≪平井県政とマニフェストについて≫ |
<地方財政の将来像>
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2004年、平成16年度から国と地方公共団体の行財政システムに関する3つの改革、国庫補助負担金の廃止と縮減、税財源の移譲、地方交付税の一体的な見直し、すなわち三位一体の改革が実施されましたが、補助金の4.7兆円の縮減に対しては約3兆円の財源措置がなされたものの、交付税は5.1兆円削減され、地方行政は大変厳しい財政運営を強いられるようになりましたが、三位一体の改革は、今思えばいろいろな功罪があったにしろ地方公共団体の財政運営に一喝を入れ、持続可能な財政運営の指標、つまり財政健全化法を示した観点からは一定の意義があったのではないかと思います。しかし、唐突な三位一体の改革は地方公共団体への影響が厳しく、大変な財政運営を強いられるようになりました。政権が交代し、交付税総額が増額確保されるようになり、少しずつですが地方公共団体は息がつけるようになりました。政府の交付税措置について、知事の所見をお伺いします。
ところで、我が国の債務残高の総額が1,000兆円をまさに超えようとする中、ギリシャの財政危機から端を発したユーロ圏内各国の国債の利回りの上昇、金融機関の貸し渋りなど、1月24日、国際通貨基金IMFが発表した世界経済見通しで、世界経済の回復は失速し下振れリスクが増大していると指摘されました。我が国の債務残高はGDP比で212%と言われ、ギリシャの157%、イタリアの129%に比べてはるかに高く、主要国では群を抜いています。イタリアの10年債国債の利回りは、2011年1月には4.7%だったものが11月には7.26%と上がり続けています。
我が国の国債は国民がその大半を有しているので大丈夫という見方もありますが、国民の預貯金は1,400兆円、そのうち負債が300兆円で、1,000兆円の国の借金と比較しても、その差は100兆円余りと言われています。さらに、景気の低迷により我が国の貿易赤字が今後も増大するなら、悠長なことは言っておられない状況にあることに懸念いたします。万一日本国債の金利が2%上がれば国の利払いは2.1兆円と言われ、消費税1%と同額の金額が金利の支払いで消えてしまうとも言われています。
そうした中で一番心配するのは、過去の一般質問でも申し上げましたが、平成13年度から時限立法として始まった臨時財政対策債の存在です。借金のつけ回しを地方に押しつけた形のこの制度、当時の総務部長は3年が時限立法の目安と答弁されたものの、今日まで延々と続けておられます。我が県でも24年度の当初予算で総額が約292億円にも上り、起債総額の56%を占めています。我が国の財政が最悪の事態に陥ったとき、真っ先に影響を受けるのはこの臨時財政対策債だと思いますが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
かつて23兆8,000億円とか9,000億円とかのそういうオーダーであった地方交付税が、いわゆる地財ショックとか三位一体改革とか、いろんなことで急速に厳しさを増しました。このことで、かなり我々のほうでも、スリム化だとか自助努力をやってきたところでした。そういう中で、ここ数年、地方交付税に対する総額の配慮がなされてきて、平成22年度、23年度、さらに今、24年度ということですが、平成24年度、23年度は23兆円ベースですし、平成22年度も24兆円ベースに急速に回復したということがありました。この辺はもちろんほかの財源との入り繰りの問題もありますが、正直申し上げて、地方団体側で精力的に訴えてきたことが政府・与党のほうでも理解されて、地方交付税に対して一定の配慮はしていただいたと認識しています。
そういう中ですが、ただ、これで十分かというと、正直、三位一体改革前から考えるとまだ回復途上にあると多くの地方団体は思っているのもまた事実で、今後とも精力的に地方と向き合っていただくことを国に対して求めていきたいと思います。
これに関連して、臨時財政対策債についてお尋ねをいただきました。
これについては、本県でも臨財債が2,410億円を超えるベースまで来ており、残高がどんどんと膨らんできています。特にここ数年は、残念ながら私どものほうでは、新年度予算もそうですが、通常の地方債を減らすわけですが、減らして、しかも償還額との関係を見ていただくとよくわかると思うのですが、要は残高を何とか抑制しようと県政として頑張っているわけです。その地方債の残高を減らすために通常債と言われるもの、普通の地方債の発行額を減らします。そして償還額が片方で出てきます。償還額のほうが発行額よりも上回ってくるということになれば、残高が減ってくるということに初めてなるわけです。しかし、それで地方債の通常債については、地方債の起債を抑制して、償還のほうは積極的に堅実に行っていこうということにして、新年度予算を見ていただければおわかりいただけると思いますが、毎年償還額のほうが多くなっています。その意味で、実は一生懸命プライマリーバランスをとろうとしているわけです。臨財債のところは、これは交付税見合いですので、プライマリーバランスという考え方の枠外のところではありますが、それでも借金は借金ですから、外形的には借金は膨らんでくる。現状を申し上げれば、臨財債の発行額というものは償還額を大きく上回ってしまうと。この大きさが余りにも大きいので、一生懸命発行を抑制して通常債のほうで調整してはいるのですが、起債総額の残高としては若干ふえかげんになってしまうというのが現実のところで、我々としては現場としてほぞをかむ思いがするところです。
この臨時財政対策債については、償還自体も臨財債の中からやっていこうということを平成14年度からぼちぼちやってきていまして、今年から来年にかけての地方財政計画の立案の中では、6兆円ほどの臨財債のうち2兆円はそうした借りかえの臨財債だというレベルまで来ているわけです。タコ足がどんどんと膨らんできているという状況があって、将来に対する不安があるというのが偽らざるところではないかと思います。
では、現実にこうした臨財債も含めて、地方債に対する認証が大きく傷ついているかというと、これは直ちにはそうではないというのもまた現状です。今、国のほうがある格付会社でいえばAA−、ネガティブですけれども、そういう格付を受けていると。我々はやっていませんが、今市場公募している団体がありまして、東京都さんだとか横浜市さんだとか、そうした団体があります。世界に向けて地方債を売っているわけですが、その格付は国より若干劣るというふうに普通なっていますが、それでもAA−、ネガティブというところで、例えば大きく金利が高騰せざるを得ないとか、そうした状況ではないということです。恐らく日本の場合は、国内で買い支えるということが広く行われています。これはビジネスとしても行われている面もあり、そういうことがあってだと思いますが、急に金利が高騰して、我々のほうでの金利負担が膨れ上がってくるというところまでは来ていないわけです。ただ、ギリシャの例を待つことなく、将来に対する備えとして、国家財政全体として、これは地方財政も通ずるものですが、財政健全化を早急に行わなければ、この臨財債のところに早晩議論が行き着いて、例えば金利が高騰するといったような事態の引き金を引きかねないという状況は変わらないと思います。
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<地方財政の将来像>2 |
今我が国の経済が低迷する中で、平成20年度ごろから地方は地方独自の経済対策をという考えから、基金造成しながら各種政策を進めるという方向に転換されました。鳥取県でも国の経済対策予算等を活用して、新設とか増設した積み増しした基金が現在21基金あります。執行部としては大変使い勝手のよい基金制度であるかなと思っています。責任度もそれだけ高いわけですが、しかし、原資はいつまでも続くわけではないので、これらの基金はいずれ枯渇します。そのときのことを考えれば、今当たり前のように基金を取り崩す政策に少しならされ過ぎているのではないかと私は危険も感じるわけですが、知事の所見をお伺いしたいと思います。何らかの検討も必要ではないかということです。
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●知事答弁 |
議員から御指摘があったとおり、21の基金という流れになっていまして、ここ1〜2年は財政運営のやり方が非常に変わってきたと思います。これは、緊急雇用経済対策など緊急に対応すべき事象があるのですが、リーマンショック以降一般財源が足りない、そういう中で全国津々浦々さまざまな事業展開をしなければいけないという国のほうの思いがあったのだと思います。幾つもの基金をつくり、分野ごとにその基金を積み上げて、それを取り崩しながらそれぞれの現場の市町村なり県で執行してもらうと、こういう方式が進んできました。若干極端に流れたのも事実だと思います。その意味で、今回整理が始まったことはある程度はやむを得ないと思いますが、正直、結構体力的にはきついところもありました。例えば地域活性化・公共投資整備の臨時基金がありまして、この基金も取り崩しながらやるということで、30億円ほど崩し崩しして使うことができたのですが、これが丸ごとなくなったということで、ただ、片方で事業展開をしなければいけないと。したがって、20億円以上の起債に振りかわるというようなことになったりして、さま変わりせざるを得ない状況もあります。
実は、基金として積まれたものには大きく分けて2つのパターンがあり、1つは毎年毎年やるべき事業が基金という形でやってきたものがありました。例えば介護関係の施策とか、消費者行政の基金とか、そうした基金があり、これらは本来は毎年やらなければいけないもので、国が助成しようというのだったらば毎年助成をすればいいようなものですが、何年か分まとめて基金という形でやってきたものがありました。これらはぜひその後も続けてもらう必要があると。基金がなくなった後は補助金に振りかえて、あるいは負担金に振りかえて続けていくことが望まれるわけで、現実に23年度から24年度にかけて、そういう移行が図られたものもありました。したがって、こういうものは基金に頼るから云々ということで、要は基金という形で来るか毎年のお金という形で来るかの違いがあるだけのことで、余り財政的に気をつける必要はないのかもしれません。
問題は、一時のことで、ばっと事業費が膨らんで後の始末がつきにくいもう一つの固まりがあります。先ほどの公共投資のものもそうですし、ふるさと雇用の基金、緊急雇用の基金というものもあります。これも雇用関係ではあるものの、大分整理をされて小さくなりました。今回そこで四苦八苦した予算を提案させていただいたわけです。こういうタイプの基金によるさまざまな施策は、一時的には大変にありがたいもので、我々も使いやすいところはありますが、後々、方向転換のとりくにくいものも大分入っているということです。
したがって、今後国としての事業展開を考えるとき、そうした基金の持つ、かなりパワフルな施策になるということは間違いないわけで、そのパワーと後々への影響等も考えながら、政策選択をしていただきたいと思います。私たちも、そうした基金の事業の特性というものをよく頭に入れて財政運営に努めたいと思います。
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<地方財政の将来像>3 |
基金ですが、いずれなくなるという前提の中で職員の皆さんが意識を共有して、基金がないからやはり事業ができないという理論にならないように私は要望しておきたいと思っています。
それと、財政ですが、いつも言いますが、金魚鉢の金魚のようだと常に私は思っています。少々金魚鉢の水温が上がっても、財政が悪化しても金魚は泳いでいますが、一定の条件がそろうと急に腹を出します。大丈夫、大丈夫と思っているうちにとんでもないことになる環境というのが、まさに今の国の借金の状況だろうと私は思っています。まさに静かに進行していると思っています。そうしたときに、本当に臨時財政対策債、やはり最悪の場合を想定した、そういうこともぜひとも検討しておくということが大切ではないかと思っています。私はあと3年から5年というのが一つの我が国の借金のあり方の大きなターニングポイントを迎えると思うのです。この3年から5年というのが大きな鍵を握ると思うのです。ぜひともそういう意味も含めて検討すべきだと思っています。
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●知事答弁 |
これもそうかなと思います。要は、じわじわとボディーブローのように財政がノックダウンに向かっていっているのかもしれません。それは、国のほうが非常にその色彩が濃くなってきていると思います。我々地方側はこれまで財政健全化の努力をそれぞれにやってきたので、国よりはましな状況なのが一般的かとは思います。鳥取県でいえば、その中でも47都道府県のトップレベルの健全性にここ4年間で大きくさま変わりをさせてきたわけで、そういう意味で、将来負担のことだとか経常収支比率だとかの改善を図ってきたのは今後へのいわば土台になると思います。今、臨財債に備えるというお話がありましたが、その意味でも、本県としても健全化の道をしっかりと進めていかなければならないと思います。
国のほうの状況がどうなるかというのは、これからも見通せないところだろうと思います。今のギリシャだとかヨーロッパの状況を恐らくマーケット、市場は見ていると思います。これをどういうふうにクリアできるかということですが、昨日、安住財務大臣がG20のほうに出られました。G20としてもヨーロッパの回復に対して連携姿勢をとっていこうということが打ち出されているわけです。日本も実は他人事ではないわけです。今表面化しているのはヨーロッパということになっていますが、財政の実相を見てみると、日本はヨーロッパよりもかえって悪いかもしれないと。ただ、マーケットが日本は大丈夫だろうと安心しているというところで、例えば日本の国債の暴落などが起きていないというだけのことで、やはり財政状況の改善を国として勇断を持ってやっていただく必要があると思います。
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