28日にもこの協議会開催をされており、供給量については、機械の処理能力が先ほどの
5,000立米でほぼ限界だというようなこと、また、販売価格によってコスト割れしているが、何とか森林組合としては地域貢献のためにこの事業を継続していきたいというような報告があったと聞いています。
平成22年当時にも、大山乳業なり、酪農家のほうにおがくずの供給の意向を確認されたということですが、その当時は、酪農家はおがくずの供給は間に合っていたということから、中部森林からの受給を辞退されているということ。それから、先ほど申したように、現状の機械能力から、新たに酪農家に供給というのがこの機械では難しいということです。酪農家では、今県内、あるいは県外の製材業者のほうから何とか供給を受けているということですが、議員お話のように、バイオマス用の需要が高く、それから、単価アップの声も業者のほうから聞いておられるということで、今後入手しづらくなる可能性も高いと思います。
このため、酪農でのおが粉の確保については、早急に大山乳業さんと連携して、現在の酪農家の確保状況を調査していきたいと思います。その上で、県内のおが粉の増産対策として、新たな機械導入とか、それから、もみ殻等、おが粉にかわるものの利用拡大等、不足した場合の対応策を至急検討していきたいと思っています。
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<酪農の将来について>bT |
畜産は非常にすばらしい和牛の種雄ができたので、酪農の分と、やはり二兎を追う形になると思うのです。そして、双方がウイン・ウインの形、これをつくらないと、本当に鳥取県のバランスのとれた畜産というのは、やはり将来的にはなかなか難しいのではないかと思っています。
それと、おが粉の件ですが、やはり県内産をもっともっと。あれは手作業でやるから、どうしても採算割れを起こすのです。だから、中部森林も採算割れしたものを続けるわけにいかないし、酪農家の皆さんなども含めて、いや、高くて手が出せないよと言っている。やはりそこのところは、もう機械化できるところは機械化して、そしてしっかりと県内産の酪農、畜産全てに応えられるように私はしたほうがいいではないかと思っています。最悪の場合、またもみ殻の粉砕器、20数年前にありましたが、あれをまた入れないといけないという形になってくる。しかし、そういう施設があるのだから、森林があるのだから、やはり森林もそれなりに儲かると。そして、酪農家も安くて喜ぶと。そのためには、やはり合理化するところは合理化して、安くて提供できるシステムを林畜連携という観点で私はしてほしいと、対応してほしいということを申し上げておきたいと思います。
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