平成29年9月定例会一般質問(平成29年10月4日)No.1

<今後の和牛振興について>

 
 5年に1度開催され、和牛のオリンピックとも言われている第11回全国和牛能力共進会が、9月7日から宮城県仙台市で「高めよう生産力 伝えよう和牛力 明日へつなぐ和牛生産」を大会テーマに開催され、我が鳥取県からも、種牛の部に12の畜産農家から18頭、肉牛の部に名和の畜産農家から8頭が出品され、この5年間をかけて各県で改良されてきた立派な牛たちが、体形の美しさ、肉質のよさを競い合いました。結果、和牛全共の華とも言われている7区、種牛と肉牛の総合評価群において優等賞2席に輝いたほか、第4区の系統雌牛群で優等賞4席に入賞、第2区、第5区、第6区、第7区、第9区で優等賞に入賞するなどして、総合成績も5位になるなど、過去にない成績を残しました。
 大会には、知事を初め多くの県議会議員の皆さんも駆けつけられ、鳥取県の牛が入場するたびに鳥取和牛と書かれた大きなのぼりのもとで声援が送られ、和牛全共で入賞することの厳しい現実を目にしました。
 これまで何度となく不振をきわめてきた我が県にとっては、このたびの成績はまさに快挙であり、鳥取和牛が全国に名を連ねることができた大会でしたが、平井知事に総括的な感想を伺いたいと思います。
 このたびの快挙は、鳥取和牛の復興、鳥取和牛の全国区を目指して愛牛と苦楽をともにされてきた畜産農家の皆さんの努力の結果であることはもちろんですが、今は亡き琴浦町の生田英則さんの改良努力により誕生したスーパー種雄牛白鵬85の3がその源です。しかも、今では和牛の本場と言われている宮崎や鹿児島県は飼育頭数が鳥取県の25倍、30倍以上と言われ、数ある中で選抜する県と、絶対的飼育頭数が少ない中での鳥取県の場合を考えれば、非常に価値のある入賞であると思います。
 このたびの大会は、確かに白鵬85の3の持つ能力が全国的に認められた大会でもあったわけですが、鳥取県にとって今大会は出発点であり、時代とともに新たな和牛能力が求め続けられる中、現状に満足していては、次期大会での入賞は困難なものになると思います。県としてさらなる和牛振興を進めるための方策について、平井知事にお伺いします。
 

●知事答弁

 
 議員のほうでも御指摘いただきましたが、今回は大きな意味のある全共だったと思います。前回の長崎全共、いろいろハプニングもあって、伊藤議員もいろいろ心を痛められたところでしたが、さまざまな反省を踏まえて、今回は万全な体制で向かおうと。正直、県職員の投入だとか周りの方々の協力は前回以上だったと思いますし、また、尻上がりにムードが盛り上がっていって、これは肉牛のほうも、種牛のほうもですが、それぞれに生産者が団結して、お互いに支え合って叱咤激励も含めてやっておられました。伊藤議員も現場の宮城のほうに行っていただいたわけですが、ある参加者の方が述懐されておられましたが、仲間の牛飼いの皆さんに随分言い過ぎることもあったがとにかく勝利を目指して頑張ろうという、まるで国体の選手のような厳しさも含めて非常な決意で向かわれたと思います。
 実は昨日、この議会が散会した後、西に向かい、西部の皆さんの今回の和牛全共の祝賀会を兼ねた賞状等の伝達式に立ち会わせていただきました。私も何回か全共の場を経験したわけですが、壇上にずらっと並んだ背の高いトロフィー、そして数々の賞状、それからメダルだとか、もう本当に壮観でした。机が1つでは足りず、2つ、3つ占領するぐらいの数で、壇上に上がられる方が、それぞれにみんな賞状とトロフィーが当たるわけです。実は、西部のほうは参加者全部が優等賞に輝いている方々ばかりだったということもありますが、見たこともないぐらい壮観でした。あのトロフィーや、あるいは数々の賞状などを入れるだけで牛小屋が一つ要るぐらいのにぎわいで、今までなかったことが確かにここで起きたわけです。皆さん感激も新たにされておられましたが、少ない人数の中で、また少ない愛牛の中で私たちがこの勝利を手にすることができたことは、功績と言っていいのではないかと思いますが、次への道を誓い合った、そういう瞬間でもありました。
 そのとき、ある参加者の方が次の鹿児島全共をにらんで言われましたが、霧島よりも高く、桜島よりも熱く、そして錦江湾よりも美しく、私たちは次の鹿児島全共で闘っていきたいというお話でした。胸が熱くなるような思いがしましたが、歴史をつくったと、そんな大会だったのではないかと思います。
 今回は、数々の方々の輝きが見えました。例えばとうはく畜産では9区のほうに出品されました。優等賞に輝かれたわけで、優等17席でしたが、しかし、序列をつけて183頭の牛の中で優良枝肉賞をとったのです。これは、落札される食肉業者のほうでベスト5を選ぶもので、そこにとうはく畜産さんが入ったということは大変大きかったと思います。山下畜産さんも8区で健闘され、1等賞という輝きを得られましたが、それにも増して、また7区のほうでは藤井さんが、枝肉の1位を、ほかの岸本さん、西田さんと一緒にとられたわけです。
 実は、非公式ではあるのですが点数化して、出品牛180頭ぐらいに序列をつけます。その一番上にあった名前が藤井さんでした。そういう、いわば白鵬85の3という名牛に恵まれたこともありますが、それだけ肥育の技術を発展させてきたこと、また、戦略的にもゲノム育種価だとか人工授精だとか、この議場でも議論されたような最先端の技術を鳥取県がいち早く取り入れてやってきたこと、それがそうした成果に結びついたのではないかと思います。
 また、4区のほうでは農大の牛も出品されていました。農大の皆さんも活躍されておられ、これも初めて優等賞の中でも4位という序列を得ました。審査の経過を見ていると、ひょっとすると一番上になるのではないかというぐらいで、最初に審査員から上位牛として選ばれたのが鳥取の牛だったので、私も思わず立ち上がって歓声を上げていたわけですが、その後、鹿児島や大分が上へ入りましたが、誰が見ても問題ないグループであったと。なぜか。それは肋張り賞に選ばれたことからわかると思うのです。体の体形がすばらしかった。そういう特別賞をここでとられたわけです。その中に農大の皆さんの牛が入っていたのです。倉農も活躍しました。優良賞という結果ですが、こちらもつむぎを今回出品されて、その中で高校生たちが頑張った、その成果が出たと思います。
 実は倉吉農高は乳牛しかつくっていないのです。その中で和牛を育てる。これは学校の方針もあったのかもしれません、同じような餌代、同じような餌の中でやったりするので、結構ハンディキャップがあったと思います。そういう中で大切にこの牛を育てた子ども達は、いずれ和牛にかかわりたいと言ってくれているわけです。特に今、倉吉農高に通っている宮崎さんという女の子、お父さんお母さんは今回の和牛の団長さん御夫妻ですが、堂々と4区の解説員まで引き受けておられて、神々しいほどのものがありました。若い方々に鳥取のこの今回の全共の和牛にかける思いというのが確実に伝わったような気がします。成果も成果ですし、未来に向けても道筋をつけることができたのではないかと思います。
 今回のこの勝因の一つに、議員のほうで白鵬85の3のことを言われました。藤井さんの牛もその成果です。白鵬85の3は、BMS9.6、それからロース芯面積も72.2平方センチメートルと、非常に大きくて立派な、しかも効率のいい牛であり、人気も高いです。
 今回この全共が終わった後、実は問い合わせが殺到しておりまして、どうやったらこの白鵬の血筋が手に入るかといったような話ですが、なぜかというと、和牛農家の皆さんが、外れがないということを言われるのです。これは全国の皆さんです。実はそれなりに成績のいい牛というのはあるのですが、後代検定という検定をしますが、その結果がある程度数字がいいものも当然出てくるわけですが、外れがない。ですから今回3頭出して、BMS値でいいますと12、12、10です。12、12、12ということになると、もうかつてないようなことで、12、12、10だけでも圧倒的に他を引き離したのです。そういうわけで、サシといわれる高級肉の代名詞、このサシの横綱と言っていい白鵬85の3でした。
 先般、石浦関の結婚式があって、県民を代表して私もメッセージを伝えに参列させていただきましたが、その席で、当然事実上の親方の白鵬関も宮城野親方と一緒におられました。そこで、白鵬関は先場所休場されましたが、その鬱憤をうちの白鵬85の3が宮城で晴らして優勝しましたと言ったら、白鵬は大変喜んでおられました。やはり強い牛が今回いたということだと思います。
 では、今後どうなるかということですが、その辺は、やはり和牛改良をさらに精力的にやらなくてはいけないだろうと思います。考えてみると、生田英則さん、琴浦町の方、平成23年に天へ召されました。息子さんも実はその直前にやはり同じ道をたどられたわけで、牛舎を閉めるということにもなりました。そのとき残された牛が白鵬85の3で、畜産試験場のほうで、それを今回見事に宮城の地で花開かせることができたわけです。
 これも、議場で議論いただいた県外からの雌牛の導入事業の一環から始まっているわけですし、こうしたことを今後もさらに拡大し、強化していけばいいのかなと。成功したことを、我々としてもさらに伸ばしていくことが一つの次の勝利への道筋になると思います。現に今、スーパー雌牛の導入のようなことも新年度に向けても考えてもいいのではないかと思います。昨日の祝勝会の中でも、和牛農家からそういうことを求める声が上がりました。この勢いを次に続けるためにも外からの導入は大切であるということかと思います。
 現実問題、今どういう状況かといいますと、白鵬85の3、それから百合白清2の後続を私どもも今仕込んでいるところで、具体的にまだ未完成というか、まだ途上ではありますが、1頭は隆福也、それからもう1頭は元花江という牛です。この隆福也は、隆之国という宮崎系の牛、これに私どもは、今回出場チームの中にいた谷口さんのところのふくふくという雌牛をかけ合わせたのですが、今はまだ後代検定にいっている途中ですが、現在までの状況ではBMS10を超える勢いです。ひょっとすると白鵬85の3を上回る能力が示されるかもしれない。また、今、白鵬85の3と同程度ぐらいいくかもしれないのが元花江です。これは名牛と言われる安福久と、もとはな2をかけ合わせたものですが、BMSの予想は今9.6ぐらいで、ひょっとすると白鵬85の3並みということになります。我が鳥取県としても、今回証明された一定の力というものをきちんとこれからも発揮していけるように精力を傾けていきたいと思います。
 今回、会場のほうには生田さんの息子さんの姿もありました。先生方もお会いになったと思いますが、今、農大に通っていて、その前はつむぎをつくっていた。つまり、倉吉農高でその牛を育て始めた時期のお子さんですが、また牛舎を開いて、これから和牛を飼うということを言っておられました。このような形で後継者、次の世代というものもつくっていければと思います。できるだけ早く、次の全共に向けての体制を再構築したいと思います。

<今後の和牛振興について>bQ
 
 これまでの和牛の改良というのは畜産試験場を中心に行われてきました。しかし、思うような結果を得ることができなかったということだと思います。
 先ほどありましたように、生田英則さんの手によって誕生した、みどり3兄弟と言われる白鵬85の3、百合白清2、平白鵬等は、要するに県が創設した県外の優秀な雌牛導入の際に助成する事業を活用して岐阜県から購入された雌牛から誕生したもので、さらなる能力を有した和牛改良を進めるためには、過去の経験も含めて、畜産試験場だけでは限界があると思っています。
 そこで、さらなる改良を進めるためには、繁殖農家の皆さんに、百合白清2の精液を販売して積み立てている県和牛振興戦略基金から助成してでも、優秀な能力を持つ雌牛導入を促進し、和牛改良の試験研究機関としての一翼を担っていただくことが、絶対的飼育頭数の少ない鳥取県においては、和牛王国としての地位を固めるためにも必要ではないかと私は思いますので、先ほどもう答弁がありましたが、ぜひとも雌牛導入を進めていただきたいということを提言したいと思います。
 それと、全共に私もずっと行っていますが、感心するのは、いつも上位を争っている鹿児島県、宮崎県、大分県、この取り組みというのはやはり本当にすごいと思います。出品対象数が桁違いに多いとはいえ、素人の私が見ても本当にすばらしい牛を毎回出品してこられます。鳥取県も今、この改良と、それからさらに肥育技術、牛を育てる技術、この足をとめてはならないと私は思います。特に、次は本場の鹿児島で大会があるわけです。次の大会の鹿児島で入賞するということは、非常に価値が高いと私は思っています。それを鳥取県としてどう取り組むかということで、今大会はまさに出発点ですので、飽くなき取り組みを進めていただいて和牛鳥取をつくっていくべきと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
 
 議員御指摘のとおり、雌牛を導入することの効用というのは高いと思われます。大体、和牛の世界で肉について判定する重要なポイントの一つは、BMS値だったり、それからロース芯面積だったりします。このロース芯面積の大きさとかBMSについては、伝統的に気高系を保有していた農家が多い鳥取県内では、どちらかというと不得手なところでした。それをここ10年ぐらい、特にここ2〜3年ぐらいで雌牛の導入を3分の2の助成制度ということも入れてやってきたところで、急速にロース芯面積、今、平均でも60平方センチを超えるような形、またBMSも9を超えてくるような形になってきて、本当に肉質が急速に向上してきています。この背景には、そうした県内には余りなかった血を入れること、そのかけ合わせということに最近努力してきた成果があらわれていると思います。
 そういう意味で、ちょっと政策の点検はしたいと思いますが、できれば和牛改良の振興の会議を開催して今回の総括をし、次年度以降に向けてどういうことをやっていくかを話し合う中で、この雌牛導入についても議論したいと思います。
 それとあわせて、やはり鹿児島、宮崎、大分という今回も上位を占めたところ、鳥取県はそれに次ぐレベルで5位に入り、小さいながらも大健闘したと言われますが、正直申し上げて、飼養戸数、それから飼養頭数を見ると、大分はそれぞれうちの大体5倍近いぐらい、宮崎は20倍ですし、鹿児島は30倍のレベルです。ですから象にアリが向かっていくような闘い方を我々はしてきたということです。そういう意味で、非常にロットが大きいので、その中でいい牛を選んで出してくれば強いのはもう当たり前です。私どもは少数精鋭で指定交配をしたり、それから事前の超音波測定だとか、またゲノム育種価というようなことをやってきました。さらに今後はAIを活用して判定するようなやり方を研究してみたいということもあり、また、研究機関と一緒に、香り成分、おいしい肉というものをつくり出す、そういう研究も進めていこうとしています。
 それとあわせて、特に種牛の部のほうでは、やはり背筋がぴんと伸びているかとか、そういうことは結構大事で、調教とか、また毛を刈る技術とか、そうしたところは、やはり鹿児島や宮崎は非常にうまいわけです。それが牛の見ばえをよくして種牛の部の上位独占につながるわけで、私どものほうでもそうした技術を移転するために、今回、実は我々のチームの中に鹿児島からの技術者に入ってもらって全共をやりました。またこちらから向こうに行って研修をしてくること、向こうから講師として来ていただいて勉強して、そのDNAをほかの牛飼い農家に広げていくこと、こうしたことも必要だと思います。
 いろんな戦略をこれから話し合い、次回全共、議員がおっしゃるように鹿児島は非常に大きな意味のある大会だと考えられるので、戦略的に向かっていきたいと思います。

<今後の和牛振興ついて>bR

 
 和牛全共も、大会ごとに審査の基準もポイントを置くところがいろいろ変わってきますので、そこのところも情報をしっかり収集しながら、鳥取県のあるべき姿、改良の目的、そういうものをしっかりと持ってやっていただきたいと思っています。