平成27年2月定例会代表質問(平成27年2月20日)No.3

<財政問題について>

 
 2月5日開催の臨時県議会において、79億円余りの大型補正予算が成立したところです。この補正予算は、地方創生交付金13億円を初め、国庫支出金、県債、繰入金を財源としながら、大きく分けて消費喚起対策として8億3,000万円余り、先行的地方創生に39億4,000万円余り、防災・安全対策に31億4,000万円余りとなっていますが、その大半は時期的に繰り越し事業とせざるを得ない状況で、年度こそ異なりますが、新年度事業のようなものです。
 27年度の当初予算は前年度を1.3%下回る3,336億円ですが、知事選挙もあるということで骨格予算と言われているものの、さきの補正予算を加えれば、昨年の当初予算と同程度の予算規模です。
 ようやく2月17日、地方財政計画が閣議決定され、その概要だけが明らかになりました。地方財政計画は85兆2,010億円で、前年度プラス2.3%で、消費税の引き上げに伴う地方税及び地方譲与税が2兆4,000億円伸びる一方で、地方交付税が1,300億円、臨時財政対策債が1兆702億円とそれぞれ減額となっていますが、この地方財政計画について、平井知事に所見をお伺いしたいと思います。
 中でも地方創生に必要な経費として1兆円計上されていますが、リーマンショック後の危機対応モードから平常モードへの切りかえとして、地方交付税歳出特別枠が1兆2,000億円から8,500億円、別枠加算が6,000億円から2,000億円に引き下げられたことから、地方創生のための財源が純粋に1兆円ふえるわけではないということもわかりました。
 このように国の新年度予算では、地方税収の大幅な伸びを想定して、リーマンショック後の危機対応モードから平常モードへの切りかえを一層進めることとし、地方交付税歳出特別枠並びに別枠加算の減額が行われています。
 確かにマクロで見れば大都市部の法人税収や地方消費税収の大幅な伸びは想定できますが、鳥取県のような地方において、リーマンショック前に戻ったと本当に言えるのでしょうか。
 経済の動きを測定する一つの目安として県税収入を比較してみると、リーマンショック前の平成19年度当初予算時点での県税収入は565億円、一方、平成27年度当初予算では510億円となっています。この間、税制改正があったため一概に論評できませんが、税収だけを見てみると、鳥取県の経済がリーマンショック前の経済に完全に立ち直れたとは到底思えない数字だと思いますが、平井知事の所見をお伺いします。
 県の当初予算の概要を見たとき、地方消費税や地方法人税等が伸びたことにより、昨年度と比較すると、県税収入全体として51億円、地方消費税の実質的な増額としては42億円となっていますが、地方消費税の増収分は全額社会保障財源となるので、地方交付税が10億円、臨時財政対策債が36億円とそれぞれ減額になっており、当初ベースでの一般財源の増額は5億円、さきの臨時議会での地方創生交付金の配分額13億円を含めても実質18億円の伸びです。県の独自財源が伸びたことは一定の評価はしますが、交付税が減額されていることにより、私は不安を覚えます。
 とりわけ気になるのが、昨年2月県議会の一般質問でも注意深く税制改正を見守る必要があると議論をしましたが、地方法人特別税、譲与税の配分見直しに伴い、差し引き5.1億円の減額、法人住民税法人割の一部が地方交付税の原資にされたことに伴い2.6億円の減額となっていることです。
 このように、都市部に有利な税制改正の中では、将来、消費税が10%に引き上げられれば都市部と地方の税源格差がさらに拡大すると思いますが、平井知事の所見をお伺いします。

●知事答弁

 
 議員御指摘のように、1兆円の地方創生の枠が交付税上とられましたが、結局その既存の枠との振りかえ等があり、現実は国のほうの説明では5,000億円は財源振替と言っています。すなわち歳出特別枠だとか地方の元気枠、こういうものを減らしていくことの振りかえで、そういう意味では実質5,000億円なのかもしれません。そのほかの要素を見ると、実質2,500億円という分析もなされなくもないわけです。
 我々のほうでいくと49億円、地方創生1億円の枠の影響があるかと思われますが、それを差し引きしていくと10数億円程度ということになるのかとも見ています。
 ただ、現実には地方一般財源全体でいくと1兆2,000億円ふえている地方財政計画になっていることと交付税の率をいじるという改革に踏み出したことなどが評価できる、これまでにない点もあるかと思います。その辺は冷静に見ながら、今後も地方財政の健全化に向けて、地方財政計画の適正な策定を目指していかなければならないだろうと思います。
 経済については今非常に微妙な段階には来ていると思います。リーマンショックがありましたが、つい昨日は東証の株価が1万8,264円という終値になり、一時期は1万8,300円台をつけていました。これは平成12年のITバブル以来と言われています。ですから、リーマンショックよりも前の段階の株価に今戻ってきているというのがあり、その背景には多分GDPの伸びが2.2%と先般発表されたことだとか、企業決算が好調ではないかという見方があることなどがあるかと思います。ですから経済は確かに今移りつつあるわけです。
 鳥取県内はどうかということですが、例えば設備投資でいうと300億円台を回復しており、リーマンショック以前の段階へ戻ってきていると考えられます。また、有効求人倍率でいくと、これは平成10年以来の水準ですが、おかげさまで1.06倍まで回復をしてきているわけです。こういうように指標的にいい指標もあらわれてきていますが、構造的な問題も残されています。と申しますのも、リーマンショックの後の負の遺産として本県に今なお残っているのは、ありていに申し上げれば、三洋さんが事実上、企業再編によって大きく姿を変えたことです。この三洋さんと、それから下請というか系列企業さんとの製造品出荷額ベースでいくと3,500億円ほど失われているわけです。リーマンショック以前の段階では1兆1,000億円ほどの製造品出荷額だったものが、今6,000億円ぐらいです。実はJTが大体1,000億円ぐらい、やはり製造品出荷額で大きなウエートを持っていたので、これもなくなっています。そういうようにリーマンショックがあって経済がかなり傷められたときに、それまで我々のところで基幹であった製造業の系列が崩れたり、それから大きな工場の撤退があったり、この穴をどうやって埋めようかということで今なお苦労しているという面があります。
 今、県内企業が元気になってくるところがあったり、さっきのKBフクスケさんもそうですが、あるいは誘致した企業がこれから本格的に動き始めるということもあって、近々には1,000億円以上のオーダーで回復してくることが見込まれるところもありますが、ただ、まだ厳しさが残っていて、これが県内のGDP圧縮になっている要因です。それから個人消費、特に百貨店を中心とした大規模小売店等の消費が伸び悩んでいることで、これは全国的にも同様な傾向が指摘されているところです。
 こうしたことなど構造的な問題が残っており、リーマンショック以前の水準に回復したものもありますが、課題として残っているものもあるというのが現状ではないかと思っています。
 次に、消費税が引き上げられることは税収が増えることであり、地方の分権自治には非常に貢献するものでもあります。特に地方消費税は偏在性が小さく、伸長性、安定性もあり、地方税の中の優等生とも言っていいものだと思います。ですから、これを基幹として都道府県の税が再編されることは我々が前から望んできたことで、その方向性の中で評価される面もあります。ただ、偏在性がないとはいっても、それでも東京と鳥取県を比べると偏在があって、東京のほうに有利なものです。法人課税に至っては倍以上、鳥取よりも有利です。それに比べれば小さいわけですが、その辺があるわけで、地方消費税が引き上げられてくることとあわせて偏在是正もやらなければなりません。
 その意味で今回、地方法人特別税が縮小される、3分の1ということがありましたが、これは税制の抜本改革と同時に改善するという、かつての約束があったのでいたし方がない面があるかと思います。それは容認しなければならないのが地方公共団体全体の意識だとは思いますが、あわせて今回、地方法人課税について、法人住民税の4.4%分が国のほうへ移譲されて、これが地方交付税の原資となることになりました。このようなことなど、偏在是正の努力をあわせてやっていかなければならないと思います。
 我々が主張したのは、地方交付税の算定の中で地方消費税の引き上げ分は100%基準財政収入額に算定すべきであるということですが、これは今回入れられております。これによって偏在が是正される部分というのが、やはり10数億円ぐらいはあります。また、地方消費税の精算の配分ですが、この分配に当たっても、人口の比率を上げたほうが売り上げの比率等よりはいいわけですよ。小売売り上げよりも人口のほうの比率を上げるということで、高齢化にも適したような、そういう配分割を考えるべきだと、我々のようなローカルな団体、島根とかうちとかが主張したところも入れられ、15%の配分が人口のほうに割り当てられ引き上げられました。これでも1億円程度は我々のほうの増収効果があったと思います。
 こういうことなどをいろいろ工夫しながら偏在是正を進めていくことも地方消費税の引き上げとあわせての課題だと思っています。