平成27年2月定例会代表質問(平成27年2月20日)No.4

≪農林業問題について≫

<EPAの発効について>

 
 
1月15日をもって日本とオーストラリアとの経済連携協定、通称EPAが発効しました。このEPAの発効により輸入関税が引き下げられ、オーストラリア産の牛肉やワインなどが安く市場に出回ることになり消費者の皆さんに歓迎される一方、畜産農家の皆さんは経営に大きな影響が出ることが想定され、戦々恐々とされています。
 中でも冷蔵牛肉の関税は38.5%から32.5%に下がり、さらに毎年徐々に下がり続け、15年目に4割削減の23.5%になります。また、冷凍牛肉の関税は38.5%から30.5%に下がり、さらに毎年徐々に下がり続け、18年目には5割削減の19.5%になります。
 畜産農家は肥育の素牛となる子牛の購入価格が高い上、円安で飼料代も上昇の一途、特に乳用牛、交雑牛の肥育農家は廃業や経営の方向転換を余儀なくされています。
 当然、国の政策転換だから国の政策で対応すべき課題ですが、現実的には十分な対応措置がとられていないわけで、県内の肥育農家の経営動向を県としてどう認識されているのか、また今後の対応方針について、平井知事にお伺いします。

●知事答弁

 
 議員御指摘のように乳用種の牛肉の生産に向けた肥育、それから交雑種の肥育、これらについては農家数とか生産の状況も減少傾向があります。その背景に餌代が高くなってくるとか、あるいはもちろんTPPの話もありましたが、値段が余り伸びないことなど、そうしたようなことがあり、構造的な課題が立ちあらわれています。ですから、これについては新マルキンを初めとしたいろんな対策が望まれるところでもあり、県としても国に対して働きかけをしてきました。
 最近の傾向だと、例えば北栄町や琴浦町等でも見られるわけですが、こういう乳用種の肥育とかから撤退して、交雑種やあるいは受精卵移植による和牛の生産に向かいたいとか、あと和牛のほうの肥育、さらには繁殖のほうに転換するとか、そういう農家さんも出てきています。このようなことがやはり実相としてはやむを得ないというか重要になってくるのかと思います。
 ですから、県としてもそういうふうに乳用種から交雑種、さらには和牛肥育、あるいは繁殖も含めた一貫生産等へ動いていくことの支援をしなければいけないと思います。これは小谷県議のときに大分詳しくいろんな支援の方策について申し上げましたので割愛しますが、和牛への転換だとか畜産の応援の手だてをやっていくことを展開したいと思います。そういう意味の畜種の転換のアクションプランというものを遂行していく、それを今の実相に即して考えていかなければならないと思います。
 また、それ以外にも例えば餌の自給飼料の生産だとか、これは議員のほうからもコントラクター組合のこととかがあり、そういう機械化の導入などを県としても進めてきたり、コントラクター組合の育成などを図ってきたこともありますが、そういうこととあわせて、そういう転換も応援していく必要があるのかなと思っています。

<EPAの発効について2
 EPAの発効により、県下の肥育農家の皆さんは戦々恐々の日々です。既に肥育農家にとっては、素牛の高騰、飼料代の高騰、経営が逼迫しており、ここ数年間経営の頼りにされているのが肉用牛肥育経営安定特別対策事業、通称新マルキン事業です。
 この事業は、国費、生産者の積み立て、県の助成金などによって造成された基金から県の畜産推進機構が管理しており、肉用牛の生産時に粗収益が生産費を下回った場合に、その差額の8割相当を肥育経営農家に補塡するという事業で、肉専用種、交雑種、乳用種がその対象品目となっています。つまりこの制度は、肥育経営農家にとってみれば全国統一の保険制度のようなものです。
 しかし、現実には8割相当の補塡しかなく、しかもその通称新マルキン事業に支えられている畜産農家も多く、現実の経営は大変な状況に置かれています。
 今後はさらにTPPの締結も予定される中、生産費に織り込む経費を実態に合わせてふやすなどして、今の補塡費を8割相当からせめて9割相当ぐらいに引き上げる見直しを政府は行わないと、肥育農家はもたないし、担い手の皆さんも肥育経営を諦めるということにつながってくると思っています。
 改めてそうした肥育農家の声を政府に届けるべきだと思いますが、平井知事の所見をお伺いしたいと思います。
●知事答弁
 
 飼料が高騰するとか、諸条件が悪化しており、非常に肥育農家の経営が厳しくなってきています。そういう意味で、そのための対策として、自給飼料だとか、それから和牛への転換等も含めて総合的なアプローチが必要ではないかということを先ほど申し上げましたが、一番肝になるところは、安心して再生産に向かえるように、新マルキン事業と言われる、そういう補塡制度を活用していくことだと思います。
 具体的には、今の制度として生産者が4分の1、そして国が4分の3を負担して、基金により売り上げと収入とのあい差の8割補塡をするという制度が動いているわけです。これがやはり非常に今の畜産経営の中では重要でして、重ねて私どもも生産者の御意見もお伺いし、国に対しても改善を働きかけてきました。
 生産者のほうの負担も高いということで、鳥取県は生産者分の負担の3分の1を県が見るという独自の制度も入れて、こうした新マルキンの活用を我々としても奨励をさせていただいているところですが、現実、毎年のようにやはりこういう補塡を受けなければやれなくなってきているような実情があると訴える農家さんがいたり、先般、大阪で開かれた全農の共励会で最優秀賞をとられたとうはく畜産さんなどからは、あれは沖縄から素牛を入れてきたりして輸送費がかかったりするのです。そういうものが適正にコスト面で評価されていないなど、やはり制度の運用として厳しさが残っており、その辺の改善は求めていかなければならないと思っています。
 これは従来も国に対して働きかけをしてきましたが、今後も粘り強くこのことを政府のほうに訴えていきたいと思います。 
 
<EPAの発効について№3
 この議場でも何度か称賛の議論がありましたが、現場後代検定で歴代最高の、要するにBMS、霜降りの入りぐあいを示す指標と、それからロース芯面積で日本一の成績をおさめた種雄牛、百合白清2が昨年9月に認定されたわけです。さらに12月には、その兄牛である白鵬85の3が百合白清2を上回る成績で現場後代検定が終了されたということで、事実上、本県は全国1位、2位の種雄牛を所有することになり、再来年度、宮城県で開催される全国和牛能力共進会での活躍に大きな期待がされるとともに、今まさに全国から熱い注目を浴びています。多分、白鵬のような牛はもうなかなかできないのではないかというぐらいの成績なのです。
 今後、これらの種雄牛を活用した鳥取和牛のブランドの向上と、産地活性化という活用課題もあります。知事も畜産試験場にたびたび行かれているようですが、私は古くなった畜産試験場の環境整備が必要ではないかと思うのです。当然、全国1位、2位の種雄牛を所有する試験場となれば、視察や来場者は増加の一途であると思います。その状況は聞いていませんが、畜産試験場の施設を見ると、昭和43年建築の和牛育成牛舎を初め古い建物が多い上、トラクターも24年前に購入されたものが修理されながらまだ使われています。華やかな種雄牛の誕生とは、まさに裏腹な現状です。こうした施設の充実を含めすばらしい種雄牛を確保している中で厳重な防疫体制の整備、また一方では、多くの県民を初め来訪者に対応できるエリアをきちんと設定して、視察者の皆さんに対応できる試験場に私は整備すべきだと思います。
 平成14年ごろ、県議会の議論を経て、県としても畜産試験場の整備基本計画を策定され、一時、年次的に整備が進められていましたが、財政状況が非常に厳しいという中で、途中で延期されたままになっています。さらに現状の試験場は県道からの入り口にも看板は出ているもののわかりにくく、来訪者にはとても不便なものになっています。改めて整備基本計画をつくり、整備を進めるべきだと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
●知事答弁
 
 私の前任の時期になりますが、もともと中小家畜試験場と、大家畜である畜産試験場のほうです、これを統合するということの議論がありました。結局いろいろな関係者の御意見などが出てそれを断念する中で、現在の琴浦の家畜試験場を順次改修していくということで、実際に整備を進めてきたところです。これについては、当然現在のいろいろな機能があるので、そういう機能を十分果たせるかどうかとか、それから耐震性がどうかとか、さまざまな観点で検証していかなければならないだろうと思います。
 かつて中小家畜と一緒にするといって大議論をしたころのようではありませんが、丹念に実情に応じた改修等を順次計画し、実行していくということではないかと思います。
 家畜の世界ですので、人間の家ほど立派にしなくてもいいのかもしれませんが、ただ、研究環境だとか、それから実際、衛生的に種雄牛を造成できる、あるいはその子を育てることができる、さらに言えばふん尿処理、これが前の時期は大分問題になりまして、そういう堆肥化のこととか、いろいろと考えていかなければならないテーマがあろうかと思います。
 以前は家畜試験場も結構オープンで、いろいろな方々が自由に出入りしてもいいところだったわけですが、現在は残念ながら口蹄疫を初めとした防疫対策が強化されていますので、いろいろな方々が自由にたくさん出入りするというところではありませんから、要は内部の組織としての節度と、見識を持って考えていくべきことだと思っています。
 議員の御指摘もありましたので、改めて点検して、必要箇所の改修等に向かっていきたいと思います。

<EPAの発効について№4


 搾乳ロボットなど、時代に合うか合わないかは別にして、本当に古くなって修理ばかりです。やはり農業後継者の皆さんが、畜産農家の担い手の皆さん方が本当に農業をしようかと夢を持てるような環境整備を進めてほしいということをお願いします。