<新規就農対策について> |
近年、新規就農者対策については、毎議会のようにあらゆる角度から議論が行われ、今議会でも代表質問で取り上げられるなど、議員の皆さんの関心が非常に高いことが伺われます。このことは、裏を返せば、人口減少に歯止めがかからない中、農業者人口の激減が続き、多くの議員の皆さんが鳥取県の基幹産業である農業の将来について、大きな不安を抱かれているということでないかと思います。
私も親から受け継いだ農地の一部を親戚に貸し付けする一方、残された1ヘクタール余りの農地を議会の合間に耕作していますが、本当に大変です。農地がなかったら、もっと余裕のある充実した議会活動ができると、何度思ったかしれません。
また、これまでも議場で何度か申し上げましたが、戦後間もなくまでは、農地があることが農家にとって大変誇らしいことでしたが、農業者が高齢化し、後継者がいない中、大半の農家は、農地があることが老後の生活を圧迫し、辛いのが現実でもあります。中でも中山間地域においては、多くの高齢者の皆さんが、生活に回す予定の年金を農業に投入しながらも農業を続けておられるのが実態でもあります。非農家の皆さんにはなかなか理解していただけないかと思いますが、それは、先祖からの農地を守ろうとする心理から来る、ごく自然な行動で、私には理解できます。
こうした中で、次世代を担う農業者を育成することは喫緊の課題であり、大きな課題であると思います。農林業センサスによると、平成12年で4万 6,572人の農業就業人口が15年後の平成27年には2万
6,126人と、毎年 1,000人以上が農業から離れています。一方で、新規就農者の目標は 200人ですが、現実は毎年 130人から 140人程度であり、到底離農の数値には追いつけていないのが現状です。こうした現状について、知事の所見と今後の対策についてお伺いします。
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●知事答弁 |
確かに離農者が多いわけですが、これは、実は高齢化が作用しています。つまり、日本農業の担い手の皆さんがだんだんとお年を召されて、もう無理だといって手を挙げる、あるいは、残念ながらお亡くなりになるということがあります。例の白鵬85の3をつくられた生田さんもそうですが、突然のことで、残念な形で離農されるということになったわけですが、その後には輝かしい種牛が残ったことになりました。
残念ながら、恐らく高齢化が進んでいますので、離農者の数はふえると思います。問題は、そうであっても、例えば継続できるような集落営農だとか、あるいは、牛舎だったら、それを引き継ぐようなシステムだとか、また、若い方々が、よし、やろうといって、手広く収入を上げて、所得を稼ぎながらやるような、そういう農業者がどれだけ出てくるかのほうが大切です。そういう意味で、
200人を目標にして、現在 140人ぐらい年間来ていたりしますが、そういう形で就農者が出てきている現状をつくってきたことは本県にとって大きかったと思います。だからこそ、
764億円まで急速に回復する、そういう生産高ができました。これで、平成12年ごろとほぼ同水準か、それを上回る程度にまで回復したわけです。
ただ、議員がおっしゃったように、離農者は多くて、離農者が多くて農業者の人口が減っているのですが、生産額はその平成12年を上回っているというような形に持ってこれたのは、そうした新しい血を入れていくことだろうと思いますし、その農家の皆さんの頑張りをどうやって応援していくかだと思います。
例えば、大阪から来られた方で、寺岡昌一さんという方がいらっしゃいます。スイカとかブロッコリー、ミニトマトもされていますか、そういう農家さんがいらっしゃいます。もともと別の職業におられたわけですが、がぶりこのスイカに興味を持たれてこちらに入ってこられて、今では中堅的なリーダーといっていい存在です。法人といいますか、ビジラボというのを立ち上げられて、高級スーパーとか、そうした販路をみずからつくられている、雇用もされる、そういう方になってこられました。
こういうような存在が各地で生まれてくれば、確かにお年を召されながら、小さい規模で農業をされていた方が減ったとしても、それを補っていくような生産高、農業の活力というものは生まれてくるわけで、そちらのほうに戦略をとるべきではないかと考えています。
今議会にも集落まるごとあるいは生産部としてそういう就農者を抱えていくような、農地を継承するようなモデル事業を提案させていただいています。ぜひそうしたことも御審議をいただきながら、この方向を進めていければと思います。
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<新規就農対策について>bQ |
今日は、お手元に新規就農者が農業で生活をするための経営規模等の一覧表をお配りしていますが、議員の皆さんには見ていただきたいと思います。私が質問に立った大きな狙いの一つとして、議員の皆さんに農業で生活することの実態を御理解していただきたいということで、議長のお許しを得て資料を手元に配付させていただきました。
お手元に、夫婦が生活するためには、どの程度の規模の農業経営をしなければならないのか、農林水産部に作成していただきました。それぞれ1つの作物、単作の経営で想定していただきましたが、現実は、労働力のバランスを考え、複合経営がほとんどですが、あくまでも議員の皆さんには参考程度として見ていただき、実態を御理解していただきたいと思います。
農業をなりわいとして生活するということは、データのとおり、相当な経営規模が必要であり、本当に大変なことです。何人増やすというような容易な話ではなく、新規就農者の皆さんにはしっかりとした覚悟と思いを持って参入していただかなければならない、そうしなければ、撤退ということにもなりかねません。県として、アグリスタート研修支援事業や農大で進める公共職業訓練、また農の雇用支援事業など、必要な税金も投入されるわけですから、新規参入者のいわゆる見きわめについてはどう対応されるのか、知事の所見をお伺いしたいと思います。
質問に当たり、私は、大阪からIターンし、スイカやブロッコリーを栽培している2年目の農家を初め、北海道からIターンし、スイカとミニトマトを今年から独立して栽培している農家、県内の勤めをやめ、梨とストック等の花卉を栽培している5年目の農家の皆さんを訪れ、お話を聞くことができました。
まず、県の受け入れ体制や補助制度についてお伺いすると、皆さん異口同音に、県の支援策は充実していることと、Iターンの皆さんは、カニや魚がおいしく、鳥取での生活を堪能されているということでした。全国一斉に新規就農者誘致合戦が繰り広げられる中で、待ち受け画面では、なかなか鳥取県の支援策等が理解してもらえず、新規就農者は思うようにふえないと思います。既に新規就農し、鳥取県での生活を堪能されている皆さんに、SNSで鳥取の情報や支援体制について、しっかりと情報発信をしていただいたらどうかと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
次に、興治議員の代表質問で、長崎県のアスパラ生産者組合のすばらしい取り組みの報告がありました。私も同感で、新規就農者がふえ、それぞれの農産物の出荷がふえれば、市場評価も高まり、価格への反映も期待できます。また、新規就農者の皆さんも生産者組合の皆さんの指導やアドバイスがあれば、なれない農作業にも元気が出てきます。実際、ミニトマトの栽培を始められた新規就農者の方も、生産者組合の皆さんのアドバイスは本当に心強いと話をしておられました。つまり、一人にしない、仲間がいるということをもっともっと声高にすることが大事だと思っています。
このことから、県内各地で組織されているそれぞれの作物の生産者組合、部会の皆さんに、もっと新規就農者の確保と指導にかかわってもらうことが重要ではないでしょうか。撤退される農家の農地、ハウス、作物に合った農機具の情報も得ることができます。改めて生産者組合、部会の皆さんと一緒になって新規就農者対策を取り組むべきと思いますが、知事の所見をお伺いします。
また、新規就農者にとって、圃場に合わせ、住居も大きな問題です。ベストなのは住居の近くに圃場があることですが、先に住居が決まると、圃場の選択肢も狭くなります。市町村の皆さんには、住居と圃場をセットで検討していただくような対応を配慮していただいたらと思います。新規就農者の受け入れは連携すべきと思いますが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
色々と離農もあるではないだろうか、新規就農のときの見きわめが大切ではないかということで、私どもも試行錯誤してきました。ここ10年間で大分そうした就農者をふやす方向に進んできたわけですが、まずは農の雇用事業というのを始めます。これは、その後、国が追いかけてきて、同じような事業を始めました。
しかし、やはり、最初のころは離農が多かったです。就農したものの、離農してしまうと。つまり、初任給程度を保障するというようなことにしたので、そこだけが目当てで来てしまう人がいて、では、農業をやる気がどれほどあったかとか、本気度がどうかということがありました。ですから、その後、一定の義務づけをしたり、それから事実上、ふるいをかけるというようなことをさせていただきました。
また、これは担い手育成機構のほうで研修事業をしたわけですが、かなりシステマチックな研修で、最終的には就農まで結びつけていくということなのですが、これも当初は4割ぐらいの就農率というか、定着率、ところが現在では9割に行っています。これもやはり、その研修に入るときに、本気度だとか、農業の大変さをよく知ってもらうとか、それからもちろんコミュニケーション能力等々、村の中で暮らしていく、そういうすべもあるので、そうしたことなどを審査した上で入ってもらうようにしています。
関金の農大を使い、ハローワーク的な農業のスタート事業も始めましたが、こうしたことも同様のことをしている関係で、本県の場合、他県とは違って、大分定着率がいい形になり、恐らく全国でもこの面はトップクラスではないかと思います。やはり、当初我々も、今、ほかの県が追いかけてやってきていますが、就農を呼びかけて、とにかく来てもらえばいいという類いで始めるわけですが、結局本人にとっても地域にとっても余り幸福でない結果になるとよくないので、最初のときのふるいが大切だというのは議員のおっしゃるとおりで、今後ともそうした運用に努めていきたいと思います。
さらに、例えば湯梨浜の樋口さんという方、この方はゆりはまを愛すというアイスクリームをつくっておりますが、あの中の具材というか作物をつくったりして、それでフェイスブック等でいろいろと情報発信をしていただいています。現にそうした中で、2人ほど移住していただく、そういうきっかけづくりにもかかわっていただいたり、そういうやはりパワーが出てくるのです。小さな鳥取県ですが、今SNSで全国や世界とつながることができ、結構それを見られる同じ世代の若い人たちがいるものですから、やはりこの手段はばかにならないなと思います。
そこで、食の都についてもフェイスブック事業を新年度から始めさせていただこうかなと考えていますし、また私どものサイトがあるのですけれども、鳥取来楽暮という移住者向けのサイトだとか、あるいはメルマガ、その辺も拡充させていただいて、SNSを活用した情報発信、これをしっかりと進めていければと思います。
また、3点目、そういう意味では、色々といい例も最近は出てきていて、先ほどの寺岡さんは、實藤さんという若い方を指導されています。この方はやはりスイカづくりをされるわけですが、トンネルをつくって、それでスイカをやり始めるわけですが、始められたのに、残念ながら大風が吹き、強風被害でトンネルがやられてしまった。そのときに地域の皆様がその修復をみんなで手伝って、それを直して、また再開を果たすことができたということなのです。こういうことがやはり新規の就農者にとって、大変に大きな励みになったり、力になったりするわけです。せっかく就農したものの、天災に遭ってしまって、もうこんな仕事はやっていられないとなりかけたときに、地域がしっかりとフォローアップをしてくれる、こういう温かさは、多分、鳥取県の産地にはあるはずです。ですから、それを生かしていくために、もともとは八頭のほうの生産部から始まったわけですが、今、倉吉のスイカ生産部とか、そうしたところにも声は広がっていて、今回御提案した、そうした自営の生産部で、みんなで就農を引き受けて、それで農地、園地を引き継いでいく、こんなことをやろうと動いており、そういうことで成果が上がればと考えています。
また、市町村も特に就農した場合の住居等でお手伝いいただけますし、実際空き家バンクなども活用している例もあります。例えば、忰谷に入られた方も、そうした空き家バンクが倉吉は割と登録があり、北谷地区でもそうしたものを活用しておられて、割といいところの物件を手に入れることができたということもあったところですし、また、岡山から来られた方も、やはり大分役場とやりとりがあったようですが、農地の近くで住居を得ることができて、それが中部での就農生活のいいスタートが切れたというような例も、最近でもあります。
やはり、単に農業をやるだけでなくて、そこで生活を始めなければなりません。いっぱい確かに空き家はあるが、適当に探してみなさいということではなかなかつながらないものであり、その辺で、やはり役場の移住定住の担当者あるいは地域の皆さんのネットワーク組織、琴浦もそういう組織がありますが、そうしたところと結びついていくのが大切なことではないかなと思います。そういうようなトータルでの就農者のサポートができるように、新年度もいろいろと施策を投入して、組み合わせて対応していきたいと思います。
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<新規就農対策について>bR |
新規就農者の皆さんも覚悟はしてこられるわけですが、やはり受け入れする側の方もしっかりと応援体制、そういうものをとることが必要ではないかと思っています。また、きょうは、先ほど言いましたように、経営するための、生活するための経営規模、これは単作ですが、上げています。議員の皆さんは見ていただいたらわかると思いますが、水田だけで18町です。80歳まで百姓をさせようという議論もあったのですが、一般的に考えて、65歳定年で、鳥取県の低コストハウスをつくって、償還は10年です、75歳なのです。75歳から本当の儲けになるのです。しかも、低コストハウス、ハウスといっても、1棟50メートルは、2年に1回はビニールの架け替えを10万円かけてしなければならないのです。
だから、この現状を認識する中で、次の就農対策をどうするのか、何が必要なのか、そこのところを我々として考えていかなければならないということで、その参考の一つとしてお配りさせていただきました。これからも多くの議員の皆さん方がこれを参考にしていただきながら新規就農対策の議論をしていただいたらと思います。
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