平成28年5月定例会一般質問(平成28年6月13日)No.1

<県立美術館について>

 
 知事が3選に向けて作成されたマニフェストに「文化芸術のふるさとアートピアとっとり推進と拠点となる美術館建設へ」という具体的な施設名を掲げられました。以来、これまでの県議会において狭隘化しているという博物館議論の中で、教育委員会においては博物館のあり方検討委員会を開催し、美術部門を外に出すことを前提に現在美術館の建設に向けての議論が集中的に行われており、この議場においても毎議会活発な議論が行われています。先週も森議員、興治議員を初め持論が展開されるなど、今議会は私で7人目です。私としては美術館問題については静観するつもりでしたが、納得のいく取り組みが展開されていないため、初めてこの問題について向き合うこととしました。
 既に検討委員会ではどんどん美術館の建設に向け建設場所の検討までされていますが、残念ながら私自身は博物館から美術部門を外に出すと方向性が決まった時点で美術館論争には溶け込めず時間がとまったままで、その後の美術館論争には積極的に参加できていないのが現状です。私自身、知事の思いを確認してから美術館論争に加わりたい思いからマニフェストを初め何点か質問を予定していましたが、興治議員並びに森議員とのやりとりの中で答弁されたので、予定していた質問を割愛しながら何点かの課題について知事と議論をしたいと思います。
 先週の興治議員とのやりとりで、ようやく知事の思いがほんの少しですが理解できたかと思います。多くの議員の皆さんもそうだったかと思います。議会に報告されていない重要案件ですら記者会見等でどんどん話してこられた平井知事が、なぜか美術館建設についてはこれまで県議会で議員の質問に対しても自らの考えを多くは語られず、教育委員会に主要な答弁を振りかえるなど平井知事自身の真意が私たち議員には伝わらず、本当は美術館を建設すること自体を迷われているのではないかと思いました。本当にその意欲があったなら、半年くらい前に知事に自らの考えや思いを語っていただき美術館議論に入れていたら、もっと展開が変わっていたと思います。
 私たちも 100億円もかかる箱物施設をつくることは、次世代への負担を含めどうしても慎重にならざるを得ません。特に消費増税が先送りされ、県の税収見込みが32億円減る現状と毎年20億円もの社会保障費の伸びが想定されている中、私たち議員が危惧しても将来の財政見通しがまだ議会には一切明らかにされていません。
 一方で、美術館議論は当初3月末までに、そして6月議会までに、先日の常任委員会では9月議会までには検討委員会の意見をまとめたいと、検討委員会の議論は走りに走られています。期限を切らずにもう少し深呼吸をしながら議論されたらいかがかと思いますが、知事の所見をお伺いします。
 また、今日までの説明では、財政状況が好転しているから今なら大丈夫という説明だけで何ら財政見通しが示されていないため、私たち議員としても判断する材料がありません。早急に美術館を建設した場合を想定した財政見通しを提示し、議会に説明されるべきだと思いますが、知事の所見をお伺いします。
 確かに教育的な知見や文化振興等の知見は美術館建設に当たっての基本的な要素だと思いますが、 100億円もの投資をするわけですから、それだけでは物足りないのではないでしょうか。
 5月26日、総務教育常任委員会で福岡市の美術館に調査に訪れました。大濠公園のそばにたたずむ福岡市の美術館は環境的にもすばらしく、郷土の作家を中心に展示され、年間50万人程度の来館者がありますが、開館されてから36年たつことから来年から約2年かけてリニューアルされるとのことでした。リニューアルに当たっては、もっと多くの市民の皆さんが来場できる環境や観光等のことも勘案するなど総合的な観点から見直しされているとのことで、リニューアルの担当部署も市長部局で検討されているということでした。
 当然、鳥取県で検討されている美術館が20万人の来館を目標とするなら、単に郷土作家の作品展示だけでなく観光とか地域活性化など、あらゆる側面からの検討が必要ではないでしょうか。
 美術館と名のつくものは全国に数百もあると言われていますが、その中で特にほかにはない特色や魅力を持たせなければ、現実的に目標とする20万人の来館は極めて厳しい数字だと思います。
 美術館の建設に当たっては、県民や専門家の皆さんの声を聞かれることは当然必要でしょうが、まず美術館建設に向けては県の総合戦略の中の重要課題として位置づけ、次世代の皆さんにとってもその価値観が共有できるような施策の位置づけがあって当然だと思いますが、平井知事に所見をお伺いします。
 また、美術館の建設を議論することは、県の総合戦略と相まって総合的な企画立案の必要性から、今からでも知事部局に移管されて対応されたほうがより効果的なものになると思いますが、知事の所見をお伺いします。

●知事答弁

 
 議員のほうからこの議論、今までなかなか入りにくかったが、関心を持って今回質問することにしたということで、御関心をお寄せいただき、議論に御参画いただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 議員のほうから、期限を区切らずに議論をしたほうがいいのではないだろうか。また、財政収支見通しのお話もありました。
 これについては、私が言うのも若干僣越なところがあるのですが、あえて私見を申し上げれば、先般も議場でのやりとりの中でも申し上げましたが、私は期限ありきの議論ではないと思っています。むしろ県民の皆様の納得を得られるかどうか。いわばこれは議会と私の共同作業に最終的にはなるわけですが、それに向けて我々のほうでも検討のペースだとか検討の課題などについて提示すべき課題があれば率直に申し上げ、基本的にこれが解決されて提示されるべきものだろうと思います。
 私も詳細まではちょっと存じ上げませんが、9月議会に何が何でもフレームを出さなければならないとか、そういう期限をセットし過ぎるのもいかがかなと思います。これについては、この議会は間もなく一般質問が終了するでしょうが、県民の間でもさまざまな御意見も出てくるでしょう。特に委員会をまとめ上げようというようなタイミングになればなるほど、また議論も百出するかもしれません。
 ただ、それがデモクラシーだと私は思っていて、そこで最終的に専門家の皆様が御意見をまとめる。それにふさわしい時間をかければよいのではないかと思います。
 深呼吸というお話もありましたが、要は県民の意見をどういうふうに深く吸い込むか。そういう意味での深呼吸が必要だということではないかと思います。
 また、収支の見通しについてですが、仮に教育委員会のほうでフレームがまとまるのであれば、そこに私ども知事部局のほうで財政的可能性について我々なりの検証として試算をつけさせていただいても結構かと思います。
 若干いろいろと不透明な季節に入ってきています。参議院議員選挙もこれからあるわけですが、この参議院選挙の前に消費税の凍結、延期ということが打ち出されました。これに対する財源フレームが十分打ち出されていません。社会保障負担をどうするのか。それから、これからどういうふうに地方財政を展開していくのか。政府のほうでは、地方創生も重要課題として今後も財源措置をするというお話だとか、また保育士の 6,000円の引き上げなど、これも財源をつけるというお話はありますが、ただ、現実には我々のところでは毎年大体20億円ぐらい社会保障に関する負担がふえていきます。片方で、消費税の引き上げに伴う地方消費税増収見込みが年間32億円ということで考えるとその分が削られてしまうので、ややその財源フレームが組みにくくなっているというのは事実です。
 ただ、大きな話で傾向から申し上げると、これは議員もおっしゃったことですが、私が就任して議会といろいろ対話をさせていただきながらみずから効率化に努めてきたわけで、事業の取捨選択もある意味厳格にやってきたところです。それにより、将来負担については気になるところですが、この起債残高のベースでいくと 1,300億円減らしてきています。ですから10年前と比べて、その分は財政的には少し戻しても大丈夫な余地はあるだろうとは一般論としては持っています。
 ただ、先ほど申し上げたように、少し財政的なフレームが組みづらい不透明な時期に入っていますので、仮に教育委員会のほうで案が示されるのなら、議会の御関心も高いと判断したので、私どもなりの財政試算を提示させていただきたいと思います。
 次に、県の総合戦略の重要課題に位置づけるべきではないだろうかというお尋ねでした。
 これは元気づくり総合戦略のことだと思いますが、今も記述はあって、県民誰もが芸術文化に親しめる環境をつくっていくこととなっており、その芸術文化の拠点を整備するということもこの総合戦略の中に書いてあります。
 ただ、これは今後議論が固まってくれば、当然ながらその後仮に地方創生との絡みで財源の問題も一部出てくるかもしれません。ですから、そのときには克明に書き添えていくというように記述を改めるべきタイミングも来ると思います。
 次に、知事部局での検討というお話がありました。
 これもたびたび出ているところですが、福岡の場合はPFIなども絡み、教育委員会だけではない観点での議論もいろいろと出てきているようです。
 美術館のあり方というのは実は博物館法という法律があって、その19条にこの博物館、これは美術館を含む概念ですが、その博物館は教育委員会の所管にすると実は書いてあります。そういうこともあって、全国の状況でいえば51の美術館があるのですが、そのうちの23が教育委員会の所管であり、15が教育委員会から知事部局に自治法の改正により委任されているというところです。純粋に知事部局だけでやっている美術館は10です。この10は、議員も御賢察かと思いますが、博物館法の美術館ではない、ということでないとつくれないので、実はこれは美術館的美術館というものですが、博物館法には位置づけられない美術館のようなもの、というのを10、知事部局のほうで運営しています。
 ですから、どういう道筋が適切なのかということですが、通常のコースでいけば教育委員会のほうでまず制度設計し、みずから運営するか、15は知事部局に移っているのもあるように、できた暁には運営を知事部局側に委任するかということもあると思います。
 また、PFIという手法も今時代も変わり、この4月以降はPFIのフィルターにかけるようにしたので、これで見ていただくということで、場合によってはPFIということもあろうかと考えています。
 このような形で、基本は美術館について教育委員会のほうでという制度設計でした。
 私は、こちらの検討にあえて注目しているというスタンスをとってきました。それは林田さんという国立新美術館の館長をされた方が委員長をされています。この方に私もいろいろお話した経験はたびたびありますが、非常にこの分野では造形が深くて人脈もおありです。もちろん観光的なこと、例えば新美術館ではレストランを入れて経営したりとか、非常に先駆的なことをやっておられて、こうした方がトップで地元の関係者や美術関係者が入って検討するというのは、恐らく私は今の検討の場としては一番いい場ができているだろうと思います。
 さらに、用地についてもそれぞれの地域の方や分野別の方などいろいろ入り込んで今知見を闘わせているわけで、これはそこに予算も含めて委ねているわけですから、私はエチケットとしてその検討がしやすい環境づくりに徹するべきではないかと思っているので、あえてこういう結論を出せというように誘導しているものでありません。
 それをやったのが、誘導してしまったのが多分前回の美術館で、県庁の中の4人の部長に委ねる委員会をつくって、結局はこれが隠れみの的に県民に映ってしまって、県が好きなように決めたのではないかということになってしまったわけです。そういう議論の轍は踏むまいということで、こういうスタンスをとらせていただいているわけです。
 議会ももともとこの美術館構想の議論の引き金を引いたわけで、内田隆嗣議員、浜田妙子議員の代表質問や決算委員会の御報告などもあり、そういう中で教育委員会が検討を始め、今この美術館について真剣に議論するステージに入ったということで、この専門委員会での議論についても尊重していただくのがありがたいと思っています。
 いずれにしても、今議論の真最中ですし、これは百年の大計とも言うべき県政としても重要な課題だと思いますので、だからこそ私も丁寧にフォローしていきたいと考えています。

<県立美術館ついて>bQ


 私がこれまで美術館の建設議論に距離を置いてきた大きな要因について説明したいと思います。
 この議場におられる多くの議員の皆さんが過去の美術館構想を御存じないかと思いますので、少し説明させていただきます。
 平成8年7月、県教育委員会で鳥取市桂見を建設場所とする鳥取県立美術館建設の基本的方向が決定され、同時に県教育長から鳥取市長に対しアクセス道路の整備を依頼。鳥取市は県の依頼を受け、取り壊された県立少年自然の家、つまり美術館予定地までの取りつけ道路を市道として路線認定をし、工事に着手されてきました。ところが、前知事の就任直後の平成11年5月、巨費を投じるプロジェクトなのに県民の支持や内容の検討が不十分として、運営体制などの内容面の再検討を表明。その後、平成15年8月、鳥取市の照会に対して当時の教育長が財政状況を踏まえ美術館の建設は難しいと回答し、事実上の凍結に至ったわけです。
 当時のこの凍結の経過を知る議員は、山口議員、福間議員、斉木議員、上村議員、長谷川議員、そして私、この6人と平井知事です。私は、こうした過去の県の一方的な判断による経過、行政の継続性の観点からすれば、新たな美術館論争に入る前に桂見で凍結されたままになっている過去の美術館問題を鳥取市と話し合いを行い、遺産的課題を解決してから新たなるステージに入るべきだと何度か常任委員会等でも申し上げましたが、わけのわからないゼロベースとか見解の相違とかいう回答で一蹴されてきました。したがって、過去の遺産的な課題について納得した対応がとられてこなかったことに対して、冒頭申し上げたように、私としては新たな美術館論争に入れないのです。
 過去の話ですが、美術館建設に向け桂見に美術館を建設する計画を発表し、その取りつけ道路の整備等を要請し要望したのは鳥取市でなく、あくまでも県教育委員会です。当時、この議場で前知事から提案のあった凍結を支持した議員の一人としてその責任もあり、今日まで対応されていない事態に納得できないのです。
 まず、この課題を教育委員会としての課題ではなく、平井知事として早急に解決すべきものと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 

●知事答弁
 
 私も今思い起こしていましたが、当時、私も総務部長をしていましたので、伊藤議員と同じように総務教育常任委員会でこの議論を当初から見ていましたが、まるで今の都議会のように委員会で審議するのに知事を呼べとか、そのような大騒ぎになったことも思い出しているところです。
 かなりのドラスチックな転換があり、振り回されたのは、誘致要望したのは事実なのでしょうが、鳥取市のほうでもその結果として割り切れなさが残ったというのもまた事実だろうと思います。この点については、本議場でも島谷議員だとか銀杏議員でも同様の問題の指摘があり、私もそのたびに申し上げてきましたが、今は新たな美術館建設についての検討が始まっていますので、いずれこの課題の決着する際において過去の課題についても鳥取市側と協議する、そういう用意はあります。そういうことをしながら、いずれはこれまでの議論の整理もしなければならない時期も来るかと思いますが、今現実には桂見も含めて検討候補地の一つとして委員会のほうで議論されていますので、その状況も見守りながらということになろうかと思います。
 これについては、例えば国庫補助金があり、国庫補助金の返還については、これは必要がないというのは我々も関係省庁とやりとりし、これは確定したと思うのですが、そのほかの課題についてどうするのか。いずれは議論すべきときが来るだろうと思いますし、パートナーシップとして市町村と県との関係もありますので、前の政権時代はこのことはタブーだったようですが、いずれは議論をする時期も来ようかと考えています。

<県立美術館ついて>bR

 
 私は本当にこの博物館から美術館を独立させていこうというときに、本当は凍結されたものをそこできちんと問題解決して、それからゼロベースの美術館に私は入るべきだと思ったのです。タイミングを逃したと思うのです。
 この前、常任委員会で市町村からの希望用地が県教育委員会から報告されましたが、鳥取市は4カ所か5カ所出ました。ところが、最初は、桂見は上がってなかったのです。ところが、鳥取市がその要望を出したときに県教委が取りまとめたとき、桂見の問題をどうしたらいいのでしょうか、という3行を鳥取市が添付して出したのです。そしたらその3行で、突然として桂見も検討用地に再び上がったのです。その凍結を解除したのですかというわけです、私は。いつ解除になったのですかというわけです。我々は聞いていません。知事もまだ凍結したままですよと答弁されたでしょう。
 ところが、いつの間にか鳥取市が要望した箇所とは別に県教委の判断で独自で桂見も上がってきたのです。我々も唖然としました。鳥取市に要望して、鳥取市が上げたものならいいです。悩ましい問題ですが、桂見の凍結したものはどうなっていますかと鳥取市が3行書いた。そうしたら、突然それが上がってくる。本当に取り組みが中途半端なのです。美術館問題はもう既に走っていますが、まずきちんとこの問題を解決すべきだと思います。これをいつまでも続けると、鳥取市と鳥取県の関係、喉仏に魚の骨が刺さった感じで、私は本当に行政間の連携が十分できないと思います。だから私は違和感を持って、この問題に取り組めないのです。これについて、知事の見解を求めたいと思います。
 それともう1点、今日までの美術館論争、一定の距離を置かざるを得ないということを先ほど申し上げました。
 やはり博物館の論争の原点は収蔵庫がない、狭隘だということなのです。今、教育委員会がやっているのは全部美術館なのです。我々には博物館の対応をどうするかということが全くない。なおざりになっている感じがする。私は、どちらかというと博物館のほうが大好きなのです。やはり鳥取県の先人の歴史とか自然とか、貴重なロマンの宝庫である博物館のありようをもう少し大切にしてほしいと思います。
 平成8年度当時、よかったか悪かったかは別に、県の総合計画では美術館の建設とあわせて博物館の改修計画も同時並行で議論されて、あわせて掲載されているのです。だから先ほど言いましたが、博物館は教育委員会で、美術館は法的な問題はあるかもしれないができ得るならば執行部で、やはり県の総合戦略と相まって検討されるのも一つの選択肢かなということで、私は申し上げたわけです。
 今のままで議論が進むなら、博物館が埋蔵文化財になってしまわないかと私は危惧しています。私は、今後の博物館のあり方について早急に検討するように知事からも教育委員会に提言すべきだと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 先ほども申したように一つ残された課題として道路の扱いについて、これはお互いの信頼関係でいずれは議論するときが来るだろうと考えているところですが、この桂見の建設については議員がおっしゃったとおり凍結された状態で今日まで来ているわけで、ただ、この計画が完全に残っているかというと、これは県民の皆さんの意識ということで申し上げれば正直白紙に戻ったように考えられている、一般には理解されていると思います。
 実は、この桂見について候補地の一つとして委員会が検討を始めたわけですが、そのとき教育委員会のほうでもいろんな議論があり、桂見も対象で議論すべきではないかという議論もありました。ただそのときに鳥取市は候補地として出さなかったことの趣旨がよくわからなかったわけです。それで教育委員会なりに調査してお互いにやりとりをぎりぎりまでして、それでこれは市のリストには入っていないが、検討対象としては委員会にかけていこうと最終的には判断されたものと思います。
 実は、私も非常にこの時期ここの扱いはどうなのかなと気になっていたもので、率直な話、当時深澤市長ともこのことについて検討の中に入れようかという動きもあって、いかがなものかなということでやりとりもしたのですが、市側としては検討の対象に入れてくれることは、それはそれで結構ですということでした。ただ、市としてそれを自分のところの候補地として示すものではありませんと。だからこれは市のほうも桂見というところに従来のような、ここに決まったはずだというこだわりが市議会も含めて今は変わってきていると私は受け取りました。ですから、そうした中で検討されるのであれば、教育委員会のほうでしっかり含めて検討してもらったらそれでいいと自分なりには解釈していました。
 また、博物館についてですが、この博物館の扱いについては、今までの議論で明確で、博物館は残す。残す上で、どこかを切り出して外へ出すという議論ですから、美術館部門が外に出ていくということで、残りのところは残るということで、明確にそこは仕切られているのではないかと思っています。
 ただ、美術館のほうの議論が予定よりも大分延びて議論されており、私は、これは延びても構わないと思っているのですが、慎重な各方面の意見を吸収しながら議論されています。それとの関係で、博物館のほうも抜けるものが決まらないわけですから多分議論ができないというのではないかと思っています。ただ、いずれ博物館についてもきちんとした議論が必要な時期が教育委員会側で想定されているのではないかと思っています。
 現実の耐震等のことからいえば、手直しをすれば50年でももつ建物だという分析で、ですから美術館の議論が決着した後でこれについてまた深掘りをしていくということで、私はそのスケジュール感としては、それはそれでいいのではないかと思っていたところです。

<県立美術館ついて>bS

 
 桂見の問題は、知事はそのように解釈しておられますが、やはり行政間では喉仏に骨が刺さっています。知事、今は本当に大変でしょうが、やはり県のリーダーとして新たな時代を切り開くためには知事がみずからリスクも負いながらこの問題に取り組んでほしいと思うのです。大変だと思うのですが。
 例えば、私はこの美術館問題をずっと見ていました。DBS問題など、知事は、これは何とか鳥取経済のためにやらないといけないから皆さん頼みます、議員の皆さん理解してくださいと。当然リスクも私が持っていきますからと。そういう思いの中で我々に説明してこられました。このたびのこの美術館論争、私からすると知事のそういう強いリーダーシップ、リスクを私がとりますから、財政もこうですから大丈夫ですと。ただし、美術館のそういう専門分野は検討委員会を設けて議論してもらいましょう、県民の皆さんの意見を聞きましょうということでいいと思うのです。私は、本当にもう少し何かこの美術館論争に知事がもっと、リスクは俺が持ってやるからという強いリーダーシップが欲しいという思いできょうは議論させていただきました。
 かなり厳しいことも言いましたが、私はそれが本当に議員の多くの皆さんの思いだと思うのです。ぜひとも知事にはそういう部分を理解いただいて、この問題に取り組んでいただきたいと思います。最後に、一言、御意見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁


 私としてもこれを謙虚に受けとめて、しっかりとこの美術館建設という構想づくりにフォローしていきたいと思っています。
 度重ねての議論もこの点であったところですが、やはり長い石破二朗以来の課題ですが、私はこれは封印を解いた議論をすべきとき、すなわち建設に向けた議論をすべきときだと考えていますし、その意味で当時の新聞やメディアの議論も含めて、一つの求心力のある議論のステージに入っていると思っていましたので、私自身も封印を解こうと訴えかけ、当然ながらその背景としてはやるべきときにはもう自分としてもこれを背負ってやりますよという決意も含めて申し上げてきたところです。
 ただ、今その構想づくりの段階ですので、ここでまた例えば、何処どこにつくれという私の権限を行使し過ぎると、結局前の轍を踏みますので、あえて、ふだんはよくしゃべるほうかもしれませんが、少し口が重い感じに見えるかもしれません。
 ただ、私自身の一つの理想型として申し上げるのは、地方自治というものが文化や芸術に対しても作用しているということがあると思っています。これは歴史上も語られていることであり、約 200年前、ゲーテがこういうように述べているのです。ドイツという国のすばらしいのは、国民文化が均等にどこにでもあることだ。現実にも確か70を超えるような大学が全国にあったり、それから20以上の公共図書館があったり、さらに美術館、博物館は無数にある。これがドイツのすばらしいところだと言っていたのです。フランクフルトだとかブレーメンだとかハンブルグだとか、そうしたところが仮にどこかの大国に吸収されていたとしたら、こういうように文化が全国に存在しなかっただろうと。その辺のいわば分権的地方自治を基本としたような、そういう国のあり方がドイツの文化を強くしたのだと述べておられます。
 これは多分現代でも妥当することだと思います。それぞれの地域で何が基本的な財産かと考える。戦後直後のあたり、学校ができるぐらいを基本にしようということで市町村の合併が起こった。そういう昭和の大合併という時代もありました。文化芸術の単位として都道府県ぐらいはせめて機能して、そういう博物館だとか美術館が全国に無数にある。その裏打ちとなるのは、地方自治的な都市国家があったというドイツの歴史もあります。
 そんなことを考えると、やはりずっと封印したままではいけないのではないだろうか。機運が盛り上がるときはそこをしっかりと捉えて誠実に、そして最後には決断と実行で進めていく。それが私たちの任務ではないだろうか、このように思ってきたところです。そういう真摯な態度で、これからもこの美術館の建設構想について向き合っていきたいと思います。