平成29年9月定例会一般質問(平成29年10月4日)No.2

<睡眠教育について>
 
 睡眠教育、略して眠育と言われていますが、初めてお聞きになる方もあるかと思いますので簡単に説明すると、睡眠が果たす役割を正しく理解し、規則正しい生活習慣を身につけるための教育のことです。今、文部科学省でも注目され、全国各地で学校を挙げての取り組みが進められています。
 そこで、きょうは眠育について、知事並びに教育長と少し議論をしたいと思います。
 昔から、寝る子はよく育つと言われていますが、医学的根拠はないと思っていましたが、専門家の先生に聞いたところ、1歳から3歳までの間は脳がつくられる時期で、前頭葉の海馬の発達には十分な睡眠とよい睡眠が必要とされているそうです。睡眠不足が続いたり睡眠障害が起きると脳が過労状態に陥り、朝起きたくても起きられなくなってしまったり、成長ホルモンがうまく分泌されなくなり、自律神経の乱れの原因になるとも言われています。
 文科省の「データからみる日本の教育」によると、小学生の睡眠時間がこの30年間で40分も減少しているとのことです。県内でも共働きの家庭がふえる中、深夜営業のコンビニやスーパーで親子連れの買い物客を深夜、目にすることがあります。それぞれの家庭の事情で子どもを連れ立っての買い物だと思いますが、保護者の皆さんに、子どもにとって睡眠を十分に確保することが大切であるという情報を子育て家庭に提供しながら、医学的にも正しく理解していただく必要があると思います。
 幼児教育を主体的に管轄されている県として、今日までの県の取り組みについて平井知事に、小・中・高等学校については山本教育長にお伺いします。

●知事答弁

 
 教育長のほうから詳しい話もあると思いますが、睡眠にはいろいろな効用があると言われています。例えばストレスを解消する、それから成長を促進する、また、レム睡眠という睡眠については、記憶の整理をしたり頭の中の発達に役立つと言われています。
 子どもの頃は、特にこの睡眠の効能というのは大事な時期で、子どもの睡眠には特徴があると言われています。乳児期は1日のうちの3分の2を睡眠する。それは寝る子は育つという私たちの言葉にも象徴されるわけで、やはり睡眠というのが、子育て、子どもの成長にとって何よりも大事だということになります。
 特に、先ほど申したように脳の発達の時期だからかとも思われますが、レム睡眠がその睡眠時間の半分と言われています。成人の場合は2割がレム睡眠なので、比べると非常に時間が長い。ですから、その間どんどんと人間として発達していく。それを支えるもとになるわけです。それから、子どもの睡眠は深い眠りも多いと言われています。こういう子どもらしい睡眠をしっかり確保すること、これが親や社会の責務ではないかと思います。
 本県においては、1歳6カ月健診や3歳児健診、こういうときに睡眠の効能というものも説いていますし、また、関係者のほうにもそうした研修活動などもやっているところです。教育委員会等と一緒に心とからだいきいきキャンペーンをやっていますが、まさにそうしたことが入っているわけで、しっかりと子どもらしい必要な睡眠をとることを、本県としてもいろいろな形で啓発したり促進活動をしたりしてきました。きょう新たな問題提起もいただいたので、さらにそうした活動を強化していくことが大切だと思っています。

●教育長答弁


 
児童生徒を対象にしては、当然この睡眠の大切さというのは学習指導要領上も記載があり、それぞれ発達段階に応じて教育を行うわけですが、高校あたりになると睡眠の質について、例えば夜型の生活をすると睡眠の質が下がって、それに伴って生活習慣病につながったりすることもあるというようなことを保健体育の時間等にも教えています。そういう意味では、医学的見地からの教育も行っているところです。
 また、幼少のころは、特に家庭での生活習慣というのが非常に大切だと思っており、これはもう10数年前ぐらいから心とからだいきいきキャンペーンということで、例えば朝御飯を毎日しっかり食べましょうとか、外でしっかり遊びましょうというようなことを何項目か目標を掲げているのですが、その一つとして、たっぷり寝ようということを標語の一つとして掲げて、この睡眠の大切さを家庭あるいは地域、学校、全体で取り組んでいきましょうと訴えているところです。
 また、社会教育の中の家庭教育でも、これは県のPTA協議会と連携して、平成21年度から26年度にかけて、基本的生活習慣の定着をそれぞれできることを取り組んでいきましょうという中で、多くのPTAで早寝早起きの運動を繰り広げてきています。こうした取り組み成果などをベースに、昨年度それぞれの年齢層に応じてリーフレットをつくっていますが、そのリーフレットの中で、幼児期の睡眠の大切さ、あるいは思春期の睡眠とホルモンとの関係等について、医学的見地からの記載も含めて啓発を行っているところです。
 こうした中、学校での取り組みも行われていて、例えば鳥取市の稲葉山小学校では、さわやかセブン運動ということで、就寝とか起床の時間、あるいはメディアを見る時間、あるいは朝御飯を食べたかどうかというようなことを個別のチェックシートで取り組んでいくということで、これは事前に指導を行った後、年5回、この7つの項目について、できているかできていないかというようなことをチェックし、それをもとに個別の指導を行い、それを例えば懇談の中で保護者の方にも注意喚起をしていく、そうした取り組みを行っているわけで、ここまできっちりされているところは多くないかもしれませんが、多くの学校で、こうした生活チェックシートなどを使っての生活習慣の定着に向けた取り組みを行っているところです。
 こうしたことも反映してなのか、毎年、全国体力・運動能力調査というのを国のほうが行いますが、その中で児童生徒に、健康のために睡眠が大切だと思うかどうかという項目があって、それに大切だと思うと答えている児童生徒の割合が鳥取県の場合97%で、全国平均を上回っている状況です。これまでの取り組みの成果が一定程度出ているのかと思いますが、引き続き、生活習慣の定着の中での一つとして、この睡眠の大切さを訴えていきたいと思っています。
 

<睡眠教育について>bQ
 先日、坂野議員が代表質問でも不登校の問題を質問されましたが、私も中部振興議連の中で、東・中・西、地区別の資料が出てきたことに大変驚きましたが、さらに驚いたことは、出現率の違いを詳細に分析されていないことでした。どちらかというと、教育委員会の対応というのは、不登校がふえたから現場が大変、だから人的配置をという何か対症療法的な部分が多かったと私は認識しています。
 過日、私は県立総合療育センターに出向き、不登校に悩む多くの子ども達の相談、治癒にかかわっておられる佐竹隆宏医師にお話を伺いました。佐竹先生は、多くの小中学生の不登校事案にかかわられているそうですが、睡眠問題が全ての原因ではないわけですが、背景の一つとしては睡眠問題が100%かかわっているとのことで、特に家庭の問題、友達の問題等、多くのストレスを受ける中で不登校になっている子ども達が多いと話しておられました。
 中でも、スマホが普及し、小中学生が1人1台持つ時代になり、深夜のLINEで仲間外れにならないようやりとりをしているうちに睡眠不足が進行しているとのことで、学校、保護者、地域で課題を共有しながら子ども達にも理解させながら、深夜のLINE規制について検討すべき時期が来ているとお話しになっていました。教育委員会として、この現状をどう把握されているのか、山本教育長にお伺いしたいと思います。
●知事答弁

 
 先般の坂野議員の代表質問の中で、西部地域で不登校の出現率が低いということについて、まだ深く分析する必要がありますが、西部地区では学校を含めて医療機関との結びつきが非常に強いということが要因として上げられるのではないかと申し上げました。そうした意味で、不登校についても医学的な見地からのアプローチというのも必要ではないかと改めて感じているところですが、不登校に関連する要因については、もうこれは本人の人的な特性だとか知的な発達、あるいは家庭の社会的、経済的背景とか、養育の状況、また学校の対応など、多数、多様だろうと思っており、佐竹先生のお話のように睡眠問題が100%かかわっているかどうかというところは、私どもとしてはよくわからない部分もあるわけです。逆に睡眠問題さえ解決すれば不登校問題は解決するということにはならないのではないかと思っていますが、睡眠というのは子ども達の生育にとって非常に大切なことで、睡眠不足が子ども達の心と体の成長に影響して、それが不登校のさまざまな要因のうちの一つになっているということは十分考えられることで、また逆に、不登校になって生活のリズムが狂って睡眠に障害が起こって、それがさらに不登校を長引かせるということは十分あり得ることだと思っています。そうした意味で、睡眠を改善していくことが不登校の改善にもつながる一つの方策ではないかと思っています。

 特に近年は、議員のお話にあったように、スマートフォン等で深夜までやりとりをすることで睡眠不足になるという状況が、これは一昨年度、県教委のほうでこうした調査をやっていますが、その中で、困ったことと感じている中で、深夜までやりとりをしていて睡眠不足になるということを子ども自身が感じているという調査結果もあります。
 こうしたことから、PTAの協議会のほうが中心に、21時以降は友達を巻き込むようなコミュニケーションメールや、あるいはゲームをやめて相手の時間を尊重しようというメディア21:00運動というのを展開されています。県としても、この運動が全県の取り組みになるようにバックアップを今行っているところで、関係団体などとも連携してしっかり取り組んでいきたいと思っていますし、あわせて当事者である子ども達自身がこのメディアとのつき合い方を考えていくことも必要だろうと考えており、こうしたことを自分たちで考えて発表するような機会をつくる取り組みも行っているところです。
 こうしたことを含めて、この睡眠ということも絡めながら不登校問題への解決に向けてしっかり取り組んでいきたいと考えています。

<睡眠教育について>bR


 先ほどの佐竹先生の話は、睡眠が全ての原因ではないが背景の一つとして、と私は言ったでしょう。さっきの発言はおかしいと思う。そこのところ、ちゃんと話を聞いてください。
 子どもの健全な発達には、食育とともに睡眠が不可欠であり、睡眠が子ども達の成長に果たす役割を、児童生徒を初め学校、保護者、地域等社会全体で共有することが大切だと私は思っています。まず、子どもの睡眠不足が続くと発育不全、日中の集中力不足、肥満、免疫力の低下などに影響を及ぼすことを、やはり社会全体で認識をする必要があると思っています。
 そうした中、今、全国各地の小中学校であらゆる眠育の取り組みが進められていますので紹介します。福井県では県全体でその取り組みが進められているようですが、中でも美浜町では地域を挙げて取り組み、取り組みを始めてから5年後には、不登校はゼロになっただけではなく、子ども達の学力も上がったということが報告されています。大阪府堺市の三原台中学校は、眠育に取り組むことによって生徒の欠席日数を減らす効果が上がっているそうです。また、宮城県大和町、吉岡小学校では、2014年から昼休憩に15分のお昼寝タイムを導入して、授業への集中力が高まったと言われています。
 そのほか全国各地でいろいろな取り組みが進められていますが、県としても少し関心を高めていただいて取り組みを進められるべきと私は思いますが、教育長の所見をお伺いします。
 また、先ほど知事からありましたが、幼児期は睡眠により脳がつくられるわけですが、同時に体内時計も形成される時期ですので、幼児期教育を担当する知事部局としても、保護者の生活により幼児の睡眠が左右されることのないよう、保育現場で幼児の睡眠について改めて保護者と認識を共有すべきと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 考え方は共通していると思います。今、鳥取県のほうでも保育専門員を東部、西部に置き、また中部にも幼児教育のアドバイザーを置いて、保育所、幼稚園と連携した幼児期の人間形成、成長を促進する環境づくりを始めています。こういう意味で、保育園とか幼稚園に対する先生方への研修事業等を強化することも一つあると思いますし、また、県政の広報手段、テレビや、あるいは県政だより等もあります。例えば来年の6月とか強化月間をつくって、子どもの睡眠をもう一度考えてみましょう、取り組みましょうというようなことをしたり、7月ぐらいに今度は親御さん、保護者や地域に向けて相談を受け付けたり、またそうした取り組みを支援するための研修会等をやってみたり、少しまとまった形で新年度予算化も含めて考えてみてはどうかと考えています。

●教育長答弁


 先ほど、質問の聞き取りがよくできておりませんで、大変失礼しました。

今回議論もあったので、県の教育委員会としても、睡眠についての教育をもう一度しっかりと見詰め直して取り組みも含めて行っていきたいと思っていますし、私自身も関心を持ってしっかりとフォローをしていきたいと思っています。
 ちょうど時を同じくしてノーベル医学・物理学賞が発表になった中で、体内時計のメカニズムのことで賞を受けられたわけですが、こうした中で、また医学的見地からも睡眠の大切さ、あるいは体等に及ぼす影響なども深く研究が進んでいくのかと思っているところです。取り組みとしては、先ほどいろいろ県外の事例もお話いただきました。そうしたところもよく調べて、鳥取県内で参考にできるところは取り入れていきたいと思いますし、県内でも先ほど申し上げたような取り組みをしているところもあるので、そうした事例をしっかりとほかの学校にも広げていくような取り組みも行っていきたいと思っています。来年度に向けては、これまでの調査の中で大切さというのはわかっているのだが、実践できていないという県教委のほうでの調査結果もあるので、実践につなげるような取り組みができればと思っています。PTAのほうで毎年、全県集まって研究大会というのを開かれますが、そうしたところで睡眠に着目したような取り組みもできればいいと思っており、PTAなどとも話をしていきたいと考えています。

<睡眠教育について>bS


 これまで子ども達の睡眠の重要性を述べてきましたが、睡眠は子ども達だけの問題ではありません。大人社会においても無視できないのがやはり睡眠です。睡眠であり、睡眠障害です。社会病とも言われている鬱病、認知症等にも睡眠のかかわりが大いにあるとも言われています。福祉保健分野においても県民の健康推進のためにも、一つの大きなテーマとして睡眠についての啓発、取り組みをすべきと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。


●知事答弁

 
 
本県としても、例えば平成23年にスーミンというキャラクターをつくり、各市町村と連携して、睡眠をしっかりとろうというキャンペーンに活用させていただいています。羊の形をしたキャラクターなのですが、自死予防のことがあるので、特に9月、3月に重点的に展開しているところです。
 また実際、こういう心の健康の問題だけでなく、例えば認知症にもかかわるのではないかとか、心疾患等にも影響するのではないかとか、もちろんストレスの問題とか、そうした色々な生活のクオリティーや健康に睡眠というのはかかわるところで、こうした知識を多くの方々に知っていただいて、大人も子どもと同じような形でしっかりと睡眠をとる、それが重要だろうと思います。特に医学的なことでいうと、夜の10時から午前の2時ぐらいまで、こうした4時間等をコアに睡眠をとるということの効用がよく説かれていて、ぜひ多くの方々にも認識していただくことが大切ではないだろうかと思います。
 これと関連して、自死予防が実はあるわけです。大分問題になって議場でも取り上げていただきましたが、平成19年に150人を超えていた自死が、直近データでは104名まで減少することになりました。これは、こういう睡眠へのアプローチも含めて研修をしてもらうようなゲートキーパー、今では12,000人が養成講座を受けられたところで、さらに200人、300人といった規模で、その養成のコアとなる指導者も研修などを経て養成されてきています。やはりいろんな方々とネットワークを張りながらこういう自死予防ということを進めていかなければなりませんが、特にふだんの生活の中では睡眠という形であらわれてきますし、その睡眠をとることによってストレスの解消等が進むところで、今後とも色々な広報手段を通じてPRに努めていきたいと思います。

<睡眠教育について>bT


 本当に今のお子様というのは忙しいようですね。特に心配されるのは、真面目なお子様ほど危険性が大きく潜んでいると言われています。朝早く学校に行って、授業の後は部活、さらに帰ってから塾に行って、夕食を終えれば11時。それから自分の時間を過ごせば12時、1時ということになるわけで、逆に言うと、こんな真面目な生活を続けている中学生などは、高校に入ってからある日突然、朝が起きられない、お母さんに朝だよと言われて、わかるのだけれども体が動かない、普通どおりに登校できないという事態に陥るということもあるそうです。
 したがって、子ども達に睡眠の大切さをしっかりと理解させて、生活リズムの点検、見直しを進めることが大切ではないかと私は思っています。既に取り組みをしている県外等を先ほど言いましたが、学校では部活の休みを設けたり、時間短縮したり、昼の時間を確保するなど、学校、地域、家庭、総力挙げての取り組みが進められているようです。ぜひとも鳥取県でも教育委員会が中心になり、子ども達の未来をつくるわけですからね、後の人生のほうが長いのですから、そのベースをつくるわけですから、しっかりとお願いしたいと思っています。