平成29年6月定例会一般質問(平成29年6月26日)No.1

<指定管理者制度について>

 
 指名指定管理施設については、指定管理者選定に際して、公募選定のように競争が働いていないということから、管理委託料に余剰額が生じた場合は、一旦全額を県に返納していただき、平成28年度の管理委託料の余剰額については、県への返納額から外部への再委託料に係る複数年契約導入による請負差額を控除した額の3分の2を指定管理者に基金造成補助として交付されています。
 指定管理者制度は、平成15年に地方自治法が改正され、公の施設をより効果的・効率的な管理を行うため、民間活力の活用、適正な管理の確保、住民サービスの向上、行政経費削減を目的に創設された制度で、あくまでもできる規定ですが、我が県では、平成17年度に夢みなと温泉館について、指定管理者制度として指定されましたが、その後売却されたので、それは除外し、きょうは、平成18年度から導入された、現在の指名指定管理者制度の施設が18施設、公募指定管理者施設が19施設と、合わせて37施設について議論したいと思います。
 当初は全て3年契約でしたが、雇用の安定、経営の安定性の観点から、導入から3年目の21年からは契約期間が5年に延長され、現在に至っていますが、そのうち平成31年4月に更新を迎える施設が31施設あります。我が県では、指定管理者の運用を始めてことしでちょうど10年たちますが、この間59億3,000万円余りが削減され、財政的には一定の成果があったと理解しますが、メリット、デメリットそれぞれがある中で、平井知事としてはどのように本県の指定管理者制度を評価・総括されているのかお伺いします。
 

●知事答弁

 
 国全体の制度として、それまで公の施設と言われていたものを民間の活力を導入して、もちろんコストダウンのこともあり、民間の活力を導入すれば、いろいろな知恵があると。行政の、例えば規則でがんじがらめの硬直的なものでない、もっと使いやすい使い方や、あるいはハイブリッドな他の用途も含めて展開するようなこともあるのではないだろうか、そういういろいろな思いを込めて指定管理制度というのはでき上がったわけでした。その後、最近は、さらにPFI・PPPといった手法も導入されるようになってきて、一種の行政組織のトレンドです。
 そもそも最初にこういう考え方が出てきたのはサッチャリズムで、行政といっても、例えばサービス行政、例えば施設経営などもあるわけです。サッチャーさんの場合は行政の、例えば警察組織から丸ごとという考え方もあるわけですが、日本でそこまでやれるかどうかはともかく、入札をかけてやるようなイギリスのやり方というもの、新自由主義的な思想があったと思います。それを導入してみようということで、完全にそのコピーではないですが、日本流にアレンジをして指定管理制度というものができ上がったと思います。
 我が県でもこれを取り入れていく中で、いろいろとメリットも出てきたと思います。一つは、議員も指摘された、59億円余りに上るいわば県民の負担の削減効果というのがあったと思います。これは、もちろん我々行政サイドでできたことというよりは、その応札していただいた事業者の皆さんの不断の努力のたまものと言ってもいいもので、私どもが手柄をひとり占めするというのはちょっと適切でなくて、民間の皆様がそうした行政サービスをもっと効率的にやろうと努力したことが、県民の負担軽減という還元につながっていると理解すべきものと思います。
 また、サービスのほうが多分大事だと思っていました。現実にも、例えば倉吉未来中心、今ようやくまた再開しましたが、指定管理制度に出す前と後で比べてみると、毎週休館日があったものが、月2回に抑えている。それからセミナールームなどの使用料も低減しているところです。倉吉体育文化会館に至っては、定期的に休みが設けられていましたが今は年末年始だけの休みになっていますし、使用料も低減されています。
 実は、こういうことが各地でありました。これがいわばユーザーである納税者の皆様の評判にもつながっていると思い、この指定管理制度については、そういう意味で住民の皆様に受け入れていただけたのではないかと思います。
 さらに、最近、大分論争がありましたが、船上山のあの少年自然の家のコアの部分は行政が相変わらずやりますが、管理的なオペレーションの部分、マネジメントの部分については、指定管理のほうに出すということになりました。
 その後、アンケート調査などでフォローしてもらっていますが、評判がいいということです。例えば、館内表示、あそこは結構複雑ですが、ああいう館内表示をわかりやすく改めるとか、それから施設としてのサービス、もてなしといいますか、ホスピタリティーといいますか、そういう点でも改善したということで、実は、ユーザーの方からは評価もいただいているわけです。ですから、こうした指定管理のあり方というのは今後も継続し、発展させるべきだと思います。
 ただ、議員もこれまで、例えば未来中心のことだったと思いますが、御指摘いただいたこともありますし、また各議員からもいろんな立場でのお話をいただきました。
 実は、鳥取県の指定管理制度は、鳥取型に進化してきています。例えば安全労働法規のようなものを満たすことをちゃんと基準上、入れるべきだということとか、それから継続雇用ができるように、そうしたことも義務づけていこうとか、またこうした施設の経営の安定のために、やはり今ではちょっと厳し過ぎないかということで緩和したこともあり、最近は契約額の見直しをして、従来より少し緩めて増額しているということもあります。
 また、これもやはり議会で出た意見ですが、漫然と毎回指名指定を繰り返すのではなく、やはり見直すことも契約をやり直すときに考える、これを条例上義務づけるとか、いずれも実は議会での議論に基づいて、鳥取県独自に指定管理制度を改めてきたところです。
 今後も、先ほどもちょっと触れていただきましたが、直営施設がまだあるところでもあり、例えばかにっこ館のようなところなど、幾つか従来のアナロジーでいけば、検討の対象にして、指定管理で出すかどうかはともかく、一度総ざらえして考えていく、そういうタイミングに来ていると思っています。

<指定管理者制度ついて>bQ


 指定管理者制度についてはメリットしかありませんでした。デメリットについては余りお答えにならなかったのですが、どうなのでしょうか。
 指定管理者制度の導入からことしでちょうど10年になります。確かに平成26年度の更新時には、事業者からの意見を踏まえ、新規事業の追加、修繕費の負担割合の見直し等、大幅な見直しが行われてきましたが、10年たつことを機に、基本的認識を含め、改めて見直しをすべきでないかと思います。
 指定管理者制度の本来の目的は、先ほど言われたように、民間のノウハウを活用して、施設の利活用の促進であるとともに、私は、発注者である県が指定管理者制度を導入することにより、途中から本来の目的より経費の削減、経費の削減と声高に取り組んできた経過があると思います。議会としても、それに一喜一憂した面もあったかと思っています。
 私も経費削減の面においては、一定の効果はあったと思います。評価をします。しかし、もともと県が県民サービスの向上並びに地域振興政策として必要だとして、議会の同意を得て建設したものばかりであり、当然ランニングコストが伴うことも理解されていたと思います。指定管理者制度を否定するわけではありませんが、最近、指定管理者制度の中で経費削減ばかりを追求することを続けていては、発注者である県、受託事業者の双方にとって、将来への展望が本当に開かれるのかと不安に思うことがあります。つまり、このままでは指定管理を受託している企業や事業団が経営的にも先細りするのではないかということです。
 そして、一つは、雇用の面です。これまで県の外郭団体の職員は、県職員より2号俸以下が暗黙の了解というか、過去には国の指導もあったと聞きますが、今後もそれを踏襲されていくのかということです。県が指定管理に出すために見積もり算定に用いている人件費の金額とその根拠について説明をお願いします。
 今のままでは、幾ら頑張っても、収益を上げても職員になかなか還元されないシステムの中で、企画力があり、特殊技能のある優秀な人材が確保できるのか、本当に意欲のある人材が確保できるのかという不安があります。比較対照とされている県職員の待遇は低く据え置かれている中で、さらに低くなるわけですから、とても私は心配です。特に文化振興財団は、舞台運営にかかわる照明や音響などの専門的な職種を初め、企画力、芸術家の実力を見きわめる力を持った職員など、多くの専門性を持った職員で構成されていますが、意欲のある優秀な職員は都市部への流出が現にあり、今後も懸念されている課題でもあります。
 さらに、現在の指定管理者の契約期間は5年であり、幾ら頑張っても将来的な雇用不安は払拭できないことです。既に人材難であり、指定管理者の中には、時給を上げてもパートさんの確保に難儀されているところもあるそうです。
 次に、施設の老朽化です。県との協議の中で、50万円以上の修繕については県の予算で修繕されるようになっていますが、指定管理を受託した時点で既に一定の時が経過している施設もあり、その対応が追いつかないのも大きな課題の一つです。イベント中心の施設では、他の民間施設のようにリニューアルイベントを打つこともできない、そんな状況です。
 このように、一つ一つ申し上げれば切りがありませんが、冒頭申し上げたように、10年たつことを機に、基本的認識を含め、改めて見直しをすべきではないかと思いますが、知事の認識をお伺いしたいと思います。
 

●知事答弁
 
 人件費の考え方、修繕費、人材の確保など、詳細にわたる部分については行財政改革局長からお答えしたいと思いますが、結論は、伊藤議員がおっしゃるように、10年の節目ということもあり、実は、平成31年度に一斉に更新されます。これは、正直な話、契約でやっているので、契約年度の途中で大がえすることはまずできないので、今年度、そして来年度、その辺の修正すべき点があるかどうかは、例えば今、受託されている事業者さんとかの状況も伺いながら、我々としても今後改善すべきことについて、点検させていただきたいと思います。
 10年たって、制度的にも一つの節目であり、成果も見えれば、その課題も見えるところです。デメリットがないというお話でしたが、実は、例えば、先ほどの労働関係、雇用の継続、そういう課題があり、これがいわばデメリットとして意識されるところですが、それを克服すべく議会でもお知恵をいただいて、一つ一つ今、丁寧に改善してきたという趣旨で先ほどは申し上げたところです。
 ですから、そういう意味で、人件費についても、基本戦略としては、今、我々の単価は民間企業準拠で算定しているし、それから施設の改修についても、50万円までの独自の施設改修というのを250万円ということで、そのメルクマールを変えているのは、現場のほうで修繕しやすいようにし、その分委託費のほうに乗せているというやり方をとってきています。最近もそうした人件費の積算や、あるいは改修について、改善も加えてきているところですが、まだどんどん世の中は変わっていくので、今年度から来年度にかけて、点検したいと思います。

●行財政改革局長答弁


 人材確保に関する人件費の単価ですが、各施設の規模だとか業務の内容に応じて、必要な組織体制、具体には職階とか人員、こういうものを想定して、先ほど知事が申したように、職階ごとに民間平均給与を当てはめて算出しています。具体例として幾つか申しますと、例えば、事務課長については670万円余り、事務課長代理については560万円余り、こういったものを民間平均給与のほうから当てはめて算出しています。
 施設の修繕の関係については、平成26年度から施設の経過年数とか規模に応じて、指定管理者が実施できる修繕費の上限を見直しています。具体的には、知事が申しましたように、これまで50万円という線引きをしていました。この上限を250万円に引き上げた上で、予算措置のほうもしっかりとさせていただいているといった状況です。ほとんどの指定管理施設は県有施設中期保全計画のほうに位置づけており、計画的に修繕を行っていくということをしていますが、サービス水準の向上のための積極的な投資もあわせて県のほうで行ってきています。例えば、鳥取砂丘こどもの国の遊具の更新、こういったことをして、来場者数がふえていますし、とっとり花回廊においては、別途補助金でイルミネーションを整備したり、とりぎん文化会館においても舞台照明、音響、機械設備の更新、こういったものを順次行ってきているところです。
 今後も指定管理者のほうと個別に協議をしながら対応していきたいと思います。

<指定管理者制度ついて>bR

 
 それぞれ施設との協議なのですが、やはり指定管理者に出したから、県はそれで手を切るのではなく、その担当部署の職員は、指定管理を出した後も、もっともっと足しげく通ってほしい。
 なぜかと言うと、皆さん、燕趙園へ行ってみられましたか。燕趙園の前に石畳があるでしょう、もう壊れた石畳が何年も放置してあるのです。中には石畳が割れて、起きて。お年寄りもたくさん通るのです、ひっかかる可能性もあるのです、これが全く放置したままなのです。県も指定管理に出したから、管理者から言ってきた要望だけを聞くというのではなく、いわゆる施設をつくった責任者としてもっともっと現場に足しげく通って、現場を見ていただきたいということをあえてお願いしたい。
 現在、指名指定管理施設については、指定管理者選定に際して公募選定のように競争が働いていないということから、指定管理料に余剰金が生じた場合は、3分の2を指定管理者に基金造成補助として交付されるとされています。施設ごとの努力とは関係なく、一律に3分の2です。
 中には、県直営時代より効率的な運営で、稼働率を上げて努力されている施設もあるわけで、指名指定管理施設でも、3分の2を基金造成補助としての原則としながら、外部の評価を導入するなどして、やはり補助率を上げるなど、もう少し見直しを検討されるべきだと思いますが、知事の所見をお伺いします。
 私は、指定管理者制度の中にあっても、受託した企業や事業団が将来も引き続きしっかりと県営施設を効率的に、しかも県民に活用される施設にするために、受託料をただ単に搾り取るのではなく、企業や事業団等の経営体質の強化、独立性の尊重などを考慮すべきものと思います。県民所得は全国でも極めて低い中、これらの事業所で働くのも県民です。バランスの問題もあるかもしれませんが、要は、指定管理者制度本来の目的を、要するに住民のサービスの向上という目的を達成する中で、優秀な人材が夢と希望を持って働ける環境の指定管理者受託業者を育てることも、指定管理者制度を運用する県にその責任の一端があると思いますが、平井知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 いろいろと改善すべき点があるだろうと思います。私どもも順次改善は進めてきておりますが、やはり、平成31年度を目指して点検作業に入るときに、きょうの御意見を含めて検討させていただければと思います。
 実は、指定管理には2つの大きなパターンがあり、1つは公募制ですし、もう一つは指名指定といい、どこかの事業者に決めて、こちらと契約をするというやり方です。この公募制のほうは入札というか競争ですので、当然ながら、コストも含めて、それぞれに提案の中で工夫して出してこられます。指名指定のほうは、いわば随意契約に近い形ですから、そうした努力をしなくても契約がとれるという面があります。もちろんそうしていないということではありませんが、とれてしまうということです。
 そこで、最初は、これは利益となるようなものがあった場合、要は余剰が出た場合、10分の10、その施設のほうの運営法人のほうで取ってもらっていたのですが、ただ、興治議員だったと思いますが、それはちょっと公募と指名指定では違うではないか。公募は、最初から落としているが、指名指定のほうは、もともと役所の積算だから、損しないように、少しきちんと手厚くするところは手厚くしながら積算しているので、それを10分の10というのは行き過ぎなので、ということで、これを一旦2分の1にしたわけです。
 ただ、さすがに2分の1というのも経営努力の反映として、先ほどおっしゃるように、いろいろと余裕のあるやり方というのはできなくなっている。ですから、それを現在では3分の2に戻しています。この辺はちょっと非常に難しいさじかげんがあるところで、10分の10はさすがに行き過ぎなのかと思いますが、何らかの評価制度を加えながら、3分の2のところを平均値にして上下させるとか、何らかの工夫が必要なのかもしれないなと思いながら今、伺っていました。ぜひ検討をさせていただきたいと思います。
 また、その委託料のほうも見直しをし、今の人材確保だとかいろんなこともあるので、平成20年代前半の21年度から25年度にかけては全部で25億円ほどだったものが、その後のところでは、今の設定としては29億円レベルになっていて、4億円ぐらい底上げしています。だから、大体2割弱ぐらい上げているということで、大分従来よりは、ある意味機動的な動きができるようにはなっていると思います。
 今後これも見直しとして考えていきたいと思いますが、あわせて最近導入され始めているコンセッション方式などがいいのかどうかも、そうした見直しの際に検討する余地はあるのかなと思います。コンセッション方式であれば、今言う5年とかいうことではなく、一定の経営権を与えるということですから、長期的な人員の雇用ということはできます。その長い期間の中でつじつまを合わせながら運転させていくということですから、企業努力も当然その中で起こってくるでしょうし、いろんな使い道、民間の活力を入れて考えられるかもしれません。
 したがって、そうしたコンセッション方式なども、今、議員がおっしゃるのは、文化系だとか、本当はなじみがある分野があるかもしれません。また、場合によっては、みなと温泉館みたいに売却してしまうと、福祉施設なども本当はあり得るのです。いろいろな財源上の問題、つまり、建設時の交付税が入った財源を使っているとか補助金適化法とかあるので、やり切れていないところもありますが、年限が来れば、そうした課題も取れてきますので、売却ということもコンセッション以外にもあるかもしれません。幾つか選択肢を考えながら、31年度の更改時期に向けて議論していきたいと思います。

<指定管理者制度ついて>bS

 
 指定管理の中でも、例えば鹿野かちみ園などは、もう事業料だけでやっているわけですから、いろいろ県から金が出ていないわけです。その辺は、それなりの独立性というか、主体性を持たせながらさせるとか。ただ、やはりそうはいっても県の施設ですから、先ほど言いましたように、県が、職員もしっかりと現場に入って運営状況は把握していただきたいということはお願いしたいと思います。